2012年12月31日月曜日

メシールのテニス(97) テイクバックの指さしは正確には「肘(ひじ)さし」

(メシールのフォアハンドGIFアニメーションはこちらです。)

フォアハンドのテイクバックでの左手の指さし(メシールのテニス(97))には、一つ、落とし穴があります。それは、指を指していても左肩が開いてはダメだという事です。図を見れば一目瞭然だと思いますが、指さしをしても左手の肘がボール方向を向いていなければ意味がありません。


メシールのフォアハンドは、左手の指先がボール方向を向く場合や向かない場合があります。
写真は、1988年全米オープンのメシールの試合前のストロークです。(連続写真ではなく、別のスイングです。)



なお、これは別の記事で書く予定ですが、ボールのヒットポイント(打点が高いほど左の指先がボールを示し、打点が低い場合は指先は内側を向く傾向にあります。いずれにしても、左ひじはボールの方向を向くのです。



フェデラーのフォアハンド(こちら)も、おおよそ同じイメージです。

メシールのテニス(96) テイクバックは弓矢の原理(改定)

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

フォアハンドのテイクバックで左手がボールを指さし示している写真をよく見ます。テニススクールで、初心者に教える、あれです。

メシールのフォアハンドでは、この左手の役割は、とても大切です。初心者っぽいなどと、笑うことはできません。

体の回転でスピンをかけてボールをヒットする最近のテニスでは、左手でボールを指さないフォームも多くなっているようです。しかし、メシールのフォアハンドでは、これは必須です。

イメージとしては、弓矢の構えです。左手は伸びてボールを指し示し、右手は体の前で肘を後ろに引き、構えます。



左手に力が入っていないと、右手でボールを打つための準備(パワー)をするために、右手に力が入りすぎます。その結果、右手は縮こまり、右脇が締まりすぎてしまいます。

つまり、「左手は指先でボールを指せばよい」という事ではないのです。単に、左手の力を抜いて、指さしているだけであれば、何もしていないのと変わりません。スイングを左手が誘導できるようにしっかりと左肩を入れた指さしが必要です。



実際のメシールのフォアハンドは、(初心者のように)左手でボールを指さしはしませんが、必ず左手が前に出て、体を誘導しています。(指さしについては、メシールのテニス(97)をご覧ください。)左肩がしっかり入ればこれでよいのですが、指を指すと左肩を入れるのが楽なので、最初は指さしをすることをお勧めします。(逆に、指さしをしないと、上記の「単に左手を前に出しただけ」になりやすくなります。)


なお、このテイクバックで大切なのは、早く、この体勢を準備すること。つまり、軸足となる右足の位置を、少しでも早く決めることです。特に、フォア側に振られたボールでは、右足を早く決め、ボールと体の位置関係を確定して、この「弓矢のポーズ」に入らねばなりません。

「右足の位置を早く決めること」が、安定したフォアハンドの基本となります。

(メシールのフォアハンドGIFアニメーションはこちらです。)

2012年12月28日金曜日

メシールのテニス(95) 一般的なスピン系のフォアハンドとのフォワードスイングの違い(続編)

メシールのテニス(94) 一般的なスピン系のフォアハンドとのフォワードスイングの違いにおいて、メシールのフォアハンドは、体の回転が先で、腕の回転が後と書きました。また、腕の回転が遅れて出てくるのではなく、体の回転が一般的なスピンボールの打ち方よりも早いと書きました。

これは、言い換えると、「体の回転が早すぎて、体が開いてしまうことがある」ということです。

実際、メシールのプレーを見ていると、フォアハンド(とくに、相手のボールが緩い場合)に体が先に開いているように見えることがあります。(それが相手から見るとフェイントになるという利点もありますが。)

相手のボールが速い場合には、すべてが一瞬の出来事になりますので、この時間差はあまり問題になりません。どちらかというと、相手のボールがそれほど速くはなく、時間的余裕がある場合が問題です。

ボールが飛んでくるよりも体の回転が早いので、確かに、ボールにタイミングを合わせるのは簡単ではありません。

この場合、何をタメとして残すのか。答えは、右腰です。体が先に回転して左肩が開いてしまっても、右腰は残します。右腰こそが、右腕といっしょにフォワードスイングを行うのです。(正しくは、腕はインパクト後に振るので、それまでは右腰が右腕の代わりにフォワードスイングします。)

右腰と右腕が最後に、ボールに合わせてフォワードスイングする。それは、右腰のフォワードスイングをインサイドアウトにすると、イメージがしやすくなります。体(左肩)はオープン側に開いていても、右腰はインサイドアウトする。この、メシールのフォアハンドのイメージを示したのが下図です。


最後の腕のフォワードスイングは、大きく(ボールを運ぶように)振り切ります。これにより、ボールのコースをコントロールし、さらに、ボールに体重が乗るために「重いボール」になります。スピン系の打ち方は、ここで速くラケットを左肩側に回します(スピンをかけるため)ですが、フラットドライブを重視するメシールの打ち方では、むしろ、「腕のフォワードスイングはインパクト後に大きくフォロースルーする」方が有効なケースが多いようです。

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

メシールのテニス(94) 一般的なスピン系のフォアハンドとのフォワードスイングの違い

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)


メシールのフォアハンドは、「手が遅れて出てくるように見える」とよく言われます。そして、それは正しいのです。

私は、いろいろな人からフォアハンドについてアドバイスを受けましたが、どうしてもそれが自分のものになりませんでした。なぜなら、アドバイスは、「今時のスピン系の打ち方」を前提としているからです。上図のように、腕が体と連動して(巻き付いて)フォワードスイングをする打ち方です。

この打ち方では、下の図に示すように、薄いグリップの場合は、ボールが左方向に飛び出してしまいます。そのため、体全体を1時~2時方向に向けることになってしまい、相手に背中を見せるような不安定なフォームになってしまうのです。

これを避けるためには、まず体を回転させ、その後から腕を振るイメージが有効です。図に、イメージを示します。腕が遅れて出てくる(腕のフォワードスイングが体のフォワードスイングの後になる)ので、少し、「手打ち」のように見えます。実際、スピン系のうち肩と比べて、腕のフォワードスイングで腕を(多少)使いやすいのが、メシールのフォアハンドの利点です。(ボールコントロールの余裕ができるのです。)

ここで大切なのは、体の回転のタイミングは、スピン系の打ち方よりも早い(速いではなく早い)ということです。スピン系と同じタイミングで体を回転させると、腕はそれよりも遅くなります。つまり、振り遅れてしまいます。腕を振るタイミングがスピン系と同じになるのです。言い換えると、体の回転のタイミング、すなわちフォワードスイングの起動は一般よりも早くなります。

先に体を回転してフォワードスイングをリードして、(腕には力を入れず)腕を体の回転で引き出してくるようなイメージが近いかもしれません。フォワードスイングを体の回転が支配しますので、腕で振るという感覚はないはずです。

したがって、テイクバックでラケットを引きすぎるのは禁物です。(メシールの静止画像で、テイクバックでラケットが背中側に回っているのは、テイクバックからフォワードスイングに切り替える際の、車のブレーキでいうところの「あそび」の部分なのです。)




2012年12月12日水曜日

メシールのテニス(93) テイクバックでラケットヘッドはどこを向く?(その2)

メシールのテニス(55) テイクバックでラケットヘッドはどこを向く?で、フェデラーのフォアハンドのテイクバックでは、ラケットヘッドが上を向いていると書きました。メシールは、下(真下ではないですが)を向きます。比較の写真を掲載します。

角度が違うのでわかりづらいと思いますが、テイクバックでのラケットの引き方が明らかに違うのが分かると思います。

メシールのテニス(92) フォアハンドのフォロースルー(左手の使い方がポイント)

メシールのプレースタイルを、フォアハンドを中心に分析してきました。その中で、まだ分析していなかったのがフォロースルーです。フォームの一番最後、フォロースルーでも、メシールのテニスを理解するための大切なキーがいくつかあります。

そのうちの一つが、フォロースルーでの左手の使い方です。

写真は、メシールのフォアハンドのフォロースルーです。左手に注目してください。

メシールのフォアハンドのフォロースルーは、左手を折りたたんで肩の高さに持ってきます。これが、極めて重要です。これにより、①背中が丸まることがありません、②ラケットを上に引き上げることができます。

①はボールを背中の力で押し出すために必要です。②は順回転のドライブボールを打つために必要です。

フォロースルーで左手を低く下げてしまうと、ボールを右手の力で打つことになってしまい、安定したボールを打てません。

(メシールのフォアハンドGIFアニメーションはこちらです。)

2012年12月10日月曜日

メシールのテニス(91) ボールを”強く打つ”事の大切さ

相手のボールがあまりくせのないボールであれば、メシールのようなフラットドライブ系のスイングでは、タイミングを合わせて面さえきちんと作れば、比較的ボールを打ち返しやすいものです。

しかし、それでは、狙ったところにボールは行きません。ちょっとしたズレでボールはバックアウトしたり、ネットしたりしてしまいます。

つまり、フラット系であっても、ボールを強く打たねばならないのです。

常にボールを強く打つこと。リターンであっても面を作って合わせるのではなく、強く打つことが必要です。

このことは、副産物として、いろいろな良いことがあります。

一つは、ボールを最後まで見るようになることです。強く打ちたければ、しっかりとボールをラケット面に当てなくてはなりません。

さらに、テイクバックが早くなります。早くテイクバックしないと、自分の力でボールを打つのが難しくなります。

テイクバックを早くするためには、右足(フォアハンド)の位置を早く決めねばなりません。逆に、しっかりボールをたたくという意識を持てば、自然に(無意識に)、右足の位置を早く決めようとするはずです。

なお、ボールをしっかり打つ際に、腕に力を入れてはいけません。腕の力を抜き、肩を回してラケットの重さでボールを打つことで、ボールをしっかりと打つ(運ぶ)ことができるのです。


2012年12月8日土曜日

メシールのテニス(90) 構え…右手こぶしの位置に注意!

どこかに書いてあったのですが、テニスの構えは、剣道と同じ。「相手に斬られるか、自分が斬るか」だと。確かに、一瞬でも早くボールに対応するためには、構えは大切です。

テニスだって、生きるか死ぬかなのです。そのぐらい、一瞬に命を賭けなくてはなりません。

構えのポイントはとても簡単です。ラケットのヘッドを相手に向ける。ヘッドをフォア側に、バック側に向けてはいけません。これにより、ボールがフォア側、バック側のどちらに来たとしても、瞬時にバランスよく反応できます。

図のNGのような構えでは、フォアハンド側にボールが来た時に、ラケットが180度以上移動します。この時間は、決してバカにはならないのです。

レディーポジションでは、ボールが飛んでくる方向にラケットヘッドを向ける。剣道と同じです。

図を見ればわかりますが、正しいレディーポジションでは、右手こぶしは右腰の前になります。体の前に(中心)にはなりません。両手を体の真ん中に構えると、ラケットはバックサイド側に大きく傾いてしまいます(左図)。

こんな簡単なことですが、つい、苦手または得意な方にラケットが傾いてしまうものです。レディーポジションでは。上級者になるほど、「隙がない構え」になるような気がします。


2012年12月6日木曜日

メシールのテニス(89) グランドストロークの打ち合いの段階での心構え

サーブレシーブを含めて、相手のボールが飛んできたときの心構え。言い換えると、シーケンスをまとめておきます。
  • まず、できるだけ早く軸足の位置を決める。フォアハンドなら右足、バックハンドなら左足。
  • 並行して、できるだけ早くテイクバックを完了させる。タメの時間は、長ければ長い方がよい。
この2点を早く終了させることに、まずは終始します。軸足の位置が正しく決まっていれば、相手のボールが遅くても、タメの時間は長すぎるという事はありません。

この形が決まっていると、左肩は入り、左手は体の前にあるはずです。時間的余裕もあります。

その後は、
  • 左手で体を回転(フォワードスイング)させながら、ボールを狙っているところに強く打つ。
事になります。スイングは、ゆっくりでよいのです。時間的余裕はあると、ゆっくり振る方が安定に、思うところに打てるからです。タメの余裕がないと、スイングの遅れを挽回するために、スイングそのものが速くなってしまいます。

相手のレベルが一定以上であれば、多くのボールはベースラインまで飛んできます。その場合は、意識として、「ゴールキーバーのようにベースラインを守る」というポジショニングを取ります。ベースラインの内側、サービスライン辺りまで行って攻撃するのは、じっくりと攻めた後です。グランドストロークを打ちあっている間は、ベースラインを守るのです。

相手のボールがワイドに来た場合にはどうするか?この場合に大切なことは、まずはボールを強く打つことです。つい、コースを狙いたくなりますが、コースを優先すると、ボールを置きに行ってしまいます。ボールを強く打てなくなります。強いボールを打つこと、それができる範囲でボールのコースを選ぶのです。

ボールのコースですが、相手コートのサイドラインを狙ってはいけません。サイドラインの内側を狙います。それ以上ワイドに狙うと、サイドスピンや縦回転のスピンが必要になります。もちろん、余裕が出てきたらそのような形もあり得るのですが、それは、パッシングショットを打つ時や最終的に攻めに出る時です。グランドストロークの打ち合いの段階では、サイドを狙ってはいけません。


メシールのテニス(88) 戦略とは何か?

