2011年5月31日火曜日

メシールのテニス(26) メシールのフォアハンド(腰よりも高い球 その2)

手打ちはいけない、と教わります。が、その反対もいけません。手打ちをしないようにするがあまりに、体に手がぴったりとくっついてしまうと、それはそれで、窮屈な打ち方になります。

腰よりも低い球は、かなり長い間、腕を体に同期させて打つことができます(し、それが正しい打ち方です)。実際、ボールをヒットする直前まで、つまり、フォワードスイングの直前まで、腕は体に同期しています。したがって、フォアハンドの腰よりも低い球は、比較的安定して打つことができます。

問題は…腰よりも高い球です。もともと、薄いグリップのためにわきが開きやすく、その分不安定な腰よりも高いフォアハンド。最も難しいストロークといってもよいと思います。

腰よりも高いフォアハンドストロークのポイントの一つは、フォワードスイングの後半で、”手打ち”するイメージを持つことだと思います。前半(インパクト少し前まで)は、低い球同様に、体と腕は同期します。ただし、インパクト直前に、腰よりも低い球と比較すると、ほんの少し早く、体の同期が解除されます。これは、下にも書きますが、腰より低い球はボールを押し出すのに対して、高い球はボールをこするからです。その分だけ、早めに手打ちイメージになるのです。

そのほかに気を付ける点を、列挙しておきます。

テイクバックでは、ラケットは寝かさずに(緩やかに)立てること。そのためには、腕とラケットに、120°程度の角度ができるはずです。腰よりも低い球と同じイメージで、ラケットと腕がまっすぐに近い関係になると、テイクバックにおいてボールよりもラケット面がボールの飛球線よりも下になります。その結果、フォワードスイングにおいてラケット面(の法線)が水平よりも上を向いてしまい、その結果、ボールは上に飛び出します。打点が高いので、ボールが上に飛び出すと、バックアウトしてしまいます。フォワードスイングでも、この120°の角度は、維持したままでボールをヒットします。

テイクバックではラケット面が上を向いては、絶対にいけません。イメージとしては、ラケット面を伏せるイメージで大丈夫です。(グリップが薄いと、ラケット面を伏せたイメージでも、実際には、ラケット面はほとんど伏せていない(ほぼ90度になっている)ためです。)さらに、そのイメージのまま、フォワードスイングを行います。打点が高いので、ラケット面を伏せたイメージでも、ボールがネットする心配はありません。

テイクバックは、右足を引くタイミングで行います。右足とラケット(テイクバック)が連動します。高い球のフォアハンドは、不安定になりやすいため、右足をしっかり・どっしりと固める必要があります。また、その際の、右足とボールの位置関係は、細心の配慮が必要です。この位置関係が少しでもずれると、フォワードスイングにおいて微調整はほとんどできないために、ボールコントロールは不安定になります。

スイング軌道とボール軌道が一致すること。ということは、スイング軌道は、かなり水平になります。下から上ではありません。下から上に打つと、ラケット面が上を向いてしまうはずです。(そうして、ボールは、かなり上向きに打ち出されます。)もともと、高いところで打つということは、相手のボールに威力がある場合です。(威力がない場合には、ボールを腰よりも低い位置で打てるはずですので。)

低い球はボールを押し出すため、リストの形をインパクト前後で、維持できます。高い球は、ボールを多少こするため、インパクト時において、リストワークが発生します。このリストワークのタイミングがずれると、ボールはコントロールできなくなります。ボールが腰よりも高い場合は、このインパクトにおけるリストワークが、最も神経を使う部分となります。

インパクトの位置は、不安定な高い球の場合には重要(したがって、右足の位置が重要)です。場合によっては、右足を踏み出しながら打っても構いません。(実際、メシールは、頻繁に、右足を踏み出しながら、腰よりも高い打点のフォアハンドストロークを行います。)右足を出すことで、テイクバックでラケットが体の後ろに来すぎるのを防ぐことができます。左肩も入りすぎません。(左肩を入れるべしと、よく、テニスのレッスン書にありますが、入りすぎることもあるのです。)

腰よりも低い球と同様、打点が遅れないように気を付けてください。他のすべてのフォアハンドストロークと同様に、高い球のフォアハンドでも、”打点は前の方”です。

テイクバック、インパクト、フォローするのどのタイミングにおいても、右肘が伸びきらないように注意します。常に右ひじを曲げておくイメージでよいと思います。

バウンドした相手の球が高いと、どうしても、こちら側は気持ちが”受け”になってしまいます。ボールが上から襲ってくるような感じです。その結果、右肩が下がってしまうことがあります。メシールのフォアハンドでは、テイクバックで右足に体重がかかるので、なおさら右肩が下がりがちです。しかし、両肩は、絶対に水平になっていなくてはなりません。メシールのグランドストロークで、どちらかの肩が下がることはありません。気持ちの上でも”受け”にならず、ボールに向かっていかなくては、つい、右肩が下がってしまうと思います。恐れずに、ボールに向かっていくことです。右足の位置が正しければ、必ず、ボールは安定してヒットできるはずです。

フォロースルーでラケット面は下を向きますが、スイングそのものは、下に下がってはいけません。基本的には、左耳の横あたりまで上がってくるはずです。腰より低い球の場合は、ボールをしっかり押し出すイメージですが、腰より高い球の場合は、ある程度、ボールをこするイメージがあってかまいません。

なお、上で、腰よりも高い位置で打つボールは、威力がある場合だけだと書きましたが、実際には、相手のボールが弱く、コートの真ん中で高い打点で打つことがあります。いわゆる、チャンスボールです。チャンスボールは、実は、必ずしもチャンスボールではなく、なぜなら、打点が一点しかないからです。ある一点で、上下に動くボールをヒットせねばなりません。(ボールが上がっているタイミング、トップで静止しているタイミング、落ちてくるタイミングなど、いろいろでしょう。)この場合も、腰よりも高い打点の場合は、上に書いたように、緩やかにラケットヘッドを立てて、ちょうど、インパクトポイントがラケットヘッドの高さになるようにテイクバックし、そのまま横に振ることになります。腰よりも高い位置で打つ以上、ラケットが下がるということはあり得ません。その場合は、スイングが下から上になってしまい、またはラケット面が上を向いてしまい、コートの後ろではなく中央あたりから打っているために、ボールはバックラインを超えてしまうと思います。

2011年5月29日日曜日

メシールのテニス(25) テニスは足ニス

すでに何度か書いていますが、メシールのテニスが美しい理由の一つは、フットワークが美しいからです。フットワークが美しいということは、どういうことでしょうか?

以下に書くことは、おそらく、すべての(プロではなくアマチュアの)テニスプレーヤーで共通することだと思います。(前書きにも書いていますが、他のプロプレーヤーに興味がないので、きちんと調べたわけではないのですが。)

ただ、メシールは、それを徹底しているので美しいのだと思い、これまでの繰り返しになりますが、整理して書いておこうと思います。

グランドストロークでは、フォアハンドは左肩を、バックハンドは右肩を前に出します。では、そのタイミングは、どこでスタートするのでしょうか?

答えは、フットワークと連動して、最初の第一歩目です。

すでに書いている通り、グランドストロークでは、フォアハンドの場合、ボールが近い場合には右足引きますし、遠い場合には左足をボール側(右側)に踏み込みます。これらが、最初の一歩目になります。そして、これらは、左肩で考えると、必ず、左肩を前に出す動きになっているはずです。

バックハンドは、まったく、その逆になり、右肩が前に出る動きになります。

つまり、スイングは、ステップの第一歩目からスタートしているのです。

そして、その後、ボールが飛んでくるのに合わせて、徐々に大きくテイクバックをして、ボールをヒットします。相手のボールのタイミングに応じて、ゆっくりとテイクバックすることもありますし、素早くテイクバックをすることもあります。

つまり、スイング全体は、相手のボールの速さなどによって異なるので、実は、相手(のボール)によって変わります。しかし、スイングの始動は最初の第一歩となるので、スイング開始のタイミングはメシールの側で決めることができるのです。

テニスは足ニスという言葉を、私はこれまで、細かく、素早く足を動かすことがテニスでは重要だということだと思っていました。しかし、実は、違うのではないかと思い始めています。

テニスは足ニスというのは、こういうことではないでしょうか?「スイングのタイミングは、実は足の動きで決まっている。上体(腕)は、自分の意志とタイミングでスイングしているつもりかもしれないが、実は、足が決めたタイミングに従って動いているだけなのである。ストロークを支配しているのは、足である。」

スプリットステップをする、ボールが来る、ボールのところに足を運ぶ、テイクバックをする、ボールをヒットする・・・のがテニスではないのです。

スプリットステップをする、ボールが来る、第1歩目を踏み出す。ここですでに、スイングは始まっていたのです。ボールのところに足を運ぶのは、実は、スイングの前ではなく、スイングの途中で行われていたということです。

テニスは足ニスです。足の動きがすべてをコントロールしています。

2011年5月26日木曜日

メシールのテニス(24) 背筋で打つ

何度か書いていますが、メシールのグランドストロークやサーブ(おそらく、ボレーなども)のポイントの一つが、”背筋の力で打つ”ということです。そのことは、ボールをヒットする際に、上体が立っていることから分かります。

さて、では、どうすれば、背筋で打つことができるのでしょうか?

