2012年12月31日月曜日

メシールのテニス(97) テイクバックの指さしは正確には「肘(ひじ)さし」

(メシールのフォアハンドGIFアニメーションはこちらです。)

フォアハンドのテイクバックでの左手の指さし(メシールのテニス(97))には、一つ、落とし穴があります。それは、指を指していても左肩が開いてはダメだという事です。図を見れば一目瞭然だと思いますが、指さしをしても左手の肘がボール方向を向いていなければ意味がありません。


メシールのフォアハンドは、左手の指先がボール方向を向く場合や向かない場合があります。
写真は、1988年全米オープンのメシールの試合前のストロークです。(連続写真ではなく、別のスイングです。)



なお、これは別の記事で書く予定ですが、ボールのヒットポイント(打点が高いほど左の指先がボールを示し、打点が低い場合は指先は内側を向く傾向にあります。いずれにしても、左ひじはボールの方向を向くのです。



フェデラーのフォアハンド(こちら)も、おおよそ同じイメージです。

メシールのテニス(96) テイクバックは弓矢の原理(改定)

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

フォアハンドのテイクバックで左手がボールを指さし示している写真をよく見ます。テニススクールで、初心者に教える、あれです。

メシールのフォアハンドでは、この左手の役割は、とても大切です。初心者っぽいなどと、笑うことはできません。

体の回転でスピンをかけてボールをヒットする最近のテニスでは、左手でボールを指さないフォームも多くなっているようです。しかし、メシールのフォアハンドでは、これは必須です。

イメージとしては、弓矢の構えです。左手は伸びてボールを指し示し、右手は体の前で肘を後ろに引き、構えます。



左手に力が入っていないと、右手でボールを打つための準備(パワー)をするために、右手に力が入りすぎます。その結果、右手は縮こまり、右脇が締まりすぎてしまいます。

つまり、「左手は指先でボールを指せばよい」という事ではないのです。単に、左手の力を抜いて、指さしているだけであれば、何もしていないのと変わりません。スイングを左手が誘導できるようにしっかりと左肩を入れた指さしが必要です。



実際のメシールのフォアハンドは、(初心者のように)左手でボールを指さしはしませんが、必ず左手が前に出て、体を誘導しています。(指さしについては、メシールのテニス(97)をご覧ください。)左肩がしっかり入ればこれでよいのですが、指を指すと左肩を入れるのが楽なので、最初は指さしをすることをお勧めします。(逆に、指さしをしないと、上記の「単に左手を前に出しただけ」になりやすくなります。)


なお、このテイクバックで大切なのは、早く、この体勢を準備すること。つまり、軸足となる右足の位置を、少しでも早く決めることです。特に、フォア側に振られたボールでは、右足を早く決め、ボールと体の位置関係を確定して、この「弓矢のポーズ」に入らねばなりません。

「右足の位置を早く決めること」が、安定したフォアハンドの基本となります。

(メシールのフォアハンドGIFアニメーションはこちらです。)

2012年12月28日金曜日

メシールのテニス(95) 一般的なスピン系のフォアハンドとのフォワードスイングの違い(続編)

メシールのテニス(94) 一般的なスピン系のフォアハンドとのフォワードスイングの違いにおいて、メシールのフォアハンドは、体の回転が先で、腕の回転が後と書きました。また、腕の回転が遅れて出てくるのではなく、体の回転が一般的なスピンボールの打ち方よりも早いと書きました。

これは、言い換えると、「体の回転が早すぎて、体が開いてしまうことがある」ということです。

実際、メシールのプレーを見ていると、フォアハンド(とくに、相手のボールが緩い場合)に体が先に開いているように見えることがあります。(それが相手から見るとフェイントになるという利点もありますが。)

相手のボールが速い場合には、すべてが一瞬の出来事になりますので、この時間差はあまり問題になりません。どちらかというと、相手のボールがそれほど速くはなく、時間的余裕がある場合が問題です。

ボールが飛んでくるよりも体の回転が早いので、確かに、ボールにタイミングを合わせるのは簡単ではありません。

この場合、何をタメとして残すのか。答えは、右腰です。体が先に回転して左肩が開いてしまっても、右腰は残します。右腰こそが、右腕といっしょにフォワードスイングを行うのです。(正しくは、腕はインパクト後に振るので、それまでは右腰が右腕の代わりにフォワードスイングします。)

