2011年5月14日土曜日

メシールのテニス(17) 移動してボールを打つためのフットワーク(その1)

前書きあるように、このブログでは、プレーヤーが右利きということを前提としています。(メシールが右利きですので、このブログでは、常に右利きを前提として書いています。)ご了解ください。

さて、最近、私は、メシールのテニス(16)で紹介した「テニスからテニスへ」というブログをじっくり読ませていただいています。この著者のテニス技術解説は素晴らしく、メシールのビデオを何100回となく見ることで初めて理解できた技術の多くがあっさり(?)と書いてあり、もっと早くこのサイトを知っていれば…と思うこともしばしばです。テニスは足ニスと書きましたが、このブログにも同じタイトルの項目があります。

その中に、特に大切だという項目の一つが、フットワークの基本です。その内容はごく簡単で、「右方向に移動するときは左足をボール側に踏み出す動作からスタートする(逆に、左方向に移動するときは右足から)」というものです。こんなこと、おそらく、テニス上級者(中級者も?)にとっては当たり前だったのかもしれませんが、私は、そんなことすら知りませんでした…。

そして、メシールのテニスでも、この基本はしっかり守られています。フォアハンド側のボールは左足から、バックハンド側は右足から踏み出しています。

しかし、このことは、以前、メシールのテニス(11)テイクバック始動で書いた「フォアハンドは右足を引くところから始動する」ということと、全く反対です。

どちらが正しのでしょうか?

実は、メシールのテニスでは、どちらも正しいのです。説明しましょう。

上の原則(フォア側のボールは左足を右側に踏み出すことから始動)は、正しいです。ただし、それは、ボールが十分に遠くに来た場合には、です。

実は、フォアハンド一つとっても、ボールをヒットする場所は、何通りもあります。
①今いる位置、②今いる位置からネット方向(0時方向)に前方、③今いる位置から右斜め前方、④今いる位置から右横方向(3時方向)、⑤今いる位置から右斜め後方、⑥今いる位置から真後ろ方向(6時)と6通りあります。(もちろん、それらの中間もありますが。)さらに、今いる位置からの距離が近い場合、遠い場合などを含めると、実は、かなりのパターンがあることが分かります。
そんな風に考えると、テニスは、止まったボールを打つゴルフと比べると、ずいぶんと複雑なスポーツなのですね…。

さて、実は、これまでの私のメシールのテニスの分析は、すべて、上の①の場合のみ、つまり、もっとも簡単なボールを打つ場合のみを考えてきました。(したがって、参考にしたメシールのビデオは、ほとんどが試合前の練習ビデオです。ゲームの中では、①の場所にボールが来ることは、あまりありませんので。)

念のために書いておきますが、①については、ボールが体から近い・遠いということはありません。なぜなら、①(と、②と⑥)は、体に向かってボールが飛んでくるからです。したがって、①で体から遠い時というのは、②になります。④には体に近い・遠いという場合がありますが、①にはないのです。(なお、⑥はスピンがかかったボールや深いボールなどで、下がって打たなくてはならない場合ですので、①とは異なります。)

先に書いておかなければならなかったのですが、実は、このブログは、他人にお見せするというよりも、自分のメモ代わりに書き始めました。こんなに記事を書くとは、実は、最初思っていませんでした。したがって、たとえば、上のように、①の場合だけを考えて書いていますというような、詳細な説明をせずに記述していることが多くあります。今は、ほとんど読者のいないブログですので、そのあたりの粗雑さはまあいいかなと勝手に思っていますが、将来、きちんと整理して書き直したいと思っています。(実は、それよりも、このブログを英語化する方に興味があるのですが(笑)。)

さて、本題に戻りましょう。

上記の①~⑥について、メシールのフットワークはどうなっているでしょうか。今度は、1987年Japan Openのメシール対福井の試合から、それらのフットワークを拾っていこうと思います。

まず、①については、すでに書いたとおり、最初に右足を引きます。試合においては、①でボールを打つことができる時というのは、最も余裕を持って打つことができる場合ですので、メシールは、必ずなにか”しかけて”います。特に、福井のそれほど高速ではない(おそらく、トッププロと比較するとかなり低速な)サーブの場合、リターンストロークは、かなりの比率で①と言ってもよいと思います。

さて、次によくあるのが、④です。つまり、”真横に移動してボールをヒットする場合”です。この場合は、「テニスからテニスへ」にあるように、左足からスタートします。①の場合とは、全く逆です。

「テニスからテニスへ」では、左足からスタートして、左→右→左の最後の左足の踏み出しが、フォアハンドの踏み出しになるとあります。ここだけが、メシールのテニスでは異なります。というのは、メシールのテニス(16) メシールのフォアハンド(基本はオープンスタンス)で書いたように、メシールのフォアハンドの基本はオープンスタンスだからです。したがって、メシールのテニスでは、左足からスタートして、左→右でボールをヒットします。つまり、たった2歩目でボールを打ってしまうのです。

これを、アマチュア(しかも中級クラス!)が真似するのは、かなり難しそうに思います。第一、たった2歩では、コートの右端近くに来たボールが打てないのではないでしょうか。

