2013年12月31日火曜日

Mecir's Tennis (205) ラケットの重さをどこで感じるか

ラケットにはトップヘビーやトップライトなど、重さとは別にバランスがあり、最近のラケットではバランスはほとんど表記されています。私はあまり詳しくないのですが、ラケットヘッドが遅れて出てくるタイプのスイングはトップライトなほうがよく、フラット系のスイングはヘッドが重いほうがよいそうです。

私は、テニスの専門家ではないので詳しいことはわかりませんが、トップヘビーがよいか、トップライトがよいかは、体の回転とラケットの動きがどのぐらい一致しているかによるのではないかと考えています。ラケットが体の比較的近くを体と一緒に回転するタイプは、トップヘビーは向いていません。遠心力で体とラケットの回転にずれが生じやすいからです。

ミロスラフ・メシールが現役時代に使っていたラケットを、スロバキアの首都であるブラチスラバのテニス協会のレストランで見たことがあります(動画像はこちら)。ご覧いただければお分かりの通り、メシールのスノワート社製のラケットはガラスケースに入れて展示されており、残念ながら手に取ることはできませんでした。

したがって、私の想像なのですが、このラケットは重心が…というよりもスロートのところがかなり重くなっているのではないかと思います。つまり、このスロートの部分が重くっており、メシールがフォワードスイングをするときにはこの部分を意識してラケットを振っていたのではないかと思うのです。

メシールのスイングは、現代テニスの誰よりも、ラケットと体が一体になって動きます。インパクトの直前ぐらいまでは体の回転にラケットはついていくだけで、インパクトから初めて腕を使うイメージです。つまり、テイクバックからフォワードスイングにおいてはラケットの体に近い場所、すなわちスロート部分あたりを体の回転に合わせて振り出すイメージになります。ラケットがトップヘビーとなると、体とラケットの距離が離れ、そのために体の回転とラケットヘッドの回転に微妙なずれが出てしまうのです。スロート部分を走らせるイメージであれば、実質的には体の回転だけでラケットを振る(フォワードスイングする)ことができます。

ラケットヘッドに重心があるほうが遠心力でラケットを強く振ることができます。ただ、メシールの場合、ラケット全体が十分に重かったそうですので、その必要はないのかもしれません。

なお、メシールの現役時代のラケットのアップ写真は、メシールのテニス(112) どうしてもウッドラケット?(おまけ)をご覧ください。

2013年11月25日月曜日

テニスグッズ紹介(4) Leadテープ

第4回は、Leadテープです。ラケットに貼り付ける「おもり」です。

Tennis WarehouseのWebに掲載されているのですが、メーカー表示がないのでTW社せいかもしれません。幅は、0.25インチ(6.35mm)ですので、ラケットフレームの内側に貼りつけることができます。重さは、1インチ(2.54㎝)あたりで0.25gです。30㎝で約3gですので、ラケットの内側に上半分いっぱいに貼ると、両側に着けて6gと言ったところでしょうか。

長さは36ヤード(約33m)です。30㎝であれば100本程度取れることになります。金額は約25ドル(2500円程度)ですので、1mあたり75円程度です。日本で購入すると、キモニー社のもので30mで7500円程度ですので、3分の1の価格です。(どうして、こう、米国製は同じようなものでも金額が違うのでしょうね。)

なお、Leadテープは鉛製ですので、体への影響(ガン、妊娠、生殖機能への影響など)が心配されます。触った後は、手を洗うようにしましょう。

2013年11月20日水曜日

テニスグッズ紹介(3) FILAメッシュバッグ

テニスグッズ紹介第3弾は、またまたテニスバッグです。今回は、「仕事に持っていけるバッグ」ではありません。

FILAのメッシュバッグ(Fila Fall Baseline Mesh Bag Black)です。大きさは、普通のトートバッグのサイズで、大きすぎも、小さすぎもしない印象です。

テニスコート(特に試合)で、探しているモノがないとカバンの中をごそごそすることが時々あるので、試しに購入してみました。確かにメッシュになっているので中はスケスケです。これで、ごそごそ探しはなくなりそうです。

この商品は(購入前から分かっていたのですが)女性向けです。写真に写っているロゴが写真の印象よりも自己主張が強く、しかもピンクとオレンジなのです。なんとなく、リゾート感があります。せめて、このロゴが赤と黒(FILAのもともとの色)だったらもう少し落ち着いているのですが、これでは女性向け商品だと一目で分かってしまいます。そこがちょっと残念。UNISEXでデザインしてくれたらよいのですけどね。

なお、この商品には、小さなポーチが付いてきました。こちらは、ピンクとオレンジなどの100%女性向けのものですので、私には使えそうにありません。いや、思い切って使ってみても面白いかもしれませんね。

テニスグッズ紹介(2) Princeテニスバッグ

テニスグッズ紹介(1)に続いて、「仕事に持って行っても違和感がないテニスバッグ」の第2回です。今回はPrinceのテニスバッグを紹介します。Prince Classic Racquet Bagです。こちらは、前回のWilsonのテニスバッグとは違って、この記事を執筆している時点(2013年11月)で販売されているバッグです。

こちらも、あまりテニスバッグには見えません。写真で見ての通り、一般的なテニスバッグの様な非対称(ラケットヘッドが大きいため)ではなく左右対称であることが理由だと思います。とはいえ、ラケットバッグと名乗るわけですから、ラケットは収納できるのだと思います。(まだ、試していません。)

大きさはそれほど大きすぎるわけではなく、重さもそれほどではありませんでした。Wilsonの革製バッグ(テニスグッズ紹介(1)で紹介)と比べるとカジュアル感はありますが、スポーツバッグの様な雰囲気ではないのでよさそうです。

側面のPという大きな文字が、知っている人であればすぐにPrinceと分かってしまうのが玉にきずかもしれません。

テニスグッズ紹介(1) Wilson Leather Bag (ラケット3本入り)

テニスグッズを紹介することがあまりないこのブログですが、米国出張で購入したバッグについて紹介します。まだ購入していない(まだ出張中なので… ^^); )のですが。

