2011年11月30日水曜日

メシールのテニス(51) レシーブの構え

意外に注意を払っていないレシーブの構え。大切なことは、テイクバックにスムーズに入ることができる位置に、ラケットと腕を置いておくことです。

言い換えると、そのまま体をひねればテイクバックになる場所に、ラケットを位置させるのです。

ヘッドが下を向きすぎても、上を向きすぎても、いけません。

相手のサーブが速い場合は、特に、リターンは一瞬の出来事です。0.1秒も(いや、0.01秒も)無駄にはできません。そのままテイクバックができる位置にラケットをセットして構える、ということが鉄則です。

メシールの場合、グランドストロークでは、フォアハンドもバックハンドも、肘が伸びきることはありません。(フォロースルーですら、完全に伸びません。)

したがって、レシーブのレディーポジションでは、当然、腕は緩やかに曲げます。ラケットヘッドは、下を向きません。まっすぐやや上向きぐらいになります。

このまま、体をひねれば、テイクバックになります。

2011年11月22日火曜日

メシールのテニス(50) スイングにおける下半身の役割

メシールのテニスも、いろいろと書いている間に、ついに50回まで来ました。正しいことも、正しくないことも、また、どちらとも言えないことも、いろいろ書きました。いつか、これらを整理して、まとめようと思っています。

さて、今回は、グランドストロークにおいて、下半身(足)の果たす役割について考えてみたいと思います。

メシールのグランドストロークの美しさの一つは、上体の安定性です。上体の安定性は、がっしりとした下半身に支えられている…と書くのは簡単です。また、読む側も、わかったような気になっています。

しかし、がっしりと下半身を固定しては、ボールを打つことができません。上体だけでボールを打つことになってしまいます。

実は、メシールの場合、その逆です。

メシールのグランドストロークでは、利き足(フォアハンドは右足、バックハンドは左足)が軸となり、いろいろな仕事をしています。

①まずは、ボールと体の距離を適確にとるのは、利き足の仕事です。ボールが飛んでくると、まずは、利き足でボールとの間合いを取ります

②テイクバック、フォワードスイングは、すべて足がリードしています。腕ではありません。足でラケットを引き、足でラケットを振ります。上体、特に腕は、それに合わせて動いているだけです。言い換えると、上体だけでボールを打つことは、メシールのグランドストロークではありえません

フォワードスイングでは、地面を押すことで、ボールに体重を乗せます。これによって、インパクトポイントも前の方になります。地面を押すという感覚は、地面を蹴るというほどではありません。しっかりと押し出す、というイメージです。

一言でまとめると、メシールのグランドストロークは、下半身でボールを打ちます。上半身は、下半身の動きに導かれてボールを打っているだけです。上半身の力でボールをヒットするのでありませんので、上半身は、ブレが少ないように、できるだけ安定していることが重要です。これが、メシールのグランドストロークにおいて、上体が地面に垂直に維持されている理由です。

上体がぶれないためには、上体を立てておくのが一番安定しているということです。下半身主導の打ち方であれば、それが可能です。

私は、情けないことに、メシールのテニスを50回も分析をしてきて、こんなに大切なことに気が付いていませんでした。情けない限りです。

上体の使い方、スイングの仕方にばかり目を取られて、下半身の重要性を見逃していたのです。そして、メシールのプレースタイルで、上体が立っている(安定している)本当の理由が、わかっていなかったのです。

確かに、下半身をがっしりと固定することで上体を安定させようと試みたことはありますが、当然、それは、失敗でした。相撲の四股(しこ)になってしまったのです。しかし、その先について、考えることをしていませんでした。なぜ、メシールのプレーでは、あれほどまでに、上体が安定しているのかについて。

コート上において、メシールは、下半身でボールを見ていたに違いありません。上半身(特に腕)の使い方は、本能的なものでしょう。脳や目とつながっていたのは、上体ではなく、下半身だったのです。

2011年11月20日日曜日

テニスの基本四原則(中級から中上級にステップアップするために)

(原稿を書きなおしました。)

