2011年2月28日月曜日

メシールのテニス(8) フォアハンド4(球出し)

メシールのDVDを見ていると、試合前の練習でメシールが球を出す映像がいくつかあります。球出しは、試合中のストロークとは違いますが、案外とフォアハンドストロークの本質を反映していると思うので、解析をしておきます。

メシールの球出しで、意外なのは、ボールを下から上にこすり上げていると言うことです。イメージとしては、フラットでボールを出すように思うのですが、実は違います。スイングも下から上、ボールもそれに合わせてこすり上げています。これは、オンコートで試してみると、意外にも、正しい打ち方なのです。

一つは、上記のとおり、ラケットスイングの起動が横ではなく縦(下から上)になると言うことです。これは、(球出しはともかくも)ストロークにおいては案外難しいのです。フォアハンドで下から上のスイングをしようとすると、フォアハンド3で述べたような「背筋に力を入れて、上体を立てた打ち方」が必要になります。つまり、メシールは、球出しの時からこの打ち方を実践しているわけです。私自身は、球出しでは、かなりメシールに近い打ち方ができるようになりました。(球出しフォームの重要性に気がついて打ち方を意識しだしたのはごく最近なのですが)が、コート上のストロークでは、まだ、メシールのフォアハンドの打ち方を習得できていません。どうやら、それが習得できない理由は、この「背中と上体」にあるようです。球出しと同じイメージでストロークが打てるように、練習が必要なようです。

もうひとつは、手首の角度です。フォアハンド2で述べたとおり、メシールのテイクバックでの右手首の角度は120度ぐらいです。(すくなくとも90度よりは浅い角度です。)球出しでも、この角度が維持されています。いいかえると、球出しの時から、手首の角度を意識しておくことができると言うことです。

さらに、球出しから学ぶべきことは、右肘を伸ばしきらないと言うことです。ストロークでは、タマに威力をつけるために、どうしても、フォワードスイング(インパクト後)に右肘が伸びて行きます。メシールも、試合の時は、ある程度ひじは伸び気味ですが、完全に伸びてしまうことは(ほとんど)ありません。おそらくですが、それだけ、背筋でボールを打っているのでしょう。一般のプレーヤーでも、球出しの時は右肘を伸ばしきらないでも打てますが、実際にストロークをするとどうしても伸びてしまう傾向にあります。できるだけ、ストローク時にも、球出しと同じイメージでボールを打ちたいところです。

最後に・・・繰り返しになりますが、練習や試合のフォアハンドストロークで、球出しと同じ打ち方ができるようになるということを目標にしたいと思っています。いいかえると、普段、球出しを、実際のストロークを意識して行うようにすると言うことでもあります。

2011年2月27日日曜日

ブラチスラバ訪問

1991年のソビエト連邦の崩壊に続いて、多くの国が独立しました。チェコスロバキアも、チェコとスロバキアの2つの国に分かれたのです。1993年のことでした。

80年代後半、チェコスロバキアは、スゥエーデンやアメリカと並んで、テニス界を席巻しました。多くの名選手が、この国から生まれました。レンドルとナブラチロアの二人は有名ですので誰でも知っていると思いますが、スコバやマンドリコバ、ノボトナ等の女子選手、男子選手にもノバチェクやスミッドなどがいました。メシールも、時代の中できらめいたチェコスロバキアテニスを支えた一人だったのです。

これらの選手の多くは、チェコ出身なのですが、メシールはその中では珍しく、スロバキアの出身です。(両親のどちらかがチェコ出身で、もう一人がスロバキア出身だったと思います。)1994年から今まで、メシールは、ずっとスロバキアのデビスカップの監督です。

スロバキアの首都は、あまり知られていませんが、ブラチスラバという街です。ウィーンやブタペストと同じく、ドナウ川に面した街です。おそらく、今、メシールは、このブラチスラバに住んでいると思います。だから、ブラチスラバは、私にとっては、一度、訪れてみたかった、あこがれの街なのです。

そのブラチスラバですが、ウィーンから50kmしか離れていない国境付近の街です。(つまり、ウィーンも、国境付近の街です。)ウィーンに行く機会があったので、思い切って、ブラチスラバまで足を延ばしてみました。と言っても、たった3時間、街の中をうろうろ歩いただけのあわただしい訪問でしたが。それでも、私にとっては、夢のような、エキサイティングな3時間でした。

