2014年7月31日木曜日

2014年7月28日月曜日

Mecir's Tennis (237) レディーポジションとテイクバックの間に…(テイクショルダー)

20年前であっても、世界のトッププロの試合は、私の様な上級レベルにも届かないプレーとは全く違います。それを承知のうえで、残っているビデオ(DVD)を見ながら、メシールのプレーを分析し、それを実践しようとしてきました。

レベルの違いからくる差異について、つい、見落としてしまうことがあります。その顕著な例が、ボールのスピードです。当然ですが、トッププロのボールは私のレベルのボールよりも速い。一言で書くとそうなってしまいますが、もう少し正確に書くと、次のようになります。
  • トッププロのボールはそのほとんどが速いが、ごくたまに遅いボールが来る。
  • 私のレベルのボールは、たまに速い球と遅い球が混在している。
これでも、まだ正確ではないので、さらに詳しく書きます。
  • トッププロのボールでも、つなぎの球はある。ただし、それはスピードはそれほど速くなくても、ヘビーな回転などがかかっており、素直な遅いボールではない。ただし、自分の打ったボールが厳しい場合や、相手のミスショットで、なんの変哲もない遅いボールがたまに返ってくることがある。
  • 私の様なレベルでは、相手のボールは極めて速いという事はほとんどない。ただし、自分のボールが甘い場合など、速いボールが来ることはいくらでもある。一方、自分の打ったボールが厳しい場合を含め、相手のボールが遅いことはいくらでもある。
相手の緩いボールは、トッププロにとっては一発で仕留めるチャンスボールです。(だから、私レベルのアマチュアがプロとゲームをしても、全く歯が立つわけがありません。)トッププロの世界では、そんなチャンスボールを試合の中で相手が打つことはありません。

つまり、トッププロのプレーをコピーしていると、相手の遅いボールを学ぶことができません。そんなボールはほとんど来ないからです。そのことは、当たり前のように思えますが、実は案外と落とし穴になっています。

では、トッププロのプレーではほとんど見ることができない遅いボールには、どのように対応すればよいでしょうか。

これも案外難しいのですが、速いボールの場合にはボールに合わせて無意識にテイクバックが始まりますが、遅いボールでは余裕がありすぎるためにどのタイミングでテイクバックをすればよいか分からないことがあります。(ウソのようですが、実際、「頭で考えてテニスする」場合には、こういうことが起こるものです。理屈に頼りすぎる弊害ですね。)

答えは、「ボールが飛んできたらすぐにラケットを引くこと」です。もう少し正確に言うと、フォアハンドではボールが飛んできたら、すぐに右肩を引きます。最初のステップよりも先に、または同時に右肩を引きます。ここでは、後で述べるように、この右肩を引くのを「テイクショルダー」と呼びます。

右肩を引く際に、左手をラケットに添えておきます。というよりも、右肩を引く際には左手を使ってラケットを押すことで右肩を引くのがよいでしょう。右手だけでラケットを引くと、スイングが不安定になります。次に、この形のままステップワークします。これはテイクバックではなく、テイクバックの前の「テイクショルダー」です。レディーポジションとテイクバックの間に、もうひとつ「テイクショルダー」が入るのです。テイクショルダーは、テイクバックではありません。テイクショルダーの後、ステップワークを行い、ボールのバウンドに合わせてテイクバックを行います。つまり、ある種の二段モーションのようになります。

テイクショルダーでは、相手のボールが跳ね上がる場合にはラケットヘッドは上を向き、相手の‐ボールが低く弾む場合には下を向きます。これにより、ボールの高さに合わせたテイクバックがスムーズになります。

ここで大切なのは、テイクショルダーでは右肩を単に引くのではなく、「張る」ように引くという事です。単に右肩を引いたのでは、次のテイクバックで、再度さらに右肩を引かねばなりません。テイクショルダーは、言い方をかえるとテイクバックの最初の部分です。右肩を張ったままでステップワークを入れて、その後のテイクバックにつなげます。