右腰と右腕が最後に、ボールに合わせてフォワードスイングする。それは、右腰のフォワードスイングをインサイドアウトにすると、イメージがしやすくなります。体(左肩)はオープン側に開いていても、右腰はインサイドアウトする。この、メシールのフォアハンドのイメージを示したのが下図です。


最後の腕のフォワードスイングは、大きく(ボールを運ぶように)振り切ります。これにより、ボールのコースをコントロールし、さらに、ボールに体重が乗るために「重いボール」になります。スピン系の打ち方は、ここで速くラケットを左肩側に回します(スピンをかけるため)ですが、フラットドライブを重視するメシールの打ち方では、むしろ、「腕のフォワードスイングはインパクト後に大きくフォロースルーする」方が有効なケースが多いようです。

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

メシールのテニス(94) 一般的なスピン系のフォアハンドとのフォワードスイングの違い

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)


メシールのフォアハンドは、「手が遅れて出てくるように見える」とよく言われます。そして、それは正しいのです。

私は、いろいろな人からフォアハンドについてアドバイスを受けましたが、どうしてもそれが自分のものになりませんでした。なぜなら、アドバイスは、「今時のスピン系の打ち方」を前提としているからです。上図のように、腕が体と連動して(巻き付いて)フォワードスイングをする打ち方です。

この打ち方では、下の図に示すように、薄いグリップの場合は、ボールが左方向に飛び出してしまいます。そのため、体全体を1時~2時方向に向けることになってしまい、相手に背中を見せるような不安定なフォームになってしまうのです。

これを避けるためには、まず体を回転させ、その後から腕を振るイメージが有効です。図に、イメージを示します。腕が遅れて出てくる(腕のフォワードスイングが体のフォワードスイングの後になる)ので、少し、「手打ち」のように見えます。実際、スピン系のうち肩と比べて、腕のフォワードスイングで腕を(多少)使いやすいのが、メシールのフォアハンドの利点です。(ボールコントロールの余裕ができるのです。)

ここで大切なのは、体の回転のタイミングは、スピン系の打ち方よりも早い(速いではなく早い)ということです。スピン系と同じタイミングで体を回転させると、腕はそれよりも遅くなります。つまり、振り遅れてしまいます。腕を振るタイミングがスピン系と同じになるのです。言い換えると、体の回転のタイミング、すなわちフォワードスイングの起動は一般よりも早くなります。

先に体を回転してフォワードスイングをリードして、(腕には力を入れず)腕を体の回転で引き出してくるようなイメージが近いかもしれません。フォワードスイングを体の回転が支配しますので、腕で振るという感覚はないはずです。

したがって、テイクバックでラケットを引きすぎるのは禁物です。(メシールの静止画像で、テイクバックでラケットが背中側に回っているのは、テイクバックからフォワードスイングに切り替える際の、車のブレーキでいうところの「あそび」の部分なのです。)




2012年12月12日水曜日

メシールのテニス(93) テイクバックでラケットヘッドはどこを向く?(その2)

メシールのテニス(55) テイクバックでラケットヘッドはどこを向く?で、フェデラーのフォアハンドのテイクバックでは、ラケットヘッドが上を向いていると書きました。メシールは、下(真下ではないですが)を向きます。比較の写真を掲載します。

角度が違うのでわかりづらいと思いますが、テイクバックでのラケットの引き方が明らかに違うのが分かると思います。

メシールのテニス(92) フォアハンドのフォロースルー(左手の使い方がポイント)

メシールのプレースタイルを、フォアハンドを中心に分析してきました。その中で、まだ分析していなかったのがフォロースルーです。フォームの一番最後、フォロースルーでも、メシールのテニスを理解するための大切なキーがいくつかあります。

そのうちの一つが、フォロースルーでの左手の使い方です。

写真は、メシールのフォアハンドのフォロースルーです。左手に注目してください。

メシールのフォアハンドのフォロースルーは、左手を折りたたんで肩の高さに持ってきます。これが、極めて重要です。これにより、①背中が丸まることがありません、②ラケットを上に引き上げることができます。

①はボールを背中の力で押し出すために必要です。②は順回転のドライブボールを打つために必要です。

フォロースルーで左手を低く下げてしまうと、ボールを右手の力で打つことになってしまい、安定したボールを打てません。

(メシールのフォアハンドGIFアニメーションはこちらです。)

2012年12月10日月曜日

メシールのテニス(91) ボールを”強く打つ”事の大切さ

相手のボールがあまりくせのないボールであれば、メシールのようなフラットドライブ系のスイングでは、タイミングを合わせて面さえきちんと作れば、比較的ボールを打ち返しやすいものです。