ご存知かもしれませんが、テニスからテニスへ、と言うブログのサイトがあります。とても内容の濃い、深いことが書かれています。私は、いつも楽しみに読ませていただいています。

その中に、「作戦とフレイムショット」と言う記事があります。なるほど、と(いつも以上に)考えさせられました。

メシールは、そのプレースタイルから、戦略性を高く評価されていました。記事などでも、「メシールは、試合前に周到なゲームプランを作っているのだろう」などと書かれていました。

一方で、本人は、インタビューに答えて、こんなふうに言っています。「試合中(プレー中)は、何かを考えるという事はしない。ほぼ無意識にボールを打っている。きっと、飛び込み選手と同じなのではないか。」

なぜ、無意識にプレーしているメシールが、柔軟で戦略性が高いプレーをすることができたのでしょうか?その答えが、、「作戦とフレイムショット」と言う記事に書かれているような気がしました。

飛んできたボールに対して、どれだけの選択肢を持っているかが大切なのです。その選択肢が多いほど、戦略性が高くなるのです。メシールは、おそらく、ボールの力・パワーで相手を圧倒させようとしたことはないだろうと思います。メシールが目指したのは、どのプレーにも複数の選択肢を持ち、その都度最善と(本能的に)思うボールを打っていたのだろうと。

この戦略性こそが、メシールのテニスだと思うのです。

メシールのテニス(87) タメの大切さ

ボールに合わせてテイクバックを取るという事を書きました。ボールをヒットするタイミングを取るためには、有効な方法です。

しかし、ボールを(強く)ヒットする感覚は、テイクバックのタイミングではなく、フォワードスイングのタイミングです。それを司るのがテイクバックの最後であり、フォワードスイングのきっかけです。

いわゆる、テイクバックの『タメ』です。テイクバックからフォワードスイングに切り替わる際に、一瞬、スイングが止まったようになるのが『タメ』です。実際には、ほぼ止まらないこともあります。逆に、はっきりと止まることもあります。これは、相手のボールによっても違います。

タメをつくることで、フォワードスイングを強く振ることができます。逆に、タメがないと、テイクバックからフォワードスイングが連続となりますので、メリハリをつけにくく、スイングが不安定になります。

では、タメを作るにはどうすればよいか?

一つは、早くテイクバックを取ることです。早くテイクバックを完了すると、残りの時間は全てがタメになります。テイクバックを終了した体勢で、長い時間じっとしていれるのかと疑問を持つかもしれません。しかし、相手のボールがよほど遅くない限りは、そのような心配はありません。タメの状態で待っても、待ちすぎることにはなりません。

もう一つは、スイングの意識です。スイングは、タメからフォワードスイングをする過程が最も大切だというイメージを、テイクバック時から持たねばなりません。スイングはあくまでフォワードスイングのために行っているのであって、テイクバックのために行っているのではないという意識です。フォワードスイングのためにスイングすると思えば、そのきっかけとなるタメのタイミングが遅れるという事が起こりにくくなるはずです。テイクバックなんぞはさっさととってしまって、さっさとタメを作り、ボールが飛んできたときに如何ににフォワードスイングをしっかりするかが大切だと、そんな風にイメージを持てばよいのです。

早いテイクバックとタメがあれば、逆にフォワードスイングはゆっくりになります。ゆっくりでも十分に厚い当たりで打つことができます。メシールのスイングがゆっくりに見えるのは、実はそういうわけなのです。

最近のテニスでは、フォアハンドがループ系になっているので、タメが必要がないことが多いようです。図に示すように、ループ系スイングではタメを取る場所がない(必要がない)からです。メシールのテニスは、テイクバックでラケットが下から引きますので、折り返し点ができます。ここにタメが必要になります。図の赤丸の箇所がタメとなる場所です。

一方、バックハンドは、最近のテニスでも、下から引くことが多いのです。つまり、バックハンドではこのタメが重要となります。プロ選手のビデオを観ていても、フォアハンドはタメがないスイングでも、バックハンドではタメを取っている選手はたくさんいます。テイクバックからフォワードスイングへの切り替わりのタイミングを見ていると、よく分かります。


(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

2012年11月27日火曜日

テニスの心理学

中古書店で、ヴィック・ブレイデンのTennis2000という書籍を購入しました。分厚い本で、最初から最後まで読むのは難しそうですが、興味のある章だけを拾い読みしています。

ヴィック・ブレイデンは、私でも知っている有名なアメリカのテニスアカデミー運営者の一人です。

技術についての章も面白いですが、第9章の「テニスの心理学」という章を興味深く読んでいます。何かにつけて一番であることがすべてと思われているアメリカのスポーツ界において、この章で、ブレイデンは、誰もが1番になれるわけではないのだから、テニスにはもっと大切なことがあるということを述べています。

その中で、「テニスに現れる個人の人格について」という項目があり、以前書いた、「人格はプレースタイルを超えることができない」という記事を思い出しました。

ブレイデンは書きます。「テニスをすると、おさえつけられていたその人の持っている本来の性格が現れてくる」と。村上龍氏の言うところの「人格はプレースタイルを超えることができない(その人の人格が必ずプレーの中に見えてくる)」ということを、ブレイデンも言っているのです。

ブレイデンは、こんなことも書いています。「前の国連大使であるアンドリュー・ヤング氏は、同僚のテニスコート での振る舞いを観察して、その人の性格について貴重な情報を得たそうである。」

私は、こんなふうに考えます。

つまり、我々は、テニスを通じて、自分の日常での性格をコントロールできる可能性がある、と。日常では難しくても、テニスによって自分を変えていくのです。

私は、昔から、自分の感情をコントロールすることが苦手でした。特に、自分が追い込まれたり、頭に「かっ」と血が上ると自分のコントロールができなくなります。これは、テニスでも同じでした。ミスをすると、自分が許せなくなり、ラケットを投げたりしてしまうのです。

今の私は、試合中も、そして普段の練習も、常に自分を客観的に見ようとしています。試合でミスをしたら、その理由を考えます。今の自分の技術の中で最善の策は何であるかを考えます。最善の策の判断を誤ったり、分かっているはずなのにボールが飛んできた瞬間に異なる判断をしたりすると、自分に腹が立ちますが、同時にそのことを忘れずに次に活かすことを考えます。

このことが、今度は、日常の自分にも影響してきます。仕事上で同じことができるようになるとまでは言い切れませんが、普段から、「客観的に自分を見る」「その時々で自分の持つ最善の選択肢を選ぶ」ことを考えるようになります。それが、また、テニスにもフィードバックします。

私を含む多くのアマチュアプレーヤーは、日常の自分の鍛錬のためにテニスをするのではありません。しかし、では、我々は、何のためにテニスをするのでしょうか…?

メシールのテニス(86) フットワーク・ステップワークは必ず必要か?

ふと思ったことがあります。

今、グランドストローク(サーブレシーブの方がイメージしやすいかもしれません)をするとします。ボールが飛んできます。ちょうど、都合の良いことに、自分の体の方に飛んできました。しかも、おあつらえ向けに、フォアハンドで打つのにちょうどよい場所に来ました。

言い換えると、たまたま、足を全く動かさなくてもよいところにボールの方からやってきたのです。(そういうケースは、実際の試合でも、いくらでもあります。)

さて、ここでステップワークを使う必要があるでしょうか?スイング前に、ステップを踏む必要があるでしょうか?

メシールのテニスでは、「必要ない」と答えます。ステップワークは、しなくてもよいなら、無理にする必要はありません。いわゆる「べた足」で打てるなら、その方が時間が稼げてよいのです。

大切なのは、ボールに対して足の位置が決まっているという事です。メシールのテニス(77)で書いたように、相手の打ったボールの高さや深さによって、足の位置はいろいろです。が、いずれにしても、一歩も足を動かさずに相手のボールに対して正しい足の位置が作れるのであれば、無理にステップを踏み直す必要はないのです。

メシールは、グランドストロークで足があまり動いてない印象があります。昔、テレビ東京でWCTファイナル決勝(マッケンロー戦)を放送した時に、解説の渡辺康二さんが言っていました。

しかし、それが悪いことではないのです。それがメシールのテニスです。メシールのテニスでは、ステップを大切にするのではなく、ボールに適切な足の位置を作ることが大切なのです。ステップワークはそのための方法でしかありません。ステップワークそのものに価値を見出してはいけません。

メシールのテニス(85) ドライブボレーのコツ

メシールは、当時の他のプレーヤーと比較してもドライブボレーを使う率が高かったように思います。アガシのように強くボールをヒットして相手を追い込むのではなく、ボールのコースを散らせて相手を仕留めるタイプのメシールとしては、やっとのことで返してきたボールについてはドライブボレーで仕留めたくなるのは当然です。

ドライブボレーは、ボレーと言うよりもストロークです。ストロークだと思うと、普通の(自分のコートでワンバウンドしてから打つ)グランドストロークと球筋がそれほど違うわけではないのに、どうして難しく感じるのでしょうか。(私には、すごく難しいショットです。)

それは、テイクバックのタイミングが取れないからです。

メシールのテニス(83)で書いたとおり、グランドストロークでは、メシールのフォアハンドのテイクバックからフォワードスイングへの切り替えは、ボールがバウンドしたタイミングで行います。ボールのバウンドが存在しないドライブボレーでは、テイクバックからフォワードスイングにどこで切り替えたらよいのかが分からないのです。

では、どのタイミングでスイングをテイクバックからフォワードスイングに切り替えたらよいのでしょうか?言い換えると、フォワードスイングを開始するタイミングはどこでしょうか?

ドライブボレーでは、相手がボールをヒットする瞬間が、通常のグランドストロークのボールがバウントするタイミングになります。つまり、相手がボールをヒットするときには、すでにテイクバックが終わっていなければならないのです。

そんなことができるのか?相手がボールを打つ瞬間にテイクバックが終わっているという事は、相手がボールを打つ時には、自分のフォア側かバック側かどちらにボールが来るのかが分かっていなくてはなりません。

が、逆に言うと、それを予測して打てる時でないとドライブボレー(とくにロングボレー)は打ってはいけないということです。予測がはずれたら、つまり相手がうまくてこちらの予測を外してきたら?

その時は、ドライブボレーを諦めればよいのです。ないしは、少し遅れてスイングをすることになります。(望ましくないですが、ダメと言うわけではないので。)

相手がボールをヒットする瞬間にテイクバックが完了することは難しいので、実際には、相手がボールをヒットしたタイミングからできるだけ早いタイミングでテイクバックを完了する、というのが正しいと思います。

もう一つ、この時のテイクバックは、通常のグランドストロークと比較して、かなり小さくなります。体の前でテイクバックを完了させる感じです。何しろ、相手が打つ瞬間(またはその直後)にテイクバックを完了せねばなりません。大きなテイクバックを取る時間的余裕がないのです。

その代わりに、フォワードスイングの時間はたっぷりあります。とは言え、通常のグランドストロークと違って、テイクバック後に走らねばなりません。できるだけ早くヒットポイントに足を運び、その後でフォワードスイングを始めることになります。

その際に辛いのは、ここではテイクバックをとれないという事です。すでにテイクバックは終わっています。

ボールが飛んでくる間に大きくゆっくりとしたフォワードスイングをとること。逆に言うと、たっぷり時間があるフォワードスイングをしているというイメージが、ドライブボレーのイメージになると思います。移動しながら(または移動後の)フォワードスイングですから、ボールと体の距離がぶれやすいです。しっかりと丁寧に足を動かして、通常のグランドストロークと同じように肩の回転(メシールのテニス(80)のえもんかけの回転)でボールをヒットします。

いずれにしても、ドライブボレーは、あくまでグランドストロークです。足の長いボールが来たのを通常通りにストロークしていると思うことが大切です。ボールのところに移動するわけですが、その最後のステップが、グランドストロークの踏み込み足と同じになるという事です。

メシールのテニス(84) なぜメシールのスイングはゆっくりに見えるのか?