テイクショルダーでは張るように右肩を引きますので、その分右肘が背中の側に出ます。上の写真を見てください。単に右肘を引くのではなく、左手でラケットを引きながら右肩を張り出します。この違いは重要です。単に右肘を引くのでは、左手が(写真のように)内側に引き込まれません。左手を使わずに右肘を引くのではなく、左手でラケットを引きながら、右肩を張ることで、結果的に右肘が背中側に出るわけです。

肩のところでラケットをセット(テイクショルダー)して、そこからは腰の回転だけでテイクバックします。腕は肩の前で固定したままのイメージ(三角巾のイメージ)ですので、テイクバックでは大きくラケットを引くことができません。肩の位置からしかテイクバックが取れないからです。その分、左手の使い方が重要です。左手が体の回転をリードすることで、小さいテイクバックでも強いスイングになります。小さなテイクバックと大きなフォロースルーです。

2014年7月24日木曜日

Mecir's Tennis (236) 左肩がオープンなフォアハンド・左肩がクローズドなフォアハンド(2)

Mecir's Tennis (235) 左肩がオープンなフォアハンド・左肩がクローズドなフォアハンド(1)において、浅くバウンドするボールは左肩をクローズド(0時方向)に入れると書きました。また、深くバウンドするボールは左肩を開いた状態で打つことができると説明しました。

その二つの良いところを取った打ち方があります。これは、メシールがそのキャリアの最後(1989年~1990年ごろ)で身に着けた打ち方で、デビューしたての頃(1985年~1986年ごろ)には使わなかった打ち方です。

それは、左足をオープンにして、さらに足を開く(つまり「がに股」)という足の使い方です。がに股にすることで、右足のつま先は0時方向ではなく2時方向(大げさに表現すると3時方向)を向きます。さらに、それに加えて、左肩を入れます。つまり、左足をオープンにしたまま、右つま先を2時方向(3時方向)に向けることで、体を横向きにできるわけです。当然、左肩を入れる(0時方向を向く)ことができます。

この打ち方は、やや浅めにバウンドするボールを左足をオープンにしたまま打つことができます。逆に深い球をタイミングで打つのではなく、しっかりとインサイドアウトのスイングで打つことができます。

つまり、両者の「いいとこどり」ができるわけです。

がに股での打ち方ですので見栄えはよくないのですが、安定して強い球を打てるので便利な打ち方です。バラエティーに富んだメシールのスイングの中でも、利便性の高いフォームだといってよいと思います。

かなり万能な打ち方ですので、「どんな場合でも、右足は原則的にはがに股で、右足のつま先は常に2時方向を向く」と決めておくのもよいと思います。

2014年7月23日水曜日

Mecir's Tennis (235) 左肩がオープンなフォアハンド・左肩がクローズドなフォアハンド(1)

メシールのフォアハンドで、時々、肩(左肩)がオープンのままボールを打っているシーを見かけます。もちろん、足もオープンスタンスなのですが、体全体が前を向ているようなケースです。正面を向いて、ボールが体の右側にあるイメージです。

一方で、左肩が入って、両肩がボールに対してクローズドになることもあります。横を向いて体の正面ネット方向を0時とすると、体に対してボールが3時の場所にあるイメージです。

この二つの打ち方を、メシールはどのように使い分けているのでしょうか。一言でいうと、バウンドする場所の違いです。

ボールが深くてベースライン近辺でバウンドする場合には、前者の打ち方をすることがあります。(後者の打ち方の場合もあります。)

一方、ボールが浅い場合(サービスラインあたりでバウンドする場合)や、やや深めでもゆるく高く弾むボールなどの場合には、絶対に前者の打ち方はしません。必ず、体をボール飛球方向に対して9時側に移動し、横を向いて打ちます。

特に、浅くてボールが弾む場合、つまりチャンスボールでは肩は必ず0時と6時を結ぶ方向になります。肩が開くことはありません。

以前、Mecir's Tennis (225)でフォアハンドチャンスボールの打ち方を説明しました。右腰を前に突き出すのですが、その場合ですら左肩はネット方向(0時の方向)を向きます。左肩が0時方向で右腰を突き出すので、かなり体をひねっていることになります。

