2014年11月12日水曜日

Mecir’s Tennis (252) ラケット面を伏せるとインサイドアウトになる

コートに立ち、一人でボールをバウンドさせてネット方向にフォアハンドでボールを打つ。コートで相手がいない時に時々試すことです。

この時に、テイクバックからフォワードスイング、フォロースルーまでをラケット面を伏せ続けてみます。「フォワードスイングは親指側から」で書いた通り、親指側からスイングします。インパクト面でも本当にラケット面を伏せているとボールは数メートル先でバウンドしてしまいます。しかし、なぜか(本能か?)」ラケット面はインパクトでは地面と垂直になります。また、スイングは無意識に下から上になります。その結果、ボールは順回転でネットを超えていきます。

この際、インパクトでボールに効率的に力が伝わり(つまりスイートスポットでボールをヒットできて)、かつよい回転でボールが飛ぶにはどうすればよいか。

それは、ラケットをインサイドアウトに振ることです。ラケットを後ろから前に(つまり0時方向に)まっすぐ振ると、うまくインパクトできません。インサイドアウト(1時から2時方向)に振ることでラケット面はボールにきれいに当たります。

当然ですが、ラケット面を伏せずに地面に垂直に立てると、0時方向にスイングすることできれいにインパクトできます。ラケット面を開いてスライスで打つと、0時よりも左側(つまり11時方向)にスイングするのがボールをきれいにヒットできます。

「イースタングリップのフォアハンドはボールを後ろから前に運ぶ」というコナーズ的なフォアハンド(「フォワードスイングは親指側から」)では、つい0時方向にボールをヒットしたくなります。しかし、イースタングリップでもラケット面を伏せてボールに順回転を与えるのですから、その分だけラケットワークはインサイドアウトになるわけです。


Mecir’s Tennis (254) 背中を曲げない・上体を立てる・ボールとの距離を取る

等も書いていることですが、フォアハンドでは背中を曲げず、上体を立てます。肩をエモンカケのように回転させます。

そのためには、ボールと体の回転軸の間に距離が必要です。肩の幅+腕の長さ+ラケット分だけボールと距離を取るわけです。この、肩の幅の分の距離感覚が難しいのです。

ボールが体に近すぎた場合にはボールを打つことはできますが、遠すぎた場合にはボールを打つことができなくなります。その本能的な恐怖心が、ボールとの距離を取りにくくします。

また、背中が曲がると、ボールとの距離感がぶれます。背中をまっすぐに伸ばすと、上記の足し算で自動的に体の中心とボールの距離が決まります。背中を曲げると、その距離が一定ではなくなります。

距離を取ることは、度胸がいります。背筋を伸ばすことは、度胸が要ります。しかし、上体を立てて距離を取る勇気が必要なのです。

Mecir’s Tennis (253) フラットドライブではテイクバックで折った腕を伸ばしていく

フォワードスイングからインパクトにかけて、二通りの打ち方があります。回転を重視する打ち方とボールに力を与えていく打ち方です。スピン系とフラットドライブ系と言ってもよいかもしれません。

スピン系では、腕の体が一体として回転するイメージです。フラットドライブ系は、フォワードスイング開始時には体と腕が一体ですが、そのあと肩と腕は独自に動きます。今回は、このフラットドライブ系について書きます。

具体的には、右肩と上腕を前に突き出し、さらに曲がった肘を伸ばしていく感覚(脳内イメージ)です。この際、腕は完全にまっすぐに伸びるとは限りません。このさじ加減は、打ちたいボールによって決めます。ただし、テイクバックで曲がった状態よりは、必ず肘は伸びているはずです。

スピン系では体の回転がボールにパワーを与えることができますが、フラットドライブ系は体(腰)の回転とラケットスイング(肩・腕)が完全同期しない分だけ、パワーが減ります。その分、肘を伸ばすことでパワーを与えることになります。肘が伸びていくことで、フォロースルーも大きくなります。

スイング全体が大きくなるので、腕の力を抜いてしっかりとボールを捉え、大きくフォローすることを忘れてはなりません。

2014年11月9日日曜日

Mecir’s Tennis (251) フォワードスイングは親指側から

以前、「ラケット面はいつからいつまでボールに垂直になるか?」で、イースタングリップのフォワードスイングでのラケット面の動きについて書きました。

これによると、イースタングリップのフラット系では(でも)、ラケット面は伏せてスイングされます。インパクトの時は(無意識に)ちゃんとラケット面が垂直のボールに当たります。

これをテイクバックに焼き直して考えると、テイクバックでもラケット面は伏せられることになります。(”行き”と”帰り”でラケット面は同じ方がスイングは安定します。)

つまり、イースタングリップでは、ラケットを引くときも振るときも、ラケット面は実は下を向いています。これは、実は(ウエスタングリップでは考えられない)意外なことを示しています。それは、テイクバックでは小指側から引き、フォワードスイングは親指側からスイングしていく、ということです。これはごく自然なことです。

このことは、図に示すまでもなく当然です。薄いグリップでラケットを伏せた状態でラケットを引いたり振ったりすれば、その方向は当然小指側、親指側と入れ替わるはずです。

画像が不鮮明で少しわかりにくいですが、Youbuteの動画像で確認してみて下さい。鮮明なフェデラーのフォアハンド映像でもフォワードスイングは親指側からです。

また、下はトミー・ハースのフォアハンドです。この場合も、1枚目や2枚目で、右手親指側が前に出てスイングしていることがわかります。(決して、真後ろからボールを押しているのではありません。)

