2014年12月2日火曜日

Mecir’s Tennis (258) テイクバックは肘でラケットを引く?

Mecir’s Tennis (256) テイクバックの始動は「ラケットを引き上げる」において、「テイクバックは下向きのラケットを上に引き上げる」と書きました。

これは、今まで、「テイクバックでは腕を使わずに腰の回転でラケットを引く」というのと矛盾しています。腰の回転でラケットを引くと、ラケットも当然、腰の回転に合わせて回転します。

この辺りは、本当に表現が難しいところだと思います。正解は以下の通りです。

テイクバックの最初の瞬間は、腕を使わずに体の回転で始動する。そのあと、すぐに、(腕を使って)ラケットをまっすぐ引く。ここでいう腕は、基本的には肘のこと。肘でラケットを引き上げる。

例えば、比較的似ているイワン・レンドルのフォアハンドは、右肘からラケットを引きます。これは、逆に言うと、体の回転に同期させず、最初から腕(肘)でラケットを引くイメージです。

メシールの場合は、最初は腰の回転でラケットを引きます。その直後から肘でラケットを引き上げるのです。

この微妙な配分が、手打ちでボールをヒットするのではなく、しかも縦にスイングする(体の回転方向にスイングするのではない)メシールのフォアハンド(バックハンドも)を可能にしています。

2014年12月1日月曜日

Mecir’s Tennis (257) レディーポジションでの手(グリップ)の位置

レディーポジションでは、次のことが大切です。
  • 腕に力を入れない。ひじを曲げない。だらりとたらす。(まっすぐに伸ばすのもNG)。
  • 手の位置はへそよりも下。(女の子のもじもじポーズ)
  • ラケットヘッドを相手の方向に向ける。
この「ラケットヘッドを相手に向ける」ためには、レディーポジションで両手(両手バックハンドなので両手でラケットを持つとして)を体の真ん中に起きたくなります。つまりグリップを体の中心線の上におきたくなります。

しかし、実際にへその位置(体の中心線上)に両手を置くと、ラケットヘッドはどうしても左側(11時、10時、9時)を向いてしまいます。そうすると、Mecir’s Tennis (256) テイクバックの始動は「ラケットを引き上げる」で書いたように、ラケットを前から後ろにまっすぐ引き上げることはできず、ラケットは体の回転と一緒に体の回転軸を中心に回ってしまいます。その結果、インサイドアウトスイングもしにくくなってしまいます。

実は、これはかなり深刻なことで、レディーポジションでの手の位置が、そのあとのスイングに大きく影響をしてしまうのです。薄いグリップ(イースタングリップ)はスイング軌道(スイングのベクトル)が縦方向(ウエスタングリップは体の回転方向)です。

両手でラケットを持つ際には、グリップエンドに近い側が右手になります。(右利きの場合。)それでもラケットヘッドをまっすぐ前に向けるためには、グリップの位置は体の右側に寄ります。つまり、右足の付け根辺りです。

そうすると、体の前を左手が横切り、グリップは右腰の前(右足の付け根辺り)に来るはずです。そうです、Mecir’s Tennis (255) 実践編・テイクバックのタイミング(侍は半身で構える)で説明した、侍の半身の体勢です。

これが正しい構えになります。バックハンド側にボールがきても、フォアハンド側にきても、そのままラケットを下から上に引き上げるようにテイクバックします。絶対に体の回転に合わせてラケットを回転してはいけません。


Mecir’s Tennis (256) テイクバックの始動は「ラケットを引き上げる」

テイクバックの始動をどのような言葉にするとよいか、ずっと考えていました。

テイクバックで大切なのは次の点です。
  • 腕で引かずに体の回転で引く
  • 腕に力を入れずだらんと垂らす
  • ラケットヘッドを下に向ける
このイメージに一番近い表現は「ラケットを足元から引き上げる」かなと思います。体で回転するイメージでは、どうしてもラケットヘッドが下を向かずに水平になったまま横に書いてしてしまうからです。

ラケット(ラケットヘッド)は最初は右足元にあって、下から上に引き上げるのです。この表現が一番ぴったりするように思います。これは、フォアハンドでもバックハンドでも同じです。

Mecir’s Tennis (255) 実践編・テイクバックのタイミング(侍は半身で構える)

今までは、メシールのスイングの分析をしてきました。参考にしていたのは、試合前のゲームの映像。手持ちのビデオでは、試合前のゲームから収録されているものは少なく、数少ない練習の風景から分析をしてきました。

これからは、実践編として、ゲームの映像などから分析した内容を説明したいと思います。

今回は、テイクバックのタイミングです。つまり、ボールが飛んできてどのタイミングでテイクバックをするのか。言い換えると、ステップワークとテイクバックのタイミングの関係です。
  • まずテイクバックをしてからステップワークをするのか(ラケットを引いたままステップするのは、ずいぶん体勢が辛そうなフォームです。)
  • まずステップワークをしてからテイクバックするのか(テイクバックが遅れるのではないか)
答えはそのどちらでもありません。1987年のWTCファイナルズ決勝でマッケンローと対戦した時のメシールのビデオに、それがはっきりわかる答えがありました。

まず最初に、メシールはレディーポジションではラケットを腰の下(へその下)で構えます。何度も書いている「女の子のもじもじポーズ」です。ラケットヘッドは下を向いています。また、ラケットヘッドは0時方向(ネット方向)を向いています。つまりヘッドはボールの方向・相手の方向を向くわけです。

肩をしっかりと両側に張り、腕の力を抜きます。腕をだらりと下げ、背中を丸めないようにします。背筋をしっかりと立てます。

次に、メシールは、フォアハンドでもバックハンドでも、ボールが飛んでくると、まず「刀を抜きます」。つまり、腕は動かさず、体の回転でテイクバックを始めます。(その様子は、まるで刀を抜いているかのようです。)その際、ラケットヘッドが下を向くのは、何度も書いている通りです。ただし、刀を抜いてはしまいません。刀を鞘から少し抜いた形のまま、フォアハンドまたはバックハンドにステップワークします。そして、ボールのバウンドなどのタイミングに合わせて、その体勢からテイクバックを行います。こちらは、ボールをヒットするためのメインテイクバックです。

つまり、テイクバックが2段に分かれているようなイメージです。

侍が、刀の鞘に手を置いて半身(はんみ)になり、少しだけ刀を抜いた状態で「つかつかつか」とステップする様子を頭に描いてください。まさにこんなイメージです。

もちろん、ステップワークでは背中はまっすぐに立っています。