テニスで攻撃的、守備的という区分けは比較的簡単です。サーブアンドボレーヤーは攻撃的、ベースライナーは守備的。メシールの時代で言えば、マッケンロー、エドバーグ、ベッカーなどは攻撃的、メシール、ヴィランデル、レンドルは守備的と言ってよいでしょう。
最近のプロテニスでは、サーブアンドボレーヤーをほとんど見かけなくなったので、上の意味での攻撃的プレーヤーは少なくなりました。かといって、ベースライナーは守備的という印象でもありません。ベースラインから攻撃するというイメージでしょうか。
ここでは、ベースライナーとボレーヤーの比較を別の視点でしてみたいと思います。
例えば、誰もいないコートでベースラインの1~2mぐらい後ろに立って、ネット方向を見てみてください。そして、ネットの向こうからボールが飛んできて自分がそれを打ち返すことを、頭の中でイメージしてみてください。
さて、今度はサービスラインから1~2mぐらい後ろに立って、同じことをイメージしてみてください。この場合は、自分のコートでボールがバウンドするのではなく、ボレーをするイメージになると思います。
この二つの違いは、ワンバウンドでボールを打つかノーバウンドでボールを打つかの違いですが、それだけではありません。もう少し別の、意識の違いがあると思います。
その二つの違いは、いわば舞台監督と演者(役者)の違いです。舞台監督は、舞台の外から演者を見ます。自分は舞台に立ちません。そして、常に舞台全体を見渡します。
一方、演者は自分が舞台に立ちます。演者に必要なのは、舞台の上での自分の立ち位置です。自分がどこに立ち、どのように振る舞っているかを意識することになります。
相手コートを見ながら、サービスラインから少しずつ下がってみてください。ベースラインから2mぐらい下がったところで、プレーヤーは演者から舞台監督の視点でコートを見る瞬間があると思います。自分の体のことを意識せずに済む瞬間です。
コートの中に体がある間は、プレーヤーは3次元空間の中でボールと自分の位置関係を常に意識し、それを測ります。コートの外に出た途端に、プレーヤーの意識はコート(舞台)でバウンドしたボールをどの場所で打つかに切り替わります。意識は3次元的ではなくどちらかというと2次元的になります。(実際にボールを打つ瞬間にはボールの高さを意識しますが。)
この2つの違いは、私には攻撃的と守備的というよりは、攻撃的と戦略的という言葉に近いように思います。自分の体を意識してボールをヒットする攻撃型プレーヤーと、ボールがコートの中でバウンドする場所を想定してどの場所でどこにボールを打ち返すかを考える戦略型。
この意識の違いは、別項でもう少し考えてみようと思います。
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