2011年1月26日水曜日

メシールのテニス(5) テイクバックのタイミング

これも、かなり基本的なことですが、しかしメシールのテニスでは重要なことです。
それは、テイクバックからフォワードスイング、インパクトまでのタイミングです。フォアハンドでも、バックハンドでも、同じことが言えます。

メシールは、相手のボールがネットを超える前後からテイクバックを始めます。テイクバックの速度は非常に簡単です。ネットを超えたボールが自分の方に飛んでくるのとまったく同じスピードでテイクバックをするのです。まるで、ラケットとボールが糸で結ばれていて、ラケットがボールを引っ張っているようなイメージです。映像を見ていると、ネットを超えたボールとラケットが同じ速度で前に(ラケットは後ろに)進んでいきます。

その後、どこかでその関係が崩れるのですが、そのタイミングもシンプルです。ボールがバウンドするタイミングです。ボールがバウンドしたところから、メシールのスイングはテイクバックからフォワードスイングに切り替わります。今度は、バウンドしたボールとラケットスイングがちょうどぶつかる感じで両者が進んでいきます。インパクトのところで、ボールとラケットが出会います。

メシールの場合は、上の全体のタイミングがかなり徹底しています。多少、体勢が崩された場合でも、原則的には上のタイミングでテイクバックとフォワードスイング、インパクトが実現しています。他の選手のことは知らないのですが、ちらっと見ている限り、もう少し遅れてしまう(ボールがネットをかなり越えてからテイクバックに入る)ケースが多いように思います。メシールは、まず、そういうことはありません。ボールがネットを超えるあたりから、ラケットがボールを引っ張るようにテイクバックをしています。

「なぜ、メシールのテニスは美しいのか」が、このブログのテーマなのですが、どうも、この点は、見逃せない点のように思います。このシンプルで、しかし徹底したラケットとボールの位置関係が、メシールのテニス(ストローク)を美しく見せているような気がします。

私は、この点が徹底していないために、なかなか中級から抜け出せないのかもしれません。体が疲れていても、どんな体勢でも、相手のボールが速くても遅くても、このタイミングを徹底すれば、もう少しストロークが上達するかもしれません。

私だけかもしれませんが、久しぶりにテニスコートに立った場合に、時々、コートに立った最初の時間帯の方が調子がよいことがあります。だんだん体が温まってくるのに、逆に調子が下がってきて、ボールがうまくコントロールできないことがあるのです。以前から、おかしいなと思っていたのですが、もしかしたら、このタイミングが原因かもしれません。最初は一生懸命なので、上のタイミングでボールを打っているのですが、慣れてくると体が「ずぼら」になってしまいタイミングを忘れてテイクバックが遅くなってしまうのだと思います。(体が温まってくると、多少ずぼらにテイクバックしても、ボールをヒットできてしまうから。)

この点についても、コート上で、今度、確認してみようと思います。

メシールのテニス(4) フォアハンド1

メシールのビデオ(フォアハンドストローク)を見ていて、自分のフォアハンドと何が違うのか眼を皿のようにして比較していたら…重要なポイントを二つ発見しました。両方とも基本的なことなのに、今まで不覚にも気がつかなかったことです。