このブログを読まれている方には、おそらく、私ぐらいのレベルの方もおられると思います。上級というほどではないけれど、単なる遊びでテニスしているのではなく、常に上達を目指している人。テニスが上手になりたいと心から願っている人です。全米テニス協会評価プログラム(NTRP)でいうところの4.0以上(でも5.0にはいかない)程度のプレーヤーですね。

私のレベルは、正式にレイティングをしてもらったことはないのですが、おそらく、4..5程度ではないかと思います。(最近の私の戦績はこちらです。)

この程度を中上級と呼ぶとして、では、中級が中上級に上がるために必要なことはなんでしょうか。私のレベルを(中級の人にはほとんど負けなくなったので)中上級とすると、自分自身が中級から中上級にステップアップした時に、必要だった四原則をまとめてみました。

それは、①まず、足を動かして、ボールとの距離がよいところにポジションする(ステップワーク)、②テイクバックを早く引く(ただし、ステップワークと並行してラケットを引くこと)、③インパクトではボールを見て、その後、(自分の打ったボールを見ずに)相手を見る、④ボールを打った後に大きなフォロースルーを取っている、の四つです。

今更ながらの基本的な四項目ですが、もし、あなたが中級だとして、本当、常にコート上で、この原則が守れていますか?一度、よく思い出してみていください。実は、きっと…。

四原則がきちんと守れれば、中級から抜け出せると確信しています。それには、理由があります。

シングルスのゲーム(草大会など)をたくさんしていると、ゲーム前に相手の技量を確認することは、戦略上、有効です。特に、(まれにある)4ゲームマッチなどは、あっという間にゲームの流れができてしまうからです。

相手の技量をはかる際に、私は、相手の打つボールの速さは、全く気にしません。むしろ、適当にボールが速い方がありがたいぐらいです。速いと言っても、たかが知れています。私が取れないほどのスピードのある球を打つプレーヤーは、こんなところにはいない(もっと、上位ランクの試合に出ている)のです。

私がゲーム前に、相手を確かめるのは、上の四原則と、フォアハンドの左手の使い方の4点です。この4点で、おおよそ、相手の技量は想像できます。試合前の練習で、打つ球は速くてもテイクバックが遅く、左手をうまく使えていない(=右手でボールを打っている)人は、あまり心配する必要はありません。恐れるに足りず、という感じでしょうか。

ちょっと見かけた感じでは上手そうに見えるけれども、実は恐れるに足らず、という人が、実は、コート上には結構多いのです。

逆に、早いテイクバックからしっかりボールを見ながらインパクトしている人をみると、その人のボールがそれほど速くなくても、いや~な感じがします(笑)。そして、そういう相手とのゲームは、結果的には、たいてい”大変なことに”なります(笑)。まして、その時に打つボールが速かったりすると…たいていは、”ひどい目に”あいます(笑)。

言い換えると、基本四原則+フォアハンドで左腕をうまく使えていれば、中級レベルからレベルアップできるということです。そんなに難しい話ではありません。私と同じようなレベルの方は、ぜひ、コート上で試してみてください。効果テキメンだと思います。

2011年11月13日日曜日

ラケットインプレッション ダンロップ社NEOMAX2000 (続編) 「柔らかくてローパワーで、ラケット面が手ごろな大きさ」

このブログでラケットインプレッション ダンロップ社NEOMAX2000を書いてから約2週間がたちました。その間、練習やゲームで、このラケットをずっと使っています。試す意味もありますが、これまで使ってきたラケットと比較しても使いやすいからです。

使い続けてみた印象としては、最初のイメージ通りのラケットで、今のところ、何の不満もありません。一言でいうと、「とても気に入っています」ということです。

MAX200Gと似た、鈍く振動吸収性が高い(やわらかい)打球感は、ラケットインプレッション ダンロップ社NEOMAX2000に書いた時から変わっていません。ラケット面が小さく、今となっては取り回しが難しいMAX200Gよりも、このラケットの方がより「よい(=使いやすい)」ラケットだと思います。

比較対象になりにくいかもしれませんが、私がそれまで使っていたWilson K-Fiveとラケット面サイズは同じですが、K-Fiveはボールが飛びすぎる(パワーがありすぎる)ので、ラケットを振りきることができないという弱点がありました。

