2013年2月13日水曜日

Mecir's Tennis (131) 右足とラケットの同期(2)

「右足とラケットの同期(1)」で、テイクバックで右足とラケット(面)を同期させることを書きました。これは、「テイクバックは弓矢の原理」で書いたことと関係します。

つまり、ラケット面と右足が平行になっていると、 ラケットの先と右足つま先が平行になります。

この形は、テイクバックからフォロースルーの間、できるだけ保たれることが望ましいのです。それは、いろいろなメリットがあります。
  • 足の力がラケットに伝わりやすい
  • 足がラケット面の微妙な向きをコントロールしやすい
  • 足でラケットを振るタイミングをコントロールしやすい
いずれにしても、腕ではなく足に仕事をさせることができます。腕の力をできるだけ抜いて、足がステップワークとラケットのスイング(とくにフォワードスイング)をコントロールできるほうが、より安定したストロークになるのです。

2013年2月11日月曜日

Mecir's Tennis (130) イマジネーションと最初の一歩目


テニスコート上でいろいろな人とゲームをすると、試合前の練習である程度は技術力が分かってきます。以前書きましたが、試合の時にはこの情報は大切で、まずは相手の技量を類推して、それに応じた(簡単な)ゲームプランをたてます。

相手の技量はそのフォームである程度分かるのですが、時々、「フォームはそれほど高い技術や経験があるように見えないのに、ゲームになると勝てない」という場合があります。ボールを打つフォームはぎこちないので「この相手は大丈夫」と思っていたら、ボールがしっかり返ってくるという場合です。

こういうタイプのプレーヤーには、共通した傾向があります。
  • 年齢的に若い。
  • 足がよく動く。
  • 無理をしない。
  • ボールに向かう姿勢が真摯。
特に大切なのが足(フットワーク)です。フォームはぎこちなくても、体のバランスが崩れないのでボールがちゃんと返ってくるのです。こういう相手は、意外に強い。

テニスは足ニスと言います。フットワークが大切だという事は、誰もが知っています。でも、フットワークとはなんでしょうか。やみくもに足を動かせばよいのでしょうか。

足がきちんと(というよりもやたらと)動いているのに、どちらかというと無駄にフットワークを使っている人がいます。一見「格好良い」のですが、球際には弱い感じのプレーヤーです。

フットワークでいくつか大切なことがありますが、その一つは「一歩目の早さ」です。「速い」ことよりも「早い」ことが大切です。

プレーヤーは、相手がボールを打った瞬間からが「自分がボールを打つ番」となります。その準備が遅れるために、よいボール・安定したボールを打てないプレーヤーが、アマチュアには多いのです。

では、とにかく「早く一歩目を動かせばよい」のか?そうでもありません。

正しくない一歩目は、それを修正するのに時間がかかるために、逆にロスが大きくなります。だったら、一歩目を遅らせた方がよいぐらいです。

正しい一歩目を少しでも早くスタートする。これが大切です。そのためには、何が必要なのか。

イマジネーションです。

相手がボールを打った瞬間に、プレーヤーはそれがどんなボールで、自分はどんなふうにそのボールを打つのかを、イメージせねばなりません。そのイメージが早ければ早いほど、また正しければ正しいほど、プレーヤーは有利になります。そして、そのイメージに合わせて、一歩目を少しでも早くスタートするのです。

この練習は、コートの外でもできます。例えば、テニスの試合をテレビで見て、選手の背中からの映像の場合などには一歩目のイメージを頭の中で作る練習をすればよいのです。この一歩目ができるプレーヤーは、スイングやフォームが多少ぎこちなくても、必ず、よいゲームができるはずです。

2013年2月9日土曜日

Mecir's Tennis (129) バウンドする地点を指さそう(その4)

フォアハンドで、ボールがバウンドするときに、左手(右利き)でボールを指さす(肘さす)ことを書きました。そのタイミングで、足はどうでしょうか?