今日、とあるブログ(紹介したかったのですがアドレスがわからなくなりました…)を読んでいて、ヒントがありました。

つまり、背筋以外の力を抜くということです。背筋以外の力を抜くと、当然ですが、背筋に力が入るので、自然に、背筋でボールを打つようになります。

具体的には、グリップの力を抜く、肩の力を抜く、腕の力を抜く。

下半身の力を抜くことはできませんが、これらの上半身の力を抜くことで、自然に背筋でボールを打つことができるようになります。(下半身は、しっかりと上半身を支えるのが仕事になります。)

ただし、これらは、インパクト前までの話です。インパクトの時は、例えばグリップはしっかりと握らねばなりません。

2011年5月24日火曜日

メシールのテニス(23) メシールのフォアハンド(腰よりも高い球 その1)

これまでに、メシールの試合前のフォアハンドストローク練習を分析しました。練習では、多くの場合は、小さなテイクバックで、スピンのかかっていない、比較的パワーがない球を、腰よりも低い位置で打つのですが、これについては、おおよそ、分析できたと思っています。

しかし、実際の試合ではスピンの効いた強い球を腰よりも高い位置で打つことが多いので、上記の打ち方だけでは対応できません。試合のDVDを分析して、”生きた球”をどのようにさばくのかについて、分析が必要です。

まだ、完全に分析はできていませんが、気が付いた点をまとめてみます。

①テイクバック:ラケットの引き方については、”練習”と同じです。ヘッドを落とし、ラケット面を体の方に向けて、肘から引きます。ここは、”練習”と変えてはいけません。

②テイクバックトップ:相手のボールに勢いがあるときには、それに応じた大きなテイクバックが必要になります。この際、テイクバックは、①の延長になります。つまり、真後ろにそのまま引きます。ラケットは地面と水平まで上に上がってきます。ラケットヘッドは真後ろ向き(実際には、手とラケットがまっすぐにならないので4時から5時の方向)で、ラケット面は地面の方向を向きます。基本的にはオープンスタンスで、肩を結ぶ線がネット方向よりも内側には来ない(背中をネット側に向けない)ので、体の構造上、ラケットヘッドが6時よりも深く(7時や8時)には入りません。肩と腕の線ですら、6時の線上に来ます。

③フォワードスイング:フォワードスイングは、”練習フォーム”とは異なります。ラケットは、縦振りではなく、横振りになります。つまり、この場合は、テイクバックとフォワードスイングは軌道が異なることになります。気を付けることは、フォワードスイングでは、ラケット面が上を向かないということです。”練習ボール”は、ボールに威力がないためにボールが上から下に落ちてくるか、または打点が低いために、フォワードスイングは下から上になり、インパクトにおいてラケット面がやや上を向きます。しかし、相手のボールに威力がある場合は、ラケット面の軌道は下から上ではなく、むしろ地面と平行に近くなります。そのために、スイングの軌道もほぼ地面と平行になり、ラケット面は地面に垂直になります。この”ほぼ”が実際にはどの程度傾くかは、相手のボールの勢いなどによって変わります。

スピンをあまりかけないメシールのフォアハンドでは、ラケット面の微妙な違いがボールコントロールに大きく影響します。ラケット面が少しぶれただけで、ボールはバックアウトしたり、ネットしたりします。ラケット面の微妙な制御については、メシールは、ラケットの重さをうまく利用しているようです。重いラケットを使うことによって、ラケット面をぶれにくくしています。なお、ラケット面がぶれないためには、フォワードスイングにおいて、右肘がまっすぐ伸びないようにすること、右脇が開きすぎないようにすることの2点にも注意しなくてはなりません。

④フォロースルー:上の③におけるラケット面の軌道と角度の微調整は、むしろ、フォロースルーでコントロールする方が簡単です。メシールのフォアハンドストロークでは、ラケットヘッドが頭のあたりに来ることが多いようです。もちろん、フォロースルーでは、ラケット面は下(地面方向)を向いています。

以上、”練習ストローク”と比較して異なるのは、テイクバックトップでラケットを水平まで上げること(ラケット面は下向きで、ラケットヘッドは4時~5時)、フォワードスイングが縦振りではなく横振りになること(その結果として、フォロースルーでラケットヘッドが左耳あたりに来る)という点になります。右肘と右脇にも注意を払います。

2011年5月23日月曜日

メシールのテニス(22) サーブ(その2)

テニスのサーブには、①トロフィーポーズで完全に静止するタイプと、②最初から最後まで一度も止まらず(または一瞬だけ止まる)に全体の動きでボールを打つタイプがあります。

最近で言えば、ジョコビッチが②です。フェデラーやナダルも、ほぼ②のようです(一瞬だけ止まる)。どうやら、最近の男子選手のほとんどが②のタイプのようです。古くは、ヴィランデルやコナーズが②でした。レンドルやベッカーも②に近いようです(一瞬止まる)。

ただし、昔の選手には①のタイプも多かったように思います。メシールは①のタイプですし、例えば、マッケンローも①のタイプです。

②はトロフィーポーズで一瞬止まる場合を含むので、①と②には明確な差があるわけではないのですが、明らかに違うのは、左手(右利きの場合)がトスアップを始動するタイミングです。①のタイプは、右腕が動いてテイクバックを開始してから、ゆっくりとトスアップが始まります。一方、②のタイプは、右腕と左腕が同時に始動を始めます。

プロに両方のタイプがあるということは、どちらが良いとか悪いとかいうことはなさそうです。

私自身は、実は、②のタイプです。ただし、②のタイプはアマチュアには難しい側面があります。一連の流れの中でボールを打たねばならないので、タイミングが少しでもずれると安定してサーブが打てないのです。

もしかしたら、アマチュアには、①のタイプが望ましいのかもしれません。今回は、①のタイプであるメシールのサーブをDVDで見て学んだことを、いくつか拾い上げてみようと思います。

まず、レディーポジションですが、ストロークと同じ、「女の子のモジモジポーズ」です。ここで大切なのは、ラケットヘッドを下に下げるということです。特に、上記の①では、ラケットヘッドを上げないことが大切です。(なお、②の場合は、構えた時にラケットを腰のあたりでセットする傾向があるため、モジモジポーズはとりにくいのですが、それでも、レディーポジションでラケットをあまり上でセットをしない方がよいです。)また、レディーポジションで、右肘は緩く曲げておきます(まっすぐにのばさない)。右肘がまっすぐに伸びていると、そのまま肘が伸びた状態でテイクバックスイングに入ってしまい、スイングが大きくなってしまいます。その結果、サービスが不安定になるのです。

次に、始動のタイミングです。サーブの始動は、腰よりも上にラケットをセットし、ラケットヘッドを上に向けて、手からスタートしたくなりがちです。つまり、ひょいっとラケットヘッドを上にあげる動作を、サーブのスタートのタイミングにしてしまいがちです。かつてのグラフがこういう始動でした。しかし、これは、メシールのテニスとしてはよくありません。ラケットヘッドが上を向いていて、しかもラケットヘッドを動かすことで始動すると、インパクトまでのラケットの道のりが長くなってしまうからです。その結果、サーブが不安定になるのです。サーブの始動は、背筋で行うのがよいと思います。その結果、上体がしっかりと立ち、背中が曲がることがなくなります。

本稿の最初に書いたとおり、①のタイプでは、右手が始動してからしばらくして、左手のトスアップが始まります。(②のタイプでは、両手の始動はほぼ同時になるようです。)どのタイミングでトスアップを始めるかは、プレーヤーの打ちやすいタイミングということになります。メシールの場合は、ラケットを持つ手がちょうど体の右側(右腰のあたり)に来た時に、トスアップの始動に入ります。このトスアップの始動が右手の動きに対して早すぎると、右手(ラケットを持つ手)は、遅れて出てきますので、無理なフォームになってしまいます。(実は、私がそうです。)トスアップを開始した時に、ラケットが体の右側にまで来ているかどうかを確認すればよいと思います。

次に、テイクバックですが、テイクバックの目標は、よい(正しい)トロフィーポーズを作ることです。よいトロフィーポーズとは、右肘の角度を深く(60°~45°ぐらい)に曲げこまれ、ラケットヘッドを真上(または少しだけ前に倒してもよい)に立てた状態を作るということです。そして、左手は、まっすぐに上に向きます。この形での”ため”を作るのが、テイクバックの目標です。”ため”をしっかりつくるためには、ラケットヘッドが寝てはいけません。

テイクバックでは、いくつか注意する点があります。

テイクバックで、何よりも大切なことは、右手と左手の同期です。つまり、両手は同時に上がることです。昔から言う「バンザイポーズ」は、①でも②で変わらない原則です。右手と左手が体の両側で独立にバンザイするタイプ(①に多い)と、両手が体の前で一体でバンザイするタイプ(②に多い)がありますが、同期する原則は同じです。たとえば右手だけがトスアップで上がって、左手がまだ下がっているといる状態があるとすれば、それは修正せねばなりません。かつての松岡修造選手は、この原則に従わないサーブでしたが、特殊な打ち方だと考えるべきだと思います。

テイクバック始動からトップまでの間で、最も重要なことの一つが、腕の使い方です。腕は、(フォアハンドと同じように)肘から引きます。そして、その際、肩から肘まではあまり動かさず、レディーポジションで緩く曲げた肘を、だんだんと深く曲げていき、最終的に右肘の角度を深く(60°~45°ぐらい)に曲げこんだ状態を作るのです。その結果、ラケットヘッドは一度も下を向くことがなく、ロボットダンスのように肘だけが曲がるにしたがってラケットヘッドも上を向いていくのです。極端に言うと、テイクバックの間で動くのは、右肘だけということになります。この間、腰や肩は、大きくは回りません。特に肩はラケットごと大きく回したくなりますが、これはメシールのサーブでは誤りです。ラケットヘッドがぐるっと大回りをしてトップに来ないように、直線的にトップに移動するように気を付けます。

テイクバックで脇が開かないことも重要です。脇が開くとラケットが体から離れ、その結果、スイングに余分な力が必要になります。

テイクバックの終着点が、トロフィーポーズです。①のタイプでは、トロフィーポーズは、テイクバックトップになります。

トロフィーポーズで重要なことは、ラケット面が開かないことです。トロフィーポーズでセットされるラケット面は、意識としてはネット側を向くぐらいでも構いません。(実際には、ラケット面が3時の方向になります。3時よりも大きな角度(4時、5時)を向いてはいけません。)ボールにスピン系の回転をかけようとすると、ついつい、このタイミングでラケット面が開いてしまいがちです。しかし、それは、逆効果なのです。一度開いてしまったラケット面は、そのあと、制御ができなくなります。