1)一つは、テイクバックからフォワードスイングでのラケットヘッドの向きです。厚いグリップの場合は、ラケットヘッドがテイクバックで後ろ(バックネット側…相手と反対側)を向くと思います。これは、厚いフォアハンドグリップでは、テイクバックでの手首のコックが必須だからです。一方、メシールのような薄いグリップの場合は、テイクバックではラケットヘッドは後ろを向きません。イメージとしては、むしろ、ラケットヘッドがレディーポジションからテイクバックトップまでの間、ずっと前(ネット側・相手側)を向いているようなイメージです。(実際は、そんなことは不可能ですが…。)別のイメージで表すと、腕と二の腕がテイクバックにおいてVの字を作っていて、そのV字がインパクトぐらいまで維持されていると言えるでしょう。(V字が崩れない限り、ラケットヘッドは前方を向いていることになります。)V字のイメージを作るには、レンドルのフォアハンドを思い出すとよいと思います。レンドルはフォアハンドのテイクバックでひじから引くのでこのV字のイメージが明確です。ただし、レンドルの場合はひじを引くに従ってV字の形は少しずつ変わります。メシールは、体の回転でテイクバックをするので、テイクバックの間、初期のV字形が維持されます。その点が、レンドルと異なる点です。
繰り返しになりますが、大切なことは、テイクバック中はそのV字形が崩れないということです。そのために、ラケットヘッドはずっと前(相手の方)を向いているイメージを維持できると言うことです。その形でテイクバックのトップまで持って行きますので、トップでもラケットヘッドは後ろ(バックネット側)を向きません。メシールのビデオを見ていると、テイクバックのトップで、メシールのラケットヘッドは後ろ45度(つまり相手方向に向かって135度)程度になっているようです。もちろん、ラケットヘッドの向きは打つボールによって多少は変わりますが、180度(=真後ろ)でも90度(=真横…ベースラインと並行)でもなく、その間になっているようです。その後、フォワードスイングの流れの中ではヘッドは多少後ろを向きますが、次の2)にあるように手首がおり曲がらないのでラケットヘッドが真後ろを向くと言うイメージはフォワードスイング中にもなく、どちらかと言うとヘッドが下を向いているイメージになるようです。(イメージなので表現が難しいですね。)
自分のビデオを見ていると、テイクバックで、はっきりとラケットヘッドが後ろ(バックネット側)を向いていました。それは、テニスのフォームとしては、一般的には違和感はないのですが、しかしそれは、「メシールのテニス」ではなかったのです。ラケットヘッドが後ろを向いてしまうと、下の2)の打ち方はできなくなります。これは、メシールのテニスという点では致命傷になります。

2)もうひとつは、ひじから先の使い方でした。メシールは、ひじから腕、ラケットの先までを全体で一本の腕のようにしてボールを打ちます。リストを全く使わないわけではないのですが、ひじの蝶つがいは十分に曲げることでその力を利用しますが、手首の蝶つがいはあまり曲がりません。いいかえると、腕と二の腕の角度はいくらでも曲がります(たとえば90度ぐらい)が、腕とラケットの角度は120度よりも小さくはならない感じです。また、腕の動く方向(手のひらの方向)については、腕とラケットは同じ面内に維持されている(もちろん、インパクト直前には、手首はある程度はコックされますが)イメージです。
これは、いいかえると、ヒッティングポイントにおいて、肩とボールにはある程度の距離をとることが必要となると言うことでもあります。ひじの角度が120度と浅い角度であるため、肩から手首までには距離が生じるためです。(例えば、90度の場合は、もう少し距離が近くなるでしょう。)したがって、比較的低い球についてはスイングが下から上の縦振りになります。一方、腰よりも高い球についてはある程度、横振りになります。腕とラケットの角度が深く(120度以下に)ならないので、テイクバックである程度ラケットヘッドが上を向いても、スイング中にラケット面が上を向くことがありません。
今まで、メシールのスイングでどうしてテイクバックでラケットヘッドが立ってもフラットでボールが打てるのか不思議だったのですが、2)がその理由ではないかと思います。この点は、もう少し調べてみようと思います。
なお、このように腕とラケットの角度を維持するスイングでは、スイング中(フォワードスイング中)には、腕よりも二の腕に力が入るようです。腕(や手)に力が入ると言うことは、多くの場合、腕とラケット(つまり手首)に角度がつくことを意味しています。多くのプレーヤー(アマチュアだけではなく、プロもそうではないでしょうか?)は、したがって、腕に力が入り、かつ、手首が120度よりも直角側に曲がっていると思います。(おそらく、現代テニスではグリップの薄いフェデラーでさえも、手首は意外に曲がっていると思います。)
メシールの場合は、腕よりも二の腕に力が入っているようです。そうしないと、スイングの中で腕とラケットの浅い(例えば120度の)角度が維持できないはずです。腕からラケットを一本の棒のように使うのであれば、それを操作する二の腕に力が入るのは当然です。この違いも、メシールのストロークが他のプレーヤーとは一線を引いて見える理由かもしれません。こちらも、今度、テニスコートで実際に試してみようと思います。