しかし、それでは、狙ったところにボールは行きません。ちょっとしたズレでボールはバックアウトしたり、ネットしたりしてしまいます。

つまり、フラット系であっても、ボールを強く打たねばならないのです。

常にボールを強く打つこと。リターンであっても面を作って合わせるのではなく、強く打つことが必要です。

このことは、副産物として、いろいろな良いことがあります。

一つは、ボールを最後まで見るようになることです。強く打ちたければ、しっかりとボールをラケット面に当てなくてはなりません。

さらに、テイクバックが早くなります。早くテイクバックしないと、自分の力でボールを打つのが難しくなります。

テイクバックを早くするためには、右足(フォアハンド)の位置を早く決めねばなりません。逆に、しっかりボールをたたくという意識を持てば、自然に(無意識に)、右足の位置を早く決めようとするはずです。

なお、ボールをしっかり打つ際に、腕に力を入れてはいけません。腕の力を抜き、肩を回してラケットの重さでボールを打つことで、ボールをしっかりと打つ(運ぶ)ことができるのです。


2012年12月8日土曜日

メシールのテニス(90) 構え…右手こぶしの位置に注意!

どこかに書いてあったのですが、テニスの構えは、剣道と同じ。「相手に斬られるか、自分が斬るか」だと。確かに、一瞬でも早くボールに対応するためには、構えは大切です。

テニスだって、生きるか死ぬかなのです。そのぐらい、一瞬に命を賭けなくてはなりません。

構えのポイントはとても簡単です。ラケットのヘッドを相手に向ける。ヘッドをフォア側に、バック側に向けてはいけません。これにより、ボールがフォア側、バック側のどちらに来たとしても、瞬時にバランスよく反応できます。

図のNGのような構えでは、フォアハンド側にボールが来た時に、ラケットが180度以上移動します。この時間は、決してバカにはならないのです。

レディーポジションでは、ボールが飛んでくる方向にラケットヘッドを向ける。剣道と同じです。

図を見ればわかりますが、正しいレディーポジションでは、右手こぶしは右腰の前になります。体の前に(中心)にはなりません。両手を体の真ん中に構えると、ラケットはバックサイド側に大きく傾いてしまいます(左図)。

こんな簡単なことですが、つい、苦手または得意な方にラケットが傾いてしまうものです。レディーポジションでは。上級者になるほど、「隙がない構え」になるような気がします。


2012年12月6日木曜日

メシールのテニス(89) グランドストロークの打ち合いの段階での心構え

サーブレシーブを含めて、相手のボールが飛んできたときの心構え。言い換えると、シーケンスをまとめておきます。
  • まず、できるだけ早く軸足の位置を決める。フォアハンドなら右足、バックハンドなら左足。
  • 並行して、できるだけ早くテイクバックを完了させる。タメの時間は、長ければ長い方がよい。
この2点を早く終了させることに、まずは終始します。軸足の位置が正しく決まっていれば、相手のボールが遅くても、タメの時間は長すぎるという事はありません。

この形が決まっていると、左肩は入り、左手は体の前にあるはずです。時間的余裕もあります。

その後は、
  • 左手で体を回転(フォワードスイング)させながら、ボールを狙っているところに強く打つ。
事になります。スイングは、ゆっくりでよいのです。時間的余裕はあると、ゆっくり振る方が安定に、思うところに打てるからです。タメの余裕がないと、スイングの遅れを挽回するために、スイングそのものが速くなってしまいます。

相手のレベルが一定以上であれば、多くのボールはベースラインまで飛んできます。その場合は、意識として、「ゴールキーバーのようにベースラインを守る」というポジショニングを取ります。ベースラインの内側、サービスライン辺りまで行って攻撃するのは、じっくりと攻めた後です。グランドストロークを打ちあっている間は、ベースラインを守るのです。

相手のボールがワイドに来た場合にはどうするか?この場合に大切なことは、まずはボールを強く打つことです。つい、コースを狙いたくなりますが、コースを優先すると、ボールを置きに行ってしまいます。ボールを強く打てなくなります。強いボールを打つこと、それができる範囲でボールのコースを選ぶのです。

ボールのコースですが、相手コートのサイドラインを狙ってはいけません。サイドラインの内側を狙います。それ以上ワイドに狙うと、サイドスピンや縦回転のスピンが必要になります。もちろん、余裕が出てきたらそのような形もあり得るのですが、それは、パッシングショットを打つ時や最終的に攻めに出る時です。グランドストロークの打ち合いの段階では、サイドを狙ってはいけません。


メシールのテニス(88) 戦略とは何か?