トロフィーポーズでの右手のグリップの位置について、高さ方向と前後方向に2点についてコメントします。

まず、テイクバックトップ(トロフィーポーズ)における右手グリップの高さですが、あまり高くない方がよいです。グリップ位置が高くなると、ラケットヘッドが真上から体の後ろに向いてしまうからです。フォルトしないように、スピンがかかりやすいようにと、つい、グリップの位置を高くして、ラケットを高くセットしたくなりますが、これは逆効果になる場合があります。右手グリップは少なくとも、右の耳よりも下に来ることを意識してください。(これは、上記のテイクバックで、肘から引いて肘の角度を深くしていくことで、テイクバックでのラケット軌道を小さくすることで、達成できると思います。)ただし、グリップ位置が逆に低すぎると、その後のフォワードスイングに負担がかかりますので、あまり低くなりすぎないように注意が必要です。

また、テイクバックトップでの右手グリップの前後位置にも注意が必要です。グリップの位置が、体の後ろになってはいけません。グリップは、体の線(両方の肩を結ぶ線)よりも前に出ねばなりません。イメージでいうと、自分の視野の中にグリップが入っているぐらい、という感じです。これは、言い換えると、肩を張りすぎてはいけないということです。砲丸投げのように肩をそらせてバネを作るのは、テニスのサーブでは誤りです。テイクバックにおいて力が入るのは、(ストロークと同じで)背筋です。右肩ではありません。

トロフィーポーズの左手、つまりラケットヘッドが上を向いているタイミングでの左手も重要です。このタイミングにおいて、左手がまっすぐに、そして真上に伸びていなければなりません。このタイミングで、左手が斜めに上がっていたり、横に伸びていてはいけません。左手が前方向には伸びるが上に伸びない場合には、まずはトスアップで左手を前方向に伸ばしておき、トロフィーポーズのタイミングでラケットヘッドを上に向けてセットすると同じタイミングで、左手を真上に伸ばすという方法があります。ラケットと左手が並行になるので、タイミングがとりやすいはずです。

トロフィーポーズについて、②に関して気を付けることがあります。(②ですので、メシールのテニスには関係ありません。)これは、トロフィーポーズでのラケットセットが遅れないようにするということです。①では、トロフィーポーズにおいて左腕が伸びて、さらに右腕が折りたたまれ、ラケットヘッドが上を向くという形が作られます。トロフィーポーズに至るまでのスピードが早いプレーや、遅いプレーヤがいるでしょうが、早いか遅いかは特に問題にはならないと思います。

しかし、②の場合は、事情が違います。②はトロフィーポーズそのものがありません。(サーブ全体が連続動作になるため。)ただし、②の場合でも、トロフィーポーズという不連続な形がないだけであって、ラケットヘッドが後ろで回る途中にラケットヘッドが上を向く瞬間があるのは同じです。(これを、連続動作トロフィーポーズと仮に呼んでおきます。)

②において、連続トロフィーポーズのタイミングは、プレーヤーが意識せねばなりません。②の場合は、左手はトロフィーポーズになっているにもかかわらず、右手はまだ、セットされていないということがあり得るわけです。そうなると、遅れた右腕には、遅れを取り戻すために無理な力が入り、その結果としてサーブ全体が不安定になります。本来は、フォワードスイングが大きくなければならないのに、連続トロフィーポーズを含めたテイクバックが、無駄に大きくなってしまうのです。

これを避けるためには、②の場合でも早めに連続トロフィーポーズをとるか、トロフィーポーズを意識することが有効です。そうすることで、結果的には①になってしまうかもしれませんが…。

どうして、②で左手が伸びたタイミングでまだ右手がトップまで来ないかというと、無意識に、”ため”を作って、強い球を打ちたいからです。特に練習のように自由に打てる時は、最初は早いタイミングでのトップを作っていても、だんだんと、強い球を打ちたいという欲が出てきます。そうすると、少し、タイミングを遅らせて”ため”を作りたくなってしまうのです。その結果、サーブ自身が不安定になります。したがって、強いサーブよりも安定したサーブを意識して、早いタイミングでのセットを意識せねばなりません。

”ため”を作るのであれば、トロフィーポーズまでのタイミングを遅らせるのではなく、トロフィーポーズ(テイクバックトップ)を早めに作り、その状態を”ため”としなくてはなりません。つまり、①のタイプに近づくということです。②のタイプは、明確なトロフィーポーズがないため、それを勘違いしてしまいがちなのです。

トロフィーポーズ(テイクバック)の後に、フォワードスイングが来ます。つまり、体はボールをヒットしに行くのですが、この際、やはり、スピンをかけたいために、つい、ラケット面が開いてしまう(上を向く)ことがあります。これは、体と腕が別々に動くために起こります。ラケットヘッドが上を向いて、テイクバックが完了したら、その後は腕を動かさずに体の動きだけでフォワードスイングに入ります。それでも、(当然ですが)腕は動きます。しかし、ラケット面は上を向かず、安定したサーブを打つことができます。

次に、インパクトです。

ボールをヒットする位置ですが、およそ、頭の真上あたりになります。これが右側にずれると、スピン系のサーブが打てず、スライス系になります。が、弊害はそれだけではありません。ボールをヒットする直前に、ラケット面が開いてしまうのです。言い換えると、右手の手の甲が90°よりも下を向いてしまいます。そして、そのままボールをこすり上げてしまうと、ボールは不安定になります。(気持ちはスピン系なのに、ラケット面がスライス系になるため。)

言葉で説明しにくいので図に示しますが、インパクトにおいて、インパクトポイント(つまり、ボールやラケット面の中心)がある位置と、手首の位置は、上限関係ではありません。インパクトポイントは頭の前上にありますが、手首は右肩の上にあります。つまり、ラケットは、地面に垂直ではなく、左側に傾きます。右手の親指は、インパクトにおいて、手の上側ではなく手の左側に来るはずです。ラケットが右耳のすぐそばを通ると、図の左側になりがちです。ある程度、右手を体から離してスイングしたほうが打ちやすいはずです。

また、頭の真上でボール打つと意識すると、ことさらに背中を(弓のように)そらせなくてはならないと考えてしまう傾向があります。かつての、エドバーグ(エドベリ)のサーブを思い出します。イメージとしては、図に示すように、腕とラケットがまっすぐになり、インパクトは頭の前うに来るイメージです。しかし、この場合は、腕とラケットがまっすぐになるため、親指が上の方に来てしまい、ラケット面が開いてしまいます。

右肩が左肩に対して十分に高いところにあれば、図に示すように、ラケットを傾ける(右手の親指をまっすぐ上に向ける)ことで無理な体勢を取らずにボールを頭の上でヒットできるはずです。

ちょっとした思い付き ~メシール・ザ・マジシャン

今回は、映像を見てのメシールのテニスの分析ではありません。普段は、オンコートや日常で、「これはどうなっているのだろうか」「もしかしたら、こういうことではないか」と思いついたら、必ずDVDで確認してから書いています。たいていの場合は、何かしら、答えが、DVDの中にあります。この繰り返しの中で、メシールのテニスを分析してきました。それが、このブログの基本でした。

しかし、今回は、思いつきで書いています。というのは、今回の内容は、映像で確認するのが難しいからです。ただ、なんとなく、とてもよいアイデアのような気がして(笑)、書いています。

メシールのストロークは、多くの選手に、そして観客に、「コースが読めない」「どちらに打つか全くわからない」と言われてきました。そして、これが、メシールの最大の武器の一つでした。メシールには、いくつかニックネームがありましたが、ビッグキャットとは別に、マジシャンと言われることがありました。「そのまんま」な感じはしますが、やはり、相手の予想を裏切るボール運びが出来たからこそついたニックネームでしょう。

しかし、その技術を、どうすれば打つコースを隠すことができるのかを、誰も解説してくれません。なぜ、解説できないのでしょうか?

実は、私は、さしてテニスの技術力があるわけではないので、相手のコースを読むということがどういうことかすらも、よくわかりません。メシールのコースが読みづらいのが事実だとして、では、他の選手の打つコースであれば、なぜ読めるのでしょうか。相手の打つコースが読む方法が理解できれば、メシールの打つコースが読めないということも理解できるかもしれません。

いくつか、想像することはできます。一つは、自分の打った球のコースや勢いから、打ち返せるであろうという予測がある程度できるということです。試合が進んで、相手の技術力や癖が見えてくると、ある程度、打つ方向が予想できるようになるでしょう。特に、自分の打った球が厳しい時には、相手の返球のコースは、限定される傾向にあると思います。

もう一つは、相手のスイングからコースを読むということです。よく、プロの選手は、相手のフォームでコースが読めると言います。本当に、そんなことができるのでしょうか?私は、相手のフォームからコースを読むなどということは自分ではできないと思っているのですが、実は、無意識にそれをしている可能性も否定できません。

メシールが、コースを隠して打つことができるとすると、いくつか、想像できることがあります。①相手が打つと読む方向と逆の方向に打つ、②全く同じフォームからクロス・逆クロスに打つことができるので相手がコースを読めない、③相手が打った球が厳しい時に想像されるコースと逆に打つことができる。

①も、②も、そして③も、いかにもありそうです。そして、おそらく、メシールは、①も、②も、③もできたのではないでしょうか。(いつか、本人に聞いてみたいものです。)

しかし、そんなことができるのだろうか、、、という以前に、そんなことに、意味があるのでしょうか?