今回、Tennis Warehouse等でいくつかテニスバッグを購入しました。コンセプトは「仕事に持って行っても違和感がないバッグ!」です。仕事を終えた後、そのままテニスをしたいときが時々あるのですが、テニスバッグを持っていくといかにも「仕事を終えたら遊ぶ」感じがするので、都合が悪いことがあります。(本来は、仕事中にテニスをするのではないので、何も問題はないのですが。)

しかし、テニスラケットはそれなりの大きさなので、どうしても仕事で使うバッグには納まってくれません。

そこで、それとは見えないテニスバッグです。

一つ目は、Wilsonの革製バッグです。これは、正直、本革という事もあり、高かったです…。購入してみた印象としては、想像していたほどは重くないため仕事に持っていく際にバッグの重さが負担にならないと思います。テニスバッグに見えるかどうかですが、もともとテニスで使うと思っているので私にはどうしてもテニスバッグに見えてしまうのですが、革の高級感があるのでまさかテニスバッグとは思わないという方が多いかもしれません。むしろ、気になるのは革製でありまたサイズが大きい(ラケットが3本入るサイズ)であるために、何となく旅行バッグに見えることです。なんで仕事場(出張でもないのに)旅行鞄で…?と思われるかもしれませんね。逆に、仕事で出張の時にはちょうどよさそうです。(ただし、テニス関係と仕事関係や衣類を全部入れるほどの大きさではありませんが。)

最後に、紹介文を書いておいておかしな話ですが、この商品は2012年(現在は2013年です)の商品であり、すでに品切れ直前の状態であるようです。私が購入したAmazon.comでは「残り1つ」となっていました。この記事は、紹介のための紹介になってしまうかもしれません。

2013年11月12日火曜日

Mecir's Tennis (204) 体幹(体の軸)が大切

2013年のATPワールドツアー・ファイナルズの準決勝(ジョコビッチ対バブリンカ)をテレビで観戦しました。その年の最後を締める、チャンピオンを決める大会は、今はATPワールドツアー・ファイナルズっていうのですね。私(のようなオールドファン)には、やはり、マスターズという言葉の方がしっくりきます。

その年のベスト8が出場し、予選リーグの後、それぞれのリーグの1位と2位でトーナメントを行うことは、昔と変わっていません。

バブリンカはスイスの選手で、フェデラーとともにスイスを支えている男子選手です。フェデラーと同様に片手打ちのバックハンドで強いスピンボールを打つことができます。

特に私が見た試合では、バブリンカの調子がよく、ジョコビッチと互角に打ち合っていました。攻めと守りのメリハリもよく、とてもよいテニスをしてました。

が、それでも、ジョコビッチには勝てない。勝てる気がしないのです。ジョコビッチのテニスが盤石で、それを崩すためには結局はリスクの大きなショットを何本も打たなくてはならず、それをすると自滅してしまうのです。

バブリンカとジョコビッチ、何がそんなに違うのだろうか。

そう思いながら見ていたのですが、ポイントの一つは、「体の軸」だと思いました。最近でいうと、体幹というのが正しいかもしれません。


 
ショットによっても違うのですが全般に、ジョコビッチのストロークは軸がぶれません。基本的には、体幹の線(背中の筋)が地面に垂直を保たれています。一方で、バブリンカは時々軸がぶれます。この違いは、甘いボールではなく、厳しいボールの時に顕著に表れます。ジョコビッチは、深いボールや走らされて打つ場合でも、体幹を維持します。そのため、ボールがぶれないのです。一方、バブリンカは、厳しい体勢でボールを打つ時にどうしても軸がぶれます。その微妙なブレの結果がアウトボールになったり、ネットボールになったりするのです。
 
軸のブレがボールの安定感につながるのであれば、軸がブレるかどうかの小さな違いが実は勝ち負けを分けるほどの大きな違いであることが分かります。そして、もう一つ、厳しいボールに対しても体幹を維持することが実はとても難しく、体力が必要であることを忘れてはなりません。
 
そのためには、普段の練習から、体幹を維持すること、背中の筋を地面に垂直に維持することを心がけなくてはなりません。肉体的なトレーニングと同時に、そのことを意識してトレーニングすること(試合では意識しなくても体幹が維持されるようになるまで体に覚えこませること)が大切です。
 
確かに軸を維持して打つのは負担が大きく、つい軸がぶれたまま打ちたくなります。が、トップ選手は、そこを鍛錬して、軸がぶれない体勢を維持しながらボールを打ちます。これが、トップになるかどうかの一つの大きな差だと思います。

2013年11月10日日曜日

Mecir's Tennis (203) テイクバックではラケット面は下を向く

きちんと分析ができていないのですが、大切なことなので、書いておきます。

メシールの…というよりも、あらゆるというのが正しいのですが、フォアハンドでは、テイクバックでラケット面が下を向きます。スピン系のストロークでは常識というか、当然なのですが、実は、イースタングリップでも同じです。面の方向は真下というわけではなく、おおよそ45度程度です。ただし、グリップが薄いので、ラケット面はほぼ真下を向いている脳内イメージになります。

そして、ラケットヘッドは、6時よりも4時や5時方向を向いています。(ただし、打点が低い場合は、真後ろ(6時方向)になります。)

以前も書きましたが、薄めのグリップで厚い当たりを打つからと言って、ラケット面は常に地面に垂直になっているわけではないのです。かといって、スピナーのように面を伏せてスイングをして、インパクト時だけラケット面が垂直になっているわけでもありません。

実は、前者はマッケンロー、後者はエドバーグでした。そして、その二人のフォアハンドは、決して安定したショットではありませんでした。

ここが、イースタングリップの難しい点です。逆に言うと、美しいフォアハンドを打てるメシールの特長でもありました。


下の図にあるように、インパクトではそれほど強いスピンをかけるわけではないので、ラケット面は伏せられているわけではありません。


これがどのような関係になっているのか。これらは、実は、一連の流れの部分、部分となっています。つまり、理由があり、理にかなっているのです。それをうまく説明したいのですが、3次元的な動きなので、図にもしにくいため、簡単ではありません。