浅くバウンドするボールの場合に肩を開いた打ち方ができないのは、この打ち方ではタメが作れないからです。「ぱっと来てぱっと打つ」場合にのみ、左肩を開いてボールを打つことができます。多少、バウンドが浅くても、相手のボールが速い場合にもタメは作れませんので、この打ち方ができます。

相手の技量が高ければ高いほど、深いボール、速いボールが来ますので、この打ち方をする機会が増えます。一方、相手の技量が見劣りする場合には、逆に浅いボール、高く弾むボールがよく来ます。その場合には、絶対に左肩を開いて打ってはいけません。タメが作れませんので、本来は易しい球を逆に難しくしてしまうことになります。

相手のボールが浅い、ゆるく跳ねるなどの場合には、これでもかとボールの9時側に回り込んで、しっかりと左肩を入れてボールを打ちます。左肩を開くのはもちろんNGですが、左肩が入りきらないだけでもNGです。つまり、左肩が9時方向はNGですが、10時でも、11時でもNGです。しっかりと、12時方向を向けなくてはなりません。

相手のボールが速い場合にはオープン左肩で打つのであまりステップが必要ありませんが、相手のボールが緩い時にはボールの9時側に回り込み、勝左肩を十分に入れるため、ずいぶんと忙しくなります。動きも大きくなり、ステップ数も格段に増えます。遅いボールを打つプレーヤー(一般にはよりレベルが高くないプレーヤー)ほど、メシールの側は足を動かさねばなりません。

一般の人がメシールのフォアハンドでボールを打つのが難しく、特に遅い球に意外に弱いのは、上のことを忘れてしまい、遅い球でも左肩を入れずにフォアハンドを打ってしまうためです。特に、一級前のボールが速区、次の球が遅い場合に、ミスをしがちです。速い球に通用する打ち方が、遅い球にも通用するとは限らないのです。一球、一球のボールごとに打ち方を変えて対応しなくてはなりません。

2014年7月22日火曜日

Mecir's Tennis (234) どのぐらい腰を落とすか・どのぐらい膝を曲げるか 

メシールは、当時、腰がよく落ちている、膝がよく曲がっていると言われていました。では、どのぐらい腰を落とせばよいのでしょうか。どのぐらい膝を曲げればよいでしょうか。

どういえばよいのでしょうか。人の感覚なので、人によって違うと思うのですが、一言でいうと「洋式便器に座っているぐらい腰を落とす脳内イメージ」です。こんなに腰を落とし、こんなにお尻を突き出して大丈夫かというほど腰を落としてください。

膝も、同様に曲げこんでください。お尻を突き出すぐらいに、膝を曲げこみます。インプレー中は、サーブの場合も、ストロークの場合も、ボレーの場合も同じです。膝の下(いわゆる弁慶の泣き所)が地面と平行になるぐらいの脳内イメージで、お尻を突き出してください。

さらに、そのままでボールを追いかけてください(ステップワーク)。また、そのままでボールをヒットしてください。

なんとなく、こんなに腰を落としては動きがぎこちなくなるのではないかと思うかもしれません。しかし、実際にはその逆です。これだけ腰を落とすと、安定した体勢でボールを打てるため、自由に上半身が使えます。スイングの自由度が高くなります。

メシールの「上体を立てたスイング」のためには、この腰を落とし膝を曲げこむことは必須といってもよいでしょう。実際、メシールのビデをを見ていると、感覚的(脳内イメージ)には洋式便座に座っているぐらい腰を落としていると思います。(もっとかもしれません。)

それはまさに、メシールのスイングです。つまり、自由なスイングのためには、それほどまでに腰を落とすことが有効なのです。「動きづらくなるのではないか」と思うぐらい、腰と膝を落としてプレーしてください。

2014年7月21日月曜日

Mecir's Tennis (233) ゾーンとスコープ(2)

スコープは、点ではありません。ある一定の範囲で照準を当てます。一定範囲は、大きすぎてもいけません。スコープの意識がないと、自分の視野のすべてでボールを見てしまうでしょう。それもいけません。

