2011年1月26日水曜日

メシールのテニス(4) フォアハンド1

メシールのビデオ(フォアハンドストローク)を見ていて、自分のフォアハンドと何が違うのか眼を皿のようにして比較していたら…重要なポイントを二つ発見しました。両方とも基本的なことなのに、今まで不覚にも気がつかなかったことです。

1)一つは、テイクバックからフォワードスイングでのラケットヘッドの向きです。厚いグリップの場合は、ラケットヘッドがテイクバックで後ろ(バックネット側…相手と反対側)を向くと思います。これは、厚いフォアハンドグリップでは、テイクバックでの手首のコックが必須だからです。一方、メシールのような薄いグリップの場合は、テイクバックではラケットヘッドは後ろを向きません。イメージとしては、むしろ、ラケットヘッドがレディーポジションからテイクバックトップまでの間、ずっと前(ネット側・相手側)を向いているようなイメージです。(実際は、そんなことは不可能ですが…。)別のイメージで表すと、腕と二の腕がテイクバックにおいてVの字を作っていて、そのV字がインパクトぐらいまで維持されていると言えるでしょう。(V字が崩れない限り、ラケットヘッドは前方を向いていることになります。)V字のイメージを作るには、レンドルのフォアハンドを思い出すとよいと思います。レンドルはフォアハンドのテイクバックでひじから引くのでこのV字のイメージが明確です。ただし、レンドルの場合はひじを引くに従ってV字の形は少しずつ変わります。メシールは、体の回転でテイクバックをするので、テイクバックの間、初期のV字形が維持されます。その点が、レンドルと異なる点です。
繰り返しになりますが、大切なことは、テイクバック中はそのV字形が崩れないということです。そのために、ラケットヘッドはずっと前(相手の方)を向いているイメージを維持できると言うことです。その形でテイクバックのトップまで持って行きますので、トップでもラケットヘッドは後ろ(バックネット側)を向きません。メシールのビデオを見ていると、テイクバックのトップで、メシールのラケットヘッドは後ろ45度(つまり相手方向に向かって135度)程度になっているようです。もちろん、ラケットヘッドの向きは打つボールによって多少は変わりますが、180度(=真後ろ)でも90度(=真横…ベースラインと並行)でもなく、その間になっているようです。その後、フォワードスイングの流れの中ではヘッドは多少後ろを向きますが、次の2)にあるように手首がおり曲がらないのでラケットヘッドが真後ろを向くと言うイメージはフォワードスイング中にもなく、どちらかと言うとヘッドが下を向いているイメージになるようです。(イメージなので表現が難しいですね。)
自分のビデオを見ていると、テイクバックで、はっきりとラケットヘッドが後ろ(バックネット側)を向いていました。それは、テニスのフォームとしては、一般的には違和感はないのですが、しかしそれは、「メシールのテニス」ではなかったのです。ラケットヘッドが後ろを向いてしまうと、下の2)の打ち方はできなくなります。これは、メシールのテニスという点では致命傷になります。

2)もうひとつは、ひじから先の使い方でした。メシールは、ひじから腕、ラケットの先までを全体で一本の腕のようにしてボールを打ちます。リストを全く使わないわけではないのですが、ひじの蝶つがいは十分に曲げることでその力を利用しますが、手首の蝶つがいはあまり曲がりません。いいかえると、腕と二の腕の角度はいくらでも曲がります(たとえば90度ぐらい)が、腕とラケットの角度は120度よりも小さくはならない感じです。また、腕の動く方向(手のひらの方向)については、腕とラケットは同じ面内に維持されている(もちろん、インパクト直前には、手首はある程度はコックされますが)イメージです。
これは、いいかえると、ヒッティングポイントにおいて、肩とボールにはある程度の距離をとることが必要となると言うことでもあります。ひじの角度が120度と浅い角度であるため、肩から手首までには距離が生じるためです。(例えば、90度の場合は、もう少し距離が近くなるでしょう。)したがって、比較的低い球についてはスイングが下から上の縦振りになります。一方、腰よりも高い球についてはある程度、横振りになります。腕とラケットの角度が深く(120度以下に)ならないので、テイクバックである程度ラケットヘッドが上を向いても、スイング中にラケット面が上を向くことがありません。
今まで、メシールのスイングでどうしてテイクバックでラケットヘッドが立ってもフラットでボールが打てるのか不思議だったのですが、2)がその理由ではないかと思います。この点は、もう少し調べてみようと思います。
なお、このように腕とラケットの角度を維持するスイングでは、スイング中(フォワードスイング中)には、腕よりも二の腕に力が入るようです。腕(や手)に力が入ると言うことは、多くの場合、腕とラケット(つまり手首)に角度がつくことを意味しています。多くのプレーヤー(アマチュアだけではなく、プロもそうではないでしょうか?)は、したがって、腕に力が入り、かつ、手首が120度よりも直角側に曲がっていると思います。(おそらく、現代テニスではグリップの薄いフェデラーでさえも、手首は意外に曲がっていると思います。)
メシールの場合は、腕よりも二の腕に力が入っているようです。そうしないと、スイングの中で腕とラケットの浅い(例えば120度の)角度が維持できないはずです。腕からラケットを一本の棒のように使うのであれば、それを操作する二の腕に力が入るのは当然です。この違いも、メシールのストロークが他のプレーヤーとは一線を引いて見える理由かもしれません。こちらも、今度、テニスコートで実際に試してみようと思います。

(1)と(2)を通じて重要なことは、背中の筋を伸ばすことです。これは、他の項目でも書くことになるのですが、メシールのフォアハンド・バックハンドでは、「背中が立つ」のが特徴です。(1)のラケットヘッドの向きに関しても、(2)の腕の角度についても、これを活かすためには、背中の軸が重要です。また、左手の使い方も重要です。これらについても、別項で述べることになると思います。

1 件のコメント:

  1. ハリー・ライムさん、いつも詳しい解説ありがとうございます。
    この背中の筋を伸ばすのが 難しいです・・・。どうしても、つっこんでしまいがち・・・前傾ぎみになってしまってます。なんか、やりかた考えてみます。

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