順序で書くと、次のようになります。

  • ラケットを伏せたままテイクバック。ただし、腕ではテイクバックしないので、あくまで腰の回転でテイクバック。テイクバックではラケットヘッドは下を向く。
  • テイクバックピークでは、ラケットヘッドは4時~6時方向を向く。打点が低いほど6時に近く、高いほど4時に近い。ラケットヘッドは水平またはやや上向きでもよい。(ボールによる。)
  • 左手は打点方向を指す。低いボールやアプローチショットは左手を前に伸ばすが、高いボールでは左手先は4時~5時方向となる。
  • フォワードスイングはインサイドアウトになる。ラケットは外から内側に入り、そこからインサイドアウトで外向きに出ていく。←この部分が一番分かりにくい。図にすると下の通り。

どうしてこんな複雑な軌跡になるのかについては、また、べつの機会に書きたいと思います。ここでは、メシールのフォアハンドはまっすぐ引いてそのまままっすぐ振りだすのではない(横方向にループになっている)という事だけを強調しておきたいと思います。

2013年10月31日木曜日

Mecir's Tennis (202) 来年もメシールデビスカップ監督(スロバキア)

私はスロバキア語は読めないのですが、Googleの自動翻訳によると、メシールは2014年もスロバキアのデビスカップ監督を続けるようです。(ニュースソースはこちら。)

スロバキアがチェコから独立(分裂)して以来、メシールは監督なのですが、スロバキアの成績は必ずしも良くありません。メシールがスロバキアの英雄であることも理由でしょうが、他に候補者がいない人材の薄さを意味しているのかもしれません。

いずれにしても、いつか、メシールをデビスカップで(監督として)見ることができるかもしれません。楽しみです。

スロバキア語が読めないのですが、自動翻訳のおかげで、こんな記事もありました。スロバキアの男子ランキングです。たぶん、2012年の情報だと思います。

現在のランキングスロバキアSINGLISTOV

30 (26)マーティンKližan1190
81 (81)ルーカスLacko 627
162 (169)カロル·ベック328
173 (175)アンドレイ·マーティン282
230 (229)ポールČervenák206
327 (335)ヨゼフKovalik 128
348 (411)マレクSemjan 119
351 (354)ノルベルトのGombos 117
365 (366)ミロスラフメチージュミリリットル。111
397 (400)エイドリアンシコラ98
400 (379)イボケージ96
441 (346)カミルČapkovič83
ランキングエミレーツATPダブルスランキング(ダブルス)

1 (1)マイク·ブライアン(USA)と(1)ボブ·ブライアン(米国) - 11,520ポイント両方
3 (3)マルク·ロペス(スパ)6390
4 (4)マルセルグラ·プジョル(スパ)6300
5 (5)ダニエル·ネスター(CAN)5860
6 (7)ロバートLindstedt(スウェーデン)5630
7 (6)マックスミルニ(BLR)5390
8 (8)リーンダーパエス(インド)5245
9 (10)ホリアTecau(ROU)5220
10 (11)マヘッシュブパティ(インド)5165
現在のランキングスロバキアDEBLISTOV

第36回 (33)フィリップポラーシェク1940
47 (48)ミハルMertiňák1490
93 (94)イゴールZelenay 867
116 (110)マーティンKližan650
171 (194)カロル·ベック401
254 (243)アンドレイ·マーティン254
257 (266)カミルČapkovič250
326 (329)ルーカスLacko 190
402 (396)イボケージ146
416 (407)ポールČervenák140を

Mecir's Tennis (201) (かなり重要)右手の肘の角度が変わらないこと

このブログでは、メシールのテニス技術、特にフォアハンドを分析してきましたが、これまであまり議論してこなかった重要な技術があります。それは、右肘の使い方です。右肘の使い方はメシールのフォアハンドの最も重要な特徴です。そして、現代テニスではほとんど使われない技術でもあります。今回は、日本の錦織との比較で、フォアハンドの右肘について述べたいと思います。

まず、錦織とメシールのフォアハンドのテイクバックを比較してみてください。全く異なっていることが分かると思います。以前、メシールとフェデラーのテイクバックを比較して、ラケットヘッドの向きについて述べました。メシールのテイクバックでは、ラケットヘッドが下を向きます。(真下という意味ではありませんが、水平よりは下を向きます。)一方、フェデラーのテイクバックではラケットヘッドは上を向いていました。厚いグリップの錦織の場合は、それはもっと顕著です。ラケットヘッドは、テイクバックでほぼ真上を向きます。錦織だけではありません。現代テニスの厚いグリップのフォアハンドでは、ほとんどのプレーヤーのラケットヘッドは上を向きます。


これがどのような影響(効果)があるか。それは、フォワードスイングで分かります。メシールは、フォワードスイングで、肘の角度が殆ど変りません。これは、肘を挟んで腕を一体化させ、肩を支点にして腕を使っていることを示しています。写真を見てください。(分かりやすいように、腕の角度を線で示しました。)






そして、ラケットは下から上に振り上げられます。まるで、ボーリングのようです。繰り返しになりますが、肩を支点にして腕の角度を変えず、ラケットを下から上に振り上げています。そのためには、ラケットヘッドが下を向いていることが望ましいのです。

現代テニスは、テイクバックからフォワードスイングにかけて、ラケットの(ヘッドの)軌道がループを描きます。メシールのフォアハンドでは、ラケットヘッドが振り子のように下を向いて、テイクバックとフォワードスイングで同じ軌道を描きます。なんという、簡単で素直なスイングでしょうか。

Mecir's Tennis (200) 古いテニス雑誌のメシールの記事(200回記念!)