スコープの大きさは、ゾーンの大きさと一致します。つまり、スコープの中にボールをロックオンできれば、それは言い換えるとゾーンでボールをヒットできるということです。

スコープで相手コートやボールを見る場合、スコープの中は透明です。そして、スコープの外は半透明です。ボールが半透明の場所にある場合、体を移動させてボールを透明なスコープの中に移動して、そこでロックオンするのです。

スコープの位置は、意図的に選んではいけません。つまり、頭を動かしてスコープの側からボールを追いかけてはいけません。頭とスコープの位置関係は、常に一定です。したがって、スコープの中にボールを入れるということは、前後左右(さらには上下)に体を動かすことです。それ以外に、ボールをスコープでとらえてロックオンすることはできません。

メシールのテニスでは、上体が固定されます。頭を動かすことができません。頭の向きを変えることなくスコープでボールをとらえるのは、意外に大変です。実際、そのようにしてボールをロックオンすることを意識すると、それまでどれほど楽に(手を抜いて)ボールを追いかけていたかがわかります。

逆に言うと、どれだけ難しい場所でボールをヒットしていたかがわかります。上体を立てて頭の位置(目線)を固定し、ボールをスコープでとらえて、ゾーンで打つ。これは、ボールをとらえるまでは大変ですが、一度ロックオンしてしまえば安定してボールを強くヒットできます。

Mecir's Tennis (232) ゾーンとスコープ(1)

どれほど正しいフォームを身に着けていても、ゲームで使えなければ意味がありません。練習の時は、ボールは自分のところに飛んできます(練習相手は打ちやすい場所にボールをうとうとしてくれるでしょう)が、ゲームではその逆です。打ちづらいところ、打ちづらいところを選んで、相手はボールを配球します。

そんな打ちづらいボールであってもそれを強く打ち返すのが、テニス(グランドストローク)の基本です。つい、我々は、「ボールをどこに打つか」という、つまり配球を考えます。しかし、ボールの配球よりもまず強いボールを打つことが大切です。

強くボールを打つためには、よい打点でボールを打つことです。よい打点とは、つまり、ボールを強く打つことができる打点です。ここでは、その打点を「ゾーン」と呼ぶことにします。ゾーンでボールを打てば、自然なスイングで自然に強いボールを打つことができます。(自然なスイングで強いボールを打つことができる打点をゾーンと呼ぶというのが正しいかもしれません。)

テニスは、ミスをすると負けるスポーツです。ボールを打つときには、常にミスをする可能性とのメンタルな戦いがあります。ゾーンでボールを打つということは、メンタルストレスなく強いボールが打てるので、より安定したよいボールを打つことができます。きちんと打てば必ずボールが相手のコートの入るため、相手のコートにボールを入れるという意識も不要になります。

つまり、相手が打ちづらいところにボールを打ってきた場合であっても、体を移動して自分のゾーンでボールを打つことが最優先事項となります。どこを狙って打つか(ボールの配球)は、その後の課題です。まずは、ゾーンにボールを入れること、それにより強くボールをヒットすることが重要です。

つまり、相手のボールがこちらに飛んでくる間に、ボールをゾーンに持ってこなくてはなりません。もちろん、相手のボールの軌道を変えることはできません。したがって、まずは自分の体をスムーズに移動して、ボールをゾーンに入れる必要があります。

「ボールをゾーンにひきつける」というイメージです。

メシールのテニスでは、上体はできるだけ立てた状態を維持します。これは、言い換えると、目線の高さが一定に保たれるということです。つまり、ボールを追いかけながらも、目線の高さは一定に保たれるのです。

目をライフルの照準(スコープ)と考えると、スコープはボールを捉えます。そして、ボールがゾーンに入ってきたときに引き金を引くのです。言い換えると、目でボールを追いかけながら、体をゾーンに移動し、ボールがゾーンに入ってきたら、引き金を引いてボールをヒットします。

ポイントは、なんとなくというイメージでボールを打つのではなく、しっかりとボールをゾーンにひきつけるイメージを持つことです。引き付ける役割をするのが、スコープです。したがって、スコープ、すなわち目の高さを一定にしてボールを引き付けるイメージは重要です。なお、スコープはどうしてもゾーンにボールを入れることができなかった場合には、強くボールをヒットするのを諦め、ミスしない最善の強さでボールを運ぶことになります。

一球一球のボールごとに、ゾーンでボールを打てているかどうかを判断することが大切になります。ゾーンでボールを打てれば何も考えずに強いボールが打てますので、ストレスなくボールをヒットできます。少しでも多くの場合にゾーンでボールを打つことろ心がけるのは、もちろんです。

2014年7月13日日曜日

Mecir's Tennis (231) サーブではどこまで膝を曲げるか?

