2013年1月31日木曜日

Mecir's Tennis (125) バウンドする地点を指さそう(その2)

Mecir's Tennis (123) バウンドする地点を指さそう(その1)で書きましたが、メシールのフォアハンドでボールがバウンドした写真を並べます。





どの場合も、左手はボールを指さしています。正確には、指先ではなく、左ひじ(二の腕)が指しています。このあたりは、メシールのテニス(97) テイクバックの指さしは正確には「肘(ひじ)さし」に書いたとおりです。

ボールに食い込まれないため、ラケットを強く振るために必要なことです。

2013年1月30日水曜日

Mecir's Tennis (124) 緩いボールの打ち方

スピン系ではなくフラットドライブ系のメシールのフォアハンドは、速い球には比較的強いのですが、遅い球や浅い球に対して意外に苦労します。チャンスボールになるべき遅く浅い球でミスするのは、そのショックは二倍です。
 
力のない球を打つには、自分からボールに力を与えてやらねばなりません。ラケット面が少しずれてしまうだけでもネットしたりアウトしたりするフォアハンドでは、
  • 正確なラケット面を作る
  • ボールに力を与える
という二つのことを同時にせねばなりません。

力の加減をすると、この2つを達成することは(ほぼ)できません。つまり、答えははっきりしています。
  • 力のないボールを打つためには、力を入れて打つ。
つまり、スピン系のボールで強く打つのです。打ち方はこちら

Mecir's Tennis (123) バウンドする地点を指さそう(その1)

メシールのテニス(107) 左手の指さしはボールの高さに合わせるで、フォアハンドでの左手の指さしの大切さを説明しました。

今回は、そのタイミングについて説明します。

メシールのテニスでは、相手のボールがバウンドしたタイミングが、バックスイングからフォワードスイングに切り替わるタイミングです。

つまり、ボールがバウンドした時には、フォワードスイングの準備ができているという事になります。

言い換えると、左手はボールがバウンドした時にはボールを指さしていることになります。つまり、バウンドするボールを指さしすればよいのです。特に、腰よりも低いボールの場合は、バウンド地点を指さすのがよいと思います。メシールのテニス(107) 左手の指さしはボールの高さに合わせるで書いたとおり、低いボールの場合は指さしも低くなるからです。

高いボールの場合は、バウンドするタイミングで左手で指さししますが、最初から高いところを指さすことになります。

ボールのバウンドと指さしを合わせるのは、タイミングがとりやすいという意味でも、大切なイメージだと思います。

バウンドしたタイミングでフォワードスイングが始まるのですから、ボールがバウンドしたら(=指さしができたら)その左手が主導でフォワードスイングを開始します。イメージとしては、ボールが来るのを待つのではなく、自らボールを打ちに行く感じです。ボールに合わせてラケット面を作るのではなく、スイングしてボールを叩くというイメージが大切です。

2013年1月29日火曜日

Mecir's Tennis (122) フェデラーのフォアハンドとエドバーグのフォアハンド

Youtubeで面白い動画像を見つけました。Roger Federer Forehand on the APAS Systemというものです。APAS Systemが何か、まだよく理解していませんが、プレーヤーのフォームを骨格の動きで表現しています。


また、フェデラーのフォアハンドの連続写真もあります。


一方、エドバーグ(エドベリ)のフォアハンドの連続写真が以下です。


この二人のグリップは、薄めのイースタングリップですが、フォームは全く異なります。

フェデラーのフォアハンドは、右肘を支点としたいわゆるワイパースイングになっていることが分かります。一方のエドバーグは、右脇を大きく開け、右肩を支点としてスイングしています。

一番の違いは、それぞれの写真の4~5枚目です。フェデラーのスイングでは右肘が前に突き出されています。エドバーグは、右肘が後ろに残っており、ラケットヘッドが前に出て行っています。

右肘と右肩をどちらを支点にする方が安定したスイングになるかは明らかです。トルクの小さい右肘の方です。右脇が開いたスイングでフォロースルーでラケット面を伏せると、いわゆる「こねる」スイングになってしまい、ボールがネットしやすくなります。また、右脇が開いているせいでボールコントロールが難しくなります。