メシールのスイングは、他のプロ選手(当時)と比較してもゆっくりだと言われていました。解説者がよく、「どうしてあんなにゆっくりのスイングからあんなに鋭いボールを打てるのだろうか」とテレビで言っていました。(が、その理由を説明してくれた解説者はいませんでした。)

図は、一般的なフォワードスイング(上図)と、メシールのフォワードスイング(下図)を比較したものです。メシールのテニス(83)で書きましたが、フォワードスイングにおいてメシールは腕を使いません。フォワードスイングは、肩の回転だけで行います。

一般的なスイングでは、フォワードスイングでは肩の回転と腕の振りの両方を行います。したがって、上図にあるようにその二つの速度ベクトルの和がラケットの速度となります。

腕の振りがラケット速度に加算されないメシールのスイングでは、ラケットがゆっくりと動いているように見えるわけです。

もちろん、インパクト後には腕の速度が加算されますので、そこから先は一般的なスイングと同じスピードになります。

フォワードスイングで腕が使えないのは、コート上ではなかなか「つらい」ことです。スイングの微調整(つまりごまかし)はできません。肩の回転が遅れた時(つまり振り遅れた時)にも、腕の速度で調整する(ごまかす)こともできません。フットワークを誤って、ボールを捉える高さを間違えた時も腕で調整できません。

足の位置決めと肩の回転のタイミングを常に正しく行うことができること。(それにより、インパクト前には腕に仕事をさせないこと。)これが、メシールのフォアハンドの極意だと思います。

メシールのテニス(83) 肩の回転と腕によるスイング



メシールのテニス(80)で、フォアハンドストロークでは肩をえもんかけのように使うことを書きました。これは、肩を回転させるという事を意味しています。腕で振るのではなく、体のラケットでラケットをスイングするのです。

腕がラケットを振るのは、肩が回ってからです。

前半をフォワードスイング、後半をインパクトスイングと呼ぶことにします。

この時のポイントは、フォワードスイングは「前半」ですので、まだ「後半」があるという事です。言い換えると、肩の回転(えもんかけの回転)はインパクトまでの「準備」でしかないという事です。

これは、ボールを打つ感覚(イメージ)としては厄介です。肩の回転でボールを打つイメージを作ってしまうと、「後半」の前にボールが来てしまいます。振り遅れます。

また、肩の回転のタイミングは、相手のボールに関係なく同じでなくてはなりません。後半のインパクトスイングを安定させるためには、前半のフォワードスイングの勢いをそのまま使って打たねばならないからです。

タイミングと言う意味では、インパクトスイングの時の腕に、タイミングを合わせる仕事をさせることはできません。腕は「びゅんと振る」ことしかできないのです。(ただし、スピンの度合いやスイングの上下方向の角度は、逆に腕が付けることになります。肩の回転は、常に同じ方向になるからです。)

メシールのテニス(82)では、テイクバックはボールが飛んでくるのにあわせると書きました。その後、ボールがワンバウントしたときにフォワードスイングは始まります。では、インパクトスイングは、どのタイミング(きっかけ)で始めればよいのでしょうか。

それは、インパクトの瞬間からです。つまり、腕によるスイング(インパクトスイング)はインパクトからスタートするのです。

と言っても、それはあくまでイメージです。実際には、腕は(無意識に)フォワードスイング中に必要な準備をしています。ただしそれは、「準備」でしかありません。スピン系の場合はラケット面を伏せ気味にするでしょうし、逆クロスに打つ時や右足で踏み込むときはやや脇を締めてインサイドアウトでスイングするでしょう。

しかし、フォワードスイングでは腕はスイングはしていません。腕がスイングをするのは、あくまでインパクト後なのです。

そう考えると、えもんかけ(肩)の仕事は重要です。ボールをヒットするためのインパクト前の「勢い」を腕に頼ることはできません。ボールを叩くための勢いは、肩の回転が担当することになります。

もう一つ、フォロースルーでボールを叩く勢いを付けるのが肩甲骨です。肩甲骨の力でフォワードスイングに力を与えることができます。(くどいようですが、腕は仕事をしてはいけません。)

全体のイメージを整理しておきます。

  • ボールが飛んでくる。それに合わせてテイクバック。
  • ボールがバウンドする。それをきっかけに肩の回転でフォワードスイングを開始。
  • フォワードスイングのパワーは、肩の回転と肩甲骨の力で行う。
  • インパクトまでは、腕は使えない。すべて肩が仕事をする。
  • インパクトからフォロースルーへ。この時に初めて腕は仕事をする(腕を振る)。
腕の仕事のなんと遅いことでしょうか。ボールを打ち終わって、ボールが相手コートに向けて飛び始めているところで、やっと腕は仕事をするのです。そう考えると、フォアハンドのスイングは肩(と肩甲骨)で行う、と言い切ってしまってもよいかもしれません。もちろん、それは、あくまでイメージですが。

2012年11月26日月曜日

メシールのテニス(82) ボールが飛んできたときにすべきこと ~テイクバックのタイミングがなぜ重要か?

ベースラインで構えている自分の方に相手の打ったボールが飛んできた。ボールがこっちにやってくる。さて、何をすればよいのでしょうか。

まずは、足をそのボールに合わせて位置することです。腰より低い球であれば教科書通りのうち方、高く弾むなら右足を前に出して打つ、深くバウンドするなら右足を引きながら(場合によっては左足を浮かせて)打つ。前に書きましたが、力強く打つために飛んでくるボールに合った最適な足の位置が、それぞれにあります。

もう一つ、飛んでくるボールに合わせてラケットを引くという事があります。相手のボールが速くても遅くても、スライスでもフラットドライブでも、スピンでも。同じようにラケットを引く。これによって、同じタイミングでフォワードスイングを開始できます。

相手の打つ球は、毎回、異なります。相手によっても全然違います。一球一球にスイングを合わせる(調整する)ことはできません。調整しながら打つと、どうしても相手のコートにボールを安全に返すことが優先するために、ボールを強く打つことができないのです。その結果、そのポイント(ラリー)は相手に支配されてしまいます。

ボールを強く打つためには、相手のボールに関係なく、同じタイミングでラケットを引き、同じタイミングで(軸足を使って)フォワードスイングをすることが大切です。

ボールに合わせてラケットを引くのは、ステイしている所にボールが来た場合はもちろん、ステップが入った場合、ランニングショットの場合も、すべて同じです。同じように、ボールに合わせてラケットを引きます。走らされて打つ場合には、走りながらラケットを引きます。やみくもに引くのではなく、この場合も、ボールに合わせて引くのです。

ボールを強く打つことも大切です。上のようにテイクバックとフォワードスイングのタイミングがきれいにとれた時には、ラケット面がきちんとできていれば、面を固定して軽く振るだけでもよいボールが返ることがあります。しかし、それは、そのような打ち方を意図的にするのであればよいのですが、あくまで「強く振る」と言うスイングの1パターンでなければなりません。つまり、「一度、ボールを自分のものにしてから打つ」ということには変わりがないのです。

ボールが来た時(テイクバックをする時)・フォワードスイングするときに大切なこと。それは、上体のバランスがいつも同じであるという事です。

いつも同じフォームで打つということは、上体(背筋や体の傾き、胸の向きなど)が同じだという事です。高い球と低い球で、上体を変えてはいけません。(手は、もちろん別です。手の位置は、ボールによって変わります。)できるだけいつも同じ上体の状態で打つ。これにより、ストロークは形状記憶的に同じスイングを繰り返すことができます。

こうなればしめたものです。ラケット面の方向、スイングの方向などの微調整で、自分の思う場所にしっかりと(「ミスしないように安全に」ではなく)ボールを打つことができます。まさに、これこそが、メシールのテニスです。

相手のボールがよい場合(速い、深い、切れがある、重いなど)でも打ち方を変えてはいけません。やや準備が遅れたから、その分速いスイングで調整するというのは、メシールの打ち方ではありません。準備が遅れることはメシールのテニスでは許されないのです。「準備が遅れたらそのポイントは取れない」ぐらいの覚悟で、準備に最善の努力を払うことが求められます。

メシールのテニスは、足の位置、スイングなどはフレキシブルです。いい加減に打ってるように見えるぐらいです。だからこそ、上体の形、テイクバックとフォワードスイングのタイミングは常に同じにしておかねばなりません。それによって、自由にボールを打つことが可能になっているのです。

2012年11月4日日曜日

書評 「テニスは頭脳が9割 あなたのテニスが進化する120の哲学 」(田中信弥著)

田中信弥氏の「テニスは頭脳が9割 あなたのテニスが進化する120の哲学 」を読んだ。Amazonの書評ではかなり厳しい意見が書かれている。多くの意見は、メールマガジン(メルマガ)の読者からのようだ。メルマガとほぼ同じ内容だそうなので、有償でメルマガを購読している読者が期待して書籍を購入すると、がっかりするという事だろう。

私は、メルマガは購読していないので、逆に、新鮮に本書を読むことができた。

田中氏のDVD販売(非常に高額)やWebサイト(どこかの通販のようにあおり文章が満載)については、私も品位を書くという印象がある。「この人は、山師なのではないか」という印象を持たざるを得ない。

しかし、本書を読むと、その内容は私はほぼ同感・同意見だった。私には、田中信弥と言う方は、本当にまじめにテニスに向かい合っているという印象を受けた。

この書籍のタイトルには、嘘はない。誇大広告もない。テニスの勝敗は9割が頭脳で決まると書いているわけではない。テニスは頭脳が9割と書いているのである。そして、それは、ある意味では正しいように思う。アマチュアテニスプレーヤーは、もっと真剣にテニスに向かい合うべきだと私も思うから。

たとえば、自分は何のためにテニスをしているのか。家族との時間を犠牲にして、お金をかけて(しかも、トータルでテニスにかかる費用は意外にばかにならない)、何をゴールにテニスをするのか。

そういうことを考えるべきだと、田中氏は言いたいのだろう。そして、「テニスが進化する」とあるが、「テニス技術が進化する」とは書いていない。そう、この書籍では、テニス技術はさして進化しない。しかし、著者の伝えたいことを理解できれば、自分のテニスは進化すると思う。

たとえば、「テニスを進化させるまでは充電期間だ」というのは正しいと思う。目の前の結果だけを重視してはいけないという事だ。その通りだと思う。それは、アマチュアだけに許される特権なのだから。(このことは、以前の記事でも書きました。)

この書籍は、とてもまじめにテニスに向かい合っている著者のスタンスがよく見える。文章表現も、とても丁寧で無理がない。(Web等の田中信弥氏の文章と比較するとよく分かるが、この手の書籍には珍しく、誇大な表現や誤った表現のない、平坦で読みやすい文章になってる。)この書籍はおそらく、プロのエディタが編集を担当したと思う。

こんなに良い書籍が出版できるスタンスがあるのであれば、また、これだけの高い技術的・理念的な知識があるのであれば、著者にはぜひ、この書籍の延長線上でのビジネスをしてほしい。それは、著者が何よりも求めている日本のテニスを世界に通じるレベルに押し上げることに通じるからである。

この書籍の印税はすべて、東日本震災のために使われるそうだ。その気持ちと考え、アイデアは素晴らしい。しかし、それは、有償のメルマガ記事を書籍化することとは別の話だと思う。ボランタリーであるからと言って、クオリティーを下げることは許されることではない。それは、プロとしては恥ずかしい行為であり、田中氏自身が嫌う事ではないのか?

両方を読む読者がいるのであるから、メルマガの内容をもっと掘り下げた書籍にするべきであった。その結果が、価格に反映されてもよいではないだろうか。

このあたりに、田中信弥氏の(現在の)人物の限界が見えるような気がして、残念だ。しかし、これから、もっと高いところに立てる可能性がある方であるのは間違いない。それに大いに期待したい。

「テニスを進化させるまでは充電期間だ」という事と「私はこのDVDをみて、すぐに優勝することができました!」という宣伝文句は、両立しない。美しい志と、貧しいビジネス意識ほどの差が、この二つのキャッチフレーズの間にはある。

上記のAmazonの書評では、「この書籍は読む価値がない」というような厳しい意見が複数ある。しかし、私は、この書籍は読む価値がないとは思えない。(メルマガ購読者は別として)私は、この書籍は、テニスを愛する人であれば読むに値する内容であると思う。そして、今一度、テニスにどのようなスタンスで向かうのかを考える良い機会になると思う。

メシールのテニス(81) グランドストロークでは足の仕事は二つあります

グランドストロークにおいて、足には仕事が二つあります。

①ボールの位置まで動く(ステップ)ことと、②スイング(フォワード)を起動することです。①は誰でもよく分かっているのですが、②の仕事をよく忘れてしまいます。しかし、安定したグランドストロークでは、②が大切です。

なぜなら、フォワードスイングを足ではなく、腕で始めてしまうと、スイングに無理が生じます。力任せのスイングは、たいていの場合は、②が正しくできていない時になります。逆に、スイングを軸足からスタートして、腰、腕と動かして(回して)いくと、スムーズで無理のないきれいなスイングになります。

①と②の順序は、おおよそ以下の通りです。

まず、ボールが飛んでくると、①で足のステップワークでボールのところに移動します。最後にステップする足は軸足です。フォアハンドであれば右足、バックハンドでは左足です。軸足を、早めに固定することが大切です。

私は、フォアハンドで、時々、固定する軸足の場所で悩むことがあります。ボールから遠くなりすぎたり近くなりすぎたりして、試合中に、スイングが安定しないことがあるのです。

その場合には、ボールの飛球線上に軸足(右足)を置くことにしています。そうすると、体がボールに近くなりすぎることはあっても、遠くなりすぎることはないからです。近くなりすぎた時には、右足を固定したままで(メシールのテニス(77)で示した真ん中の図)、右脇を締めて、ワイパー系のスイングでボールを打ちます。とりあえず、これで、ミスをせずにボールを打ちかえすことができます。

フォアハンドで、その後左足を踏み出すかどうかは、相手の打ったボールによります。バックハンドも同じです。一般には、よほど深くなく、また高く弾まない「普通の」ボールは、前足を踏み込んで打ちます。逆に、深いボール、跳ね上がるボールは踏み出さずにワイパー系のスイングで打ちます。

さて、右足(バックハンドの場合は左足)を固定したときに「タメ」ができますが、このタメができた後、右足には、もう一仕事してもらわねばなりません。それが、②のスイングの始動です。

スイングを始動するということは、ボールを打ち始めるタイミングを決めることです。それは、極めて重要な仕事です。②は、つまり、ボールを打つタイミングを足に決めさせるという事を意味しています。

なお、注意することは、②はあくまでフォワードスイングの起動(きっかけづくり)だけを足が担当するという事です。スイングそのものは、背筋と肩を作るえもんかけ(=肩甲骨)の回転で行います。