フォアハンドの効き足である右足についてです。

状態(腕)だけではなく、足を「きめる」タイミングにも、ボールのバウンドは使えます。つまり、ボールがバウンドするときに、右足をの位置を決めるのです。

同時に、このタイミングで右足を軽く曲げるのも有効です。リズムをとる、わけです。リズムが取れ、右足に(フォワードスイングのための)パワーをためることもできます。

フラットドライブ系ボールはボールの進行方向側への力をそのまま打ち返すので、スイングのパワーよりも正確性が重要になります。(スピン系は、さらに上下方向に逆向き(下向きを上向き)にボールに力を加える分だけ、スイングにパワーが必要です。)

したがって、右足にパワーをため込む必要はないですが、しかし、リズムをとることや、ボールを打ち返すためのパワーが右足に必要になります。

右足のリズム・タイミングとパワーを、ボールがバウンドするタイミングでとることは有効です。

2013年2月8日金曜日

Mecir's Tennis (128) バウンドする地点を指さそう(その3)

バウンドする地点を指さそう(その1)と(その2)で、フォアハンドでは、ボールがバウンドするタイミングで、バウンドした場所を指さす(肘さす)のが有効だと書きました。

どうしてかな…と考えていた時に、気が付いたことがあります。

もちろん、一番の理由は、タイミングがとりやすいからです。バウンドのタイミングとフォワードスイング開始のタイミングを一致させることで、いつも同じタイミングでボールを打つことができます。

一般に、イースタンなどの薄めのグリップはフォアハンドが不安定になりやすい傾向にあります。ちょっとしたずれがボールコントロールに影響しますので、タイミングを一定に保つことは大切です。

それとは別に、ボールがバウンドするタイミングを使うことが有効な理由があります。

それは、「バウンドする瞬間にボールの進行方向への速度は必ず落ちる」からです。トップスピンであろうが、スライスであろうが、進行方向の速度は必ず低下します。

つまり、バウンドのタイミングを使うということは、ボールの速度が遅くなるタイミングを使うということです。これは、ボールを打つ側にとってはタイミングがとりやすい、つまり打ち返しやすい感覚になるはずです。

ボールがバウンドする前のボールスピードの感覚でテイクバックをしていたプレーヤーは、フォワードスイングに入る際に、ボールが遅くなった感覚になります。それだけ、フォワードスイングの気持ちの余裕が生まれるわけです。

これも、ボールのバウンドをタイミングとして利用する利点の一つです。プレーヤーは、ボールスピードが落ちることを、うまく利用するとよいと思います。

2013年2月4日月曜日

Mecir's Tennis (127) 夢十夜

全く個人的な出来事です。昨晩、夢の中で、ミロスラフ・メシールに会いました。

夢の中のメシールは、どういうわけか「自分は、日本語が話せるので、日本語で話しましょう」と言ってくれたのです。

どんな話をしたのか、残念ながら夢なのでほとんど覚えていません。ただ、テニス以外の話をしたこと、ずいぶんと長い時間話をしたことだけを覚えています。

すでに50歳前になったとはいえ、デビスカップ監督であるメシールはスロバキア(ブラチスラバ)では有名人だという事です。会って話をする機会はないかもしれません。

それでも、いつか話ができる機会があるかもしれないと、信じています。聞いてみたいことがたくさんあるのです。

全豪オープン2013女子決勝 Na Li (李娜)VSアザレンカ

個人的な事情で全豪オープン2013女子決勝のテレビ放送を見ることができなかったのですが、今日、WOWOWで決勝のダイジェストを観ました。ダイジェストですからすべてのプレーを見たわけではありませんが、第1セットから第3セットまで李娜のプレーが首尾一貫していたのが印象的でした。

自分のペースでテニスをする。自分のテニスでゲームを支配しようとする。それが李娜のテニスであり、李娜のテニスの魅力です。

2011年全仏オープン決勝戦のあの迷いながらのプレーとは全く違う、堂々としたプレーでした。全仏オープンの時とは違い、アジア人とか中国人とかそういうことは全く関係ない、一人のトッププレーヤーとして、李娜は李娜のテニスをやりぬきました。

私は、今回は優勝できなかったですが、李娜が2年前よりも明らかに成長したと感じました。2011年の全仏オープン優勝から1年半ほど、特にグランドスラム大会ではベスト4にすら残ることができなかった李娜ですが、今はその間の苦しみから脱して新たなステージに立ったことを、今回の大会では示してくれたように思えます。

最近の私は、今の女子テニスを面白く感じることができません。どうしてなんだろうかと、この決勝戦を見ながら考えていました。

女子テニスという言葉からするとちょっと違和感を感じますが、今の女子テニスのトップランカーを表すの一番ぴったりなのが、パワーテニスという表現です。特にトップ3であるシャラポワ、アザレンカ、ウイリアムスに共通しているのがパワーテニスだと言ってもよいでしょう。