ご存知かもしれませんが、テニスからテニスへ、と言うブログのサイトがあります。とても内容の濃い、深いことが書かれています。私は、いつも楽しみに読ませていただいています。

その中に、「作戦とフレイムショット」と言う記事があります。なるほど、と(いつも以上に)考えさせられました。

メシールは、そのプレースタイルから、戦略性を高く評価されていました。記事などでも、「メシールは、試合前に周到なゲームプランを作っているのだろう」などと書かれていました。

一方で、本人は、インタビューに答えて、こんなふうに言っています。「試合中(プレー中)は、何かを考えるという事はしない。ほぼ無意識にボールを打っている。きっと、飛び込み選手と同じなのではないか。」

なぜ、無意識にプレーしているメシールが、柔軟で戦略性が高いプレーをすることができたのでしょうか?その答えが、、「作戦とフレイムショット」と言う記事に書かれているような気がしました。

飛んできたボールに対して、どれだけの選択肢を持っているかが大切なのです。その選択肢が多いほど、戦略性が高くなるのです。メシールは、おそらく、ボールの力・パワーで相手を圧倒させようとしたことはないだろうと思います。メシールが目指したのは、どのプレーにも複数の選択肢を持ち、その都度最善と(本能的に)思うボールを打っていたのだろうと。

この戦略性こそが、メシールのテニスだと思うのです。

メシールのテニス(87) タメの大切さ

ボールに合わせてテイクバックを取るという事を書きました。ボールをヒットするタイミングを取るためには、有効な方法です。

しかし、ボールを(強く)ヒットする感覚は、テイクバックのタイミングではなく、フォワードスイングのタイミングです。それを司るのがテイクバックの最後であり、フォワードスイングのきっかけです。

いわゆる、テイクバックの『タメ』です。テイクバックからフォワードスイングに切り替わる際に、一瞬、スイングが止まったようになるのが『タメ』です。実際には、ほぼ止まらないこともあります。逆に、はっきりと止まることもあります。これは、相手のボールによっても違います。

タメをつくることで、フォワードスイングを強く振ることができます。逆に、タメがないと、テイクバックからフォワードスイングが連続となりますので、メリハリをつけにくく、スイングが不安定になります。

では、タメを作るにはどうすればよいか?

一つは、早くテイクバックを取ることです。早くテイクバックを完了すると、残りの時間は全てがタメになります。テイクバックを終了した体勢で、長い時間じっとしていれるのかと疑問を持つかもしれません。しかし、相手のボールがよほど遅くない限りは、そのような心配はありません。タメの状態で待っても、待ちすぎることにはなりません。

もう一つは、スイングの意識です。スイングは、タメからフォワードスイングをする過程が最も大切だというイメージを、テイクバック時から持たねばなりません。スイングはあくまでフォワードスイングのために行っているのであって、テイクバックのために行っているのではないという意識です。フォワードスイングのためにスイングすると思えば、そのきっかけとなるタメのタイミングが遅れるという事が起こりにくくなるはずです。テイクバックなんぞはさっさととってしまって、さっさとタメを作り、ボールが飛んできたときに如何ににフォワードスイングをしっかりするかが大切だと、そんな風にイメージを持てばよいのです。

早いテイクバックとタメがあれば、逆にフォワードスイングはゆっくりになります。ゆっくりでも十分に厚い当たりで打つことができます。メシールのスイングがゆっくりに見えるのは、実はそういうわけなのです。

最近のテニスでは、フォアハンドがループ系になっているので、タメが必要がないことが多いようです。図に示すように、ループ系スイングではタメを取る場所がない(必要がない)からです。メシールのテニスは、テイクバックでラケットが下から引きますので、折り返し点ができます。ここにタメが必要になります。図の赤丸の箇所がタメとなる場所です。

一方、バックハンドは、最近のテニスでも、下から引くことが多いのです。つまり、バックハンドではこのタメが重要となります。プロ選手のビデオを観ていても、フォアハンドはタメがないスイングでも、バックハンドではタメを取っている選手はたくさんいます。テイクバックからフォワードスイングへの切り替わりのタイミングを見ていると、よく分かります。


(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)