これはとても重要なことですが、同時に難しいことでもあります。特に、これまで、腰や肩、腕でスイングを起動していた場合には、かなりの脳内イメージチェンジが必要となります。タイミングの取り方が変わるのですから、一から練習せねばなりません。

ただし、これは、オフコートでも練習できます。何しろ、足があればよいのですから。頭の中で、向こうからボールが飛んできたとして、足を使ってスイングを起動すればよいのです。いつでもどこでもできる練習です。

なお、①と②の二つの仕事を足にさせると、実は、下半身はかなり疲れます。私の年齢では、翌日(翌々日)に筋肉痛になります。それでも、この仕事は、メシールのテニスでは、どうしても必要なことなのです。

2012年10月26日金曜日

メシールのテニス(80) えもんかけとフォアハンド

Youtubeでとあるテニスのレッスンサイトを見つけました。そこで、面白いことを解説していたのでコートで実践したところ、メシールのテニスっぽかったので紹介します。残念ながらどのサイトだったかわからなくなったので、見つけたらポインタ(URL)を掲載することにします。

そのサイトで言っていたのは、次のようなことです。
  • フォアハンドを打つ際には、両肩が「えもんかけ」になったつもりで打ちなさい。
えもんかけとは、いわゆるハンガーのことです。両肩がハンガーになったつもりで両肩を回転させるのです。
  • その際、両腕は、えもんかけの両端からぶら下がったひもだと思いなさい。
つまり、両腕は「ぶら~ん」とぶら下げて、両肩で回転をしなさいというのです。なるほど、これは道理です。この打ち方により、両腕に力が入らなくなります。また、両肩を回すことで、右手だけでボールをヒットすることを回避できます。同時に、左手をうまく使うことができるようになります。フォアハンドでは、左手の役割が重要です(メシールのテニス(68))。

さらに、これは私のイメージですが、もう一つ付け足そうと思います。

  • 両端からぶら下がったひもが回転時に遠心力で広がらないようにフラフープで押さえておきなさい。
イメージしにくいので、図を掲載しておきます。ひもをぶら下げてえもんかけを回転させると、回転時の遠心力でひもが広がります。これは、脇が開くことにつながります。これを避けるために、大きな輪でひもの広がりを防いでおくわけです。

2012年10月25日木曜日

メシールのテニス(79) フォアハンドの遅い打点について

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

1987年(だったと思います)のジャパンオープン2回戦でメシールと対戦した福井烈が、試合後のインタビューでメシールについて、このように言っていました。

「メシールの(フォアハンド)ストロークは、打点が遅いんです。シロウトさんによくいるでしょ、打ち遅れて打点が後ろになる人。あの感じでボールを打ってくるんです。本当に疲れた。」

メシールのフォアハンドは、薄いグリップ(コンチネンタルかイースタングリップ)です。薄いグリップは打点が後ろだと、よく言います。本当でしょうか?

答えは、①打点が後ろの打ち方と②打点が前の打ち方がある、だと思います。つまり、二つの打ち方を使い分けることができるのです。厚いグリップには①が難しいので、これは、薄いグリップの利点です。

今回は、①について書こうと思います。

①の打法、つまり打点を後ろにするフォアハンドは、それほど難しくありません。もともと、腰のところでラケットを引くわけですから、テイクバックは体の後ろになります。そのままラケットを振り出せば、打点を後ろにすることができます。打点は、「右足の前」になります。

大切な点は、打法ではなく、どのような場合にこの打ち方を使うかです。

メシールのビデオを見ていると、(当然と言えば当然ですが)この打法を常に使うわけではありません。次に示す、いくつかの条件が整ったときに使うようです。
  • 相手のボールが高く跳ね上がるときには使えません。フラット系の低く弾むボールで有効です。
  • 相手のボールが速く、力がある場合に使います。遅いボールの場合は、左足を踏み込んで打点を前にする方がボールに力が乗ります。(打点を後ろにする理由がありません。
コースは打ち分けやすいので、ボールを引き付けて、コースを隠すには有利です。しかし、気を付ける点もいくつかあります。以下の点に注意する必要があります。
  • ボールの打点がほぼ一点しかありません。振り遅れたら「万事休す」です。絶対に振り遅れないこと。
  • ボールに順回転をかけにくいので、どちらかというとフラット系になります。
  • ボールへの力加減が難しいので、ボールが短くなったり、アウトしたりしやすい難点があります。
丁寧に打つ打法ですから、やや右脇を締め気味にするのがよさそうです。腰の回転主導で打つようにします。腕を主体で脇が甘い打ち方では、微妙なコントロールを失いやすくなります。つまり、もともと難しいボールコントロールがますます難しくなります。

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

メシールのテニス(78) フォアハンドの右足とフォワードスイング(多彩なフォアハンドのために)

メシールのテニス(75) フォアハンドの右足で、右足の位置を決めることの重要性を書きました。右足を決めることは、フォワードスイングにも重要です。

右足の位置を決める。そのあと、フォワードスイングをするきっかけ(力)はなんでしょうか。それは、腕の動きではなく、右足の動きです。右足が地面を押し出し、その力で体の回転や重心の移動が発生します。

腕を使うのは、その次です。足の後です。

スイングのタイミングやきっかけは右足がつかさどります。だからこそ、右足の位置を決めることが大切なのです。

その際には、右足を突っ張ってはいけないことはもちろんです。右足に、地面を押すだけの力をためなくてはなりません。右足は柔らかく曲げておくことが必要です。

  1. 右足の位置を決める。膝を柔らかく(足をつっばらない)。
  2. テイクバック(実際には右足の位置を決めながら並行して行う)。
  3. 右足でフォワードスイングを起動。(腕はもちろん、腰の回転で始動しない。)
  4. 腰の回転でフォワードスイング。
  5. 両肩を回転させる。(4と5は実際にはほぼ同時になるでしょう。)
  6. 腕を使い始める。
この手順でフォアハンドスイングをすると、最後の腕の使い方がかなり自由になります。腕が自由なほど、多彩なボールを打つことができるのです。5の両肩の回転については、メシールのテニス(80) えもんかけとフォアハンドをご覧ください。

2012年10月24日水曜日

メシールのテニス(77) スクエアスタンスとオープンスタンス(フォアハンド)


メシールのテニス(75)で、フォアハンドの右足の位置について書きました。その際に、左足は①スクエアスタンスで前方に踏み出して打つ、②オープンスタンスで打つ、の2つの打ち方があることを、図に示しました。図を再掲載します。①が左図、②が中図です。③はNGです。オープンスタンスでは、体重を左足に移動してはいけません。

さて、①の場合と②の場合は、どう使い分ければよいでしょうか。簡単に書くと、①はフラットドライブ系、②はスピン系で使います。②の打ち方について書きます。

②のスピン系は、いわゆるワイパースイングです。1980年代のテニスファンでイメージしやすいのはマッツ・ヴィランデルです。その特徴を整理すると、次の通りです。
  • 右肘をたたんで、右脇を締める。インサイドアウトのスイングワーク。
  • 手首をワイパーのように使う。
  • 右足は柔らかく。突っ張らないように。
  • 左足は、右足よりも後ろでよい。(図を見てください。)
  • 打点は高いところで。頭よりも高いところで打ってもよい。(低いところでは、やや打ちにくいです。)
  • フォロースルーでは右肘を前に突き出す。右手首よりも右肘がネット側に来る(ワイパースイング)。
  • 打ち終わったときの体重は右足にかかる。

メシールのフォアハンドはフラットドライブが目立つので②のような打ち方はしないというイメージがありますが、必ずしもそうではありません。ヴィランデルほどはっきりとしたワイパースイングをしていないだけです。例えば、全仏オープンの様な土のコートでは、この②の打法でフォアハンドを打っています。左足の位置は、図に示すように右足のほぼ横、または少し後ろにあります。

②の打法方の利点は、他にもあります。それは、「高い打点で打ちやすい」という事です。①の打ち方は体重が乗るので重いボールが打てますが、高い打点が苦手です。②は、高い打点が得意な打ち方です。①と②を使い分けることで、ボールの高さに対応することができます。

②のもう一つの利点は、フォア側に振られた時に有利だという事です。なぜなら、打つ時に左足が後ろに残っていますので、打ち終わった時にセンターに戻りやすいのです。①では、そのような対応は容易ではありません。

2012年10月23日火曜日

メシールのテニス(76) フォアハンドの右足と目

メシールのテニス(75) フォアハンドの右で書いた「まず右足の位置を決める」というのは、よい方のバイプロダクト(副産物)があります。それは、「右足を固定することで頭の位置が固定できる。頭の位置が固定することでボールを見ることができる」ということです。

相手のボールが速くなるときに、一番難しいのが「バランスを保つ」ということです。相手のボールがゆるくて時間的余裕があるときは、こちらの体制はいつでも整えることができます。

しかし、早い場合には、バランスを崩されがちです。バランスが崩れると、そのひずみがいろいろなところに出てきます。ボールを最後まで見ることができなくなるというのも、その弊害の一つです。

相手のボールが速くても、まず右足を決める。その上に頭を”のせる”。そして、ボールをヒットするまでボールをしっかりと見る。ボールを見ることは、ラケットの真ん中でボールを打つだけではなく、体全体のバランスを崩さないという意味でも大切です。

右足を固定してボールを見るという習慣は、いつでも練習できます。ショートラリーであっても、遅いボールを打つ相手とのストロークでも、あまり上手ではなくてボールがあちらこちらに散らばる相手とでも、練習はできます。

2012年10月22日月曜日

ラケットインプレッション ダンロップ社NEOMAX2000とバイオミメティックMax200G

ダンロップ社製のNeoMax2000を使い始めて、1年以上が経ちました。とても気に入っていて、ずっと使っています。少し前に、3本目を買ってしまいました。

さて、同じダンロップ社のバイオミメティックMax200Gです。

素材が違うのは分かっていましたが、それ以外のスペックが同じなので、もしかして…と思い、衝動買いしてしまいました。

さて、コートで打ってみた感じは…。

ダンロップ社NEOMAX2000とバイオミメティックMax200Gは別のラケットです!(笑)

他のサイトにもありましたが、バイオミメティックMax200Gは、DUNLOP MAXPLY McENROEのペイントジョブを変えただけ…のような感じがします。打感は、NeoMax2000よりも、はるかに「硬い」感じです。(MAXPLYよりは少しだけ柔らかいかも。)

NeoMax2000の方が、往年のMax200Gの打感に近いのは、おそらく誰もが認めると思います。

メシールのテニス(75) フォアハンドの右足

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

ある一定レベルになると、相手の打つ球は速く、重く、鋭くなります。頭でいろいろ考えている余裕はなくなります。相手が打つ⇒ボールが飛んでくる⇒構える⇒打つ。この間で、フォームがどうのと考える時間はありません。あっという間の出来事です。

したがって、「フォームは完成している」と言う前提で、「ボールがフォア側に飛んできた短い時間に何を考えなくてはいけないか」が、今回のテーマです。

それは、「右足の位置を決める」という事です。その際に、右足を突っ張ってはいけません。「柔らかく右足を決める」のです。

別の記事に書きますが、フォアハンドはオープンスタンスでも打つことができます。フラット系は左足を踏み出し、スピン系は右足を踏み出します。

余談になりますが、オープンスタンスで打つことは、(今のテニスでは)なにも問題ありません。右足を踏み出して打つ(オープンスタンス)のがだめなのではないのです。オープンスタンスで打つのに、体重が右足から左足に移動するのがよくないのです。最後まで右足に体重が乗るならば、オープンスタンスでボールを打ってもよい(むしろその方がよいこともある)のです。

したがって、まず右足を決めると、その後、左足を踏み出すか、そのまま右足体重でオープンスタンスで打つか、どちらでも選択できます。つまり、右足を決めることは、どちらのうち方にも対応できるのです。

右足を決めるというのは、他にも利点があります。位置を決めやすいという事です。簡単に言うと、飛んでくるボールの飛球線に対して、右足の位置を決めてしまえばよいのです。あくまでイメージですが、飛球線上に右足を固定するという感覚がよいかもしれません。(実際には、飛球線に対して右側に右足を置くはずです。)

なにしろ、あるレベル以上になると、ボールと右足の位置関係が少しずれただけで、ボールはとんでもない方向に飛んでいきます。常に、ボールと右足の位置関係を同じにしておきたいのです。(相手のボールが遅いと、簡単に微調整ができるのですが。)

まずは右足の位置を決める。これが、ポイントです。



2012年7月27日金曜日

メシールのテニス(74) アプローチショット

メシールのテニス(73)で、お尻を突き出し、上体を前に倒す事を述べました。これは、アプローチショットにも関わってきます。アプローチショットは、ドライブボールが必須(フラットではボールが落ちないために、ネットまたはバックアウトしやすい)ですので、やはり、上体を倒します。この際、ボールを押し出すのではなく、ボールに回転を書けることが必要です。ラケット面は下を向き、フォワードスイングで右肘が前に出ます。

右肘が出ないと、ボールをフラットに押し出してしまうことになります。手首でこねると、ボールが速く失速してしまいます。

腕を体と一緒に回転させることで、右肘が自然と突き出されるのです。

メシールのテニス(73) 体重のかけ方

メシールのテニス(71)と(72)で述べたフォームについて再考したいと思います。

メシールのテニス(72)では、上体を立たせた打ち方はフラット向きだと書きましたが、厳密にいうと、上体を立てるのはよくありません。左図は、よくない例です。相手のボールが速い時などの例外的なケースを除いては、ボールに順回転を与える方が安定します。特に、相手のボールが遅い場合はフラットでボールを打つと、バックアウトまたはネットする可能性が高いのです。つまり、原則は右側の姿勢が正解です。

重心を後ろ(お尻を突き出す)ことで上体が前に倒れます。あごが体の前に出ます。

この姿勢で構え、そのまま体の軸を回転させてボールをヒットします。図には示しませんが、これにより、いくつかの効果が生まれます。
  • テイクバックで、右肘が体の線よりも後ろに出ない。上体が立つと、胸をそらせることで肘を後ろに引きすぎてしまいます。しかし、肘は、体の線よりも後ろに出ない方がよいのです。メシールのテニス(68)では、右肘が後ろに出ていますが、これは実際には望ましくないのです。上体を前に倒すことで、胸をそらせることができなくなり、腕(肘)は体より前に来ます。図で、頭の位置に注意してください。(左図は胸が反るために頭は背中側にあります。右図は上体を前に傾けるために頭が前に出ています。)

2012年7月9日月曜日

2012ウィンブルドン男子決勝 マレーVSフェデラー

2012年ウィンブルドン男子決勝であるマレーVSフェデラー戦の、リアルタイムレポートです。

第1セット。セットの序盤でフェデラーのマシンはマレーのボールへの調整に時間がかかったが、第3ゲームか第4ゲームあたりから足(フットワークも)の微調整も完了。3-3あたりから、フェデラーペースになってきた。フェデラー4-3からのマレーのサービスゲームがデュースに。マレーは、いいファーストサーブを入れ続けないと苦しい状況に。せっかくのゲームポイントでマレーのドロップショットは拾われる。ショートゲームは、よほどでないとフェデラーには通用しない。フェデラーが再度ブレークされてから、フェデラーはバックハンドをハードヒットする作戦に。第1セットはフェデラーが落としたが、このスタイルの変更が、第2セットにどうつながるのか?