九鬼潤さんのレッスンで、「サーブでは膝を十分に曲げて、膝を戻す勢いでボールをヒットする」ということを教わりました。

では、サーブではどこまで膝を曲げこむのでしょうか。

その答えは「可能な限り」です。「可能な限り膝を曲げこむ」ということは、決して体の限界まで膝を曲げるという意味ではありません。

プレーヤーの体力、脚力、パランスにより、膝を曲げこんで力をため込み、膝を伸ばす力で跳ね上がることができるレベルは異なります。

つまり、バランスを崩すことなく曲げこんだ膝を伸ばしてボールを打つことができるレベルまでがその人が膝を曲げることができる限界です。この限界まで膝を曲げるというのが正解です。

最近の男子のトッププロでも、たとえばスイスのバブリンカなどはそれほどまでは深く膝を曲げこみません。かつてのボリス・ベッカーはかなり深く曲げこんでいました。

どこまで曲げこめるのかは、その人によります。それを超えてまで曲げる必要はないのです。その人の限界まで曲げこむのが理想的な膝の曲げこみということになります。

2014年7月12日土曜日

Mecir's Tennis (230) クラシックだろうがフォアハンドスイングは絶対にインサイドアウト!のワケ

最近のテニスでは、フォアハンドは「アウトサイドイン」でスイングするそうです。昔ながらのテニススタイルの私には、ちょっと驚きのセオリーです。

メシールのテニス、まさにオールドクラシックスタイルのテニスでは、フォアハンドではアウトサイドインのスイングはあり得ません。それは不可能です。その理由を今回は書きたいと思います。

Mecir's Tennis (226) 柔らかいスイングとは?(その1) ~前腕と上腕は同期しないで書きましたが、メシールのスイングでは、右手前腕が右手上腕・右肩から遅れて出てきます。さらに、その上腕・肩は腰の回転から遅れて出てきます。

スイングがアウトサイドインになっている場合、上腕・肩が腰の回転から遅れて出てくることを考えると、上腕・肩が回転するときには左肩は大きく開いていることになります。まさに「振り遅れ」のフォームになってしまいます。

これでは、ボールコントロールができません。

一方、スイングがインサイドアウトであればどうでしょうか。この場合には、右手上腕と右肩が遅れ出て出てきても、左肩が開くことはありません。つまり、左肩を開くことなく右肩が腰の回転から遅れ出てくることができます。

腰の回転と右肩・右手上腕の回転のずれが、ボールにパワーを与えます。(そして、右肩・右手上腕の回転と右手前腕の回転のずれがボールにコントロールを与えます。)どうしても、このずれは必要です。体が開かずに(左肩が開かずに)このずれを作るためには、スイングはどうしてもインサイドアウトにならざるを得ないのです。


2014年7月11日金曜日

Mecir's Tennis (229) Mecir vs Gilbert

Mecir vs Gilbert match is now available on Youtube.
メシールとブラッド・ギルバート(Winning Uglyの著者で有名)の試合をユーチューブで見ることができます。(こちら

2014年7月8日火曜日

Mecir's Tennis (228) 柔らかいスイングとは?(その3) ~前腕のイメージのサーブへの応用

柔らかいスイングとは?(その1)(その2)で述べた自由な前腕のイメージは、サービスでも有効です。サービスの場合も、前腕を自由に使うことでサービススイングに柔軟さが出てきます。メシールのサーブは、スイングスピードは速くないものの自由自在に相手のいやなところに打つこと出来るフォームでした。そのヒントは、自由な前腕に隠されています。

