2013年1月29日火曜日

Mecir's Tennis (121) レディーポジションでのラケットの持ち方(マッケンローのフォアハンドから学ぶ)

最近のプロテニスでは、どの選手も、苦手なショットと言うのはない(全プレーヤーがオールラウンド)ですが、1990年代はたいていのプロテニス選手が、トッププレーヤーでさえ、不得意なショットを持っていました。ジョン・マッケンローは、7度もグランドスラム(シングルス)で優勝していますが、あれほど知名度のあるプレーヤーであっても、歴代のシングルス優勝回数では10位にも入っていません。(歴代優勝者の一覧はこちら。)

マッケンローは、サーブ、ボレー、バックハンドストロークとあらゆるショットがすばらしかったのですが、唯一、フォアハンドのグランドストロークだけはよくありませんでした。「よくない」というのは悪いという意味ではなく、これだけのレベルの選手にしては「不安定」だったと言う意味です。マッケンローのフォアハンドストロークは、グランドストロークと言うよりも、ボレーの延長のようでした。テイクバックがほとんどなく、ラケット面を作ってタイミングでボールを打ちかえす打ち方でした。

このグランドストロークでは、他のショットがいくら優れていても、どうしてもプレーは安定しません。レンドルがウィンブルドンをとれなかったのがメンタルだとすると、マッケンローは技術的理由で全仏オープンをとれなかったのだと思います。

バックハンドは利き腕の肩(右利きの場合は右肩)を支点にスイングできますので、小さなテイクバックでも正確なショットを打つことができます。フォアハンドは、体の回転と肩の組み合わせる(複雑な)打ち方を要求されるので、バックハンドのように右肩の位置を固定するわけにはいきません。そのため、どうしてもテイクバックが必要になります。

マッケンローのフォアハンドは、体の回転を使わない(テイクバックを使わない)ボレーのような打ち方だったわけです。


サムネイル

面白いもので、フォアハンドストロークが苦手と言うのは、レディーポジションにあらわれています。写真は、マッケンローの(最近の)レディーポジションの写真です。(Youtubeの画像はこちら。)バックハンドストローク側のラケット面が前を向いているのが分かります。言い換えると、「レディーポジションで、すでに、バックハンドを打つ側の準備になってしまっている」です。


同じ左利きで薄いフォアハンドグリップのアンリ・ルコントも、同じような傾向があったようです。(マッケンローほどは顕著ではないですが。)レディーポジションで、ラケットがバックハンド寄りになっています。

レディーポジションがバックよりだからフォアハンドが苦手なのか、フォアハンドが苦手(またはバックハンドが得意)だからレディーポジションがバック寄りになるのかはよく分かりません。

ラケット面がバック寄りの場合は、当然ですが、フォアハンドのテイクバックの距離が長くなります。テイクバックが遅れ、安定性が悪くなり、下半身や体の回転との同期が難しくなります。


ラケットヘッドを前に出しておけば、テイクバックは楽です。ラケットが動く距離が短くなるので、瞬時にテイクバックができます。図にあるように、体の前にあるラケットを少しだけ後ろに引けばよいのです。(ラケットヘッドは0時方向が1時方向になるだけですので。)

体の回転とラケットの回転は一致する(体の回転でテイクバックする)のが基本ですが、メシールのフォアハンドテイクバックはラケット移動距離が短いので、相手の球が速い場合などはとりあえず手だけで引いて打つ(ラケット面を合わせるだけでボールを返す)ことを時々しています。

図のレディーポジションのラケット位置はちょっとした違いのように見えますが、体の回転とラケットが同期するタイプのメシール(マッケンローも)の場合には、この違いは無視することができない差です。

なお、歴代7回のグランドスラム優勝は、ヴィランデルと並んで2013年1月現在では第13位です。6回優勝者には、エドバーグ(エドベリ)やベッカーがいます。2013年の全豪オープンで優勝したジョコビッチも、歴代優勝回数が6回になりました。マッケンローが14位になるのも時間の問題かもしれません。

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