一方で、回転半径が大きな右肩支点スイングはパワーは出ます。かつて、ラケットの性能が高くなかったころには、大きな回転半径が必要だったのでしょう。しかし、現代のラケットであれば、右肘支点のスイングでも十分にパワーは出ます。

ワイパースイングは、厚いグリップの専売特許と言うわけではなく、イースタングリップでも重要なスイングです。ワイパースイングでは、ラケット面を伏せてしまう(ラケットをこねてしまう)イメージがありますが、インサイドアウトスイングではラケット面はどちらかと言うと地面に垂直に動きます。(まさに、車のワイパーのイメージ。)つまり、逆クロスではラケット面はフォロースルー(の前半)では伏せることはないのです。(早くラケット面を伏せてしまってはワイパースイングになりませんので、注意が必要です。)

また、肩よりも高いボールの場合には、右肩が下がることを恐れる必要はありません。右足を軸足として回転する際、右肩が下がる(左肩が上がる)ことがあります。

順クロスの場合は、どちらかと言うとアウトサイドインにスイングしますので、ラケット面は逆クロスの時よりも早く伏せることになります。ただし、この場合も、右肘を前に突き出すようなイメージにあります。

ワイパースイングの利点をまとめると、次のようになります。
  • ボールの力加減が不要である。(つまり、力いっぱいスイングすることができる。)
  • 薄めのフォアハンドグリップでもボールにスピンがかかりやすい。
このようなワイパースイングは、次の時に有効です。メシールは、次のような場合に、このようなワイパースイングを使っていました。
  • 相手のボールが高く弾む場合。
  • 相手のボールに力がない場合。(こちらの力でボールを打たなくてはならないため。)
  • アプローチショットで力の加減が難しい場合。
  • 逆クロスにボールを打つ場合。
  • 相手のボールが深く高く弾む場合。(後ろに下がりながら打つ場合。)
メシールが高いボールに対してややワイパースイングで打っている動画像はこちら

逆に、次のような場合には、ワイパースイングは向いていません。メシールは、このような場合には、フラットドライブ系でボールをヒットしています。
  • 相手のボールが低く早い球の場合。(腰の高さまたはそれ以下の場合。)
  • 相手のボールが速く、十分なテイクバックをとれない場合。
  • 高いボールを順クロスに打つ場合。
順クロスの場合は、ワイパースイングよりも、肩と腕を一体にして、肩を支点にラケットを振る方が安定します。フェデラーよりも、むしろエドバーグの打ち方です。

さて、上のフェデラーとエドバーグの写真は、もう一つ違う点があります。フェデラーが右足を軸として打っているのに対して、エドバーグは右足から左足への体重移動で打っている点です。ワイパースイングは、右足を前に出してその足を軸にするのが打ちやすいのです。

右足を軸に打つ場合に気を付けるのは、次の点です。
  • テイクバックで右ひざを曲げて入り、右ひざを曲げたままで打つ。⇒さらに、フォワードスイングで右ひざを伸ばさない。(体が上に伸び上らない。)⇒お尻を後ろに引くことで、反作用で右肘を前に出すことができる。
  • 右足を軸に回転する。頭が右足の上で動かない。
  • 打点は前に置くこと。これにより、右ひざの支点が固定する。(ボールに押し込まれると、右腕全体をアコーディオンのように前に伸ばさなくてはならなくなるため、右肘が固定できない。(右肘も前に動く。)
  • 前後の体重移動ではなく、体の回転でボールをヒットする。打ち終わった後に左足に体重が移動しないように。


ボールを強く打ちたいとき、右肘を前に突き出すことを恐れてはいけません。それは、ボールをこねて打っているのとは意味が違うからです。

Mecir's Tennis (121) レディーポジションでのラケットの持ち方(マッケンローのフォアハンドから学ぶ)

最近のプロテニスでは、どの選手も、苦手なショットと言うのはない(全プレーヤーがオールラウンド)ですが、1990年代はたいていのプロテニス選手が、トッププレーヤーでさえ、不得意なショットを持っていました。ジョン・マッケンローは、7度もグランドスラム(シングルス)で優勝していますが、あれほど知名度のあるプレーヤーであっても、歴代のシングルス優勝回数では10位にも入っていません。(歴代優勝者の一覧はこちら。)