イースタングリップの場合、上の「誤った脳内イメージ」を、マッケンローやコナーズのスイングで植えつけられてしまった往年のアマチュアプレーヤーは多いと思います。
コナーズの場合、テイクバックでラケット面が立っており、伏せられていません。フォワードスイングではラケット面が立ったまま、ボール飛球方向とラケット面が垂直な状態でフォワードスイングが行われます。そのため、コナーズはフォワードスイングの間手首をロックしてしまい、腕と体の回転だけでボールを打つという特殊な打法を使っていました。

2014年11月6日木曜日

『目標の設定』についての考察

今回の記事は、あくまで私の私見である。インターネット等の報道または記事を見ての印象であるため、事実とは異なっているのかもしれない。その点をご了解いただきたい。

少し前に、錦織がトップ10に入った時だか、2014年の全米オープンで決勝に進んだ時だったか、いずれにしても飛躍的な活躍をしたときに、解説の杉山愛さんがこんなことを言っていた。

「錦織君のすごいのは、目標設定を世界のトップにおいていることだと思います。私は目標をトップ10入りにしていたから、実際にトップ10に入った後も1位を目指すという発想になれなかった。最初からトップを目指しておくべきでした。それが錦織君と私の違いだと思います。」

何かを引用しているわけではないのでうろ覚えで書いているが、発言の趣旨はおおむねこんな感じだったと思う。

その時に、こんな風に思った。「ああ、彼女がトップに立てなかったのは、目標を1位に置かなかったからではない。こういう(恥ずかしい)発言をする意識だからだ。こんな考えでトップに立てるはずはない」と。

これは、かなり辛辣な意見かもしれないが、本当にそう思った。私は不思議だったのだ。

どうして杉山さんは、こう言わないのだろうか。『錦織君は1位を目指してここまで来たが、まだ道半ばだ。これからが楽しみです。私は10位以内を目指してそれを達成できたので、十分に達成感を感じています。』

トップ10を目指すのであればそのようなアプローチがある。トップ1を目指すのであれば、また別のアプローチがある。例えば、トップ1を目指すということは、何か別のものを失うことかもしれない。例えば、今の錦織が、小さい体を使って体力のギリギリのところで戦っていることは私でもわかる。もしかしたら、錦織は目標達成と引き換えに肉体の機能の一部を失う(たとえばけがなどで)かもしれないのだ。

トップ1になるために犠牲を払っても、トップ1になれるとは限らない。自分のすべてを賭けて目指しても報われない絶望感の可能性を恐れずに挑戦する者だけが、トップ1になる資格を持っている。

100位に入れるのだから50位を目指す。50位に入れるのだから10位を目指す。10位に入れるのだから1位を目指す。そういう甘い考えの者は絶対にトップに立てない。1位になる代償を払う覚悟が最初からなければ、決してトップには立てない。

トップ1を目指すことは立派で、トップ10を目指すのは格好が悪いわけではない。大切なのは、自分が何を大切にするかだ。何に高いプライオリティーを置くかだ。

結果がすべてのプロスポーツの世界において、こんな基本的なことを理解していない杉山さんではないはずだ。あまりにがっかりしたので、思わずこういう記事を書いてしまった。


2014年11月4日火曜日

Mecir’s Tennis (250) フォアハンドでは右脇を締めてはいけない(2)

フォアハンドで右脇(わき)を締めてはいけない(1)で、メシールのフォアハンドでは、テイクバックで右脇を締めてはいけないということを書きました。その理由について、別の角度から考察してみたいと思います。

まずは、錦織のフォアハンドテイクバックを見てください。
見事なまでに(?)右脇が締まっています。その結果、ラケットヘッドは6時方向を超えて7時または8時方向を向いています。

これは、ウエスタングリップ(とくに錦織のようなヘビーウェスタン)ではこれでよいのですが、イースタングリップでは「テイクバックでラケット面が開く」というもっとも避けなくてはならないテイクバックになってしまいます。

下の写真は、フェデラーのフォアハンドテイクバックです。イースタンに近いフェデラーの場合には、テイクバックでラケットヘッドは5時方向(6時よりも早い時間帯の方向)を向いています。つまりラケットヘッドは真後ろよりも体の前側を向いているわけです。


ここで重要なのは、フェデラーの場合には右脇が締まっていないということです。錦織のように「右腕を折りたたんでいる」というイメージはありません。(もちろん、だからと言って、右脇を完全に開いてしまっているというわけでもありませんが。)
  • ウエスタングリップではテイクバックで右脇が締まりラケットヘッドは6時よりも遅い方向を向く
  • イースタングリップではテイクバックで右脇が締まらずラケットヘッドは6時よりも早い方向を向く
その理由は何でしょうか。絵や図にすると難しいので、実際に自分の体で試してみたら簡単にわかります。

自分の正面方向を3時とします。(フォアハンドの場合は、ネットと並行方向が3時、ネット方向が0時です。)

右脇を締めると右手は「開く」状態になり、右手を後ろに引くと前腕は3時から6時の間の方向を向くことができます。一方、右脇を開いて、三角巾をつるした状態にしてみてください。別の言い方をすると、右脇をやや開いて、右ひじをネットと反対方向に突き出します。すると、右手は自然に0時か1時方向を向きます。無理をすれば2時、3時…と開いていくことはできますが、腕に負担がかかりますので、自然に0時から1時方向になるわけです。
錦織のテイクバックとフェデラーのテイクバックを、再度比較してみてください。右脇の締まりとラケットのヘッド方向が全く異なることがわかります。