冬の午後5時半ごろ(陽はすっかり落ちていました)から3時間ぐらいしか滞在することができなかったので、もちろん、テニス等を見る時間はありません。それどころか、何の予備知識もなく、地図も持たず、ただ、この街がスロバキアの首都であり、メシールの住む町であるという知識だけで、ウィーンからの電車に飛び乗ったのです。ブラチスラバ駅について、まずは両替屋に飛び込んだくらいです。実際には、スロバキアの通貨は今はユーロで(ちなみにオーストリアもユーロ)、両替の必要がなかったのですが、そんなことも知りませんでした。

ブラチスラバの中央駅は、これが一国の首都の中央駅かと言うぐらい小さく、なんとなく、越後湯沢の駅を思い出しました。(どうして越後湯沢を思い出したのか、自分ではよくわかりませんが。)

駅を降りて、3時間以内にここに戻らなくてはならないと焦る気持ちと、街の地図が全く分からなかったので、券売機で1ユーロのチケットを購入し(確か、1時間ぐらい有効なチケットだったと思います)、目の前に来た201という路面電車に飛び乗りました。今から考えても、無茶なことをしたものです。ただ、今回は、必ずしも観光地や名所旧跡を見たかったのではなく、メシールが暮らす街を見たかったので、市民と同じ電車に乗り、市民と同じお店に入ってみたかったのです。

ブラチスラバの街は、他の旧共産圏の街と同じように、質素で、暗く、人の笑い顔の少ない街でした。電車の中でも、街の中でも、人の話声すらほとんど聞こえず、楚々としている風情。街灯は暗く、街中がこの国がまだ豊かであるとは言えないことを如実に表していました。街には、日本人はもちろんのこと、アジア人すらほとんど見かけず、私は、明らかに目立っていたと思います。特に、201などと言う、全く名所とは関係ない方向のトラムに乗っているアジア人と言うのは、周りの人は、きっと「なんだろうか?」と思ったのではないかと思います。でも、それを表情にも出さない。そこが、いかにも、旧共産圏の国です。

時間が気になってきたのと、人気のない町はずれに行ってしまい心細くなってきたので、トラムを2,3度乗り換えて、街の中心の方に行こうとしていたときに、車内で、若い男性が近付いてきて、英語で話しかけてくれました。こういう親切さ、人懐っこさも、旧共産圏っぽい感じです。私が「街の中心、ダウンタウンに行きたいんだけど」と伝えたら、次の電停で降りて、5番(11番だったかも)に乗り換えて、ここで降りたらよいですよと教えてくれました。

そこで初めて、私はブラチスラバ城やミカエル塔のある旧市街地に行ったのです。そこで、街をぶらぶら歩き、写真を撮ったり(何枚か、このサイトに添付しました)、夕食を食べたりしました。

その後、中央駅に向かうトラムに乗り込み、午後8時47分発のウィーンに戻る電車にぎりぎり間に合ったのでした。また、いつか、来るだろう…今度は、ぜひ、メシールに会いたいな…と思いながら。

ブラチスラバの旧市街地で見かけた面白いモニュメント
ブラチスラバのパブ?で食べたスープ:味は今一つ
ブラチスラバ旧市街地

トレンド~メシールのテニスは古いのか?

1987年の全米オープンでメシール対ヴィランデル戦(準々決勝)のゲスト解説者は、(今は亡き)アーサー・アッシュ氏でした。アッシュ氏は、(まだ、それほど、有名ではなかった)メシールについて、インタビュアーに「この選手をどう思いますか」と質問されたときに、こんな風に答えています。「彼のプレーを見ていると、どこのテニスクラブにもいるカジュアルプレーヤーのようだ。」カジュアルプレーヤーのようだという批評を、私は、ほかのメシールのビデオでも聞いたことがあります。メシール自身も、昔のインタビューで、「自分のプレースタイルは、(レベルの高い)クラブプレーヤーだった父親の影響を受けています」と答えていたことがあります。

テニス365の技術特集・フォアハンド編を見てみると、メシールのテニスが、現代テニスとはかなり違うことが変わります。現代テニスとは、全く正反対である技術も、多々あるようです。例えば、「ラケットは下から上ではなく体の回転を使った横方向のスイングが望ましい」とか、「テイクバックではラケットを立てる」などは、メシールのテニスとは正反対です。