マッケンローは、サーブ、ボレー、バックハンドストロークとあらゆるショットがすばらしかったのですが、唯一、フォアハンドのグランドストロークだけはよくありませんでした。「よくない」というのは悪いという意味ではなく、これだけのレベルの選手にしては「不安定」だったと言う意味です。マッケンローのフォアハンドストロークは、グランドストロークと言うよりも、ボレーの延長のようでした。テイクバックがほとんどなく、ラケット面を作ってタイミングでボールを打ちかえす打ち方でした。

このグランドストロークでは、他のショットがいくら優れていても、どうしてもプレーは安定しません。レンドルがウィンブルドンをとれなかったのがメンタルだとすると、マッケンローは技術的理由で全仏オープンをとれなかったのだと思います。

バックハンドは利き腕の肩(右利きの場合は右肩)を支点にスイングできますので、小さなテイクバックでも正確なショットを打つことができます。フォアハンドは、体の回転と肩の組み合わせる(複雑な)打ち方を要求されるので、バックハンドのように右肩の位置を固定するわけにはいきません。そのため、どうしてもテイクバックが必要になります。

マッケンローのフォアハンドは、体の回転を使わない(テイクバックを使わない)ボレーのような打ち方だったわけです。


サムネイル

面白いもので、フォアハンドストロークが苦手と言うのは、レディーポジションにあらわれています。写真は、マッケンローの(最近の)レディーポジションの写真です。(Youtubeの画像はこちら。)バックハンドストローク側のラケット面が前を向いているのが分かります。言い換えると、「レディーポジションで、すでに、バックハンドを打つ側の準備になってしまっている」です。


同じ左利きで薄いフォアハンドグリップのアンリ・ルコントも、同じような傾向があったようです。(マッケンローほどは顕著ではないですが。)レディーポジションで、ラケットがバックハンド寄りになっています。

レディーポジションがバックよりだからフォアハンドが苦手なのか、フォアハンドが苦手(またはバックハンドが得意)だからレディーポジションがバック寄りになるのかはよく分かりません。

ラケット面がバック寄りの場合は、当然ですが、フォアハンドのテイクバックの距離が長くなります。テイクバックが遅れ、安定性が悪くなり、下半身や体の回転との同期が難しくなります。


ラケットヘッドを前に出しておけば、テイクバックは楽です。ラケットが動く距離が短くなるので、瞬時にテイクバックができます。図にあるように、体の前にあるラケットを少しだけ後ろに引けばよいのです。(ラケットヘッドは0時方向が1時方向になるだけですので。)

体の回転とラケットの回転は一致する(体の回転でテイクバックする)のが基本ですが、メシールのフォアハンドテイクバックはラケット移動距離が短いので、相手の球が速い場合などはとりあえず手だけで引いて打つ(ラケット面を合わせるだけでボールを返す)ことを時々しています。

図のレディーポジションのラケット位置はちょっとした違いのように見えますが、体の回転とラケットが同期するタイプのメシール(マッケンローも)の場合には、この違いは無視することができない差です。

なお、歴代7回のグランドスラム優勝は、ヴィランデルと並んで2013年1月現在では第13位です。6回優勝者には、エドバーグ(エドベリ)やベッカーがいます。2013年の全豪オープンで優勝したジョコビッチも、歴代優勝回数が6回になりました。マッケンローが14位になるのも時間の問題かもしれません。

2013年1月24日木曜日

フェレール、悲願の決勝届かず(全豪テニス2013) ~フェレールと李娜

四大大会の準決勝で戦ったのは5度目。しかし決勝への壁がどうしても越えられない。「全ての試合でベストを尽くしたが、対戦した相手(ジョコビッチ、A・マリー、ナダル)は自分より優れている。私には何ができるのか」といら立つ場面もあった。メルボルン時事:抜粋

スポーツは残酷な側面を持ちます。他のスポーツと比較してアップセットが多くないと言われているテニスの場合は、なおさらです。

錦織 vs フェレール 全豪オープン2013で書いたとおり、フェレールは「試金石」の役割しか果たせない。厳しいけれど、それは事実です。

安定している(ほとんどの大会で下位ランキング選手に負けない)が上位選手には勝てないという、銀行口座のように正確な結果しか出せない選手。私にはどうしても魅力を感じることができないのです。