(1)と(2)を通じて重要なことは、背中の筋を伸ばすことです。これは、他の項目でも書くことになるのですが、メシールのフォアハンド・バックハンドでは、「背中が立つ」のが特徴です。(1)のラケットヘッドの向きに関しても、(2)の腕の角度についても、これを活かすためには、背中の軸が重要です。また、左手の使い方も重要です。これらについても、別項で述べることになると思います。

2011年1月9日日曜日

中級から上級への道

今回は、メシールと関係ない、一般的なことを書いてみます。

中級者と上級者の違いについて、です。いいかえると、中級者が上級者になるための道について、と言ってもよいと思います。

この20年間、ラケットの恐るべき進化によって、アマチュアテニスはガラッと変わってしまいました。
20年前には、ラケットの機能を表現するのに「パワー」というような言葉はなかったのですが、いわゆる厚ラケの登場により、アマチュアテニスもかなり変わってしまったと思います。

一言で言うと、「きれいなテニス」ではなくても、いくらでもよいプレーができるようになったのです。
よほどよいボールを打って前に詰めても、相手はラケットのパワーをうまく使って、簡単にロブで逃げることができます。昔であれば、深い球を打ってネットに出れば、相手はミスをしてくれるはず…だったのに、です。そのため、「テニスのゲームを楽しむ」という点では、逆に、ずいぶんと技術的な敷居が下がった印象があります。誰でも、いざとなったらロブで逃げる!ことができるのですから。

いいかえると、これによって、ずいぶんと「中級」と言うレベル(実際には、その意味は不明瞭なのですが)が広がったように思います。ラケットのパワーをうまく使えれば、フォームや技術に関係なく、誰もが一定レベルのプレーを約束されるようになりました。

しかし、これが、私には、中級者が上級者に上がる一つの「超えるべき壁」を示しているようにも思います。皮肉なことにも。

超えるべき壁とは、一言で言うと、「ラケットを振り切れるかどうか」です。

テニススクールで見ていると、中級コースでは、7割から8割の生徒がここで上達が止まってしまっているように見えます。つまり、パワーのあるラケットを使っている場合には、ラケットを振り切らなくてもボールが返せる(しかも、時にはとてもよいボールが返せる)ために、振り切るのではなく、ボールにラケットを「あわせる」スイングをしているように思います。
そのために、ラケットスイングにおいて、ラケット面が下を向かない(上を向いている)場合をかなり見かけます。

当然ですが、ラケットを振り切らないと、ボールは思ったところには飛びません。
また、これが大切なのですが、実は、スイングの中に、うまい力加減をつけることができません。

ラケットスイング(特にフォアハンド)では、テイクバックからフォワードスイングにおいては、グリップに力を入れてはいけません。
グリップは緩く(ゆるゆると言うわけではないにしても)握っておき、インパクトにおいてしっかりと力を入れることになります。

しかし、ラケットをボールにあわせるスイングでは、インパクト前から
グリップに力が入ります。または、フォワードスイングで力が入り、
そのままの力でインパクトに入ることになります。
(そして、その分、フォロースルーが小さくなります。)

テイクバックからフォワードスイングにおいて力を20%程度にしておき、
インパクトで80~100%にするような、大きな、強弱(この場合は、弱強
ですね)のあるスイングができるかどうか。
これが、パワーのあるラケットにおいても、上級者になるためには
避けては通れない道だと思います。