テニスの道具(特にラケット)の進化により、この20年で、テニスの技術は明らかに変わりました。おそらく、プロの世界、特に男子のトッププロの世界では、メシールのテニスは、もはやトレンドにはならないのかもしれません。しかし、それでも、メシールのテニスの美しさは、私は消えることはないように思います。今のテニスが、「力強さ」を優先するあまり、かつての「美しさ」を失ってしまった今、私は、メシールの美しいテニスを、アマチュアの世界の中で残したいと思っています。

メシールのテニスは、力強さ(パワー)よりも、正確さを優先するテニスです。特に、フォアハンドは、厚いグリップで高速にラケットを振ることでボールを強く打つ現代のテニスと比べると、制約の多いフォームです。そのため、(別項でも述べますが)実際にテニスコートでメシールのテニスを実現すると、パワーがないために「打ち負ける」「球が浅くなる」などということが多くなりがちです。

しかし、考えてみると、パワーのあるラケットが増えている現代、昔のパワーレスなウッドラケットや薄いラケットと比べると、現代のラケットは、メシールのフォームではパワーが出ないという弊害に陥りにくい環境にあるはずです。(そう考えると、パワーのでないウッドラケットを最後まで手放さなかったメシールは、不思議な選手です。)

もうひとつ、メシールのテニスに必要なのは、ラケットの重さなのですが、これについては、現代のラケットが軽くなっているとはいえ、軽いラケットを重くするのは難しくないのです。(リードテープをつければよいのですから。)こちらは、現代テニスであっても問題にはなりません。

技術的には古くなったメシールのテニスを、アマチュアが実現する環境は、かつてよりも整ってきているのかもしれません。

メシールのテニス(7) フォアハンド3 ~左手の重要性

メシールのテニス、フォアハンドの第3回です。

さて、メシールのフォアハンドですが、一言で言うと、「ラケット面の角度が繊細な打ち方」と言ってよいでしょう。軽いラケットを厚いグリップで強くボールを打つ現代テニスのフォアハンドと比べると、メシールのフォアハンドは、重いラケットを使い、ラケット面をきちんと作って、思うところにボールを(フラット系で)運ぶイメージがあります。ラケット面が少しでもぶれると、ボールは浅くなったり、アウトしたりしてしまいます。

フォアハンドで面をできるだけ正確に(高い精度で)作るために、気をつけること。そのひとつが、意外にも、テイクバック始動での左手の使い方です。テイクバック始動において、左手をラケットに添えること。これは、メシールのテニスでは「絶対に必要な」重要なポイントです。確かに、メシールのどのビデオを見ても、どんな場合においてもこの原則は必ず守られています。

今回は、この、左手の使い方をベースとしたメシールのフォアハンドを分析してみたいと思います。

現役のプレーヤーで、テイクバックでの左手の使い方が目につくのは、例えばロディックでしょう。ロディックも、フォアハンドのテイクバックの始動では左手をしっかりとラケットに添えてます。しかし、メシールとロディックのテイクバック(始動)は、全く違います。ロディックとの違いを意識しながら、メシールのテイクバック始動での左手の使い方を考えて行きましょう。

【インパクト時のラケット面の安定性】
まず、テイクバックで左手をラケットに添える目的の一つ目は、面の安定性です。上記のとおり、インパクトでの面を安定させるためには、インパクトまでの力をできるだけ腕に頼りたくはないところです。テイクバックからフォワードスイング、インパクトまでで、腕の力を使えば使うほど、それだけ、インパクトでの面のずれが生じやすくなるからです。繰り返しになりますが、メシールのフォアハンド(薄いグリップ)で、インパクト時にできるだけ正確な面を作るためには、テイクバック始動において、右腕(の力)を使いたくないのです。そのためには、テイクバック始動を、それ以外の力を使う、つまり、左手を添えて、左手にテイクバックの始動をさせます。(もちろん、左腕以外にも、腰の回転なども使っていますが。)

さて、テイクバック始動を左手で行う際のイメージは、面を伏せるようにラケットを引くと言うことです。面を地面側に伏せるのではなく、面を体側に伏せるのです。さらに正確に言うと、面を右足太もも側に伏せると言ってもよいでしょう。薄いグリップのテイクバックでは、どうしても、面が開き気味です。左手でテイクバックすることで、これを補正することができます。