このブログではメシールのテニス技術を分析してきたのですが、気が付くと200回になりました。同じことを繰り返し書いていたり、以前書いたことを後で修正したりと、必ずしも整理された内容ではないですが、読んでいただいている方には本当に感謝いたします。

いつか、内容をきれいに整理しようともっています。また、実は英文にして海外の方にも読んでもらえるようにしようかと思っています。いつか、メシール本人にも読んでもらえるとうれしいですね。

さて、今回は、200回記念として、1980年代後半のテニス雑誌のメシールに関する記事を掲載しようと思います。このころの雑誌は、もう古本屋などにもないので、メシールファンには貴重な資料だと思います。

Tennis Journal(テニスジャーナル)などの日本の雑誌の記事が中心ですが、一部、海外の雑誌の記事も掲載します。フランス語の記事は私も読むことはできないので、どなたか通訳してくださるとうれしいのですが…。

Tennis Journal


French (Coup de Poing)

Tennis Journal

2013年10月30日水曜日

Mecir's Tennis (199) Youtubeより

Youtubeに載っているメシールに関する動画像をいくつか紹介しておきます。

Miloslav Mecir動画像
多くのYoutube上のメシールの動画像を一つにまとめた。

添田豪対ミロスラフ・メシールJr.(2013年全米オープン予選)
メシールジュニア(息子)の方のゲームです。メシールの息子は、おなじMiloslav Mecirで、プロテニスプレーヤーです。残念ながら、お父さんの往年のプレースタイルとはかなり違うのですが。辛口のコメントが付いていました。In 1986, Miloslav Mecir beat Mats Wilander, Joakim Nystrom and Boris Becker on Louis Armstrong Stadium to reach the final of the US Open before falling to Ivan lendl. Now, 27 years later, his son plays on the same court where the father enjoyed such spectacular successes. But Mecir Jr. lacks the same amazing skills as his dad, and as you can see here, he makes so many unforced errors that it wouldn't matter even if he did.『1986年にUSオープンで、ミロスラフ・メシールはマッツ・ヴィランデル、ヨアキム・ニーストロム、ボリス・ベッカーに、ルイ・アームストロングスタジアムで勝利して、決勝戦に進んだ。決勝では、イワン・レンドルに対戦し敗れた。(訳注:この時、ミロスラフ・メシールはノーシードからの勝ち上がりだった。)そして、27年後に、メシールの息子が同じコートですばらしい勝利を挙げた。とはいえ、残念ながら、メシールの息子は父ほどのすばらしい技術を持ってはいない。そして、この映像でも多くのアンフォースド・エラーがみられる。』

ソウルオリンピック

2013年10月21日月曜日

Mecir's Tennis (198) フォアハンドは阿波踊り(マニアには垂涎モノ?の連続写真)

今のテニス雑誌には、もちろん、ミロスラフ・メシールのことが掲載されることはありません。私は、何度かスロバキアに行きましたが、首都ブラチスラバの大きな書店に行ってスポーツ書籍や雑誌のコーナーで探しても、テニスに関する書籍でメシールの名前をみつけることはありませんでした。スロバキアでは、メシールは、今でも有名人だそうですが。


この写真は、1980年代終わりごろのTennis Journalの雑誌をスキャナで読み取ったものです(1989年6月号)。こんな連続写真も、もう、雑誌に掲載されることはないでしょう。

Mecir's Tennis (195) 左手主導ではない!」において、メシールのフォアハンドでは左手主導ではないことを書きました。それを説明できる連続写真を探していたのですが、古いテニス雑誌(別稿で紹介します)の画像をスキャンしました。

それが上の連続写真(の一部)です。下に、そのうちの2ショットを示します。どちらのコマにおいても、右手と左手が平行になっているのが分かると思います。最近のフォアハンドの写真と比べてみれば、その違いは一目瞭然です。


下の写真ではスイングの間、ほとんどで両手が平行になっています。


最後のフレームなどは、明らかに「阿波踊り」のように両手が平行になっています。



特に、最後のフレームなどは、明らかに「阿波踊り」のように両手が平行になっています。また、Youtubeの連続写真の映像(アンドレ・ゴメスとの試合前の練習)でも「阿波踊り」がはっきりと確認できます。

メシールのフォアハンド(イースタングリップのフォアハンド)は、右手が主導するのでも、左手が主導するのでもありません。両手を平行にしたまま両腕でスイングするのです。

Mecir Tennis Forehand Tennis Classic Back Number Photo

2013年10月17日木曜日

Mecir's Tennis (197) 背中を伸ばして打つこと(自分を信じることの大切さ)

Mecir's Tennis (175) 背中を丸めないこと」において、ストロークにおいて、背中を丸めてはいけないという事を書いた。

プレーヤーはどういう時に背中を丸めてボールをヒットしてしまうのでしょうか?

それは、「十分な体勢でボールが打てないが、それでもボールを安全に打ちたい場合」です。言い換えると、「安全に相手のコートにボールを打ちかえす」場合に、プレーヤーは背中を丸くしてボールを打ってしまいます。

ボールを強く打つことは後回しで、まずは相手のコートに(狙った場所に)ボールを運びたいとき。そういう場合に、往々にしてプレーヤーの背中は丸くなります。

そして、これは、絶対にしてはならないことなのです。絶対に、背中を丸めてボールを打ってはいけません。

背中を丸めてボールをヒットすると、ボールを狙った場所に強く打つことはできません。どうしても、ボールを「置きに行く」打ち方になってしまうのです。

さて、では、どうすれば背中を丸めずにボールを打てるのでしょうか?