ということで、早速、試しに、オンコートで試してみました(笑)。

まず、驚いたのですが、しっかり腰を落とし、ひざを曲げて足を踏み出すと、左→右で踏み出して、最後にオープンスタンスでラケットを伸ばすと、案外、コートを広くカバリングできるのです。私は、身長が170㎝弱であまり背が高くない(足はさらに長くない(笑))方ですが、それでも、シングルスラインに対して、ラケットヘッドは50㎝程度のところまでは届いていました。おそらく、私のレベルで、このぐらいぎりぎりを狙ってボールを打たれることがほとんどないでしょうから、事実上、問題はなさそうです。

なお、腰を落とし、膝を曲げるというのは、しっかりと歩幅を取るためには必要です。フォアハンドストロークではあまり膝を曲げて、腰を落としている印象のないメシールですが、確かに、遠い球が来た場合には、しっかり腰を落としています。この”2歩打ち”で安定したストロークをするためには、最後の右足の踏ん張りや、上体の安定感が必要です。しっかりと膝を曲げて、腰を落とさなくてはならないのです。

試しにバックハンドも試してみました。バックハンドは両手打ちですから、最後に右足を踏み込まなくてはボールをヒットできません。つまり。右→左→右の3歩目で打つことになります。この場合は、もちろん、コートの端まで十分にラケットは届きます。(ただし、メシールのバックハンドでは、最後の右足は、あまり深く踏み込みたくないので、やはり、左足の踏み込みでできるだけサイドまで動いておきたいところです。)

さて、ステップを確認したので、今度は、ボール出しをしてフォアハンド(バックハンドも)も打ってみました。コーナーぎりぎりというほどではないですが、①のようにその場で打つことはできない場所への球出しです。腰(と膝)に気を付けて、上体が揺れないように(ぶれないように)気を付けて・・・。するとどうでしょうか。今まで、もっと細かく足を動かしていた時よりも、ずっと安定にボールが打てるのです。10本ほど打ってみたのですが、偶然もありますが、1本もミスショットをしませんでした。

これは、正直なところ、意外でした。たった2歩しか動けないのに、細かく足を動かすよりも安定したショットが打てたのです。これは、いくつか、理由があると思います。一番の理由は、時間的余裕ができたことです。バタバタと細かいステップでボールの距離とタイミングを計るよりも、たった2歩しか動かさないのですから、時間的な余裕ができます。ただし、歩数が少ない分、ボールと体の微調整が難しくなります。世界のトッププロは、練習と才能によってこの問題を回避しているのかもしれませんが、私のようなレベルでもそれが可能なのかどうか。これは、もう少し、オンコートで試してみようと思います。おそらく、”時間的余裕と微調整のむずかしさ”と”微調整ができるが時間的余裕がなくなること”とのせめぎあいになるのだと思います。

さて、しかし、この2歩打ちも、球出しのボールが勢いのない場合には、少し様子が変わりました。ボールは遅いので時間的余裕はあるのですが、相手のボールの勢いを使ってボールを打つことができないために、自分で足を踏み出して打たなくてはボールに力を与えることができないのです。この場合は、時間的余裕もあることを活かして、もう一歩、最後に左足を(しかし、オープンスタンスで)踏み出してもよいかもしれません。

今回は、球出しのボールで試したのですが、この2歩打ちが、球出しではなく、実戦でも可能なのかどうか?正直なところ、よくわかりません。メシールのフォアハンドストロークは、体を無理に使うことなく打ちますので、それ自身は、アマチュアでもコピーが可能だと思います。しかし、2歩打ちのように下半身をしっかりと打たねばならない場合に、ボールと体の距離感の微調整が難しいこの打ち方が有効なのかどうか、これは、オンコートで試してみるしかありません。

さて、話を戻します。①と④以外の場合に、メシールの打ち方はどうなっているのでしょう。実は、①と④以外については、まだビデオの分析ができていません(笑)。また、時間があるときにチェックしてみます。

最後に。上の「テニスからテニスへ」には、テニスが上級かどうかは、止まって打つボールを威嚇に強く打てるかではなく、ボールのところまで移動してから打つ、ということがどれだけできるかだとあります。多くのプレーヤーが(止まって)ボールをどれだけ強く打てるかを気にして、フットワークを考えないと。私もそう思います。

とはいえ、止まって打てる段階で、正しいストロークを身に着けないでフットワークが身についても、それはそれで、結局のところ、「試合には勝てるが、あるところから先に上達しない」プレーヤーになります。そのことを知っているからこそ、私は、まずは、「止まって打つ」時のストロークの形にこだわってきました。実は、このブログは、私自身の技術進歩と並行して進んでいます。100点ではないかもしれませんが、メシールのフォアハンドについて、私は、やっと、止まって打つ形(つまり、スイングの基本形)は、おおよそ理解できたと思います。

しかし、メシールのテニスの美しさは、スイングだけではありません。フットワーク、戦略、それらが相まっての美しさです。したがって、私のメシールテニス追求の旅は、まだまだ、続きます。

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