テニスの面白さは、イマジネーションの豊かさです。低いリスクで如何に意外性があるボールを打てるか。観客は、それを楽しみに、一本一本のショットを追いかけるのです。

最近の世界の女子テニスは、その点で、私は興味を失いつつあります。確かに、20年前と比較すると、考えられないほど女子のボールは速くなりました。強くボールをヒットするようになりました。

しかし、いくらボールを強く打っても、そこにイマジネーションと意外性がなければ、そこから個性は出てきません。「人格はテニスを超えることができない。」人格が表現されることとイマジネーションあふれるプレーは、意味が重なります。

イマジネーションあふれる人格が、イマジネーションあふれるプレーを導き出します。

「テニスを楽しみたい。」そう言い続ける李娜は、私が見ていて楽しい数少ない女子プレーヤーです。彼女のユニークなキャラクターについては、以前書きました

自分より上位ランクには勝てないけれど、自分より下位ランクには負けない選手よりも、調子に乗ったら2位と1位を連破してグランドスラムで優勝しそうな選手の方が、見ていて楽しいに決まっています。

明後日は全豪オープンテニス2013女子決勝です。ランキング2位のシャラポワを破って決勝進出した李娜とランキング1位のアザレンカ。李娜が、この大きな舞台で、どこまでイマジネーションあふれるプレーを展開してくれるか、のびのびと自分らしいプレーを展開してくれるのか、楽しみです。2012年の全豪オープンのときとはかなり違うようです。

【バックナンバー】
2011全仏オープン女子決勝 李娜(Na Li)VSスキアボーネはこちら
2012ウィンブルドン男子準決勝 ジョコビッチVSフェデラーはこちら

2013年1月21日月曜日

Mecir's Tennis (120) フォロースルー(フォアハンド)

さて、メシールのテニスも、フォロースルーを考えるところに来ました。



昔のテニスでは、「インパクト後にボールを5個分押すように打つ」と言われていました。今のスピン系テニスはフォアハンドもバックハンドもアウトサイドインが基本ですので、「ボールを押す」と言うのは今風の考え方ではないのかもしれません。

メシールのストロークは、「厚い当たりでボールが重い」典型です。この5個は、もしかしたら、6個、7個なのかもしれません。

私の様な未熟な技術しかないと、ゲームではバックアウトするのが怖くて、どうしてもラケット面をこねてしまいます。厚い当たりよりもラケット面を早く伏せることでアウトするのを防ごうとしてしまうのです。相手のボールが低いまっすぐな場合はラケット面を地面と垂直にして押し出せるのでまだよいのですが、高く跳ねるボールの場合(とくに打点が高い場合)に面をこねやすいようです。

しかし、スイングの中で、ボールの回転、安定感、重さなどを決めるのは、フォロースルーです。ボールをコントロールするのも、フォロースルーです。フォロースルーがボールを支配するすべてであり、テイクバックやフォワードスイングは、所詮、フォロースルーを作るための準備でしかないのです。

もう一つ。フラットドライブ系のスイングでは、フルスイングできるヘビースピンと比較して、どうしてもラケットスイングを全力で打つことができません。バックアウトは怖い、でも少しでも早いボールを打ちたい。上記のフォロースルーでラケット面を伏せてしまう理由の一つです。

こう考えるのがよいと思います。

まずは、(試合の序盤では)ボールスピードを期待せずに、ボールを厚く打つことを考えます。エースは取れないかもしれません。しかし、思うところによい回転のボール(つまり、厚い当たりのボール)が打てることを目指すのです。相手の打つボールへのタイミング、打点等を掴み、「力の入ったボール」が打てるようになったら、その次の段階として強くボールを打てばよいのです。





2013年1月20日日曜日

錦織 vs フェレール 全豪オープン2013

普段はメシールのビデオばかり観ている私ですが、今日はひさしぶりにプロテニスの試合をじっくりとテレビ観戦しています。全豪オープン4回戦の錦織対フェレールです。

今、これを書いている時点で、錦織は2セットダウンで2-3ですので、ここからカムバックするのは難しいかもしれません。フェレールの守りは鉄壁で、錦織がいくら攻めても、ボールは返ってきます。かつての全仏オープンのヴィランデルを思い出しました。

が、しかし、錦織とフェレールを比較すると、見ていて面白いのは明らかに錦織です。錦織のプレーはイマジネーションにあふれ、相手をどう動かして崩すか、相手にどう予測させないか(予測させないように隠すか)を考えながらボールを打ちあいます。