K-Fiveはラケットのパワーがありすぎるので、インパクトでスイングを止めてしまうような(実際にはスイングを止めるわけではないのですが)打ち方になっていました。ラケット面が少しずれるだけでネットしたりバックアウトしたりするため、インパクトで力を加減してしまい、その結果、大きなフォロースルーを取れないような打ち方に、無意識の間になってしまっていたのでしょう。

このよくない傾向は、練習よりもゲームにおいて顕著です。ゲームでは、ミスをしないことが最優先するからです。飛びすぎ(バックアウト)が怖くて、腕が「ビビってしまう」という状態です。そうならないように、できるだけガットを硬めに張っても、結果は変わりませんでした。(これは、おそらく、私が、ラケットにおもりを貼って360~370gという重いラケットにしていることも、理由の一つだと思います。)

だからと言って、硬い感触のローパワーラケットは、私には向いていません。私は、フラット(フラットドライブ)でボールを運ぶ打ち方をします。ローパワーラケットで速いスイングでラケットを振りまわして強いスピンボールを打つことは、フラット系の私には難しいのです。

NEOMAX2000は、K-Fiveのような「飛びすぎる」という感じはしません。しかし、打球感は、他のローパワーラケットほどは難くはありません。

「柔らかくてローパワーで、ラケット面が手ごろな大きさ」という、私には理想的なラケットです。(実は、このイメージのラケットを探している方は、意外に多いのではないでしょうか?)

この感じは、MAX200Gと同じです。が、MAX200Gはラケット面が小さいため、NEOMAX2000と比較すると「飛ばなさすぎる」印象でした。NEOMAX2000は、程よくボールが飛んでくれます。

今、私がMAX200Gを使うと、実は、ボレーミスが多発します。理由は簡単で、ラケット面が小さいからです。NEOMAX2000では(ラケット面サイズのおかげで)ほかのミッドサイズのラケットと同じように安定してボレーを打つことができます。この点も、MAX200Gよりも気に入っている理由です。(ただし、他のミッドラケットと比較してボレーが飛躍的に打ちやすくなったとも思いませんが。)

ProkennexのRedondo Midもよいラケットなのですが、NEOMAX2000と比べると、フレームがやや硬い感じがするのです。(スイートスポットでボールをヒットした時には、その硬さはあまり感じませんが。)ラケット面が少し小さいからなのか、80%のグラファイト素材に対してケブラーが20%ほど混ざっているからなのか…。(同じProkennexでも、C1 ProTourの方は、ケブラーが混ざっていないかもしれません。このラケットは打ったことがないので、よく分からないのですが。もしかしたら、C1 ProTourはNEOMAX2000にやや似た打球感かもしれません。とはいえ、このNEOMAX2000の振動吸収性は真似できないでしょうが。)

ということで、当分は、いや今後は、K-FiveやProkennexのRedondo Midよりも、NEOMAX2000を使っていくことになりそうです。このラケット、かなり気に入りました。

以上、NEOMAX2000使用レポートの続報でした。

2011年11月1日火曜日

フラットドライブ系プレーヤーがやわらかいラケットが好きな理由

ご存知の方もおられるかもしれませんが、ミロスラフ・メシールは、実は、ウッドラケットでシングルスの優勝した最後のプレーヤーとして記録(記憶)されています。メシール自身は、選手時代のインタビューで「グラファイトのラケットも使ってみたけれど、子どものころから使い慣れたウッドのラケットを換えることはできなかった」とコメントしています。

メシールは、なぜ、ウッドのラケットにこだわったのでしょうか。私は、それは、ウッドラケットが振動吸収性の高いラケットだったからだと考えています。メシールのようなフラットドライブ系プレーヤーは、本質的に、柔らかく振動吸収性が高いラケットを好む傾向にあると思っています。

Dunlop社のNEOMAX2000のインプレを書いた際に、NEOMAX2000は、私の個人的な印象ですが、打球感がかつてのMAX200Gに似ており、「振動が少なく、鈍く厚い打球感」と表現しました。この打球感は、どうやって作られるのかなぁ…と考えていたのですが、ふと、思ったのが、運動量保存の法則とエネルギー保存の法則です。この2つの物理法則と「少ない振動・鈍く厚い打球感」がどんな関係にあるのかを、今回、考察してみようと思います。