第2セット。フェデラーはバックを強打し続けるが、むしろ、フォアハンドがやや打ち負けてきている。マレーがブレークポイントをここまですべてしのげているのは、まさに英国民の後押しか?マレーは、第2セット、ミスが少ない。本来は、フェデラーの方がミスをしてはいけないのだが、マレーのプレーの堅実さが目立つ。ポイントを取られる時も、最低限の抵抗をしている。自分からミスをしない。一方で、フェデラーの深いボールが、やはりまだアウトする。


解説で言っている通り、マレーのコーチであるレンドルはついにウィンブルドンをとれなかった。マレーの夢は、レンドルの夢でもある。マレー5-6の15-0からのショットは、そんなレンドルの想いがこもっているのかもしれない。その後、30-15から珍しいマレーのミスショット。こうなると、深いボールがアウトになるかインになるか、その違いですべてが決まる。しかし、最後、素晴らしいラリーからフェデラーが一本でセットを取る。先日のジョコビッチの時と同じプレーだ。

フェデラーが強いマレーのハードヒットショットに振り遅れることなく対応した時、予想通り、フェデラーのペースになる。第3セットの最初のマレーのプレーがカギとなる。このフェデラーに翻弄されてしまっているか。それとも、自分のプレーを辛抱強く続けることができるか。ミスさえ減らせば、マレーのプレーはフェデラーに十分に通用する。

第3セット。フェデラーの攻撃が多彩になる。解説の土橋さんが言うように、フェデラーのスピンボールの質がよくなって、ボールがバックアウトしにくくなってきている。マレーは、それに合わせてはいけない。正攻法が一番の攻撃力となる。フェデラーがなどのマレーのサーブでブレークポイントまで追い詰める。しかし、マレーはサーブ力で逃げる。このあたりは、力の勝利だ。クレーコートではありえない展開。しかし最後は、フェデラーが逃げ切った。マレーのファーストがかなりの確率で上がらないと、マレーは苦しい。

第4セット。2‐2からフェデラーがマレーのサーブをブレーク。最後のポイントは、第3セットの最後のポイント同じせめぎ合い。このせめぎ合いになると、フェデラーは世界で一番うまいように思う。最後のフェデラーが放ったバックハンドパッシングショットは、このショットを打つためにフェデラーはいったい何本の練習をしてきたのかと思わせた。何本ラリーが続いても、フェデラーはこのバックハンドショットを必ず打つことができる。マレーは、このままワンブレークで敗れてしまうのだろうか。

第4セットの5-3からのマレーのサーブ。よくキープしたが、そこまで。流れを食い止める雰囲気には全くならず、フェデラーの集中力は決勝でも十分に発揮された。アウエーにもかかわらず、このプレー。素晴らしい王者だと思う。ロジャー・フェデラー。

2012年7月8日日曜日

2012ウィンブルドン男子決勝 マレーVSフェデラー(予想)

マレーとフェデラーの決勝の予想。

グランドスラムはこの何大会か連続で、ジョコビッチとナダルが主役であった。2012年のウィンブルドン、久しぶりにこの主役のいないグランドスラム。しかし、さすがだ。今年の決勝の二人は、主役の代わりに主役になれる二人なのだ。


フェデラーは優勝すると7度目のウィンブルドン優勝となり史上最多となる。しかも、優勝と同時に世界ナンバー1となる。


マレーは、イギリス人として76年ぶりの優勝を狙う。なんと、ポロシャツなどで有名なフレッド・ペリー以来の優勝となるのだ。もちろん、私も、フレッド・ペリーのプレーを見たことがない。


この決勝戦の結果を予想するのは難しい。ロンドンオリンピックを控えて、究極のホームであるマレーにどんな風が吹くのか、予想もつかない。


しかし、この試合のポイントはフェデラーだ。フェデラーが高い集中力で、準決勝のジョコビッチ戦と同じプレーができれば、おそらくマレーは翻弄され、一方的な試合にすらなるかもしれない。具体的には、相手の裏をかくボール配球と、ベースライン辺りへの深い球だ。フェデラーは、おそらく、マレー戦でもジョコビッチ戦と同じ戦法をとるだろう。


マレーが力でフェデラーを抑え込もうとしたときに、それができなかったら・・・。流れは確実にフェデラーにとなる。しかし、それ以外の戦法で、マレーが勝利する筋道が見えないのも確かだ。マレーは、観客の応援を背に、フェデラーのコンピュータが狂い始めるまで攻め続けるしかないだろう。

2012年7月6日金曜日

2012ウィンブルドン男子準決勝 ジョコビッチVSフェデラー

2012ウィンブルドン男子準決勝(ジョコビッチVSフェデラー)は、フェデラーのテニスがすばらしかった。

テニスは、深いボールを打つことが基本だという事を、改めて教えてくれたフェデラーのプレーだった。両者のストロークのボールがバウンドした記録を見たらわかるだろう。フェデラーのボールは、大事なところで深かった。ベースラインから1m以内でバウンドした。

そして、もっと素晴らしいのは、ジョコビッチの深いボールを、フェデラーが必ず対応したことだ。試合前から、ジョコビッチのボールは深いとフェデラーは覚悟していたように見えた。そして、深いボールをミスすることなく、必ず打ち返した。しかも、相手のチャンスボールにならないように。

この点が肝心なところで、フェデラーの深いボールに苦しめられたジョコビッチとの大きな違いだった。

体力的には、フェデラーはもうジョコビッチにはかなわない。しかし、リスクマネージメントにおいては、フェデラーは世界でも群を抜いている。

テニスは、エラーをしたらポイントを取られる。エラーをしたら負ける。しかし、世界のこのクラスでは良いショットを打たなくてはポイントが取れない。フェデラーは、ミスをしない一番ギリギリのところでボールを打つ。これ以上狙ったらエラーになる、そのギリギリのラインだ。

ジョコビッチは、このリスクマネージメントに負けた。自分が打ったよいボールがなぜ返球されるのか、その後も攻めきれないのはなぜか、訳が分からず敗退したに違いない。

限界説も飛び交うフェデラーだが、このテニスを続ける限りはまだ十分に戦える。ただし、心技体がベストの状態で整わないと、このタイトロープを渡るテニスを一試合に渡り継続することはできない。これからもフェデラーの集中がどこまで続くのか。ぜひ見てみたい。

2012年6月11日月曜日

2012全仏オープン男子決勝 短いコメント

ナダルの優勢は変わらないにしても、ジョコビッチの最後のポイントで、トスアップした時に大声を上げた観客は許せない。

最後の数ゲーム、ジョコビッチはサービスで優位に立つしかなった。あそこのファーストサーブは、きわめて大切なポイントだった。

あまりにひどい。ゲームを壊した。テニスが分からない観客は、会場にいないでほしい。

2012年5月19日土曜日

A Happy Birthday! Milo!

A Happy Birthday, Milo. It's your 48th birthday. I really hope I can see you someday, and have a chat on your plays at your younger days...   19th May, 2012.

2012年5月17日木曜日

メシールのテニス(72) フォアハンドの軸足

フォアハンドでは、①右足軸上で体が回転する打ち方と、②右足から左足に体重移動をする打ち方があります。①はフラット系、②はドライブ系になります。メシールは、その2つを相手のボールやサーフェス、ポイントで使い分けています。

①と②で、上体の遣い方がどう違うかをメシールのテニス(71)で書きました。

①は打点が右足の前になり、②は左手の前になります。(左足の前と言ってもよいかも。)打点の場所で使い分けるのがよいかもしれません。もちろん、相手のボールに応じてこの二つの打ち方を使い分けることになります。

自分自身のビデオを観ても、上体が立ったまま体重移動なしにスピン系のボールを打とうとしたり、サーブレシーブで無理にスピン系で打ち返そうとしたりしたときは、如実にミスをしていました。このあたりをきちんと使い分けることができるようになると、技術があがると思います。

①と②の区別の図を再掲しておきます。原則的には②(右図)から①(左図)にシフトする方が簡単ですので、ゲーム中は②で構えておくべきです。右図を見てもらったらわかりますが、まるで、「ど根性ガエル」でぴょん吉がヒロシのシャツを引っ張って前に走っているようなイメージです。この際、頭を前に倒さない(①も②も頭は地面に垂直)ように注意が必要です。

2012年5月16日水曜日

メシールのテニス(71) 上体は地面に垂直でよいか?


グラウンドストロークで、上体は立っているか、傾いているか。メシールのイメージは、上体は常に地面と垂直に立っているというものです。しかし、それは、厳密には正しくありません。メシールは、上体を立てる時とやや傾ける時を使い分けています。

図にあるように、上体が立つのはフラット系のボールを打つ場合(または相手のボールがフラット系の場合)、上体が傾くのはドライブ系のボールを打つ場合(または相手のボールがドライブ系の場合)となります。なお、上体は傾いても、頭は地面と垂直です。

  • 上体が立ってボールを打つ場合
    • 相手のボールが速い(フラット系)の場合
    • サーブレシーブ(相手のセカンドサーブが極端に遅い場合を除く)
    • フラット系のボールを打ちたい場合
    • 右足軸回転でボールを打つ場合(体重移動なし)

  • 上体が傾いてボールを打つ場合
    • 相手のボールが遅い場合
    • 浅いボール・アプローチショット
    • ドライブ系のボールを打ちたい場合
    • 右足から左足に体重移動して打つ場合

上体を傾けてボールを打つ場合(すなわちドライブ系のボールを打つ場合)に、注意することがあります。それは、上体を傾けたままでぼーろを打つということではない、ということです。傾いた上体は、フォワードスイングとともに起きてきて、最後、インパクトでは結局は上体は地面と垂直になります。(その際の左手の遣い方に注意。)

私は、フォアハンドのアプローチショットが苦手でした。スライス系のフォアハンドアプローチショットしか打てないのです。その理由はこれでした。上体立ててボールを打とうとするために、ボールにドライブがかからず、ネット(またはバックアウト)してしまっていたのです。

メシールのテニス(70) グランドストロークでの膝の仕事

フォアハンド(バックハンドも同じ)で、上体の遣い方が正しくできるようであれば、次は下半身です。河畔氏をうまく使うことが、安定したグランドストロークには必須です。

では、下半身の仕事は何でしょうか。

上体の動きは、微調整が効きません。ラケット面が1度でもずれると、相手のコートには入りません。腕でボールとの距離を微調整しようなどと言うことはできません。上体の動きは、ボールに合わせて変えることはできないのです。上体の動きは、いつも一定です。

したがって、微調整は下半身で行うことになります。正しい上体の動き(ラケットスイング)ができるようになると、ボールを安定して返球できるかどうかは下半身の動きによって決まります

まずは、正しい上体の動きを体に身につけます。頭で考えなくても上体が正しく動くまで、体に正しいフォームを覚えこませます。

そうすると、コート上で考えるのは、下半身です。下半身をどう動かすかが、すべてです。「テニスは足ニス」です。足をどう使うかの要点をまとめます。

①ボールが飛んできたら、できるだけ早く、軸足の位置を決めます。右利きでいうと、フォアハンドであれば右足、バックハンドであれば左足です。

②テイクバックでは、膝をダンバーとして使います。膝を柔らかく使うことで、ボールとの距離感の微調整を行うことができます。また、上体のブレを、すべて膝で吸収できます。

③フォワードスイングでは、左手(右利きフォアハンド)が主駆動力ですが、膝の力は副駆動力として使います。同時に、ボールの安定性のためには、この膝をうまく使うことでフォワードスイング時のブレを吸収できます。

