メシールのスイングは、他のプロ選手(当時)と比較してもゆっくりだと言われていました。解説者がよく、「どうしてあんなにゆっくりのスイングからあんなに鋭いボールを打てるのだろうか」とテレビで言っていました。(が、その理由を説明してくれた解説者はいませんでした。)
図は、一般的なフォワードスイング(上図)と、メシールのフォワードスイング(下図)を比較したものです。メシールのテニス(83)で書きましたが、フォワードスイングにおいてメシールは腕を使いません。フォワードスイングは、肩の回転だけで行います。
一般的なスイングでは、フォワードスイングでは肩の回転と腕の振りの両方を行います。したがって、上図にあるようにその二つの速度ベクトルの和がラケットの速度となります。
腕の振りがラケット速度に加算されないメシールのスイングでは、ラケットがゆっくりと動いているように見えるわけです。
もちろん、インパクト後には腕の速度が加算されますので、そこから先は一般的なスイングと同じスピードになります。
フォワードスイングで腕が使えないのは、コート上ではなかなか「つらい」ことです。スイングの微調整(つまりごまかし)はできません。肩の回転が遅れた時(つまり振り遅れた時)にも、腕の速度で調整する(ごまかす)こともできません。フットワークを誤って、ボールを捉える高さを間違えた時も腕で調整できません。
足の位置決めと肩の回転のタイミングを常に正しく行うことができること。(それにより、インパクト前には腕に仕事をさせないこと。)これが、メシールのフォアハンドの極意だと思います。
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