私は、スポーツの試合は原則的に個人(またはチーム)のものだと思っています。日本人選手だからと言って錦織を応援するという事は考えたことがありません。それでも、錦織は一人のプレーヤーとしてユニークで魅力的な選手だと思います。

正攻法で攻めるボール、相手の逆を突くボール、リスクの低いボール、リスクの高いボール…様々な要素を織り交ぜて、錦織はボールに向かいます。

フェレールは、相手が攻めることが難しいという条件の下で常に最もリスクが低いボールを選択します。言い換えると、ミスしないまたは攻撃されない範囲の一番安全なボールを打とうとするわけです。素人の私ですら、錦織が打ったボールをフェレールが次にどこに打ち返すか、打つ前から分かってしまうほどです。

ゲームの中で、錦織はリスクの高いボールと低いボールを織り交ぜながら、様々なパターンでポイントを取りに行こうとしています。が、この試合ではその戦略がなかなかうまくいかず、自分からミスするシーンが多くなり、結果的に劣勢になっています。錦織の場合、例えばナダルのようにパワーでポイントを取ることは難しいため、どのポイントも組み立てと戦略でポイントを取らねばなりません。フェレールのフットワークにボールを拾われてしまい、思うような結果にならないこともしばしばです。

もし、錦織がこの試合に負けてしまうとしても、私はこの戦略を変えてほしくないと思います。

フェレールは、試合中に紹介されましたが、これまでフェデラーとジョコビッチには全然勝てないそうです。力と戦略を組み合わせたプレーヤーに対しては、フェレールのテニスは「全く」歯が立たないのです。錦織には、そういう選手になってほしくはないと、私は思います。折角、これだけのイマジネーションがあるプレーができるのですから。

フェレールは、(フェレールには申し訳ないですが)プロテニス界においては、「フェデラーの様な歴史に残る選手または真のトップ選手の試金石」の選手なのです。フェレールのテニスの歴史での役割は、フェレールの上にいる選手と、下にいる選手を分けることなのです。

(2011年のジャパンオープンで観戦したフェレール対マレーの試合を思い出しました。スタンドから生で見てると本当によくわかったのですが、フェレールとマレーでは身体能力が違いすぎ、フェレールが勝てるという雰囲気は全くなかったのです。)

錦織は、フェレールの上にいる選手になってもらいたい。だとすれば、錦織がすることはただ一つ。戦略を含めた自分の技術でフェレールに勝つことです。フェレールにあわせたテニスをする必要はないのです。

その意味では、錦織が負けるとしても、フェレールに押し切られて敗北するのではないことが大切だと思ます。あと少し攻めきれていない、だから勝てなかった、それが大切です。この差を埋めた時に、おそらく、錦織はフェレールと言う試金石を超えたと言えるでしょう。その時は、錦織は、二度とフェレールには負けることはないと思います。

なお、フェレールの役割をこのように書くのはフェレールに対して少々残酷かもしれません。であれば、フェレールは、たとえばヴィランデルを見習えばよいと思います。ヴィランデルも、かつて、「試金石プレーヤー」でした。自分の下位選手への取りこぼしが少ないけれど、上位選手には歯が立たない時代がありました。

しかし、ヴィランデル自身が自分のプレーを改良し、ついに自分がナンバーワンになりました。すべてのプレーヤーを「自分の下」にしたのです。改善されたプレースタイルの見栄えは正直、格好いいとは言えませんでしたが、能力やセンスと違う「努力」に対して私は敬意を払います。

テニスで大切なのは、イマジネーションだと思います。なぜなら、そこには、プレーヤーの人格が現れるからです。「人格はテニスのプレースタイルを超えることができない」と思います。我々が見たいのは、テニスという姿をしたそのプレーヤー自身なのですから。

Mecir's Tennis (119) 右足とラケットの同期(1)