なぜなら、私は、上に書いたように、少なくとも意識しては相手のコースを読んでいません。(読む技術がありません。)が、相手の返球が、それほど厳しくないのであれば、正直なところ、どちらのコースに飛んできても困りません。先にわかっていたらより良いですが、相手のボールが厳しくないのであれば、コースが読めるということは必須ということではありません。

逆に言うと、コースを隠して打っても、打つ球が厳しくないのであれば、コースを隠して打つことは無駄な努力ということになります。

そうすると、上の①~③以前の問題として、どういう時にコースを隠して打つことが有効であるかということを、まずは理解する必要があるわけです。その分析は、DVDでもできると思いますので、メシールの相手が裏を書かれているシーンを中心に、調べてみようと思います。

さて、前書きが長くなりましたが、今回は、②について考えてみたいと思います。同じフォームからコースを打ち分けるという技術についてです。もし、本当に、ボールをヒットする瞬間まで打つコースを決めないでもよいとすれば、間違いなく、相手はボールをヒットするコースを読むことができません。(打つ本人さえ、わからないのですから。)

どうすればこんなことができるのだろうかと考えているときに、ふと、思いついたことがあります。以下は、すべて、フォアハンドストロークの話です。

フォアハンドで、もし、打つ瞬間にコースを変えるのであれば、まず、逆クロスに打つ振りをしておいて、直前に順クロスに打つのがよいように思います。少なくとも、その逆は難しいでしょう。順クロスと決めた時点で体が開くため、そこから逆クロスは打てないからです。

と、最初は思っていました。

しかし、もしかしたら、だからこそ、メシールは相手の裏をかけるのではないだろうかと、思ったのです。つまり、メシールは、フォアハンドストロークにおいて、まず順クロスに打つ準備をしておいて、そこから逆クロスにボールを打っているのではないか、と。

どうしたら、そんな”器用な”ことができるのでしょうか?インパクト直前のラケットの動きを考えてみましょう。

順クロスに打つためには、フォワードスイングにおいてラケットのフレームをネット方向に動かすイメージが有効です。言い換えると、その際に、ラケット面(ボールを打つ側)は自分の体の方を向いています。そのままボールをヒットすると、ラケット面はネットよりも少しだけ左側(11時の方向)を向くために、ボールは順クロスに飛んでいきます。このフォワードスイングにおいて、ラケット面(の法線)はどんな動きをするでしょうか。

おそらく、法線はまず体(例えば9時方向)に向き、インパクトに向けて、10時、11時と動いていくと思います。11時で打つとフォアハンドの順クロス方向に、12時(まっすぐネット)に向けば、相手のいる場所にボールを打つことになります。

そうです。つまり、10時、11時、12時と向いたラケットを、そのまま1時方向に向ければ、逆クロスにボールを打つことができるのです。もし、12時、11時、10時と時計と逆回りに動いているラケット面を急に1時方向に向けるというのであれば難しいと思います。しかし、10時、11時、12時と動いている面を1時に持っていくのは、不自然ではなく、また、不安定でもありません。

これは、一般的な厚いグリップのスピン系フォアハンドでは、絶対にできないうち方です。スピンボールを打つ際には、ラケットの法線は必ず時計と反対周りをします。したがって、一度、順クロスと決めたストロークを逆クロスに切り替えることはできないのです。(打点を後ろにずらしてラケット面がまだ1時方向を向いているときにインパクトすれば、逆クロスに打つことは可能ですが、それは、フォームで相手には予想されてしまうでしょう。)

メシールのテニスでは、テイクバックでラケット面が体の方向(例えば9時の方向)を向いている点が重要なのです。一般的なワイパー系のスイングでは、手首を後ろに折り、ラケットのグリップ側のトップをネット方向に向けることで、ラケット面を伏せます。その際、ラケット面の法線方向は、基本的には地面方向になりますが、水平成分を取り出すと、それは外向き(例えば2時方向)になっているはずです。この点が、薄いグリップのメシールと、他の(現代テニスの一般的な)ストロークと、全く異なる点なのです。

かなり大胆な予想(仮説)ですので、この内容については、検証が必要です。そして、②についてであれば、ビデオで確認ができるかもしれません。分析結果については、また、いつか報告をしようと思います。

2011年5月22日日曜日

メシールのテニス(21) サーブ(その1)

オンコートでアマチュアプレーヤーのサーブを見ていると、多くのプレーヤーのサーブのフォームの中には多くの無駄な動きが入っていることに気が付きます。アマチュアっぽいフォーム、と言えばよいでしょうか。私自身のサーブのフォームもそうです。ビデオで自分のサーブを見ると、いかにもアマチュアのサーブです。サーブのフォームがどんなに特徴的なプロテニスプレーヤーであっても、アマチュアプレーヤーよりは動作がシンプルなのです。

その理由はよくわかりませんが、次のような理由になると思います。アマチュアであっても、サーブは2本連続デフォルトまたはネットするとポイントを失います。どんなフォームでもよいので、まずはサーブを入れることが重要になります。

そうすると、フォームのどこかに無駄な、または過った動きがある場合には、それを修正するための、別の動きが入ります。その結果、いわゆるつぎはぎだらけの、とにかくフォルトしないためのフォームが完成するというわけです。屋上屋を重ねるという言葉を思い出します。

グランドストロークの場合には、多少の無駄な動きやフォームの誤りがあっても、なんとか相手のコートにボールは入るものです。したがって、屋上にさらに屋根を作る必要がサーブよりも小さいのだと思います。サーブは、グランドストロークと比較して一瞬にして終わりますので、ちょっとした(微妙な)誤差が、大きな結果の違いになって現れます。ゴルフでいうと、ドライバーショットでしょうか。

つぎはぎだらけのフォームから脱却して、メシールのようなきれいなサーブを打つためには、なによりも正しいフォームを身につけなくてはなりません。正しいフォームで打つことで、誤った動きを修正するために別の誤った動きを重ねる必要がなくなり、全体としてきれいなサーブを打つことができます。きれいなフォームは、安定したサーブにつながります。

実際の試合(とくにシングルス)では、リターンミス、ダブルフォルトを含めて、サーブで決まるポイントが非常に多いので、サーブは重要です。サーブの調子が悪いと、ゲーム全体のリズムも悪くなるからです。

メシールのサーブは、迫力はありませんが、きれいな(美しい、とは少し違い意味になりますが)フォームです。どの試合でも、70%以上のファーストサーブ率を誇っており、ウインブルドンではサーブアンドボレーをするだけの威力のあるサーブです。プロフェッショナルな技術という点は別として、アマチュアの参考として学ぶところが少なくないメシールのサーブを、次回以降で分析してみようと思います。

2011年5月20日金曜日

メシールのテニス(20) 移動してボールを打つためのフットワーク(その2)

メシールのフォアハンドのフットワークについて、メシールのテニス(17)で、”まず左足、そして右足を踏み出しながらボールをヒットする”と書きました。フォアハンドがオープンスタンスのメシールの、独特の打ち方です(当時は)。さて、今度は、戻り方です。どうやって、元のポジションに戻るでしょうか。

メシールのフォアハンドのグランドストロークはボールをオープンスタンスでヒットしますので、振り終わった後に足はちょうど開いた形になっています。

そこから、まず、右足(外の足)を左方向に踏み出します。ここは、フォアハンドの踏み出しと同じパターンです。外の足が先に動きます。

次に、左足が動きます。ここで、また、体が正面を向き、足を開いた形になります。

ここから、メシールは、一つ、サイドステップを入れます。つまり、右足を左足のそばまで寄せて、そのあと、左足を左側にステップします。そして、このサイドステップが、次のボールへのスプリット・ステップになるのです。

この戻り方は、もしかしたら、テニスの基本なのかもしれません。つまり、°のプレーヤーも同じステップなのかもしれません。が、前書きにも書いたとおり、私はメシールのテニスにしか興味がなく、ほかの選手のことが分からないのです。(したがって、テニスの基本とメシール独特の要素がごっちゃになっています。)

ここから先は、一般的な端ではなく、私個人の話なのですが恐縮ですが、私のフォアハンドでは、ボールを打つまでのステップは、幸いにも、メシールのテニス(17)の通りでした。どうやら、無意識に、正しいフットワークをしていたようです。(オンコートで、頭で考えながらステップを踏むなんてことは、できませんので。)また、戻る方のステップも、上の通りでした。この点でも、幸いなことに、メシールのフットワークを踏襲していました。

ただし、ラリーが続くと、残念ながら、このステップがだんだん乱れてきます。最初の左足が右足になったり、最後のサイドステップの後に、再度、スプリットステップをしたり・・・。

どうすれば、徹底したフットワークが身につくのかわかりませんが、まずは、無意識に正しいステップが踏めるような日常でのトレーニングが必要なようです。

2011年5月15日日曜日

メシールのテニス(19) バックハンド(左足と背筋によるフォワードスイング)

メシールのテニスにおいて、バックハンドは、フォアハンドのほどは際立った特徴がないように思えます。それは、テニスにおいて、フォアハンドの自由度(=選手ごとのバラエティー)がバックハンドよりも大きいからだと思います。

しかし、さすがというか、そのバックハンドも、メシールの独特の技術が見え隠れします。

メシールのバックハンドの特徴は、踏み出す右足が0時方向近辺にあることです。つまり、”背中をネットに向けない打ち方”です。このことは、メシールのテニス(15)メシールのバックハンド(打点を前に!)でも書きました。もちろん、左方向に大きく振られた場合には、両足をクロスに(つまり、右足を左足に対して大きく左側に)踏み出してネットに背中を見せた打ち方をすることもあります。ただし、ここで議論するのは、自分のいる場所にボールが来る場合、つまり、フットワークを伴わない基本形です。

メシールのテニス(15)では、これを念頭に、バックハンドストロークを分析しました。しかし、踏み出しが0時方向近辺であるメシールのバックハンドでは、どうしてもボールがスライスして左側に流れて行ってしまいがちです。そうならないように打つと、今度は、ボールに力が伝わりにくい。

これを避けるために、どうすればよいでしょうか。

そのためには、テイクバックトップでラケットヘッドが下がり、しかも、左膝と同じ方向を向くことです。ここで、テイクバックトップというのは、本当のテイクバックトップではありません。メシールのバックハンドでは、テイクバックトップで、ひょいっとラケットヘッドを上げることがあります。メシールのテニス(15)の④でも書きました。その後、ラケットは、”真の”テイクバックトップにセットされます。ここでは、その”真の”トップの場所です。