もうひとつ、左手でラケットを引くことで、ラケットヘッドを下げることができます。これも、左手を使うことの利点の一つです。右手でラケットを引く(ラケットの始動をする)と、右腕が一番楽な角度でラケットを引きたくなりますが、それは、(人間の体の構造上?)ラケットヘッドが下を向く角度ではなさそうなのです。したがって、左手で(右手にとって負担となる)ラケットヘッドを落とした角度でのテイクバック始動をさせるのが有効であると言うことになります。

ラケットヘッドを下げることと同じぐらい大切なことは、テイクバックでラケットが体のそばを通ることです。(この2つは、必ず連動します。)これについても、左手でテイクバックを操作することで、徹底することができます。

そして、これが、左手でラケットを引くことの最も重要な理由ですが、左手で「ラケットの面を作る」ことができます。上の、ラケットを体の(右足の)そばを通すと言うことと近いのですが、同時に、ラケット面を作ります。このラケット面は、そのまま、フォワードスイングからインパクトまでをイメージしたラケット面です。つまり、テイクバック始動で、その面がそのまま(同じ方向を維持されるのではなく)ぶれずに維持されるイメージです。表現が難しいのですが、逆を考えれば、分かりやすいと思います。フォワードスイングにおいてインパクト面のイメージがなければ、ラケット面は不安定になります。(そして、薄いグリップであるメシールのテニスでは、ラケット面がぶれることは、致命的です。)では、フォワードスイングでラケット面のイメージを作るにはどうすればよいか。それは、テイクバックからラケット面のイメージを作っておくことです。つまり、テイクバックの最初であるテイクバック始動からラケット面のイメージを作ることが、インパクトでの安定したラケット面につながるのです。

この、最初のほんの一瞬が、その後のスイング全体を決めてしまいます。テイクバック始動を左手が操作できるかどうか。(そして、その時に、後述する、上体が立っているかどうか。)したがって、日常生活の中で、この癖をつけてしまう(こまめに最初の瞬間の癖を体に覚えさせる)のが有効な練習方法かもしれません。

【ロディックのフォアハンドとの比較】
次に、ロディックとの比較で、メシールのフォアハンドでは最もしてはいけないことを書きます。ロディックは、テイクバックで左手を添えることで、①上体を前に倒します(ほんの少し背すじが丸くなります)、②左肩を前に出し、左足をややクローズド気味に踏み込みます、③ラケットを胸の高さで横に引きます。これら3つは、本能的にはそのようにすることでスイングが安定するのですが、メシールのフォアハンドでは、どれも「してはいけないこと」です。それについて、分析してみましょう。

まず①ですが、メシールのフォアハンドテイクバックでは、上体を倒してはいけません。上体は、地面に垂直を維持すると言うメシールの基本を、ここでも守らなくてはいけません。上体を立てることでボールとの距離感を感じる場合には、どうすればよいか。まず一つは、距離を感じる分、ひざを使います。つまり、ひざを曲げます。これは、当たり前の基本ではありますが、特にメシールのような上体を立てるフォームでは重要です。忘れてはならないのは、上体を立てるのは、フォワードスイングやインパクトだけではなく、テイクバック、いやレディーポジションからそうだと言うことです。レディーポジションでは(ボールを打つわけではないので)上体を立てるのは比較的簡単ですが、体の動作がともなう場合(体がはじめて動き出すのがテイクバック始動です)にも、上体は立っていなくてはなりません。

テイクバック(だけではなく、スイングのどのタイミングでも)において、上体を立たせるために重要な事が一つあります。それは、「背筋に力を入れる」ということです。上体を立たせると言うことは、背筋に力を入れると言うことと、同じだと思って構いません。テニスの基本(球技の基本)として、腕に力を入れてはいけないのは当然です。周知のとおりです。しかし、背筋には、どれだけ力を入れても構いません。(といっても、背筋に力を入れ続けることはできませんが。)そして、背筋に力を入れることで、反動的に腕の力を抜くことが期待できます。両方に力が入れば、上半身ががちがちになりますからね。