②と③の膝が柔らかく使えない(膝が固まる)と、グランドストロークは、途端に不安定になるはずです。これは、ボレーやサービスも同じです。

メシールのテニス(69) サービスの時のトロフィーポーズについて

サービスで、トロフィーポーズは、「タメ」を作るために重要です。しかし、私は、どうしてもこのトロフィーポーズが作れませんでした。左手(トスを上げる方の手)をまっすぐ上に伸ばすと、その後、その左手が体の動きをブロックしてしまってラケットの真ん中にボールが当たらないのです。フォームもバラバラになるのです。

そのため、トスアップで左手がまっすぐ上を向かず、低いところで前に伸びてしまっていました。この不完全なトロフィーポーズでは、体のためができません。サーブがクイックサーブとなってしまい、スピンサーブも打ちにくく、また、サーブが全体に不安定になるという弊害がありました。

これを解決する方法は、トロフィーポーズは一瞬だけ、という原則です。

つまり、トスアップした時には、確かに左手は真上を向きます。しかし、その左手は即座に前に降りてきて、体を回転させる駆動力になります。この、左手による駆動は、フォアハンドの場合と同じです。左手によって、体の回転力を生み出します。

最後、左肩甲骨が張るのも、フォアハンドと同じです。フォアハンドの場合の図はこちらです。

つまり、私のミスは、トスアップの時に左手を上に伸ばしたことではなく、その伸ばした手をそこから前に(即座に)おろしていかなかったことなのです。連続写真や静止画像ではこのトスアップ(トロフィーポーズ)が頻繁に出てくるので、トロフィーポーズをできるだけ長い時間維持したほうがよいのだと、勘違いしていました。

これは、間違いでした。まっすぐにあげた左手を使って体を回転させる。これで、体がスムーズに回転して、スピンのかかった安定したサーブを打つことができるようになります。

これは、スマッシュでも同じことが言えます。

メシールのテニス(68) グランドストローク(フォアハンド)での左手の仕事

図を見てください。フォアハンドでは、テイクバックで、左手が体の前に出てきます。この左手が体の回転を先導することで、フォワードスイングの駆動力になります。さらに、フォワードスイングの最後に、左の肩甲骨が張り出します。左手は、左の腰のあたりに来ます。これは、テイクバックで右の肩甲骨が張り出すのと対称であり、バランスが取れます。

テイクバックで左手が体の前に来る(左図)をすることが、私は苦手でした。ヒットしたボールが、すべて相手のコートのベースラインをオーバーしてしまうのです。フカした感じのボールになってしまうのです。

その理由は、いくつかありました。①テイクバックとフォワードスイングが遅い(⇒ボール飛球に合わせてテイクバックする・ボールがバウンドした時にフォワードスイングを開始する)、②打点が前すぎる(⇒右足の前の一番ボールに力が入る場所で打つ)、③背中が曲がっている(⇒上体を立ててボールを打つ)、④スイングで体が回りきっていない・左手が体の前に残っている(⇒右図のように打った後に左肩甲骨を張る)などができていなかったためです。

フォアハンドでは、どうしても、左手を体の前に置く(左図)が必要です。この左手を、最後に左肩甲骨を張るまで回転することが、スイング(体の軸)の回転を生みます。

左図のように左手を体の前に置くためには、テイクバックで左手でラケットを長く持つことが必要です。「テイクバックは左手で引く」です。

(メシールフォアハンドのGIFアニメーションはこちらです。)

2012年5月6日日曜日

メシールのテニス(67) フォアハンドでは腕に力を入れない

今まで、メシールのフォアハンドの上体の動きを丁寧に追いかけてきました。その分析は、おおよそ的確であったと思っています。私自身、その技術を、数年かけて身に着けてきました。ビデオを観ると、初期のころと現在では、私のフォアハンドは、かなり異なるフォームになっています。つまり、改善され、メシールの技術を身に着けてきているということっです。

コート上では、しかし、それが逆効果になることがあります。正しい上体の動きを身に着けたことが、逆に、正しくボールを打つことができない原因になりえるということです。

それは、膝の使い方です。実際に飛んでくるボールをヒットする際には、上体だけが正しいフォームになっていても、ボールを安定にヒットすることができません。膝の使い方、いわゆるニーワークが必要です。

これは、わかっているようで、実は、大切なことを意味しています。

フォアハンドにおいて、フォワードスイングでは、利き腕(右腕)に力を入れる必要はありません。大げさに書くと、腕には全く力を入れなくてもよいぐらいです。(もちろん、これは比喩ですが、脳内イメージでは、そのぐらいまで腕を脱力してもよいのです。)

ではどこに力が入るか。①膝のばねを使う、②背中(背筋)でボールを打つ、の2点が重要です。さらに、③左手が体を回転させる先導力となります。④ラケットワークでは必ず、ボールを打ち出す方向に押し出します。

上記の①~④だけを考えて、コート上ではボールをヒットすればよいのです。あとは、⑤ボールが飛んでくるのに合わせてテイクバックをし、ボールがバウントしたところからフォワードスイングをスタートする(=振り遅れないように、自らボールを打ちに行く)ことが大切です。また、⑥ボールは右腰で見ます。左手と右腰で体の回転を先導します。①~⑥を守れば、ラケットを振る腕に力を入れる必要はないのです。

今まで、①の膝を使うという点を、明確にはしていませんでした。しかし、よほど打ちやすいボールではない限り、ニーワークなしではボールをヒットする際のアドジャストメント(調整)が困難です。私のミスは、この調整を、上体の正しい動きだけで行おうとしてきた点です。


2012年4月26日木曜日

ラケットインプレッション ダンロップ社NEOMAX2000 (その4)

きっと多くの方が参考にされていると思う増田英明(ますだひであき)さんのラケットインプレサイトで、NEOMAX2000が紹介されましたね。メシールのフラット系とは正反対のプレースタイルの増田さんですが、やはり、このラケットの印象は、他の方々とほぼ同じであるようですね。

スピンがかけづらいラケットですかぁ…私も、そのとおりだと思います。いつも苦労しています!(笑)

「いまだにMAX200GやPRO-2000RIMの感触を追い求められている方はいらっしゃいますか?もしいらっしゃったらかなりビンゴだと思いますが・・・」「はい、まさに私です!(笑)」

NEOMAX3000もインプレ書いてくれないかなあ…。

2012年4月25日水曜日

ラケットインプレッション ダンロップ社NEOMAX2000 (その3)

NEOMAX2000/3000の打ち味というブログ記事を見つけました。しかも、かつてのMAX200Gとの打ち味の比較もしています。その評価は、特にNEOMAX2000とMAX200Gの比較は、私のこれまでの記事(こちらこちら)よりもずっと的確でした。このラケットに興味がある方には、推薦できる文章です。

うらやましくて死にそうです!(笑)

ブラチスラバ在住の日本人の方のブログで、メシールにレストランで会った話を読みました。ああうらやましくて死にそうです!(笑)

2012年再びブラチスラバへ(1) ナショナルテニスセンター訪問はこちら
2012年再びブラチスラバへ(2) ブラチスラバの街はこちら

メシールのテニス(66) ボールを押し出すこととテイクバックを早くとること

フラット系のグランドストローク(メシールのテニス)では、ボールをヒットするときに、ボールを押し出すことがとても大切です。そのイメージは、図に示す通りですので、解説は不要だと思います。このイメージの違いが、結果を左右します。

とくに、体勢が崩されてボールを打つ場合でも、このボールを押し出すイメージだけは守らねばなりません。
右図の誤った場合になるのは、特に、ボールに対する準備が遅い時に顕著です。相手のボールがそれなりの速さの場合です。(遅いボールの場合には、もともと、準備が遅れることがあまりないため。)

ボールに遅れないためには、2点、注意することがあります。

①できるだけ早めに、軸足(フォアハンドだったら右足)を決めること。
②できるだけ早く、テイクバックを完了すること。

①は、どういうことでしょうか。グランドストロークで、自分が打てるところにボールが飛んでくることはめったにありません。これは、走らされて打つという意味ではなく、自分のいる場所のあたりにボールが飛んできた場合でも、体がボールに対して適切な位置関係になるためには、足を動かさねばならないということです。本当に、一歩も動かずにちょうどボールと体の位置関係がよくなるのは、単なる偶然です。

まずは、ボールに対して、軸足をがちっと決めること。これが、ボールをしっかりと打つ(厚い当たりで打つ)ためには必要なことです。相手コートからボールが飛んできた。一番最初に考えることは、まず、そのボールに対する軸足を決めることなのです。

軸足を決める理由は、もちろん、ボールとの位置関係を一定にするためです。ボールに対して近すぎたり遠すぎたりすると、ボールを正しくヒットできなくなる確率は高くなります。できるだけいつも同じスイングでボールを打つためには、できるだけいつもボールと体(=軸足)の距離を一定にせねばなりません。

もう一つの理由は、軸足を早く決めることで、少しでも、②のテイクバックを早くスタートできるからです。軸足を決めずにテイクバックを開始するのは、スイングが不安定になります。(ランニングショットなどの場合は仕方がないですが。いえ、ランニングショットですら、できるだけ、軸足を決めて打った方が安定します。)

②は、実は、私自身が今まで思っていたイメージとちょっと違いました。したがって、ここで、正確に書いておこうと思います。

私は、実は、メシールは、下の左図のような形でボールを待ち、ボールにあわせたタイミングで、さらにテイクバックを取ると思っていました。

相手のボールが遅い場合には、それでも問題がありません。が、一定レベル以上のスピードでは、それでは間に合いません。

したがって、正解は、早く下の右図のようにテイクバックをしてボールを待つ、ということです。そうでないと、スイングがボールに対して遅れてしまいます。つまり、下右図のようでないと、上図のようにボールを押し出すことも間に合わないのです。

もしかしたら、下右図のようにテイクバックすると、待っている間に力が入りすぎるのではないかと心配するかもしれません(実は、私はそう思っていました。)しかし、そんなことはありません。相手のボールがある程度早いという前提の話ですから、この形でボールを待つのはほんの一瞬なのです。待ちすぎて力が入るというようなことは、ありません。また、相手のボールが遅い場合でも、例えばチャンスボールのショットなどは、実は左ではなく右のようにボールを待った方がよいことも、コート上で確認しました。意外に、待っている間に腕に力が入りすぎたりはしないようです。

メシールのテニス(65) ドライブボレーの打ち方

ドライブボレーの打ち方をとある方に教わりました。メシールのテニスとは関係ないのですが、なるほどと思ったので書いておきます。今回も、テニス技術としてはそんなの当り前という話なのかもしれません。

ラケットには、スイートスポット(ボールを打つべきポイント?)があるそうです。中心と、ラケットヘッド側と、ラケットのグリップ側だそうです。

もちろん、通常は、中心のスイートスポットでボールをヒットします。しかし、ドライブボレーは違います。ドライブボレーでは、ラケットヘッド側のスイートスポットでボールを(ひっかけて)打つそうです。これは、私は初耳でした。

さっそく、コート上で試してみました。で、なんと、今まで苦手だったドライブボレーが、どんぴしゃと打てるではないですか。まさに、目からウロコ。

これまでは、(ラケットを振って)ドライブボレーをすると、ネットするかアウトするか。もともと、フラットドライブ系でボールを打つ私は、ボールにドライブをかけることができないので、ドライブボレーは打てないものなのだと思っていました。

しかし、打点を意図的にラケットに先にしてヒットすると、うまく相手のコートに入ります。

どういう原理か、まだ理解できていないのですが、あまりにうまくいくので、まあ、結果オーライだと思うことにしました。(原理を理解するのが大好きなのに、うまくいくことは理屈抜きで取り入れてしまっています(笑)。)

ラケットヘッド側でボールをひっかけて打つ時には、ボールを腰で打つ(フォアハンドは右腰、バックハンドは左腰)と組み合わせると有効です。一度お試しあれ!

ところで、グリップ側のスイートスポットで打つのはどんな場合でしょうか…?ええと…。勉強してきます!!恐らく、ドロップボレーやドロップボールの時ではないかと思っているのですが…。どなたか、教えてください!