面白いことに、ここでも、(その1)で述べたコナーズとメシールの違いが現れています。コナーズの肩と前腕と上腕が一体となって動くサーブに対して、メシールは肩と上腕が一体ですが前腕は自由に使っています。

コナーズとメシールのゲームを見ていると、その違いがよく分かります。

Mecir's Tennis (227) 柔らかいスイングとは?(その2) ~前腕のイメージ

Mecir's Tennis (226) 柔らかいスイングとは?(その1)で、「前腕と上腕は同期せず、上腕は方と一緒に動き、前腕はそれに遅れて出てくる」と書きました。

もともと、右腰の回転に対して肩(と上腕)が遅れてくるので、前腕はさらにそこから遅れることになります。このイメージどおりにスイングすると、さすがに「遅れすぎ」たスイングイメージになってしまいます。

逆に、スイング中に前腕が送れ過ぎないように意識すると、今度はラケット面が早くかぶってしまい、むしろ、上腕よりも先に回ってしまいます。

そうならないコツとして、「前腕はボールをヒットした後に回転する」というのが有効な脳内イメージです。Mecir's Tennis (226) で書いたとおり、前腕は自由度が高く、メシールの自由なスイングは、この前腕の自由さから来ています。ただ、その自由な前腕のコントロールは、脳内イメージではインパクト後になるのです。

それでも実際には、インパクト前後で前腕が上腕とは独立して動きますので、十分にコントロールが効いたスイングが可能です。この微妙なタイミングは、練習することでつかむしかありません。

もし、これまで、前腕と上腕が同時に動くタイプのスイング(コナーズ型)をしていた場合には、ほんの少しだけいままでよりも前腕を自由に使うだけでよいのです。上腕や肩の回転イメージを変える必要はありません。

2014年7月7日月曜日

2014 ウィンブルドン 白のウェア

ウィンブルドンの選手のウェアについて、アンダーウェアまで白で統一するようにというオールイングランド・ローンテニス・アンド・クロケット・クラブの通達について、選手から不満の声が上がっているという。フェデラーも、「規則には従うが、(個人的な意見としては)厳しすぎるのではないか」とコメントしているそうだ。

クラブ側のこの通達の趣旨は、「ウィンブルドンはコマーシャリズムには流されない」ということなのか。それとも別の理由があるのか。ウィンブルドンは、素晴らしいプレーを見せる(魅せる)プレーヤーがいてこその大会だ。クラブ側は、プレーヤーが納得するような説明をするべきだと思う。

オールイングランド・ローンテニス・アンド・クロケット・クラブが白にこだわる理由は、伝統か、格式か、それとも権威か。

ウィンブルドンが特別な大会であることは、世界中の誰もが認めるところだ。それでも、やはり、伝統や格式、権威を誇示する必要があるのだろうか。そういえば、最後まで白のボールにこだわったのもウィンブルドンだった。あの有名な、スラセンジャーの白のボールだ。(さすがに、ボールの色まで白に戻すことはしていないが。今のところは。)

オールイングランド・ローンテニス・アンド・クロケット・クラブが白にこだわる理由は、伝統か、格式か、それとも権威か。

おそらく、本音は権威なのだろう。数少ない、残された英国の権威の象徴がそこにある。グローバル化の流れと一致するのが難しい権威という目に見えない力に、クラブはどこまでこだわり続けることができるか。今や、それは、「昔懐かしい伝統」では済まなくなりつつある。いや、正しいかどうかに関係なく流れに逆らってこだわり続けることこそが、もしかしたら伝統の言葉の意味するところなのかもしれない。

今となっては、ジョン・マッケンローのセンターコートでのタッキーニのウェアはなつかしい。特に、赤の肩のラインのウェアは、多くのテニスファンが忘れることができないだろう。あのウェアを見るだけで萎縮した選手が、あのころどれほどいたことだろうか。

そういえば、伝統に逆らって黒のパンツでコートに立とうとして白に換えるように指示されたのも、マッケンローだった。小さな大会であれば、おそらくデフォ(棄権)していただろうマッケンローも、さすがにウィンブルドンでは棄権ができなかった。