さらに、②については、ここが重要ですが、ロディックのように体がクローズになってはいけません。この点が、ロディックの左手とメシールの左手が、まったく異なる点です。ロディックのテイクバック始動では、左肩が前に出て、それに伴って左足も前に出ます。体全体が、ネット方向に対してクローズになります。メシールのテイクバックでは、左足を前に出してはいけません。完全なオープンスタンスで打ちます。(これも誤解のある表現ですが、これについては、最後に書きます。)この際、①のように上体が立っていれば、体がクローズになることはありません。(体の構造上、あり得ません。)テイクバックにおいて、上体を立て、オープンスタンスで体に近いところからラケットを引くイメージは、かなり、違和感があると思います。左手でラケットを引いているので、左肩はネットの方を向く(まっすぐネットに向く程は深く肩は入らないですが)ので、体が開いているわけではありません。しかし、メシールのフォアハンドでは、その程度の体のひねりで十分なのです。打つ感覚から言うと、足も、左肩も、かなりオープンに感じるので不安になりますが、問題ありません。むしろ、ここで、左肩を入れ、さらに左足を踏み込むと、①や②のようなロディックのフォームになってしまうのです。

③については、上に書いたとおり、テイクバックではラケットは体のそばを通らねばなりません。逆に言うと、③のようなイメージになっていたら、それは、スイングの修正をしなくてはならないと言うチェックポイントだと考えればよいと思います。

【まとめ】
背筋に力を入れ、それにより上体を起こし、足をオープンにしたまま、左手でラケットヘッドを下げつつ、面のイメージを作りながら、体のそば(右足のそば)でラケットを引いていくイメージ。これが、正しい、メシールのフォアハンドテイクバックです。このイメージでは、おそらく、ラケットを引く「量」がはかなり小さく感じると思います。つまり、かなり小さなテイクバックに感じると思います。そして、それでよいのです。小さなテイクバックを恐れてはなりません。左手でテイクバックをすることで、フォワードスイングは体を使うことができます。(右腕も、インパクトの少し前から使えます。)したがって、左手テイクバックを守りさえすれば、ボールを打つパワーは十分にあるはずです。

【補足】
以上の解析の対象は、相手のボールにそれなりの威力がある場合です。相手のボールが初級、初中級レベルの緩い球の場合は、ある程度自分から打ち込まざるを得ません。そういう場合には、多少の足の踏み込みは必要になると思います。が、原則的には、同じ打ち方で問題ないはずです。これについては、別の機会に、オンコートで確認してみます。

2011年2月20日日曜日

メシールのテニス(6) フォアハンド2

メシールのテニス(4)のフォアハンドの補足です。

メシールのテニス(4)で、フォアハンドのポイントいくつか挙げました。これを復習しつつ、(4)を実践するために気をつける点をいくつか、まとめてみようと思います。

話が突然変わりますが、エドバーグの弱点はフォアハンドと言われていました。「右脇が空く」のです。薄いグリップのフォアハンドでは、特に肩ぐらい(またはそれよりも高い)ボールに対しては、右脇が空かざるを得ません。なのに、なぜ、エドバーグ(だけ)が「右脇が空く」のでしょうか。なぜ、メシールは、右脇が空くと言われなかったのでしょうか?

おそらく、右脇が空くのは、フォワードスイングではなく、テイクバックのタイミングだったのではないでしょうか?メシールのフォアハンドのテイクバックでは、確かに、右脇は空きません。テイクバックで、右脇は締まり、右腕は体の近くを通っています。たとえ、肩(よりも高い)高さでボールをヒットする場合でも、テイクバックでは右脇は空きません。(フォワードスイングではもちろん空きます。)

さて、(ボールの高さに関係なく)テイクバックで右脇を締めるには、どうすればよいでしょうか?ここで、問題は、私だけの癖かもしれないのですが、右脇を締めてテイクバックをすると、体と腕がテイクバックからフォワードスイングにかけて、ずっと、一体になってしまうのです。いいかえると、腕の自由度が0になってしまうのです。右脇は締まってくれるのですけどね。腕の自由度が0になると、特に高いボールに対しては、全く打てなくなってしまいます。究極の「手打ちの逆状態」です。

どうも、薄いグリップのフォアハンドでは、このバランスが難しい。テイクバックで右脇が空くとスイングが不安定になり、テイクバックで右脇が締まりすぎると、フォワードスイングでも右脇が締まった状態のまま腕の自由度が0になってしまう。私自身のことになりますが、特に、昔は後者で苦しんだのですが、最近は前者で苦しんでいます。

さて、このどちらにもならない「適切な」スイングにするためのイメージが必要です。どんなイメージがよいのでしょうか?まだ、正しいかどうかわからない項目もあるのですが、現在の私なりのイメージを、いくつか紹介しておきます。これが、私なりの「メシールのフォアハンド」のイメージです。