2012年4月18日水曜日

メシールのテニス(64) スピンサーブの打ち方


メシールのテニスに限った話ではないのですが、スピンサーブの打ち方について、最近、発見した方法を紹介します。(「そんなの常識!」かも知れませんが。)

一般には、トスを上げたボールのどの場所を打つかということで、スピンサーブやスライスサーブの打ち方を説明することが多いようです。私も試しましたが、どうしても、スライス系の癖が抜けません。(もともと、野球をやっていたので、腕の遣い方がスライスサーブの遣い方になっているからかもしれません。)

で、スピン系サーブが打てないのがどういう理由かというと、どうやら、テイクバックでラケットヘッドを下げた状態の時に、ボールを打つ側のラケット面が自分の背中の方向を向いていること。言い換えると、ラケット面がネットの方向や、まして背中と反対側を向かないこと。

これが、スピンサーブを打つ際のポイントとなります。

ラケット面でイメージしにくければ、右手(利き腕)の手の甲でも構いません。ラケットヘッドを背中で落としたときに、手の甲が、背中に対して外を向かなくてはなりません。手首を折ってしまい、背中の方向を向いてはいけません。

そのためには、右手の肘を高く(上向きに)上げることが有効です。右脇を大きく開いて、肘を高く上に突き出すと、右手の甲は外を向きやすくなります。

後は、そのまま打つだけです。腕は斜め(野球でいうところのスリークオーター)にはならず、スライスボールにはなりません。スイングが「縦振り」になりますので、スピンサーブが打ちやすくなります。というよりも、自ら、スライス系では打てないフォームを選んでいることになります。スライスサーブは、逆に、この方法では打てないはずです。

後は、どれだけ強くボールを打つかです。強く打てば打つほど、ボールのスピン量は増えることになります。

2012年4月17日火曜日

メシールのテニス(63) バックハンドの基本

珍しく、バックハンドについてです。しかも、とても基本的なことです。

今日、気が付きました。バックハンド(右利き)は、左手でスイングするのです。言い換えると、左手でスイングをして、左手でボールを押し込んでいきます。微妙なコントロールも、左手で振る感覚で作るのです。

私は、今日、それに気が付きました。今まで、どういう感覚でボールを打っていたのだろうかと思うぐらい、ボールを自分のペースで打ちやすくなりました。特に、早いサーブのリターンでは、今までは面を作って押し出すだけだったのが、ある程度、ボールコントロールもできます。

もちろん、これは、メシールのような左手主導型の両手バックハンドの場合の話です。右手主導型の場合は、別になります。

2012年4月8日日曜日

メシールのテニス(62) 早いテイクバックと力が入る打点

メシールのテニスについて、フォアハンドを中心に、そのフォームについて述べてきました。

そろそろ、(私のレベルアップに合わせて)フォームからコート上でのボールの打ち方に、話題をシフトしたいと思います。これは、つまり、話題がメシールのテニスから、一般的なものになってくるということです。メシールのテニスは、フォームは独特なところがありますが、コート上でのボールを打つ技術は、テニス共通だからです。

メシールのテニスでは、早いテイクバックが大切です。いや、どんなテニスでも、速いテイクバックが必要です。

テイクバックが遅くならない方法として、以前、ボールに合わせてラケットを引くということを書きました。まさにこれです。ボールが飛んでくるのに合わせてラケットを引き、バウンドするタイミングでフォワードスイングを開始します。

ここで大切なことは、相手に走らされて打つ場合でも、同じだということです。この場合、走るという行為とテイクバックという行為を、同時に行うことになります。走る(ボールに追いつく)方に集中してしまいがちですが、ボールに合わせてテイクバックを取ることを忘れてはいけません。

(ちなみに、私は、フォアハンドでこれを忘れることが多いので、フォアサイドに走らされて打つショットが苦手です。)

さて、インパクトです。上のように時間的余裕をもってテイクバックを取った場合には、一番力が入る場所でボールをヒットしましょう。メシールのような薄めのフォアハンドグリップでは、力が入る打点は、比較的後ろの方です。前回の「フォアハンドは右腰で打つ」の理屈から言うと、力が入るポイントは右足のつま先の延長線上です。

厚いグリップの打ち方と比べると、ずいぶんと後ろになります。が、それでよいのです。一番力が入る打点で、しっかりと厚い当たりのボールを打つことが、何より大切です。

2012年4月7日土曜日

メシールのテニス(61) 腰でボールを見る

あなたの方にボールが飛んできた。さて、あなたは、どこでボールを見ますか?

目という答はもちろん正解ですが、そういう意味ではありません。

体のどの部分でボールを意識しますか、ということです。

正解は、腰です。フォアハンドは右腰。バックハンドは左腰。

そして、ボールを打つためのフォワードパワーも、腰です。腰で、ボールを打つのです。

これは、メシールのテニスだけではありません。テニスにおける、グランドストロークの基本です。

2012年4月4日水曜日

Dunlop Biomimetic Max 200G

あまりギアの事を書かないこのブログですが、私のお気に入りのラケットであるNEOMAX 2000Gの対抗馬(?)が登場しました。しかも、同じDunlop社から。

Dunlop Biomimetic Max 200Gです。

以前から、ネット上でもこのラケットをマッケンロー(今の)が使っている写真と一緒に掲載され、「近い将来、MAX 200Gの後継機種が登場か」と書かれていました。その機種が、いよいよ登場したということでしょうか。

使ってみたい…と思っているのですが、NEOMAX 2000Gとおなじなのでしょうか。違うのでしょうか。ラケットフェースは98インチと共通ですが、Dunlop Biomimetic Max 200GはComposition: HM6 Carbon/Aerogel/Graphiteと、素材は異なるようです。

以前、Dunlopから出たMaxply McEnroeが、MAX 200Gとは全く異なるラケットでがっかりした経験があるので、今回も、予断を許さないような気がします。(とはいえ、今回は、はっきりとMAX 200Gとネーミングしたのですから、さすがに、Maxplyよりは…。)

2012年4月1日日曜日

50歳を前にまだ上達できるということの素晴らしさ

私事(わたくしごと)ですが、現在、48歳です。すでに、若いころの柔軟さはなく、50肩に悩まされながら、しょっちゅう足がつりながら、毎週のようにラケットを持ってコートに立っています。

シングルスをすることが多い(テニス日記はこちら)ですが、相手の多くは30代か、40代前半の人です。私よりも若い人たちが、軽いラケットを使って、スピンが効いたボールを、ベースラインから打ちあいます。その中に、重いラケットを持って、フラット系の私が、しなやかさを失った体で挑んでいきます。

今日、私は、先日、負けた相手とゲームをしました。今日は勝ったのですが、勝ち負けではなく、とても感動したことがありました。

私は、まだ、上達しているのです!

先日、負けた時には、思うように打てずに負けてしまいました。しかし、今日は、明らかに、自分のイメージでボールが打てています。少しずつ、本当に少しずつですが、このブログ(メシールのテニス)で考えてきたことが、実現できるようになりつつあります。

50歳を前に、私のテニスは、まだ上達しているのです!

この年齢は、普通は、スポーツの世界では、プロはもちろんですが、アマチュアスポーツであっても、下降線をたどる年齢だと思います。ゴルフなどと違って、体全体を動かすスポーツですから、年齢を重ねて体が動きにくくなってくるのは、不利であるはずです。今までは勝っていた相手に勝てなくなる…という年齢です。

しかし、私は、まだ、今まで負けていた相手に勝てることがある。つまり、上達しているのです。このブログ(メシールのテニス)で書き続けている通り、日々、メシールのテニスを研究し、それをコート上で実現しようとしてきました。そして、たしかに、私は一つずつ、長い時間をかけて、技術を身に着けてきています。一歩ずつ、前に進んでいます。

体力は、体の動きは、これからも下降線をたどり続けるでしょう。しかし、並行して、私はメシールのテニスを研究し続けます。その結果、技術はまだまだ、身に着くと信じています。このマイナスとプラス。どちらが上回るのか。私は信じています。メシールのテニスは、たとえ身体的には動きが悪くなったとしても、十分に通用するテニスであると。だから、私は、まだまだ上達できると。

50歳でもまだ上達できる。とても素晴らしいことに思えるのです。

2012年3月29日木曜日

メシールのテニス(60) 再びフォアハンドの基本(テイクバックでのタイミングの取り方 その2)

テイクバックでのタイミングの取り方は、メシールのフォアハンドでは、意外に難しいのです。実は、メシールのフォアハンドテイクバックは、2段階から構成されます。

メシールのテニス(59)で書いた大きなテイクバックと、その後の小さなテイクバックです。

相手のボールが遅くて余裕があるときには、メシールのテニス(59)で書いた大きなテイクバックを取ります。相手のボールが速くて余裕がない時には、大きなテイクバックを取る時間的余裕がありません。

どちらの場合にも、小さなテイクバックを取ります。小さなテイクバックというのは、拳銃の引き金のように、ボールを打つ直前に、体(肩)を時計方向(ボールをヒットするのと逆方向)にひねります。その反動で体は時計反対方向(フォアハンドを打つ方向)に回転し、その勢いでボールを打ちます。

この小さなテイクバックは、ショートラリーの時でも、速いサーブのリターンでも、行います。(メシールのフォアハンドリターンでは、速いサーブの場合であっても、小さなテイクバックなしのブロックでリターンしてはいけません。)

小さなテイクバックでは、背筋を使います。
小さなテイクバックでは、自然と左腕が先導します。

2012年3月27日火曜日

メシールのテニス(59) 再びフォアハンドの基本(テイクバックでのタイミングの取り方 その1)

フォアハンドストロークを改造中です。年がら年中改造中なのですが、マイナーバージョンアップではなく、メジャーバージョンアップです。

どこを改造中か。

テイクバックを大きくとり、大きくスイングするフォームに改造中なのです。

メシールのフォアハンドのイメージは、小さなテイクバックでラケット面を作り、ボールを運ぶように打つというものですが、実はこれは、全く間違いです。

確かに、多くのスピン系プレーヤーほどの大きなテイクバックではないですが、しかし、たとえばコナーズやマッケンローのような小さなテイクバックで、ブロックするようなフォアハンドとは、本質的に異なります。

小さなテイクバックのフォアハンドには、スイングを相手のボールに合わせる必要がないという利点があります。テニススクールでよく言う「ボールが飛んできたら、早くラケットを引きましょう」という必要がないのです。

スピン系プレーヤーは、ボールに合わせて大きくテイクバックを取りますので、「早くラケットを引いてボールに合わせてスイングする」というのは、基本中の基本です。

メシールのようなフラット系フォアハンドは、フラットであるにもかかわらず(コナーズやマッケンローと違って)ボールに合わせてラケットを引く必要があるのです。そこが盲点で、このことに、案外気が付かないものです。

メシールのフォアハンドでは、「早めにラケットを引き、テイクバックのタイミングを、ボールを打つタイミングに合わせる」打ち方がポイントになります。

つまり、「スイングでタイミングを取る」ことが必要なのです。

そのために、いくつか気を付ける点があります。これまでにも何度も書いていることもありますが、まとめてみます。

1)ボールの飛球線に対して、体を十分に左側に持ってくること。テイクバックでは、両肩を結ぶ線とボールの飛球線が平行になるイメージです。

2)体の中心を背中の腰骨あたりにおくこと。背筋でもなく、足でもありません。意識を、腰骨に置くのです。これにより、背筋でボールを打つことと、上体を寝かさないことが、無意識にできるようになります。

この1)と2)は、同時にフォワードスイングを左手で主導することができるようになるという点で有効です。フォワードスイングは、絶対に、どうしても、左手の先導(船頭?)が必要です。右腕でボールを打つと、右腕に推進力とコントロールの2つの役目を負わせることになり、その分だけコントロールが不安定になります。

上記の1)と2)に加えて、「早くラケットを引きテイクバックでタイミングを調整する」「ボールをヒットする際に左足を踏み出す」などを加えることで、きれいで無駄のない、力の入らないフォアハンドストロークが完成します。

そうです、スイング中には腕に力が入ってはいけません。

腕に力が入らないためには、①レディーポジション(テイクバックでも)で肩の力を抜く、②ラケットを両手で持ち、できるだけ下の方で構える(腕をだらんと下げる)などが重要です。②は、より正確に書くと、へその前に両手のグリップを置くということです。常に、右手と左手は、へその前になります。

これにより、スイング中に背筋をたっぷり使い、できるだけ腕の力を使わないスイングが完成します。試合(ゲーム)でこの打ち方をするのはなかなか勇気がいるのですが、練習で意識することで、このような打ち方が段だできるようになるのです(なるはずです・・・)。

上記のすべてが、無意識にできるようになった時に、この、メジャーバージョンアップは完成と言ってもよいでしょう。それは、メシールのフォアハンドの完成に、限りなく近いのではないかと思います。

メシールのテニス(58) ドロップボールの処理(フォアハンド)

メシールのテニスの特長(特徴?)の一つは、ラケットが(異様に)重いということです。重いラケットでボールにパワーを与えます。メシールのテニスを目指す私のラケットは400gですが、もう少し重くてもいいかなという感じです。そのせいで、よく、周りの人に「軽く打っているように見えるのにボールが重い」と言われます。

これは、重いラケットの利点の一つです。しかし、重いラケットには、弊害もあります。その弊害の一つが、ネット際のドロップボールの処理です。

軽いラケットで強いスピンをかけて打つプレーヤーであれば、ネット際のボールをスピン系で強く、深く打つことができるでしょう。

しかし、私のようなフラット系でしかも重いラケットでは、速くラケットを振る(しかも、ボール進行方向に垂直に振る)ことは難しいのです。

その結果、ボールの処理は、どうしてもスライス系になり、ボールの滞空時間が長くなります。相手が、私の頭の上をロブで抜くには、絶好のボールになってしまいます。

ドロップボールをドロップボールで返すというのも一つの方法ですが、ボールに十分に追いついていない場合には、自分のネットに向かう勢いがボールのスピードを殺すことを難しくします。悲しいかな、年齢を重ねると、脚力もだんだんと衰えてきます。(歳をとってもドロップボールを打つことはできますが、拾うのが難しくなるのです…。)

さて、ではどのような対策があり得るのか。正直なところ、よく分かりません。

今、考え着くのは、次のいくつかの方法です。

1)できるだけ長く左手でラケットを持つこと。これにより、走りながらでもラケット面がぐらつきにくく、ボールを思う場所に運ぶことができる。
2)品位に欠けるのでいやなのですが、ラケットを短く持つ。これで、ボールをコントロールしやすくなります。
3)ボールの飛球線に対して、体を十分に外に持ってくること。ボールの打点が後ろになるので、その分だけ時間を稼ぐことができ、また、ボールの方向を隠すこともできます。