大切なことは、振り遅れないことです。構え遅れないことです。構えが遅れると、振り遅れます。背中を伸ばしてボールを打つ場合に、振り遅れてしまうとボールはまともにヒットできません。(逆に背中を丸めれば、多少の遅れには対応できます。)

振り遅れずに、準備を早めにして、ボールをしっかり打つ。これが大切です。

もう一つ、大切なことがあります。それは、精神的に受けに回らないという事です。常に攻撃します。常に次のボールを待ちます。ボールを打った瞬間に、それがネットしたりアウトしたりするのではという気持ちを、一切持ってはいけません。自分が打ったボールは絶対に相手のコートにバウンドすると信じます。それによって、相手のボールへの準備が早くなります。

準備が早くなると、振り遅れにくくなります。背中が丸まりにくくなります。よい方の循環が出来上がります。

初級であろうが、中級であろうが、上級であろうが、プロであろうが、レベルに関係なく共通していることなのです。「自分の打ったボールは必ず相手のコートに突き刺さる」と信じてボールを打つのです。

2013年10月15日火曜日

Mecir's Tennis (196) テニスの難しさ(ピースが一つだけ足りないジグソーパズル)

テニスのスイングはゴルフのショットや野球の打撃などと比較して、フォームのセオリーが確立していないスポーツだと言われています。止まって打つことができるゴルフや野球のバッティングと違い、移動してから打つ(または移動しながら打つ)ことや、ボールを打つ範囲が広いこと、また飛んでくるボールを打つことなど、ボールとスイングの関係が複雑だからでしょう。

空間3次元と時間(つまりタイミング)の4次元でボールを打ち返す正確さがスイングに求められるのがテニスの特徴であり、また難しさです。

多くの教科書はあるものの、実はそれらもまだ試行錯誤の段階であり、絶対的な教科書がないのが世界のテニス界の現状です。実は、テニスの教科書はトップ選手を追いかけます。教科書がトップ選手を作るのではなく、トップ選手たちが教科書を作っているのです。正しいフォームを身に着けたらトップランカーになるのではなく、トップランカーが正しいフォームを決めているのです。そのために、テニスの技術には「流行」が発生します。つまり、その時その時で、時代とともに教科書の内容は変わり、いまだに何が正しい技術なのかを理解している人がいないのがテニスです。同じサイズのコートで、同じ規格のボールを使い、同じ規格のラケットを使っているにもかかわらず、です。(ラケットはずいぶん進化しましたが。)

このブログでは、現在の教科書を追いかけるのではなく、1980年代後半のメシールのテニスを分析してきました。そして、私自身がその技術を実証するために、コート上で試行錯誤してきました。

その経験の中で最も難しいと感じることの一つは、「ピースが一つでも足りないジグソーパズルは未完成である」ということです。部分部分は正しいフォームであっても、たった一つが足りないために、スイング全体としては0点になってしまうことがあります。

これは、特にテニスという複雑なスイングにおいては無視できないジレンマです。どこかで妥協して60点のスイングで納得するか、あくまで100点を目標にしてそれまでは0点でも我慢するか。

先日、あるテニスのインストラクターと話す機会がありました。そのインストラクターは、私に前者を勧めました。おそらく、ほとんどのインストラクターやコーチは、前者を勧めるでしょう。そして、60点を70点に、70点を80点に積み上げていけばよい、と言うでしょう。

が、私はそれを良しとしません。なぜならば、60点のフォームを70点にアップグレードすることはそんなに簡単ではないからです。多くの場合、60点のフォームを70点にするために、一度0点に戻すか30点に戻すか、これまでのフォームの多くの部分を解体しなくてはならないことがあります。

テニスのフォームは、積み上げ型ではありません。積み上げ型であれば、10点分を単に足し算すればよいのですが、そんな単純ではないのです。60点のフォームを完成させれば、多くの場合はそのまま60点のフォームでテニスをすることになります。70点に、80点に上げるためには、一度グレードダウンをする覚悟が必要です。その難しさを理解せずに、テニスの上級者は簡単に「上達」という言葉を使います。

テニスのフォームを理解する際に大切なのは、最初から「ピースが欠けたジグソーパズルは0点になる可能性がある」ことを知っておくことだと思います。「理屈では正しいはずなのに、ボールが思うように飛ばない」のであれば、ほかに修正個所があるということです。そこで、せっかく正しい部分を調整して、結果的に60点のフォームにならないように気を付けたいのです。

正しいフォームを一つ一つ積み上げること。そして、完成までは安易な妥協をしないこと。これがテニス技術習得において重要なことなのではないかと考えています。

2013年10月14日月曜日

Mecir's Tennis (195) 左手主導ではない!

ちょっとしたことですが、とても大事なことがあります。タイトルの「左手主導ではない!」は、右利きのフォアハンドについてのメッセージですが、そんな「ちょっとしたことだけれども大切なこと」の一つだと思います。

最近の多くのテニスプレーヤーのフォアハンドストロークは(右利きの場合は)左手主導型だと思います。つまり、フォワードスイングで左手がまず前に出て、それに引きずられて右手が出てきます。左手が体の回転とスイングを誘導するのです。

例えば、下のナダルのフォアハンドです。右腕(右利きであれば左腕)で体を回転させた後で体は正面を向いていますが、ラケットを持つ左腕(右利きであれば右腕)はまだインパクトすらしていません。おへそはネット方向(12時方向)を向いているが、ラケットを持つ手はまだインパクトをしていないのです。つまり、ラケットを持つ腕が体の回転(フォワードスイング)に対してかなり遅れて出ていることがわかります。


さて、メシールのフォアハンドはどうでしょうか。フラットドライブ系のメシールのスイングは、最近のスピン重視のスイングとはちょっと異なります。脳内イメージで言うと「左手主導型」ではなく、「左手と右手が一緒に動く」イメージです。

左手が主導しないので、スイングの意識は右手で振る(より正確には両手を同時に振る)イメージです。両手で同時に振るというのは、例えばハンマー投げのイメージかもしれません。

言い方を変えると、徳島の阿波踊りのように両手が平行にうごく脳内イメージです。(とはいえ、これはあくまで脳内イメージであって、実際のスイングでは両手が平行に動くことはありません。)



この脳内イメージを別の表現をするならば、右腕主導でスイングするが、左手も動かすという事になります。右手だけでラケットスイングをして、左手は死んでいる(たとえば垂れ下がっている、折れ曲がって体にくっついているなど)状態はNGです。