メシールのフォアハンドでは、テイクバックからフォワードスイングにかけて、右足つま先はネットに向かって、1時方向になります。


一般には、つま先は2時から3時方向を向きます。一般とメシールの違いを図にしてみました。

http://www.tennis4everyone.com/tennis-tips/223-odds-favor-novak-djokovic-to-win-at-wimbledon

http://www.flickr.com/photos/tennis_express/6473345073/


メシールのテニスではテイクバックトップでラケットヘッドが体の前で、かつ5時方向を向く(6時方向を向かない)ため、「小さなテイクバック」です。(こちらの写真は、どれを見ても、ラケットヘッドは5時方向を向いています。)その代わりに、ラケット面を正確(精密に)作り、確度の高いフォアハンドストロークをします。

小さなテイクバックで、確度の高いストロークのために何ができるか。

それが、右足とラケット面の連動です。一言で言うと、「テイクバックでは1時方向を向く右足とラケット面を平行にする(脳内イメージ)」です。その後、右足の力でフォワードスイングするときに、ラケット面をそれに同期させます。

これにより、テイクバックからフォワードスイング前半までは、ラケット面を右足によって操作するイメージができます。言い換えると、ラケット面を(右手で)任意に動かすことはできません。

プレーヤーは、テイクバックからフォワードスイング前半までを、右足だけに意識を集中してボールのコントロールをすればよいのです。右手に力が入るのは、フォワードスイング後半、インパクトからフォローするにかけてという事になります。

この方法の利点はたくさんあります。
  • フォワードスイングで正確なラケット面を作りやすい。
  • テイクバックからフォワードスイングで右手の力が抜ける。
  • 右腕に力が入らないので、テイクバックで右脇が締まりすぎない。
  • (右足が体の前にあるので)ラケットを体の前に置くイメージを作りやすい(体の右側に来ない)。

2013年1月18日金曜日

Mecir's Tennis (118) テイクバックでラケットヘッドはどこを向く? (ジョコビッチの場合)

ジョコビッチのフォアハンドのラケットの軌道の動画像(スローモーション)をYoutubで見つけました(こちら)。


メシールのテニス(55) テイクバックでラケットヘッドはどこを向く? で書いたとおり、現在の男子テニスでは、ほとんどの場合、テイクバックでラケットヘッドが上を向きます。(バックハンドはプレーヤーにより異なります。)


メシールのテニスでは、ラケットヘッドがした(真下ではありませんが)を向きます。


2013年1月17日木曜日

Mecir's Tennis (117) 2013年も監督

スロバキア語は全くわかりませんが、Googleの自動翻訳の助けを借りてスロバキアの記事を読む限り、メシールは2013年もスロバキアのデビスカップ・フェドカップチームの監督を務めるようです。

以前、再びブラチスラバへ(1)でスロバキアテニス協会にいた時のことを書きました。バンドをもじった面白い写真が飾られていました。多くの現役選手の中で、メシールが今でも一番真ん中にいます。


今でも、スロバキアテニスはメシールが中心にいるようですね。(監督だから真ん中
?)

2013年1月16日水曜日

Li Na(李娜)の全豪オープン2013

全豪オープン2013が開幕しました。日本勢が全員、1回戦を勝ち抜いたこと(特に、42歳のクルム伊達が全豪オープン勝利の最年長記録を更新したこと)で、今年の全豪オープンは今まで以上に注目されているようです。

その中で、今年もLi Na(李娜)です。コーチがかつてのジュスティーヌ・エナンのコーチのカルロス・ロドリゲス氏になって、初めてのグランドスラムタイトルです。

カルロス・ロドリゲスコーチについては、私は何も知りませんが、エナンの引退インタビューで泣き出した映像は、心に残っています。フランス語(?)なのでインタビュー内容はよく分かりませんが、エナンの引退なのにコーチが泣き出し、(泣いていない)エナンに慰められている姿は、選手とコーチの信頼関係をよく表しているように私には見えました。

Li Naが今回の全豪オープンでどこまでいけるかはわかりません。1回戦を勝ち抜いた後のインタビュー(こちら)で、こんなふうに言っています。

「2011年の全仏オープンで優勝してから、私は自分は負けることが許されないという気持ちで戦っていた。でも、今は、負けることもある(I can lose.)と思いながらプレーしています。今までと比べて心が解き放たれて自由に戦っているのです。」

これからのLi Naにも注目したいと思います。

2013年1月15日火曜日

Mecir's Tennis (116) Forehand Takeback (3) -メシールフォアハンドテイクバック分析(改訂)