1)~3)のどれが有効なのか。今度、テニスコートで試してみます。

メシールのテニス(57) グリップの握り方(フォアハンド)

たかがフォアハンド・・・なのに、いくらでも書くことがあります。不思議です。

今回は、グリップの握り方について書きます。

皆さんは、フォアハンドグリップで、小指の外側に、どの程度ラケットエンドを余らせているでしょうか。または、どのぐらい、グリップエンドいっぱいまで握っているでしょうか。

現役時代のメシールのラケットは、驚くほど重かったそうです。私は、日本人男性としては平均か少し小柄な方(身長は168㎝)ですが、それでも、400gぐらいのラケットを使っています。おそらく、メシールは、450gとか、もしかしたら500gとかだったのではないかと思っています。(メシールの使っていたラケット、目の前にあったのに、ガラスの中でした。持ってみたかった…。)

私は、メシールは、ボルグと同じように、ラケットエンドを手で包み込むようにもって、ラケットの重さを最大限使って、遠心力でボールを加速してヒットしていると思っていました。ボルグのそして、自分でも、同じようにラケットエンドが小指の付け根あたりにあたるぐらい(=ラケットエンドが掌の中に来る)ように、フォアハンドグリップを握っていました。

しかし、あまりにボールが不安定であったため、ふと、逆に、少しだけグリップエンドを余してラケットを持ってみたのです。で、試にコートでボールを打ってみたら…。

驚きました。ボールのコントロール性がとんでもなく良くなったのです。手首はあまり使えなくなりましたが、手のひらの小指と薬指の付け根あたりがしっかりとラケットグリップ面を感じて、スイングでラケット面のぐらつきがはるかに少なくなったのです。

極端に言うと、ボールを打つ時に、ほぼ思ったところにボールを運ぶことができる感じ…というと、言い過ぎかもしれませんが、それに近い感じです。特に、ネットを挟んでのショートラリーで、その効果がはっきりとわかります。

手首を使ってヘッドスピードを出すことができなくなったために、心なしかボールスピードは落ちたかもしれません。しかし、その代わりに得たフォアハンドストロークの安定感は、多少のスピードを犠牲にするだけの価値があるモノでした。(もともと、ラケットが十分に重いので、その程度のヘッドスピードの犠牲は、たいしたことはないと思います。)

今まで、どうして、こんなことに気が付かなかったのか、不思議でしょうがありません。どこか、ボルグのフォアハンドのイメージが頭にあったのでしょうか。

もしかしたら、現役時代のメシールのフォアハンドは、ボルグと同じグリップの握り方だったのかもしれません。もしそうだとして、私は、この握り方については、自分の見つけた握り方で打ちます。メシールのテニスは、100%メシールをコピーすることが大切なのではありません。それほどまでに、今回の発見は、“目からうろこ”でした。

2012年2月9日木曜日

2012年再びブラチスラバへ(2) ブラチスラバの街

2012年再びブラチスラバへ(1) ナショナルテニスセンター訪問の続編です。今回は、テニスとは関係のない、ブラチスラバの街の様子についてです。以前(2011年)にもレポートしているので、重なる内容も多いのですが…。

まずは、ナショナルテニスセンターそばの道路で撮影した写真です。目立つビルがありますが、何のビルなのでしょうか。


写真ではわからないと思いますが、実は、すごく寒かったです。寒くて寒くて、よく市民は道を歩いているなあと感心しました。私も結構な防寒装備だったのですが…。


こうやって写真を並べただけでは、あの寒さが全然伝わらないのが不思議です。これで、-8度ぐらいだそうなので、もっと寒いとどうなるのでしょうか。ナショナルテニスセンターは、この写真の左の方にあります。左前方に照明が見えますが、これは、サッカー場の照明です。おそらく、ブラチスラバで(ということはスロバキアで)一番大きなスタジアムだと思います。


写真をいくら並べても、あの寒さは伝わらないですね。こんな寒い街で生活をしている人たちの暮らしはどんななのだろうと、ふと思いました。


時間が前後するのですが、上の写真は、夜のブラチスラバの街の様子です。ナショナルテニスセンターのそばの電停で撮影しました。街は、特別な場所を除くと、いや、一番賑やかなところですら、こんな感じです。暗くて静かで…。言い換えると、街中にはにぎやかなところはない、と言ってもよいかもしれません。どんな街でも、人が、若者がたむろして騒いでいる場所があると思うのですが、ブラチスラバには、少なくとも建物の外には、そんな場所がないのではないかと思います。これも、気温が低く、寒いからでしょうか…?それだけではなく、スロバキアの人の気質のようにも思うのです。

時間になったので、ブラチスラバ中央駅(Railway Station)に戻りました。実は、前回も同じ体験をしているのですが、駅になかなか戻れないのです。市内にはバスと路面電車が走っているのですが、路線が複雑で、しかもマップにすべての電停名が入っていないので…どこで何に乗り換えたらよいのかが分からない。悪戦苦闘して、車内で声をかけてくれたおばさん(ありがとうございました!)に助けてもらったりしながら、2回乗り換えて、なんとか駅に向かうことができました。(201とか206とかいう駅を通る巡回路線があるのは、京都みたいですね(笑)。)


下の写真は、やっとたどり着いた、ブラチスラバ中央駅の駅舎の様子です。ええと…一つの国の首都の中央駅で、こんなに小さな駅は、珍しいのではないでしょうか。日本でいえば、金沢駅の方がはるかに大きい駅です。比較するなら、愛媛の松山駅ぐらいの感じです。(松山市で一番賑やかなのは、実は、私鉄の松山市駅です。)



プラットホームの数も少なく(6番線までだったように思います)、電車の本数も上の写真ような感じです。REX 22:46というのがありますが、私が乗ったのはひとつ前の便(左側で、写真で見づらい)で、20:46発です。この時間は、ウィーンへの便は2時間に1本ということになります。そして、駅を発車する本数も、全部あわせても1時間に3,4本程度だということが分かると思います。


時間が余ってしまい、駅舎の2階の待合室で、1時間ぐらい待つことになりました。上の写真は、待合室の入り口です。時差ボケですぐに眠くなってしまい、椅子に座ってうとうとしていると…、警察官が来て私を起こし、「寝てはいけない、切符を見せなさい」と。どうして寝てはいけないのかよく分かりませんでしたが、ホームレス対策なのでしょうか?そういえば、ブラチスラバでは、ホームレスを見かけることはありませんでした。(ウィーンでは見かけました。)もちろん、この寒さでは、道で生活することは絶対にできませんが…。



上の写真は、駅の外の様子です。駅の周りも、暗くてさびしいのです。やはり、JR松山駅前を思い出しました。(繰り返しますが、松山市駅前は、にぎやかです。)しかも、「暗い」のです。この感じは、これまでに私が行ったことがある街でいうと、ウクライナのキエフやドイツのベルリン(ただし、旧東ドイツ側)を思い出します。旧共産圏の街は、どこも、この「暗さ」が夜になると際立ちます。(キエフは、にぎやかなところはそんなには暗くなかったかもしれません。)



さて、ウィーンに帰る電車(REX)に乗りました。(ウィーンからブラチスラバに入ったのです。)約50分の小旅行です。REXの中の様子。お客さんは多くはありませんでした。途中で二回も「切符拝見」をされましたが、どうやら、スロバキアとオーストリアと、乗務員が代わるようです。

二つの国の首都を移動することを考えると、あまりにも短い列車の旅ですね。17ユーロの往復チケットで、片道1時間足らず。大阪・名古屋間よりも近い首都間の旅でした。

ウィーンからの日帰りのブラチスラバ訪問ですが、スロバキアでは、日本人はもちろん、アジア人を見かけることもありませんでした。日本からは遠い国、スロバキアです。帰りの電車の中では、現地の人に「ニイハオ」と声をかけられました(笑)。

2012年2月8日水曜日

2012年再びブラチスラバへ(1) ナショナルテニスセンター訪問


2012年再びブラチスラバへ(2) はこちら


昨年も訪れたスロバキアの首都ブラチスラバに、今年も来ました。ブラチスラバ駅の待合室は、Free WiFiがあるので、持参したラップトップPCをインターネット接続して、待合室で書いています。つまり、まだ、これを書いている今、まだ、ブラチスラバにいます。

今回、ブラチスラバのナショナルテニスセンターである、Sibamac Arena(アリーナ)に行ってきました。スロバキアのテニスの中心的な会場です。下の写真はアリーナの外観です。写真からではわかりにくいと思いますが、気温は-8度で、「耳が切れるほど寒い」という言葉がぴったりの寒さでした。バスを降りて会場まで歩く間、本当に耳が切れるかと思いました。



アリーナの建物の中は複数階になっていて、外から見た以上に大きな建物でした。で、それぞれの階にテニスコートがありました。特に1階は、観客席がある多目的会場があり、今日はバトミントンで使っていました。イベントがあるときは、イベント会場になりそうです。

今日は2012年2月7日なのですが、実は2月4日~5日に、FedCupがあったようなのです。(日本でも同じ日にやっていましたね。ちなみに、日本が勝った相手は、紛らわしいですが、スロベニアです。スロバキアではありません。)

下の写真にあるように、アリーナの2階にもテニスコートがあります。2階だけで、全部で5、6面あり、ハード(カーペットかも?)のサーフェスでした。一般の人がテニスを楽しんでいましたが、平日の午後(夜ではない)ですので、特別な人たちなのかもしれません。ジュニアが練習しているコートもありました。



下の写真は、アリーナのすぐ横のテニスコートです。かなりの面数があり、雪のない季節には練習や試合をしているのだと思います。ほとんどのコートは雪をかぶって使えない状態ですが、数面だけ、エアドームになっているコートがありました。おそらく、エアドームは雪の季節だけ使っているのだと思います。コートの中をのぞいてみましたが、ジュニアや一般の人たちが練習をしていました。スロバキアでは、テニスがどのぐらいポピュラーなスポーツなのかはわかりませんが、この寒い中でも、平日の昼間からテニスを楽しむ人がいることは、間違いなさそうです。エアドームは、写真で分かりませんが向こう側にも1つあり、全部で2つでした。エアドームの中は、下の写真のような感じで、屋根は低いですが、テニスは十分にできる広さでした。

敷地内のコートのそばに、小さな、4階建てか5階建ての建物があります。よく分らないのですが、どうも、スロバキアのテニス協会の建物のようなのです。言葉がわからないのですが、事務室(事務局?)のような部屋があり、「もしかしてこの部屋の中に…」などという、もう、全くミーハーな気持ちになったりもしました。



この建物の2階にはレストラン(パブという方が正しいかも)があり、10時から22時まで(こんな事務局ようなビルの中で、ずいぶんと遅くまでやっているレストランですね)と開いていたので、入って、ビールを飲んで店内をうろうろしてみました。テニスの写真やラケットなどが飾ってある中で、ふと見ると、ミロスラフ・メシールが使っていたラケットが、サイン入りで飾ってありました。ガットが切れているので、使い終わったものを”寄付”したのでしょう。




他にも、いろいろな選手のラケットがサインと一緒に展示してありましたが、このラケットだけがガラスケースに入っていました。やはり、どうやら、メシールは、今でもこの国のテニス関係者の中では、今でも特別な存在のようです。それはそうですね。オリンピックで優勝したという実績は、スロバキアのテニス選手としては異彩を放っているでしょうから。ネット上で、以前、テニスの大会のストリンガー経験者が、「メシールのラケットは、異様なほど重かった」と書いているのを見たことがあります。私自身は今、400gぐらいの重さのラケットを使っているのですが、メシールのラケットがどれほど重いのか、体験してみたかったのですが、残念です。

廊下には、上のようなこんな「おふざけ」ポスターがありました。現役を引退してずいぶんになるメシールが、いまだ「センター」にいるのは、逆にちょっとさびしいようにも思います。おそらく、今でも、スロバキアテニス界の精神的支柱になっているのでしょう。



さて、アリーナの中です。いろいろな展示がありましたが、貢献が大きかった人の名前のパネル(表彰者パネルのようなもの?)があり、もちろん、ミロスラフ・メシールの名前もあります。また、アリーナの1階には、表彰パネルの他にもテニスショップ(なぜかボルクルのラケットばかり売っていました)やレストランがありました。stageというそのレストランで、一人で夕食を食べました。


スープは、以前も書いたことがありますが、まずいわけではないのですが、家庭で作ったようなあまり工夫のない、シンプルなコンソメの味付けのスープでした。(この、細い麺と人参が入った野菜スープは、スロバキアのポピュラーなスープの一つのようです。ゼレニノヴァー・ポリエウカ (Zeleninová polievka)という名前だそうです。)ネットで見ると、スロバキアではカプストニカ(Kapustnica)という燻製の豚肉ソーセージ、キャベツ、きのこの入った温かいスープが有名だとか。食べ損ねました。



メインディッシュはサーモンにしたのですが、こちらは料理に工夫があり、とてもおいしく、また量も多かったです。(下の写真ではあまり大きく見えませんが、このサーモン、結構な分量がありました。)ただ、これは特にスロバキアの料理というわけではなさそうです。


ビールもあわせて、17ユーロぐらいでした。

(2)ブラチスラバの街に続く。