あくまで、右腕が動きながら左腕も同じ方向に動く(回転する)のです。もちろん、その際、両肩がそれと一緒に動きます。以前書いた、「えもんかけの理屈」です。

スピン系のボールは、インパクトよりも前にラケットスイングが加速します。加速する途中でラケットはボールをヒットします。この場合は、左手で先にスイングを開始し、ラケット速度を稼いでから、右手でインパクトという手順で打つことができます。

一方、イースタングリップなどの厚い当たりのフォアハンドは、インパクトよりも先にスイング加速が始めるイメージではありません。ラケットをボールに当ててからボールを強く押し出すイメージです。したがって、インパクト前にラケットスイングを加速してしまうと、インパクト後に大きなフォロースルーが取れないフォームになってしまいます。

これが、両腕が平行になる、左手主導にならない理由です。

この「阿波踊りスイング」のためには、テイクバックで左手が体の前に来なくてはなりません。つまり、フォアハンドテイクバックで左手をラケットに添えておくのです。そうすると、自然に左手は体の前に来ますので、その後フォワードスイングで両手を同時に回転させればよいのです。

実際にスイングをしてみればわかりますが、両腕を同時に使うとメシールの打ち方では力の使い方がとても効率的です。腰の回転と両腕の回転が同期しますので、力の制御がしやすいのです。薄いグリップのプレーヤーは試す価値があると思います。

メシールのフォアハンドはスイングが(驚くほど)ゆっくりだと言われていました。その理由も、左手と右手が腰や肩の回転と一緒に行われることによるものだと思います。



2013年10月10日木曜日

ガエル・モンフィス ~今、ナダルに勝てるプレーヤー~

今(2013年)の現役のプロテニスプレーヤーで、ミロスラフ・メシールに一番近いと思うのは誰か?
今(2013年)の現役のプロテニスプレーヤーで、私が見ていて一番楽しいのは誰か?

私には、この二つの質問の答えは、同じです。

ガエル・モンフィス。フランスの黒人テニスプレーヤーです。

現在行われている上海での大会で、モンフィスはフェデラーに勝って4回戦に進みました。私は、モンフィスのプレーを見るのが好きです。怪我が多くて、なかなか上位ランカーになれないモンフィスですが、現在のトップ選手の誰にでも勝つ力を持っていると思います。

プレーが柔軟で、イマジネーションにあふれていること。
相手のボールの力を一度ラケットが吸い取って、力をのあるボールを打ち返す技術。
無駄な力が一切なく、体を効率的に使って打つことができる。

こんなところが、メシールとそっくりで、そして魅力的です。

無駄な力が少なく、生きたボールを打つことができるのは、ナダルと正反対です。150の力で150のボールを打つナダルと、80の力で120のボールを打つモンフィス。

いつかモンフィスは、ナダルに勝てるような気がします。ナダルのような力のテニスを、技のテニス(と言ってよいでしょう)のモンフィスが打ち破るところを、是非見てみたいです。

ナダルがこれでもかという力で打ち込むボールを、その力を吸収して、ナダルが嫌な場所に軽々と運ぶモンフィス。そんなシーンが目に浮かぶのです。そのテニスは、ジョコビッチにも、マレーにも、すべてのプレーヤーに対して有効な技術となるでしょう。

2013年10月8日火曜日

Mecir's Tennis (194) 結局スイングは膝主導・膝が使えないとネットが増える

グランドストロークは腕で打ってはいけないと言います。背筋を使うのが効果的だと言います。肩をえもんかけのようにして回転すると言います。スイングを主導するのは腰の回転だと言います。

しかし、一番の主導、そして主動となるのは膝です。膝がスイングを支配します。ニーワークです。

面白いことですが、テニスでグランドストロークの技術は、末端の技術ほど上級者とそうでない人で差が際立ちます。末端というのは、つまりスイングの中で一番最後に来るものということです。

スイングでは、最後に手がラケットを振ります。その前が腕です。そして肩の回転です。その前に来るのが腰です。膝は一番最初です。

グリップや腕の振りは個性が出ます。また、技術も明確に出ます。肩の回転や腰の回転は、腕の振りほどではないですが、タイミングなどは技術が出ます。

それらと比べると、膝は地味です。違いも分かりにくい部分があります。

が、膝は最も重要です。腕の振り方、肩のまわし方、腰の回転などの「目に見える技術(スイング)」が見に着いたら、つまりそれらを意識せずにも正しいスイングができるようになったら、プレー中の意識をすべて膝に置きましょう。

ステップワーク、ボールの高低への対応、スイングのタイミング、これらはすべて膝によって主導します。

膝が使えなくなったら、結果にすぐに表れます。ボールがネットし出します。私事ですが、先日、ある大会で敗退した後、知り合いに「前半はネットが多かったね」と指摘されました。私は、なるほどと思いました。自分ではネットが多いと意識していなかったのですが、確かに膝が使えていないなとゲームの後半で気付いたからです。

私は、「テニスからテニスへ」というブログを愛読しています。技術的には素晴らしい解説が、そこでは展開されています。そして、膝が使えないとネットが増える、というそのままの記事を見つけました(記事はこちら)。

2013年9月27日金曜日

広島東洋カープ・前田智徳の引退

プロ野球・広島東洋カープの前田智徳が引退会見を開いた。いよいよ、来る時が来たのかと思った。

プロ野球とプロテニス、日本と世界、全く違う土俵で、違う時代に戦っていて、おそらく互いのことは知らないであろう前田とメシール。しかし、その美しいプレースタイルと、選手生活の最後を怪我との戦いで終えたという点で、この二人に共通の何かを見てしまうのは私だけだろうか。

私は、野球の打撃理論は分からないが、前田のバッティングフォームが美しいことはよく分かる。ここがこうだからというのではなく、ただ美しい。それは、メシールのテニスと同じだ。本当に美しいものは、誰にだってそれがわかるのだ。美しさを感じだけならば、専門家である必要はない。

もし私がテニスではなく野球をしていたら、きっとメシールの代わりに前田のバッティングフォームを分析したことだろう。前田のバッティングフォームは、そう思わせるものだった。誰か、これまでに分析した者はいるのだろうか。私がなぜこうまで美しいと感じるのか、誰か教えてほしい。