パワーテニスとはなんでしょうか。私は、次のようなイメージを持っています。

プレーヤーは、飛んできたボールに対して、どのようなボールを打つかを選択します。強さ、高さ、コース、回転、リスクなど、相手やスコア、自分の調子、そして自分のプレースタイルから打つボールを決定します。選択は一瞬で行われるため、じっくり考える時間はありません。

そこでパワープレーヤーは、こう考えます。「現在の自分の体勢で最も強いボールを打つことを最優先しよう。」もちろん、とは言え相手の打ちやすい場所に打ち返したのでは不利になりますから、相手の打ちづらい場所を狙うことも考えます。

しかし、選択において、コースを狙う事よりも強いボールを打つことが優先します。それがパワーテニスであり、パワープレーヤーです。

パワープレーヤーの力のあるボールは、コースが少々甘くても、いきなり反撃されることはありません。反撃されないぐらいパワフルなボールを打てるからパワープレーヤーなのです。

パワープレーヤー同士の打ちあいは、「激しく見ごたえがある打ち合い」などとアナウンサーは言いますが、そうでしょうか。私には、どこか綱引き競技を見ているような気持になることがあります。パワーで押し切った方が勝ち。そこには、戦略がありません。

李娜のボールもパワフルですが、トップ3ほどのパワーはありません。あえて言うなら、パワーとプレースメントが50対50のバランスでしょうか。トップ3がおおよそ80対20程度だとすると、李娜のテニスはパワーテニスとは言えません。バランスがよいプレースタイルだと思います。

李娜は、決勝戦で自分のプレーを最初から最後まで貫きました。マッチポイントを取られた最後のボールですら、李娜は攻撃しようとしました。(そのボールは、ベースラインを大きくアウトしたのですが。)

チャンスを見て、相手の逆を突くショットを打つ、または相手を攻撃するショットを打つ。これが李娜の戦略です。相手が2歩以上ステップしなければ打てない場所を、李娜は常に狙っているように見えます。

李娜は、試合後のスピーチで、「もう私は若くはないけれど、来年も決勝戦でお会いしましょう」と観客に向かって微笑みながら話しました。私は、李娜のフットワークは、まだまだ世界の一線級で十分に通用すると思います。昔のアジア人(中国人)のイメージでは想像ができない恵まれたスポーツウーマンの体は、現在の女子のトッププレーヤーの中でもトップクラスです。あのブレない下半身と思い切りのよい攻める姿勢があれば、必ず李娜はやってくれると思います。

今の女子プロテニスプレーヤーで、パワーだけに頼ることなく、あそこまで自分から攻撃してポイントを取りに行くプレーヤーが他にいるでしょうか。

2013年2月2日土曜日

Mecir's Tennis (126) 「人格はプレースタイルを超えることができない。」(村上龍(2))

文章を書くことを生業(なりわい)とする人は、どうしてこんなに言葉をうまく使うのだろうと思うことがあります。

このブログの一番最初の記事で書いた村上龍氏の、次の一言は、私が、テニスというスポーツを愛し、自分でもプレーを楽しむ理由を、たった一言で言い尽くしてしまっています。

「人格はプレースタイルを超えることができない。」

多くのスポーツがそうであるように、テニスのプレーにも、その人のキャラクターが表れるものです。積極的なタイプはネットに出ますし、安定指向の場合はベースラインで粘るプレースタイルになるでしょう。

普段の日常生活では安定志向の人が、案外と攻撃的だったりすることがあるかもしれません。恐らく、プロであってもアマチュアであっても、その基本は同じなのではないかと思ます。

その人の人格は、その人のプレースタイルを超えることができない。

つまり、その人の人格のすべては、その人のテニスを見ていればわかるというのです。テニスのプレースタイルは、それほどまでに、人の性格やキャラクターを反映しているということです。

メシールのプレースタイルは、メシールの人格そのものです。メシールのコート上でのマナーは、メシールの人柄であり、大げさではなく生き様なのです。私がメシールのプレーをコピーしたいという気持ちは、つまりはそういうことなのです。

レベルの高いプレーヤーほど、つまりプロプレーヤーほど、プレーを見ればその人の人格がそこに浮かび上がって見えてくるものです。