(1)テイクバックでのラケットの始動については、私は「刀を抜く感じ」をイメージすることにしています。刀を抜くイメージの場合は、右脇がひらかないことと、体の回転でラケットを始動できるなど、イメージによるよい効果が多いからです。テイクバックでラケットヘッドが下を向きやすいことも利点です。左手をラケットに添えるイメージも、プラスイメージの一つです。

(2)テイクバックで(1)のイメージがとれていれば、フォワードスイングはなにも意識しなくてもよいのかもしれません。低い球であればそのまま脇が締まってスイングするでしょうし、高い球であれば(前述の通り)ある程度、右脇が空いても大きな問題はないでしょう。(逆に、そうしないとボールを打つことができません。)ただし、今、右脇が空きにくくなるイメージを一つ、考えています。それは、体重を右足の内側に乗せると言うことです。右足の内側に体重を乗せることで、自然と体が開かなくなり、同時に右脇も空きにくくなるようです。これは、特に、フォアハンド側に走ってからボールを打つ場合に、重要になります。この場合、体が流れやすく、また、ボールとの距離が取りにくいこともあって右脇も空きやすいからです。したがって、ボールをヒットするときには、右足の内側に体重が乗り、右足を絞り込むイメージが有効であるようです。

(3)ラケットワークのイメージとは直接は結び付かないかもしれませんが、ボールとの距離感も大切です。私は、フォアハンドのボールとの距離感を、右足(の先)でとるようにしています。実際に右足の前でボールを打つわけではないのですが。イメージとしては、自分に向かって飛んでくるボールを右足のつま先で”受け止めます”。ボールが体から離れてしまうと、フォワードスイングで右脇が空いてしまうからです。右脇を締めて打つためには、ボールの飛球線上に右足があるぐらいのイメージがよいようです。(ただし、このイメージについては、さらに研究中です。)

(4)さらに、フォワードスイングでは、もうひとつ、(これも検討中なのですが)ラケットを面からではなくフレームから振るイメージを作ろうとしています。親指側のフレームです。本来は、ラケットスイングの方向とラケット面の法線が並行になるのが当然ですが、イメージとしてはラケットスイング方向にラケットフレームが来るわけです。ラケット面法線は、ラケットスイング方向と垂直になります。実際にはそんなことは無理(そのままだと、ラケット面ではなく、ラケットフレームでボールを打つことになる)なのですが、このイメージを持つと、グリップを持つ手首の角度を120度ぐらいに保ちやすいのです。(120度については、メシールのテニス(4)に書きました。)この点は、もう少し研究してみます。

(5)上の(2)で、フォワードスイングは自由にと書きましたが、一つだけ、注意することがあります。それは、右肘を上に上げないと言うことです。高い球の場合は、ある程度脇が空くのは仕方がないですが、空き過ぎるのはもちろんよくありません。その場合、右肘を下向きに維持するのがよさそうです。右肘を上げないと言うことは、自然と右脇が空かなくなります。また、その際、肩に力を入れない(いかり肩にならない)ように気をつけます。いかり肩になると、腕の自由度が上がり過ぎて、右脇が空きやすくなります。右肘は、「下の方で」下向きを維持するように気をつけます。このために重要なイメージは、「ボールを右腰で打つ」というイメージです。右腰、右ひじが、一体となって打つことで、右肩が上がってしまうのを避けることができます。

(6)これらを守ると、ラケットスイングの起動は、ほぼ、「下から上」のイメージになります。(1)の刀を抜くイメージに対して、(6)は「ボールを下から上に切り上げる」というイメージです。縦に切り上げるイメージですから、体の回転はあまり意識しなくてもかまいません。体の回転をかけると、横に切るイメージになってしまいますので、回転を意識しない方が望ましいのです。むしろ、下から上への切り上げをイメージしたほうがよいようです。

(7)上の(5)に示した右肘を落とす方法の一つとして、「ラケットを持たない腕である左肘を落とす」と言うことがあります。人間の体は、無意識に左右を対象とするようにできているらしく、左肘を落とすと、右肘も自動的に落ちる傾向があるようです。左肘を落とすということは、いいかえると、左の手首を上げると言うことでもあります。左手を折りたたむと言ってもよいでしょうか。これは、メシールのフォアハンドでも見られる特徴です。左手を折りたたむことで左肘は下がり、これによって右肘を反動的に下げる効果があるのではないかと思っています。