実は、私は前田の記者会見やインタビューには、引退記者会見を含めても、ことばの含蓄というものを感じない。落合博満やイチローの様に、ことばが示唆に富んでるわけではない。前田を求道者と呼ぶことがあるが、プロに徹しているだけのように思う。むしろ、ことばが豊かではないために、モノ言わず努力する求道者に見えるだけなのではないか。

前田のことばには、ただ、怪我との戦いの苦悩と焦りと、自分に対するいらだちとあきらめがあるだけだ。それは、どちらかというと、求道者というよりは、治癒が期待できない闘病者の言葉に近い。前田のことばから感じるのは、含蓄ではなく、焦りだけだ。

よく知られている「前田智徳はもう死にました」ということばは、究極の一人称目線だ。自分を、野球を客観的な目で見ることができる落合とは全く違う。前田は優秀なマネージャー(たとえば監督)になることはないだろう。前田は、一人のプレーヤーでしかない。

だからこそ、そのプレーの美しさは際立つ。生き方や考え方から、その話す言葉からは感銘を受けないという事は、純粋にそのプレーがすばらしいという事だ。皮肉にも、豊かとはいえない前田の言葉や態度が、前田のプレーの真の美しさを証明している。

あの美しい打撃フォームを見れなくなるのは寂しい。怪我は別とすれば、年齢的なものを全く感じることがなかったのが前田の打撃フォームだった。私には、この20年間で前田の打撃能力が全く変わっていないように見えた。実際、打席数は少ないというものの、前田は40歳を超えても3割を打っている。年齢は関係ないと言いながらも、明らかにこの数年間で打率を落としている30代後半のイチローとは違うのだ。(戦う土俵が違うので二人を比較はできないのは当然だが、両者を自分たちの若いころと比較することはできる。)

年齢を理由に引退する前田のイメージは、私には持てなかった。引退直前のメシールもそうだった。そのプレーを見る限り、年々技術を極めつつあった。40歳になってもプレーできるのではないかと、メシールのプレーを見ていて思った。50歳になってもバッターボックスに立つ前田のイメージも、同じように私は持っていた。

そこにはおそらく、センスや感覚と言った抽象的で感覚的なものではない、確かな技術があるからなのだろう。ゆるぎない技術があれば、年齢はあまり重要ではない。

であれば、誰かがその打撃技術を分析し、誰かがその技術を引き継ぐべきだ。野球選手であれば、野球に精通する者であれば、それができるはずだ。私がメシールのプレーを、その技術を後世に残したいと心から思っているように。

前田智徳とイチロー:目指す場所が異なる二人の”天才”

2013年9月26日木曜日

Mecir's Tennis (193) 思い切って完全に横を向いてしまおう!(”インサイドアウトのコツ”続編)

Mecir's Tennis (181) なぜインサイドアウトなのかにおいて、インサイドアウトのスイングの意味について書きました。フォアハンドにおいて、インサイドアウトを実現する簡単な方法があります。

それは、「顔以外は全て3時方向を向いてしまう」ということです。


メシールのテイクバックの写真を見てみてください。顔は正面を向いていますので気が付きにくいのですが、この写真で指でメシールの顔を隠してみてください。隠すのは顔の部分だけです。

気が付きましたか?顔以外は、すべて横を向いているのです!時計で言うと(ネット方向を0時として)足も腕も体も、すべてが3時方向を向いています。大切なのは体です。「おへそ」が3時方向を向いていることが大切です。

これは、コート上での脳内イメージとも一致します。ボールが飛んできたら、顔はボールを見る(ほぼ正面を向く)のですが、体は完全に横を向いてしまいます。

当然ですが、ボールは体の(つまり3時方向に)離れたところに置きます。体の真正面(0時方向)においてはいけません。言い換えると、体とボールはかなり離れている感覚になります。

慣れるまでは、完全に横を向いてしまうのは難しいかもしれません。が、いったん慣れてしまうと、なんという楽な打ち方だろうと思うようになります。

2013年9月24日火曜日

Mecir's Tennis (192) スピンサーブのコツ:右足を後ろに蹴り上げよう

連続写真は、メシールではなくアンディー・ロディックのサーブです。メシールとは全く違うタイプのプレーヤー(ビッグサーバ)ですが、最後から2コマ目の右足を見てください。後ろに跳ね上がっています。

これは、ほとんどのサーバで同じようになるのですが、体が回転するのを止めるために意識的または無意識に行っていることです。どうしても体が回転してしまってスピンサーブを打てないプレーヤーは、意図的に右足を蹴り上げることで、体の回転を止めることができるかもしれません。


Mecir's Tennis (191) メシールがビッグキャットと呼ばれた理由

現役時代に「あまり動いていないように見える」と言われていたメシールですが、一方でビッグキャットというあだ名をもらっていました。一見矛盾するこの2つの事柄は、ある一つのことを示しています。

それは、メシールは(ちょうどレンドルのように)「どたどた」「どたばた」とは走らず、むしろ「すっ」と、別の擬音語を使うと「するする」と動いていたという事です。

メシールのビデオをみて、メシールの『最初の動き』をよく分析してみました。相手がボールを打った時に、どのようにメシールの体が反応しているか。今と違い、クオリティーの低いビデオの時代のプレーですので、正確な分析はできません。

が、よくよく見てみると、メシールのプレーでは、相手がボールを打つとまず足が動き始め、ボールがバウンドしてインパクトを迎えるまで、少しでも良い体勢で打つように足を動かし続けています。一方で上体は最小限の動きしかしておらず、かなりコンパクトなスイングです。(メシールのプレーをご存知の方であれば、このコンパクトさはよく分かると思います。)

最初の一歩目が極めて早いという事はありません。「アンティシペーション(anticipation:予測)がすばらしい」と評されていたメシールですが、相手が打つボールを予測して動いているようには見えません。