メシールのテニス(15)の④では、この際、ラケットヘッドを下げると書きました。もちろんこれは正しいです。ただし、加えて注意することがあります。

それは、ラケット面が左ひざと同じ方向を向くということです。これは、重要な意味を持っています。すなわち、その後、ラケット面の押し出しは、左ひざの押し出しと同期するということです。この押し出しは、ラケット面がボールをヒットするまでは続きます。結局、インパクトまでは左足の踏み出しが仕事をするわけです。

この打ち方をするためには、テイクバックトップでは、ラケット面は左膝が踏み出す方向に面が向いていなくてはなりません。そうしないと、ひざの動きとラケット面が同期しません。左膝と一緒に、ヘッドが下を向いた状態のラケット面を押し出していくのです。この特に気を付けたいのは、ラケット面が絶対に上を向いてはいけないということです。右足を深く踏み込まないで、体の線(右肩と左肩を結ぶ線)に沿って体と一緒にラケットを引くと、どうしてもラケット面がやや上に向いた、スライス的なラケット面でのテイクバックをしたくなります。仮にその場合でも、テイクバックトップ(ラケット面が左ひざの前)ではラケット面は地面に垂直でなくてはなりません。ここで面が開いていると、安定したバックハンドストロークは打てないのです。

では、インパクト後はどうなるか。これ以上は左足は同期できません。インパクト後は、ボールを腕で押し出さなくてはなりません。つまり、ここから先は、背中(背筋)の仕事です。

この背筋が重要です。なぜなら、この点が、一般的なバックハンドとは異なるからです。

一般的なバックハンドでは、この時点では右足が大きく左側に踏み出されています。ボールを打つ力は、背中がネット方向に向いている状態を元に戻す力、つまり、体のねじりというか、腰の回転の力でボールを打つわけです。メシールは、前半を左ひざ、後半を背筋が担当します。

これを実現するためには、(まだ、オンコートでは試していませんが)おそらく、バックハンドで腰の回転を一切使わないという気持ちになることかもしれません。回転で打つのは楽ですので、つい、そちらに逃げがちです。それを我慢することで、他の推進力が必要になるわけです。

背筋でボールを運ぶ際には、ラケット面は、必ず、ラケットを縦振りせねばなりません。ラケット面がスイング進行方向に向かってすいちょにくなり、縦方向に、下から上に打つのです。ここで、ラケット面とスイング進行方向が90°になっていないと、ボールをカットしてしまうことになり、ボールのコントロールは難しくなります。また、スイングの力がボールに伝わりにくくなります。”厚い当たり”ができなくなるわけです。

ラケットヘッドを落とすのはフォアハンドでも同じですが、右手の力を抜くと自然とヘッドが落ちるフォアハンドと比べると、両手でラケットを持っているバックハンドは、つい、ラケットヘッドが上がりがちです。慣れるまでは、意識をしないと、ラケットヘッドがなかなか下がらないかもしれません。体の自由度の小さいバックハンドでは、インパクトのタイミングなどに融通が利かないため、両腕の力を抜くのは、なかなか勇気がいるからです。

ラケットヘッドを意識的に下げる方法として、バックハンドにボールが来たら、ほんの少し、前傾姿勢を取る方法があります。(ほんの少し、気持ちだけです。)ほんの少し前傾するだけでも、ラケットヘッドは、意識としては、かなり下げることができます。ただし、実際に大きく前掲するのは、”状態を立てて打つ”というメシールのテニスに反します。この方法は、あくまで気持ち程度だけということになります。

メシールのプレーを見ていると、バックハンドでは上体を少し前掲してボールを打つことがあります。特に、後ろ(背中の側からネット方向に)からメシールのバックハンドを見ると、インパクトの瞬間に背中の線がきれいに傾くのでわかりやすいです。これは、上体が前傾していることと同時に、背中の線がまっすぐに伸びていることを示しています。上体は、前傾はしても、軸を曲げてはいけません。(それでは、背筋力を使うことができません。)背中の軸をしっかりと伸ばすのは、メシールのストローク(フォアハンド・バックハンド)の基本です。

打点が腰よりも高い時は背中は傾きません。打点が高いので、傾けることができません。前傾があるのは、インパクトが腰より低い(たとえば膝の高さ)場合です。ビデオを見れば、ラケットがきれいに下から上に振りあがるのがわかると思います。さらに低い球では、メシールはしっかりとひざを曲げて、腰を落としてボールを打ちます。相手のボールが深い場合(ショートバウンドまたはライジングでボールをヒットする場合)は、逆に、しっかりとひざを落として上体を立てて打ちます。

フォアハンドでは、このような状態を少し倒す様子は見られません。実は、一つだけ、必ず少し前掲するフォアハンドがあります。球出しの場合です。オンコートで確かめるとわかりますが、上体をしっかり起こして球出しをするのは、案外、コントロールがしにくいものです。これは、体の中心線(軸)とラケットの軌道(下から上)がほぼ平行になるからだと思います。体をほんの少し倒すと、ラケットを下から上に振りやすい。これは、バックハンドで上体をやや倒すと下から上へのスイングが容易になるのと同じ理由です。

(補足) メシールの試合を見ていると、左側に振られている場合、つまり、バックハンドを打つのがコートのかなり左端の場合には、”通常の”右足を大きく踏み込んで、ネットに背中を見せるうち方でバックハンドストロークを打っています。この場合に、腰の回転をどのぐらい使っているのか、逆に言うと左膝の送りと背筋をどのぐらい使っているのか、もう少し、詳しく調べてみようと思います。

メシールのテニス(18) 移動してボールを打つためのスプリットステップ

以前、別項において、「メシールはグランドストロークでスプリットステップをしない」と書きました。すみません、これは間違いです(笑)。基本的には、メシールは、グランドストロークにおいて、基本的にはスプリットステップをしています。(シュテフィー・グラフのような飛び上がるスプリットステップではないですが。)そのうち、ブログのほうを修正しておきます。

といっても、では必ずスプリットステップをするかというと、確かに、ほとんど(まったく)しないこともあります。いわゆる、べたっと足を付けて始動する場合が、確かにあるのです。

メシールのテニス(17)で書きましたが、ボールが体から遠い場合には、その方向とは逆の足から踏み出し始めると書きました。(正確には、「テニスからテニスへ」にそうありました。)つまり、スプリットステップ後に、反対側の足から踏み出すはずです。

しかし、反対側の足から踏み出すというのは、コートで試してみると、案外、苦しいものです。たとえば、相手のボールがフォア側に来た場合には、小さく右足をそちらに動かしてから左足を踏み出したくなります。その方が、体は楽です。

その視点で、メシールのスプリットステップを注意深く見ていると、時々、ずる(?)をしているように見えます。いや、ずるというよりも、高等なテクニックというべきかもしれません。

つまり、スプリットステップのタイミングを少し遅らせて、着地するときに、ボールの方向に小さく踏み出しているのです。この技術を、どのような場合に使っているのか、まだ確認はしてないのですが、確かに、この方法を使うと、一歩を使わずに最初にボール側に体重をかけることができますので、フォアハンドでいうと左足の第一歩がかなり大きく踏み出すことができます。どうして、スプリットステップ中にボールの方向が読めるのか、本当に不思議です。もう少し、分析を続けてみます。

社会人からテニスを始めて草トーナメントで優勝した方法というブログにも、「テニスで大事なフットワーク スプリットステップ」でスプリットステップで着地するときには、次のステップの準備をする(右方向なら、左足で地面をける準備をする)とあります。意外に、それほど特殊ではない技術なのかもしれません。今度、オンコートでも試してみます。また、上記の「テニスからテニスへ」でも、ケン・ローズウオール(往年のオーストラリアの名選手)が、打球方向の予測に長けていたことが書かれてあります。案外、メシールのこのスプリットステップに関係があるのかもしれません。

2011年5月14日土曜日

メシールのテニス(17) 移動してボールを打つためのフットワーク(その1)

前書きあるように、このブログでは、プレーヤーが右利きということを前提としています。(メシールが右利きですので、このブログでは、常に右利きを前提として書いています。)ご了解ください。

さて、最近、私は、メシールのテニス(16)で紹介した「テニスからテニスへ」というブログをじっくり読ませていただいています。この著者のテニス技術解説は素晴らしく、メシールのビデオを何100回となく見ることで初めて理解できた技術の多くがあっさり(?)と書いてあり、もっと早くこのサイトを知っていれば…と思うこともしばしばです。テニスは足ニスと書きましたが、このブログにも同じタイトルの項目があります。

その中に、特に大切だという項目の一つが、フットワークの基本です。その内容はごく簡単で、「右方向に移動するときは左足をボール側に踏み出す動作からスタートする(逆に、左方向に移動するときは右足から)」というものです。こんなこと、おそらく、テニス上級者(中級者も?)にとっては当たり前だったのかもしれませんが、私は、そんなことすら知りませんでした…。

そして、メシールのテニスでも、この基本はしっかり守られています。フォアハンド側のボールは左足から、バックハンド側は右足から踏み出しています。

しかし、このことは、以前、メシールのテニス(11)テイクバック始動で書いた「フォアハンドは右足を引くところから始動する」ということと、全く反対です。

どちらが正しのでしょうか?