Mecir's Tennis (111) Forehand Takeback (1) -フォアハンドのテイクバックはラケットを右肘から引く?で、メシールとレンドルまたはサンプラスのテイクバックの違いを書きました。そして、Mecir's Tennis (115) Forehand Takeback (2) -メシールフォアハンドテイクバック写真集では、メシールのテイクバック(フォアハンド)は右ひじを引かないと書きました。

Mecir's Tennis (115) Forehand Takeback (2) -メシールフォアハンドテイクバック写真集から、2枚の写真を再掲載します。確かに、右ひじを背中側に引いていません。上腕部と両肩が一直線になっています。


どうすれば、左肩⇒右肩⇒右ひじが一直線のテイクバックが取れるでしょうか?以下が、その答えです。




  • レディーポジションのときにとった右手と体の距離をテイクバックで一定に保つ(右手が体に近づきすぎないようにする)イメージ

これは、右手が体に近づくと、右ひじを背中側に引きやすくなる(レンドルやサンプラスのテイクバック)からです。右手の位置が体の前の方だと、右ひじを引くことができません。
  • レディーポジションからテイクバックまで、右手を(折りたたんで)体の前においておくイメージ
言い換えると、「ほとんどテイクバックをしていないイメージ」です。実際には、そういうわけにいかないのですが、ほとんどテイクバックをしないイメージを持っておくと、結果的にテイクバックでラケットを大きく引きすぎない(または背中側に右ひじが行きにくい)ことになります。

小さなテイクバックということは、右腕の勢いを使ってフォワードスイングできません。この点は、メシールのフォアハンドで、非常に重要です。多くのスイングが右手の力でフォワードスイングするのに対して、メシールは右手の力をほとんど使わずにフォワードスイングしています。メシールのフォワードスイングの主導は左手や右足が行うことになります。

右手が体の前にある脳内イメージを作るにはどうすればよいでしょうか。いくつか、方法があります。
  • テイクバックで右肩を体に対して前方に突き出すイメージ
右肩を突き出すことで、右手と体の距離が付きやすくなります。右肩を突き出すと同時に、次のようなイメージが有効です。
  • 右肩がボール方向(正面)を向いているような脳内イメージ
前者は、脳内イメージとしては右肩をボール方向に向けます。ボールはネット方向から飛んでくることが多いのですから、右肩をネット方向に向けるイメージとなるのが一般的です。なお、右サイドに振られて走りながら打つ場合には、右肩はサイドラインに沿って2時~3時方向を向くでしょう。

これにより、右ひじが背中側に回ることがなくなります。右肩が開く分だけ左肩が開きそうになりますが、左手(左ひじ)がボールを示すことで開くことはありません。最初は体が正面を向いているようで怖いのですが、思い切って右肩をボール方向に向けてみます。(一般に言われる左肩をボール方向に向けるというのとは逆ですので、注意が必要です。)
  • 体(顔)を正面に向けて背中を反らせる(状態が垂直になる)脳内イメージ
メシールのグランドストロークは、体が地面に垂直になり、背中を反らせているイメージがあります。背中を反らせることで、右肩を前方に突き出し、右肩をボール(ネット)方向に向けやすくなります。

上の議論をまとめると、以下のようなイメージでしょうか?

テイクバックでは体(右肩)は正面を向き、左手(左ひじ)をボール方向に向ける。

Mecir's Tennis (115) Forehand Takeback (2) -メシールフォアハンドテイクバック写真集
















上の写真は、すべて撮影角度も相手のボールも異なります。また、テイクバックの途中、テイクバックトップ、テイクバックからフォワードスイングに切り替わったところなど、タイミングも少しずつ違います。

しかし、共通している点があります。それは両肩を結ぶ線と上腕が一直線になっているということです。すべての写真で、その点が同じです。Mecir's Tennis (111) Forehand Takeback (1) -フォアハンドのテイクバックはラケットを右肘から引く?に書いた通り、メシールのフォアハンドテイクバックは右ひじを引かないのです。


もう一つの特徴、それは、テイクバックトップでラケットヘッドが6時方向を向かないということです。必ず、5時方向を向いています。







Mecir's Tennis (114) Forehand Stroke in Slow Motion

メシールフォアハンドの連続写真です。動画像はYoutubeにあります(こちら)。
A forehand stroke slow motion pictures; a movie is in youtube (here).