ただ、相手のボールがネットを超える前から、最初の一歩目を動かしています。速い時には、ボールがネットを超えるまでに2,3歩も動くことがあります。

動かす足にルールはなさそうです。右足から動くことも、左足から動くこともあります。

メシールのフットワークのルールを、ビデオを観る中でまとめると、次のようになりそうです。

  1. 相手ボールがネットを超える前には足が動き始める。最初に動く足にルールはない。
  2. (ランニングショットを除くと)ボールがバウンドするまでに足の位置(特に軸足の位置)を決める。
  3. 上体はシンプルに使う。ボールの変かは、基本的には下半身の動きでコントロールする。
とくに、2がメシールがビッグキャットと呼ばれている理由ではないかと思います。ボールがバウンドした時点で軸足ができており、メシールはそこ(=ボールがバウンドしたタイミング)からフォワードスイングに入ります。それは、まるで、ボールをフトコロに呼び込んで、自由自在にボールを打ち分けているように見えます。

相手がボールを打ったら(ボールがネットを超えるまでに)素早く動き始め、ボールがバウンドするときには軸足を決めている。これが、メシールのフットワークのポイントのようです。

2013年9月23日月曜日

Mecir's Tennis (190) 教科書に載っているが分かりにくいスピンサーブを打つコツ

Mecir's Tennis (188) スピンサーブを打つコツ(1)では、腕を脱力して背筋だけでサーブを打つ方法を紹介しました。今回は、もう一つのTIPSについて書きたいと思います。

スピンサーブを安定して打つために大切なポイントとして挙げられるのが、左腕と両肩を一直線にすることです。これは確かに大切で、安定したサーブを打つためには左腕と両肩が一緒に動く必要があります。

教科書によく書かれているこの点ですが、トスアップ後に、つまりトロフィーポーズで、左腕と両肩を一直線にするのは、意外に簡単ではありません。

それはどうしてでしょうか?


 


トスアップでは、左腕は体の前からスタートします。つまり、大げさに書くと、腕の方向と両肩の方向は平行ではなく、どちらかというと垂直に近いわけです。上の連続写真の1枚目を見てください。

この点が教科書では分かりくい点です。教科書ではまるで、左手が両肩と体が作る面の中で動くように書いてあることがあります。実際には、左手のトスアップの動きはむしろこの体の面に垂直に近いのです。

つまり、両肩と左腕が一直線になるのは、左腕が両肩を結ぶ体の面(線ではなく面)の中に来る時です。左肩を蝶番(ちょうつがい)として左腕をだんだん上げていき、その腕が体を含む面になるまで上げて、初めて左手と両肩が直線状になります。

これは、正確に言うと「真上から見たら直線になる」ということであり、両肩と左腕には多少の角度はあるかもしれません。が、真上から見たらまっすぐになっていることが大切です。

上の連続写真を見てください。最後に、メシールの両肩と左手が直線状になっていることが分かります。

Mecir's Tennis (189) 教科書には載っていないスピンサーブを打つコツ

スピンサーブがうまく打てずに悩んでいる人が比較的多いと思います。今回は、2回に分けて、スピンサーブを打つコツ(TIPS)を紹介したいと思います。一つは教科書に載っていないコツ、もう一つは教科書に載っているのに分かったようで実は分かっていないコツです。

「スピンサーブの打ち方」というハウツーが世の中にはあふれていますが、どれを試してもうまくいかない人が多いのではないでしょうか。時々、スイングだけはマニュアル通りで逆にぎこちないというか、表現は悪いですが頭でっかちな打ち方になっているプレーヤーも見かけます。

ここでは、スピンサーブを打つために必要なコツの一つを書きたいと思います。それは、腕の力を完全に抜いて、背中に力を入れて打つことです。背中には、力をいくら入れても構いません。腕には力を入れてはいけません。

ラケットスイングは、教科書にあるように下から上に振り上げます。(後ろから前に打ってはいけません。)

この方法は、実は、ラケットスイングをボールを打つ瞬間に速くするコツです。スピンサーブを打つという事は、インパクトの前後のラケットの動きなどとは別に、ボールを打つ時に素早くラケットを振るという事が求められます。ボールに回転をかけるのですから、ボールがラケット面にヒットする間にラケットが素早く振りぬけなくてはならないのです。

腕に力を入れると、どうしてもラケット面方向にラケットを振ってしまいます。それは、スピンサーブにとっては逆効果になります。腕に極力力を入れず、背中(背筋)でラケットを振ることで、ラケットスイングをボールと垂直方向にしやすくなるのです。


Mecir's Tennis (188)  フォアハンドのインパクトからフォロースルーにかけての左手の位置について

フォアハンドのインパクトからフォロースルーにかけての左手の位置について、メシールと比較的グリップが近いフェデラーと比較してみたいと思います。

まず、フェデラーです。連続写真では、3枚目から4枚目のインパクトからフォロースルーにかけての左手の位置を見てください。これらを2枚目のフォワードスイングと比較すると分かりますが、フェデラーのフォアハンドでは、左手が先行して動き、その後で右肩が回転してくることが分かります。





フェデラーの3枚目とメシールのインパクトの時の左手の位置を比較してみてください。メシールは、インパクトで左手が胸の前にあることが分かります。これは、メシールのフォアハンドは、フェデラーのように左手が主導して体を回転しているのではないことを示唆しています。






下の2枚の連続写真を見ても、左手主導で体のターンをしているわけではないことが分かります。メシールのフォアハンドは、右腕を遅らせてその分ラケットを使ってスピンボールを打つのではなく、左手を胸の前で残すことでインパクト後に右腕を伸ばしていきボールを運ぶようなうち方であることが分かります。メシールは、あくまで腰の回転で体をターンします。左手はその間ずっと左胸の前にあります。テイクバックで左胸の前に置いた左手は、インパクトからフォロースルーまでずっと左胸の前にあります。これがメシールのフォアハンドです。




フォロースルーでも、最後まで左腕が左の胸の前にあることが分かります。これにより、スピンが効いた威力のあるボールは打ちにくいですが、狙ったところに安定したボールを打ちこむことができるのです。