実は、メシールのテニスでは、どちらも正しいのです。説明しましょう。

上の原則(フォア側のボールは左足を右側に踏み出すことから始動)は、正しいです。ただし、それは、ボールが十分に遠くに来た場合には、です。

実は、フォアハンド一つとっても、ボールをヒットする場所は、何通りもあります。
①今いる位置、②今いる位置からネット方向(0時方向)に前方、③今いる位置から右斜め前方、④今いる位置から右横方向(3時方向)、⑤今いる位置から右斜め後方、⑥今いる位置から真後ろ方向(6時)と6通りあります。(もちろん、それらの中間もありますが。)さらに、今いる位置からの距離が近い場合、遠い場合などを含めると、実は、かなりのパターンがあることが分かります。
そんな風に考えると、テニスは、止まったボールを打つゴルフと比べると、ずいぶんと複雑なスポーツなのですね…。

さて、実は、これまでの私のメシールのテニスの分析は、すべて、上の①の場合のみ、つまり、もっとも簡単なボールを打つ場合のみを考えてきました。(したがって、参考にしたメシールのビデオは、ほとんどが試合前の練習ビデオです。ゲームの中では、①の場所にボールが来ることは、あまりありませんので。)

念のために書いておきますが、①については、ボールが体から近い・遠いということはありません。なぜなら、①(と、②と⑥)は、体に向かってボールが飛んでくるからです。したがって、①で体から遠い時というのは、②になります。④には体に近い・遠いという場合がありますが、①にはないのです。(なお、⑥はスピンがかかったボールや深いボールなどで、下がって打たなくてはならない場合ですので、①とは異なります。)

先に書いておかなければならなかったのですが、実は、このブログは、他人にお見せするというよりも、自分のメモ代わりに書き始めました。こんなに記事を書くとは、実は、最初思っていませんでした。したがって、たとえば、上のように、①の場合だけを考えて書いていますというような、詳細な説明をせずに記述していることが多くあります。今は、ほとんど読者のいないブログですので、そのあたりの粗雑さはまあいいかなと勝手に思っていますが、将来、きちんと整理して書き直したいと思っています。(実は、それよりも、このブログを英語化する方に興味があるのですが(笑)。)

さて、本題に戻りましょう。

上記の①~⑥について、メシールのフットワークはどうなっているでしょうか。今度は、1987年Japan Openのメシール対福井の試合から、それらのフットワークを拾っていこうと思います。

まず、①については、すでに書いたとおり、最初に右足を引きます。試合においては、①でボールを打つことができる時というのは、最も余裕を持って打つことができる場合ですので、メシールは、必ずなにか”しかけて”います。特に、福井のそれほど高速ではない(おそらく、トッププロと比較するとかなり低速な)サーブの場合、リターンストロークは、かなりの比率で①と言ってもよいと思います。

さて、次によくあるのが、④です。つまり、”真横に移動してボールをヒットする場合”です。この場合は、「テニスからテニスへ」にあるように、左足からスタートします。①の場合とは、全く逆です。

「テニスからテニスへ」では、左足からスタートして、左→右→左の最後の左足の踏み出しが、フォアハンドの踏み出しになるとあります。ここだけが、メシールのテニスでは異なります。というのは、メシールのテニス(16) メシールのフォアハンド(基本はオープンスタンス)で書いたように、メシールのフォアハンドの基本はオープンスタンスだからです。したがって、メシールのテニスでは、左足からスタートして、左→右でボールをヒットします。つまり、たった2歩目でボールを打ってしまうのです。

これを、アマチュア(しかも中級クラス!)が真似するのは、かなり難しそうに思います。第一、たった2歩では、コートの右端近くに来たボールが打てないのではないでしょうか。

ということで、早速、試しに、オンコートで試してみました(笑)。

まず、驚いたのですが、しっかり腰を落とし、ひざを曲げて足を踏み出すと、左→右で踏み出して、最後にオープンスタンスでラケットを伸ばすと、案外、コートを広くカバリングできるのです。私は、身長が170㎝弱であまり背が高くない(足はさらに長くない(笑))方ですが、それでも、シングルスラインに対して、ラケットヘッドは50㎝程度のところまでは届いていました。おそらく、私のレベルで、このぐらいぎりぎりを狙ってボールを打たれることがほとんどないでしょうから、事実上、問題はなさそうです。

なお、腰を落とし、膝を曲げるというのは、しっかりと歩幅を取るためには必要です。フォアハンドストロークではあまり膝を曲げて、腰を落としている印象のないメシールですが、確かに、遠い球が来た場合には、しっかり腰を落としています。この”2歩打ち”で安定したストロークをするためには、最後の右足の踏ん張りや、上体の安定感が必要です。しっかりと膝を曲げて、腰を落とさなくてはならないのです。

試しにバックハンドも試してみました。バックハンドは両手打ちですから、最後に右足を踏み込まなくてはボールをヒットできません。つまり。右→左→右の3歩目で打つことになります。この場合は、もちろん、コートの端まで十分にラケットは届きます。(ただし、メシールのバックハンドでは、最後の右足は、あまり深く踏み込みたくないので、やはり、左足の踏み込みでできるだけサイドまで動いておきたいところです。)

さて、ステップを確認したので、今度は、ボール出しをしてフォアハンド(バックハンドも)も打ってみました。コーナーぎりぎりというほどではないですが、①のようにその場で打つことはできない場所への球出しです。腰(と膝)に気を付けて、上体が揺れないように(ぶれないように)気を付けて・・・。するとどうでしょうか。今まで、もっと細かく足を動かしていた時よりも、ずっと安定にボールが打てるのです。10本ほど打ってみたのですが、偶然もありますが、1本もミスショットをしませんでした。

これは、正直なところ、意外でした。たった2歩しか動けないのに、細かく足を動かすよりも安定したショットが打てたのです。これは、いくつか、理由があると思います。一番の理由は、時間的余裕ができたことです。バタバタと細かいステップでボールの距離とタイミングを計るよりも、たった2歩しか動かさないのですから、時間的な余裕ができます。ただし、歩数が少ない分、ボールと体の微調整が難しくなります。世界のトッププロは、練習と才能によってこの問題を回避しているのかもしれませんが、私のようなレベルでもそれが可能なのかどうか。これは、もう少し、オンコートで試してみようと思います。おそらく、”時間的余裕と微調整のむずかしさ”と”微調整ができるが時間的余裕がなくなること”とのせめぎあいになるのだと思います。

さて、しかし、この2歩打ちも、球出しのボールが勢いのない場合には、少し様子が変わりました。ボールは遅いので時間的余裕はあるのですが、相手のボールの勢いを使ってボールを打つことができないために、自分で足を踏み出して打たなくてはボールに力を与えることができないのです。この場合は、時間的余裕もあることを活かして、もう一歩、最後に左足を(しかし、オープンスタンスで)踏み出してもよいかもしれません。

今回は、球出しのボールで試したのですが、この2歩打ちが、球出しではなく、実戦でも可能なのかどうか?正直なところ、よくわかりません。メシールのフォアハンドストロークは、体を無理に使うことなく打ちますので、それ自身は、アマチュアでもコピーが可能だと思います。しかし、2歩打ちのように下半身をしっかりと打たねばならない場合に、ボールと体の距離感の微調整が難しいこの打ち方が有効なのかどうか、これは、オンコートで試してみるしかありません。

さて、話を戻します。①と④以外の場合に、メシールの打ち方はどうなっているのでしょう。実は、①と④以外については、まだビデオの分析ができていません(笑)。また、時間があるときにチェックしてみます。

最後に。上の「テニスからテニスへ」には、テニスが上級かどうかは、止まって打つボールを威嚇に強く打てるかではなく、ボールのところまで移動してから打つ、ということがどれだけできるかだとあります。多くのプレーヤーが(止まって)ボールをどれだけ強く打てるかを気にして、フットワークを考えないと。私もそう思います。

とはいえ、止まって打てる段階で、正しいストロークを身に着けないでフットワークが身についても、それはそれで、結局のところ、「試合には勝てるが、あるところから先に上達しない」プレーヤーになります。そのことを知っているからこそ、私は、まずは、「止まって打つ」時のストロークの形にこだわってきました。実は、このブログは、私自身の技術進歩と並行して進んでいます。100点ではないかもしれませんが、メシールのフォアハンドについて、私は、やっと、止まって打つ形(つまり、スイングの基本形)は、おおよそ理解できたと思います。

しかし、メシールのテニスの美しさは、スイングだけではありません。フットワーク、戦略、それらが相まっての美しさです。したがって、私のメシールテニス追求の旅は、まだまだ、続きます。

2011年5月10日火曜日

メシールのテニス(16) メシールのフォアハンド(基本はオープンスタンス)

メシールのフォアハンドのちょっとしたメモです。今まで、はっきりとオープンスタンスということに触れていなかったような気がするので、このことについて書いておきます。

メシールのフォアハンドは、右足を引くことから始動するということは何度も書いていますが、そのあとの左足の踏み込みは、原則はオープンスタンスです。右足を引いた後に(両手でラケットを持つために)左肩が深く入ってくると、体が自然に横を向くため、つい、左足がまっすぐ前に(右足とネットを結ぶ線上に)出てしまいがちです。が、それは、正しくありません。あくまで、左足は、斜め前方(ネット方向に向けて45°程度)に踏み出さねばなりません。オープンスタンスが、メシールのフォアハンドの基本です。

オープンスタンスの時代はなぜやってきたかというWebサイトに、かつての日本の名選手である九鬼潤さんとメシールのプレースタイルがそっくりで、当時は珍しいオープンスタンス(のフォアハンド)だったとありました。(このブログの著者はレッスンプロのようですが、ほかの記事も面白く読ませてもらいました。)

私自身も、自分のストロークをビデオに撮ってよく見るのですが、確かにフォアハンドをオープンスタンスで打っていない時はスイングが窮屈で、”美しくない”のです。(オープンスタンスのときは美しい!という程ではないですが(笑)。)特に、左肩が入って打っているときほどオープンスタンスになりにくいので、、左足を45°(以上)で、つまり時計の9時から10時半の方向に意識的に踏み出すように気を付けた方がよいかもしれません。

上のWebサイトには、Sébastien René Grosjean(セバスチャン・グロスジャン)がオープンスタンスで(フォアハンドを)打つ選手だとありました。Youtubeで、この選手のプレーを見ました。確かに、「まっとうなオープンスタンス」の選手です。グリップがメシールのように薄くないので、ループ型のストロークで、メシールほどには私の”美しい”という琴線(?)には触れませんが、しかし、ストロークのときのスタイルは美しいと感じました。自分でも理由はよくわかりませんが、オープンスタンスのフォアハンドというのは”美しいもの”なのかもしれません。このことについても、また、考えてみます。

ところで、このYoutubeの映像を見ていて面白かったのですが、グロスジャンのバックハンドは、メシールと同じように、右足(踏込足)がクローズドになりません。ほぼ0°方向(ネット方向)に踏み出しています。(したがって、私は、この選手が結構気に入りました(笑)。)

フォアハンドがオープンスタンスの選手は、バックハンドもクローズドになりにくいのでしょうか。オープンスタンス(バックハンドの場合は、クローズドにならないスタンスは)、テニスから身体を自由に開放してくれるのでしょうか。美しいテニスの演出には必要な要素なのでしょうか。

確かに、私レベルのプレーの映像であっても、クローズドスタンスのストロークは「頑張ってるけれども自由に解き放たれてない」、美しさを感じないのです。

2011年5月8日日曜日

Winning Ugly (かっこ悪くても勝つ!)