Mecir's Tennis (226) 柔らかいスイングとは?(その1) ~前腕と上腕は同期しない

昔(確か1986年)にジャパンオープンでメシールと対戦した福井烈選手(今はNHKのテニス解説者として知られていますね)が、メシールを評して、こんな風に言っていました。

「素人にいるじゃないですが、振り遅れてスイングする人が。メシールはあれなんです。あ、振り遅れたなと思ったらすごく回転の良いボールが返ってくる。」

これは、どういうことでしょうか。今回は、このことについて考えてみます。

メシールのスイングは、まず右足が回転し、右ひざが回転し、次に右腰が回転し、肩と腕が一緒に回転してスイングを構成します。この順番が、ほんのわずかにずれています。力が、足からだんだん上半身に伝わってくるイメージです。

ずれは少しずつですが、結果的には最初から最後までが大きなずれになります。「ラケットが遅れて出てくる」ようなイメージです。これが、メシールのスイングが振り遅れたように見える(打点が遅れているように見える)理由です。

ここで、大切なことが一つあります。それは、上に書いた「肩と腕が同時に回転する」という部分です。忘れていけないのは、腕です。

腕は肘を境に、肩に近い方を上腕(じょうわん)、手の方を前腕(ぜんわん)と言います。そして、肩と同時に回転するのは上腕だけなのです。前腕は、上腕からさらに遅れて回転します。このことがとても大切です。

もし、上腕と前腕が肩と一緒に回転するとすると、それはとても「硬い」スイングになります。このスイングをする選手が昔いました。それは、アメリカのジミー・コナーズです。コナーズは、肩と腕(上腕および前腕)を同時に回転することで、ブレの少ないスイングをしました。こちらの動画像を見てください。見事なまでに、肩と腕が一体になって回転しています。

この打ち方はスイングのブレが少ない代わりに、大きなリスクがあります。それは、スイングに遊びがないということです。また、スイングに強弱がないため、打ったボールに伸びを与えることができません。コナーズのフォアハンドでは、それを補うために体を大きく回転します。コナーズは、多くの場合にジャンプしながらボールをヒットすることで、ボールにパワーを与えようとしました。それは、安定感とボールのパワーを両立させるための、コナーズの工夫だったのだと思います。

実は、最近のウエスタングリップのフォアハンドは、やはり肩と腕が一緒に回転します。例えば、錦織圭のフォアハンドを見てください。ボールがヒットする直前までは、ほぼ、肩と腕が一緒に回転しています。錦織はヘビーウエスタングリップですが、グリップが厚くなればなるほど、この傾向が強くなります。

メシールのような、イースタングリップで柔らかいフォアハンドは、どうやって実現するのでしょうか。そして、なぜメシールのスイングは振り遅れているように見えるのでしょうか。

その答えは、上に書いた通り、肩と上腕の回転から前腕の回転を少し遅らせることにあります。言い換えると、ボールをヒットするときに前腕は上腕よりも遅れて出てきます。

メシールのフォアハンドを見てみてください。肩と上腕が一体になって回転し、前腕が上腕より少し遅れて出てくるのがわかると思います。そして右ひじは常に曲がっています。これは、そこにゆとりがある証拠です。

前腕が上腕よりも遅れるということは、前腕の動きは上腕に支配されないということです。前腕には自由度が与えられます。その自由な腕の動きで、ボールを押し出すことができます。または、ボールに下から上への回転を与えることもできます。つまり、ボールをここで操ることができるのです。

前腕がボールを操ることができることは、ウエスタングリップのフォアハンドにはできないことです。微妙なずれがボールコントロールに影響するテニスのスイングで、こんな自由が許されるのは、そこまでのお膳立てがしっかりしているからです。足、腰、肩、上腕の回転がきちんと連動しているおかげで、最後の前腕には自由度が与えられます。

乱暴な言い方をすれば、「すべてのお膳立ては前腕に自由度を与えるため」だったのです。上腕と前腕を固定してしまっては、せっかくのお膳立てが台無しです。最後の最後に、前腕を遅らせてスイングしてください。その代わりに、そこで、自由を満喫するのです!

メシールとコナーズのゲームをこちらで見ることが出来ます。両者の違いがよく分かります。