さて、私のようなフラット(フラットドライブ)系のボールを打つ場合には、自分の打った球に順回転をかけることは主目的にはなりません。ボールの速度(移動速度)が重要です。一方、相手の打った球は、速度と回転を両方持っています。特に、相手がスピナーの場合は、回転の比重がその分大きくなります。

相手のボール(速度と回転)を自分のボール(速度中心)にして打ち返したいのが、フラットドライブ系のストロークの目的となります。「いかに相手のボールの速度を利用しながら、しかしボールの回転を殺すか」が、フラットドライブ系の課題になるわけです。

運動量については、重いラケットでボール方向に垂直にラケット面を作り、ボール方向にスイングする(ボール進行方向とラケット面が移動する方向が一直線になる)と保存できます。つまり、このようにラケットを振るお、相手のボールの速度と同じ速度(またはそれよりも速い速度)でボールを打ちかえすことができます。ラケットが(ボールの重さと比べて)重ければ重いほど、速度を作りやすくなります。(ラケットが重いと、その分だけ体や腕に対する負担が大きくなるので、ラケットが重ければよいというわけでもありませんが。)

回転については、スピン系ボールをフラットドライブ系ボールで打ち返すことを考えると、相手のボールと自分のボールは回転方向が逆になります。つまり、相手のボールの回転をすべて吸収して、さらに、それとは逆の回転をかけることになります。

その方法は、おおざっぱにいうと、①順回転方向にボールを打つことで相手のボールの回転を逆の回転にする、②ラケットでボールの回転エネルギーを吸収する、の2つがあり得ます。②では、相手のボールの回転を逆回転にすることはできませんが、回転を0にすることは(理屈上は)できます。

多くのスピン系のプレーヤーは、①を行うために、ラケットをボールに対してこすり上げます。フラットドライブ系プレーヤーも、①が中心となりますが、ラケットが②を行ってくれるとその分だけスイングは楽になります。

さて、ここからが本題です。私がMAX200GやNEOMAX200Gなどの振動吸収系ラケットが好きな理由は、もしかしたら、上の②の仕事をラケットがしてくれるからなのではないかと思ったのです。振動吸収とは、実は、ボールの回転吸収なのではないかと。これらのDunlop社のラケットにかかわらず、一般的に、フレームの柔らかい(振動吸収系の)ラケットは、相手のボールの回転エネルギーを吸収しやすいと(直観的には)思います。

ただし、ボールのエネルギーを吸収するラケットは、欠点もいくつかあります。

一つは、ボールの回転エネルギーと同時に、運動エネルギーも吸収してしまうということです。つまり、相手の打ったボールの速度も吸収してしまうということです。速度を吸収してしまうと、その分、速いボールを打てません。その際に役に立つのが、ラケットの重さです。運動エネルギーを吸収してもボールに反対方向の速度を与えるためには、ラケット自身が重ければその分だけ容易になります。(運動エネルギーは吸収しても、運動量は保存できるからです。)

もう一つは、ボールの回転エネルギーをラケットが吸収した際に、そのエネルギーはどこに行くのかということです。フラットドライブ系プレーヤーにとってはエネルギー吸収系ラケットは望ましいかもしれませんが、ラケットが吸収したエネルギーが振動として腕に伝わってしまうと、テニスエルボなどの故障の原因となってしまいます。

ラケットが吸収したエネルギーをどのように振動エネルギーとしてラケット内で消費するかという技術は、私にはよく分かりません。が、時々、ラケットの振動吸収をアピールするラケットの広告(振動が急激に小さくなるグラフなど)を見ると、そういう技術があるのだと思います。

この話は、おそらく、スポーツ学などでは常識的な(基本的な)話かもしれません。また、理屈と実際は、実はかなり一致しないのかもしれません。

が、フラット系グランドストロークの私が、どうして、NEOMAX2000のような「柔らかくて振動吸収性の高いラケット」が好きで、それに鉛をべたべたと貼って使っているのかを考えると、物理の理屈とは見事に一致します。今まで、無意識に、物理法則を考えてラケットを選んでいたのかもしれません。

理屈にも合うのですから、NEOMAX2000が、ますます好きになりそうです(笑)。