ご存知かもしれませんが、Winning Uglyとは、メシールと同時代を戦ったアメリカ人選手の一人であるブラッド・ギルバードの著書のタイトルです。さすがに直訳では日本では売れないので、日本語版では「読めばテニスが強くなる」という、当たり障りのない(?)タイトルになっています。

ニューヨークのテニス仲間さん(Tennisunakama in New Yorkさん)が、このWinning Uglyということについて、面白い文章を書いておられます。タイトルは、そのままWinning Uglyです。美しいテニスと、勝つためのテニス。フェデラーがトップから陥落することで、美しいテニスの呪縛から放たれて、勝つためのテニスに向かうことができるか、という内容です。とても面白い視点です。

フェデラーもメシールも、当然ですが、勝つことよりも美しいテニスを優先して選択したとは思えません。勝つために選んだ道が、美しいテニスだったのです。一方、Winning Uglyの例として挙げられているナダルは、実は必ずしも美しくないとも言えません。恵まれた体にモノを言わせて強引にヒットするストロークは確かに美しくはないのですが、その一方で、見事なまでにそれを実現するあのバランス感覚は、ある意味では、究極のバランスであるとも言えるでしょう。(それでも、美しいかと問われると、悩みますが。)

私は、ずっと、美しいテニスこそが強いテニスであると信じてきました。いえ、今でも信じています。なぜなら、美しいテニスには無駄がなく、身体能力を100%近く引き出すことができるのは美しいテニスだからです。

1位から陥落した(今や3位になりました)フェデラーの進む道は、Winning Uglyではないと思います。フェデラーは、美しいテニスによって、身体能力を100%引き出さねばなりません。今までが、90%だとしたら、99%を引き出すのです。ナダルのプレースタイルは、絶対に、身体能力を100%は引き出せません。そして、おそらく、現在以上に能力を発揮することは難しいでしょう。(本当に体を壊してしまうからです。)フェデラーは、ナダルよりもはるかに劣る身体能力のポテンシャルを、パーセントを上げることで越えなくてはならないのです。200のポテンシャルを50%発揮するナダルと、100のポテンシャルを100%発揮するフェデラー。この縮図の中で、フェデラーが再帰することができるのか。再帰できた時、それは、おそらく、究極の美しいテニスがそこにあるに違いありません。

2011年5月6日金曜日

メシールのテニス(15) メシールのバックハンド(打点を前に!)

メシールのテニス(14)で書いたように、薄いグリップのメシールのフォアハンドストロークの打点ですが、厚いグリップの他のプレーヤーと同じように、打点は前に置きます。メシールのストロークの懐が深い(打点が後ろになる)ことは、ここでは、一旦、忘れてください。(メシールの場合でも、他のプレーヤーの場合でも、打点が後ろになるのは特別な場合だけなのです。)そして、打点が前であるという原則は、フォアハンドだけではなくバックハンドでも同じです。実は、メシールのバックハンドの打点は、他の両手打ちバックハンドプレーヤーよりも前なのです。

なぜ、メシールのダブルハンドバックハンドの打点は前なのでしょうか。そこに、メシールのバックハンドの”謎”を解くカギがありそうです。今回は、メシールのバックハンドを分析してみたいと思います。

私は、メシールのバックハンドストロークをビデオ(スローモーション)で分析し、次のステップから構成されていることを確認しました。①レディーポジションでへその前でラケットをセット、②左足を引きながら手を動かさないテイクバック始動、③テイクバックでラケットヘッドを下げる、④②に続いての右足の踏み込み、⑤フォワードスイング(左足と右足の使い方)の、全部で5ステップです。

では、以下に、①から⑤までを、順を追って説明していきましょう。

①については、フォアハンドと同じです。レディーポジションでは、へその前でラケットを構えます。女の子のもじもじポーズでよいと思います。(レディーポジションでは、ボールがフォア側に来るかバック側に来るかわからないのですから、①のスタイルがフォアハンドと同じになるのは当然です。)

②テイクバック始動時のポイントは、原則的にはフォアハンドと同じです。へその前でラケットを持っている両手を動かさずに、体と一緒にテイクバックを開始します。この際に重要なのは、へその前からグリップ(手)を動かしてはいけないということです。体の回転の分だけ、手(腕)が後ろに回っていきますが、その手は、常にへその前です。
ここで大切なのは、足の動きです。メシールのバックハンドでは足の動きが重要である(すべてを支配する)という点は、フォアハンドと全く同じです。(テニスは足ニス!です。)最初の一歩目を、右足から動かしてはいけません。(体の向きを作るために、右足が小さく動くのは構いませんが、右足を大きく踏み出してはいけないということです。)右足を前に出すことで体を横に向けてしまうと、次に左足を引いた時に右肩が前に出すぎてしまいます。この場合、背中がネットの方向を向いてしまうのです。肩手打ちのバックハンドでは、このように背中をネットに向け、右肩を軸にして体を回転して打つ方法もあります。たとえば、クリス・エバートがそうです。しかし、メシールのバックハンドでは、右肩を回転軸にして打ちません。(バックハンドでは、回転力を主推進力としては使いません。)したがって、メシールのバックハンドでは、背中はネット方向には向かないのです。背中は、テイクバックトップであっても、ほぼ270°(つまり、ベースラインに沿った方向)にしか向きません。相手側から見たら、バックハンドにおいては、メシールの背中はほぼ見えないことになります。
このように、右肩を入れすぎない、背中を270°以上回転させないためには、一歩目は、右足ではなく、左足を引くことからスタートせねばなりません。左足は、ネット方向に対して90°以上動かしてはいけません。つまり、動かした左足は、ネットと右足を結ぶ線よりも後ろ(180°以上後ろ)に移動することはないのです。ボールとの距離に依存しますが、左足は、ネット方向から見て180°以内(135°~180°ぐらいになると思います)に移動することになります。感覚的に言うと、体を開いたまま左足を引くというイメージになると思います。この点は、後述の”右肩を入れない”という目的のためには重要です。
左足を引く動作の間は、上記に示すように、ラケットを持つ手は動かしてはなりません。言い換えると、左足を引く動作、それに応じて自然に上半身が横を向いていく動作、へその前に固定したて・腕・ラケットが一体となって回転していく動作の3つの動作は、左足を引いている間、連動して行われることになります。この際、右足を動かさずに左足を引いているので、体は開いています。右肩と左肩を結ぶ線は、ネットに対して135°になっているはずです。ラケットのヘッドは(手を動かしていませんので)、やはり135°になっています。
この、②においてもう一つ、注意する点があります。それは、引いた左足のつま先です。左足のつま先は、完全に横を向いてはいけません。つま先がネット方向を向くことも難しいと思いますが、ネットに向かって45°~90°の間が望ましいと思います。

③上記の②において重要なことがあります。それは、フォアハンドと同様に、②の動作の間、ラケットヘッドが下を向くということです。ラケット面が下を向くことで、後半の、ラケットを下から上に振り上げる動作や、ボールに向かって面を作る動作がしやすくなります。

④さて、②において左足を引き終えると、次は右足です。左足を引いた時点で体がオープンになっています(ネットに対して135°)が、左足に続いて右足を前に出すことで、体はほぼ、ネットに対して垂直になります。両肩を結ぶ線がネットの方向を向きます。
このタイミングで、初めて腕が体と連動せずに、自由にテイクバックをします。その結果として、ラケットヘッドはネット反対方向(180°)を向くことになります。これは、ラケットに勢いをつけるための動作です。メシールは、スイングに勢いをつけるために、テイクバックトップにおいて、ラケットヘッドを引いたまま、上にひょいと拍子を付けることがあります。これは、勢いをつけるということと、もう一つ、タイミングを取るためという意味があるようです。なお、ラケットヘッドが上を向いても、ラケット面は絶対に上を向いてはいけません。面は地面にほぼ垂直です。
また、この際、ラケットを後方に引きすぎることで、右ひじが伸びてしまわないように気を付けてください。ラケットはできるだけへその前に置き、右ひじと左ひじの角度が極端に違わないように注意します。

⑤ですが、④の右足の踏み込みが、そのまま、フォワードスイングと連動します。すでに、右足は踏み込んでいますので、あとは、体重移動でボールを前に運びます。実際に打ってみると、このうち方では十分な前方への推進力を得ることができないように感じると思います。上に書いたように、体の回転を十分に使うことでテイクバックトップでラケットヘッドが270°の方向を向くような両手打ちバックハンド(女子の選手はほとんどがこのうち方だと思います)の場合は、ねじった体を元に戻す回転力がそのまま推進力になります。しかし、メシールの両手打ちバックハンドの場合は、この回転力を利用できません。
メシールの両手打ちバックハンドで推進力として利用できる力は、次の通りです。
まず一つ目は、左足の膝の運びです。上記に示すように、左足のつま先は横(90°)ではなく、45°方向を向いているはずです。したがって、左ひざを前方に織り込んでいくことで、前方への推進力を得ることができます。
二つ目の推進力は、ラケットワークです。フォアハンドと同様に、ラケットを下から上に振る(縦振り)をすることで、ラケットの推進力を得ることができます。(横振りの場合は、この推進力を得ることができません。)この際、④に示したテイクバックトップでのラケットの位置が後ろになりすぎないこと(右ひじと左ひじの角度が違いすぎないこと)が重要になります。ラケット位置が後ろになりすぎていると、それを戻すだけの力が必要になります。メシールのバックハンドでは、後ろに位置したラケットを戻すだけの推進力源がないのです。(体の回転を使わないので。)したがって、ラケットは、意識的に前方(ネット側)においておく必要があります。
また、フォワードスイングにおいて、ラケット面を下からネット側に”縦に振る”ということも有効です。これは、フォアハンドにおいては記述しませんでしたが、実は、フォアハンドでも有効なラケットフェースワークになります。高い打点の場合には使えないラケットフェースワークですが、腰の高さのボールに対しては、安定した強い球を打つことできます。
フォワードスイングの推進力で無視できないのが、フォアハンドと同じ、背筋力です。メシールのテニスで、体の中で最も力を使うのが背筋です。背筋を使うということと、上体が立つということは、基本的には同じことを示しています。メジャーリーグのイチローなども同じ理由で、上体が立っています。
最後に、フォワードスイングで重要なのは、右足のつま先です。右足のつま先は、できるだけネット側を向きます。右足のつま先が横方向(90°方向)を向く両手打ちバックハンドは多くあります。(例えば、クリス・エバートがそうです。彼女のバックハンドは、見事なまでに右足のつま先が、90°方向を向いています。)メシールの場合、0°とまではいきませんが、右足のつま先はかなりの確率で、45°程度を向いています。これは、体の回転を使わずに前後方向(+上下方向)の力でフォワードスイングを行うために、左ひざ、背筋、ラケットワークの力を効率的にボールに伝えるには必要なことなのです。
かつて、渡辺康二さんが、テレビ解説(確かWCTファイナルのマッケンロー戦かシュツッツガルドのレンドル戦)で言っていました。「メシールのバックハンドの右足は、クロス方向にスライスを打つかのような右足だ。それが、いきなり両手打ちでスコーンとストレートに来るので、打たれる方は全く予測ができないんですよね。」
体の自然に任せて(何も意識せずに)両手打ちバックハンドでボールを打つと、(少なくとも私は)クリスエバートのように、ネット方向に背中が向き、右足のつま先はネットと水平(90°)になり、テイクバックトップではラケットヘッドは180°以上深くなります。どうして、メシールのバックハンドは、右足、左足のつま先が90°よりも浅くなり、また、ラケットヘッドが180°よりも深くならないのか、不思議でした。しかし、分析してみて、答えは簡単であることがわかりました。
上の特徴は、すべて、ストローク時に、右足が左足よりも前に出る(ネット方向から見たときに、右足が左足よりも右側に位置している)ことが理由です。実際、シングルハンドのバックハンドでは、右足が左足よりも前に出なくては、ボールをヒットすることはできません。しかし、メシールのバックハンドでは、まず左足が、そして右足が動きます。この順番で足を動かすと、右足が左足よりも前に出ることはほぼありません。その結果、ラケットヘッドも180°よりも後ろを向くことはありません。この足の動き・順序が、メシールのバックハンドの”秘密”だったのです。そして、面白いことに、外の足を先に引くという点は、フォアハンドの”秘密”と全く同じです。

今回のテーマは、なぜ、メシールのバックハンドストロークは、打点が前になるのかということでした。そして、その問いに対する答えはこういうことになります。「メシールのバックハンドは、体の回転を使わずにボールを打つタイプだ。しかし、このうち方は、ボールに力を乗せる(推進力を得る)のが難しい。そこで、メシールは、打点を前にすることで、左ひざの使い方(ニーワーク)、背筋、ラケットワークなどで効率的にボールに推進力を与えるため、自然と、打点が前になっていくのです。」

このブログは、昔懐かしい、ミロスラフ・メシール(メチージュ)について語るための、個人的なブログです。と言っても、私は、週末プレーヤであり、プロでも、専門家でもありません。また、実は、他のテニスプレーヤーについては全く興味がなく、メシールのテニスだけしか語ることができません。もし、ご興味があれば、時々、楽しんでいただければ幸いです。

メシールのテニス(14) 懐が深いということ

メシールのストロークは、しばしば、「懐(ふところ)が深い」と評されます。懐が深いというのは、どういうことでしょうか?今回は、メシールの懐の深さを分析してみようと思います。

一般的に言うと、懐が深いということは、打点が後ろであるといってよいでしょう。一瞬、差し込まれたように見える場合でもボールを打ち返すことができる。しかも、差し込まれて苦し紛れに打ち返すのではなく、きちんとボールをコントロールするということです。場合によっては、振り遅れたと思った相手が想像しない方向に打ち返すということもあります。

しかし、ここで、注意する点があります。以前にも書きましたが、懐が深い(メシールの)ストロークは、常に打点が後ろであるということではないということです。このことを間違えると、メシールのテニスを誤って理解することになります。

懐が深いストロークというのは、常に打点が後ろであるということとは異なります。常に打点が後ろにおいているプロテニスプレーヤーは、存在しません。打点が後ろになってもボールに勢いを与えることができるのは、相手のボールに勢いがあるときだけです。自分の体重移動を使わずに、相手のボールの勢いを使って小さいスイングと正確なラケット面でボールを打ち返す場合のみなのです。

相手のボールが普通の(または勢いのない)ボールであれば、基本は、打点を前にして、しっかりと前足に体重移動することでボールを打つのが、ストロークの基本です。これは、あらゆるタイプのプレーヤーに共通したことです。

では、懐が深いプレーができるプレーヤーとは、どういうプレーヤでしょうか?

この答えは、簡単です。ストロークがループ状ではなく、直線状のタイプのプレーヤーです。ループ状のプレーヤー(たとえば、メシールと同世代でいうと、アガシやヴィランデル)の場合、ボールのヒッティングポイントが点になります。ボールの飛球線とループの交差点のみが打点になります。一方、直線的なストロークの場合には、ボールとスイングの飛球線を重ねることで、打点を広くとることができます。したがって、差し込まれた場合でも、ボールを打ち返すチャンスが増えるので、「懐が深い」ことになるのです。

もう一つ、フォアハンドに関していうと、グリップが薄いことが、懐が深いことの必要条件になります。厚いグリップは、体の前のほうでしか打点があり得ませんが、薄いグリップは打点を後ろにすることができます。(くどいようですが、打点が後ろになるのは、特別な場合だけです。)最近のテニスでは、ほとんどの選手のフォアハンドグリップが厚いので、懐の深いフォアハンドストロークを見ることは、ほとんどなくなりました。

繰り返しますが、懐が深いストロークが打てるからと言って、打点を前に(体重を乗せて)打つことができる時に、あえて、打点を後ろにすることはありません。それは、力強いボールを打つという意味では、不利になります。メシールは、フォアハンドでも、バックハンドでも、まれに、スイングを瞬間的に遅らせることで、意図的に打点を後ろにして、逆クロスにボールを運ぶ打ち方をしていました。これは、格下の相手に対しては特に有効な技術でした。アマチュアにはなかなか難しい高等技術ですが、私も、いつかは挑戦してみたいと思っています。

さて、話を戻しましょう。というよりも、すでに、結論は出ています。懐が深いメシールのプレーをコピーする際に、決して、打点を遅らせてはいけないということです。打点を遅らせるのは、仕方がない場合、または意図的にそれを行う場合であって、基本は(普段は)、打点は前です。他のプレーヤーと同じです。

このことは、フォアハンド、バックハンド、どちらも同じです。実は、特に気を付けるべきは、バックハンドの場合です。メシールのテニスでは、フォアハンドはもちろん、バックハンドでも打点を後ろにおいてはいけません。正確に調べたわけではありませんが、メシールの両手バックハンドは、他の両手バックハンドと比較した場合でも、打点は前なのではないかと思います。(少なくとも、他のプレーヤーよりも後ろということはないはずです。)このことは、また、別の機会に書こうと思います。

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メシールのテニス(13) メシールのバックハンド(アウトライン)

メシールのバックハンドは、現役時代、フォアハンドよりも評価が高かったのですが、実は、私は、メシールは、バックハンドよりもフォアハンドのほうが独特だと思いっています。バックハンドの評価が高かったのは、高い打点からのダウン・ザ・ラインのエースが時々出たので、それが目立っていたからかもしれません。(テニスでは、特に日本では、何かトップスピン神話のようなものがあって、メシールのようなフラットドライブ系のフォアハンドは、あまり目立たなかったのでしょうか?)

メシールのバックハンドは、フォアハンドほどは”謎めいて”いないように思います。それでも、やはり、美しいバックハンドです。

メシールは、他の多くの選手と比べると、フォアハンドでは「腕の自由度」が低いのが特徴です。メシールのフォアハンドで、右腕が(体から独立して)動き始めるのは、テイクバックのかなり後半になってからです。これが、メシールのフォアハンドの特徴を際立たせています。多くの選手が、スピン系のボールを打つためにループ状にラケットを引きます。したがって、テイクバックのかなり早い段階から、ラケットがループに入る(そのために、体と手が別々に動き始める)のですが、メシールは体と手の動きがかなり後になるまで離れないのです。

一方、バックハンドは、その逆に見えます。多くの選手が、バックハンドのテイクバックでラケットが体に巻き付くように引くのに対して、メシールのテイクバックは体に巻きつきません。その結果、テイクバックのトップにおいて、メシールのラケットヘッドはほぼネットと反対方向に向きます。(多くの選手は、ラケットヘッドが、さらに背中側を向きます。)

次回以降では、この、テイクバックトップでのラケットヘッドの向きを中心に、メシールのバックハンドについて考えてみたいと思います。

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