2011年5月23日月曜日

ちょっとした思い付き ~メシール・ザ・マジシャン

今回は、映像を見てのメシールのテニスの分析ではありません。普段は、オンコートや日常で、「これはどうなっているのだろうか」「もしかしたら、こういうことではないか」と思いついたら、必ずDVDで確認してから書いています。たいていの場合は、何かしら、答えが、DVDの中にあります。この繰り返しの中で、メシールのテニスを分析してきました。それが、このブログの基本でした。

しかし、今回は、思いつきで書いています。というのは、今回の内容は、映像で確認するのが難しいからです。ただ、なんとなく、とてもよいアイデアのような気がして(笑)、書いています。

メシールのストロークは、多くの選手に、そして観客に、「コースが読めない」「どちらに打つか全くわからない」と言われてきました。そして、これが、メシールの最大の武器の一つでした。メシールには、いくつかニックネームがありましたが、ビッグキャットとは別に、マジシャンと言われることがありました。「そのまんま」な感じはしますが、やはり、相手の予想を裏切るボール運びが出来たからこそついたニックネームでしょう。

しかし、その技術を、どうすれば打つコースを隠すことができるのかを、誰も解説してくれません。なぜ、解説できないのでしょうか?

実は、私は、さしてテニスの技術力があるわけではないので、相手のコースを読むということがどういうことかすらも、よくわかりません。メシールのコースが読みづらいのが事実だとして、では、他の選手の打つコースであれば、なぜ読めるのでしょうか。相手の打つコースが読む方法が理解できれば、メシールの打つコースが読めないということも理解できるかもしれません。

いくつか、想像することはできます。一つは、自分の打った球のコースや勢いから、打ち返せるであろうという予測がある程度できるということです。試合が進んで、相手の技術力や癖が見えてくると、ある程度、打つ方向が予想できるようになるでしょう。特に、自分の打った球が厳しい時には、相手の返球のコースは、限定される傾向にあると思います。

もう一つは、相手のスイングからコースを読むということです。よく、プロの選手は、相手のフォームでコースが読めると言います。本当に、そんなことができるのでしょうか?私は、相手のフォームからコースを読むなどということは自分ではできないと思っているのですが、実は、無意識にそれをしている可能性も否定できません。

メシールが、コースを隠して打つことができるとすると、いくつか、想像できることがあります。①相手が打つと読む方向と逆の方向に打つ、②全く同じフォームからクロス・逆クロスに打つことができるので相手がコースを読めない、③相手が打った球が厳しい時に想像されるコースと逆に打つことができる。

①も、②も、そして③も、いかにもありそうです。そして、おそらく、メシールは、①も、②も、③もできたのではないでしょうか。(いつか、本人に聞いてみたいものです。)

しかし、そんなことができるのだろうか、、、という以前に、そんなことに、意味があるのでしょうか?

なぜなら、私は、上に書いたように、少なくとも意識しては相手のコースを読んでいません。(読む技術がありません。)が、相手の返球が、それほど厳しくないのであれば、正直なところ、どちらのコースに飛んできても困りません。先にわかっていたらより良いですが、相手のボールが厳しくないのであれば、コースが読めるということは必須ということではありません。

逆に言うと、コースを隠して打っても、打つ球が厳しくないのであれば、コースを隠して打つことは無駄な努力ということになります。

そうすると、上の①~③以前の問題として、どういう時にコースを隠して打つことが有効であるかということを、まずは理解する必要があるわけです。その分析は、DVDでもできると思いますので、メシールの相手が裏を書かれているシーンを中心に、調べてみようと思います。

さて、前書きが長くなりましたが、今回は、②について考えてみたいと思います。同じフォームからコースを打ち分けるという技術についてです。もし、本当に、ボールをヒットする瞬間まで打つコースを決めないでもよいとすれば、間違いなく、相手はボールをヒットするコースを読むことができません。(打つ本人さえ、わからないのですから。)

どうすればこんなことができるのだろうかと考えているときに、ふと、思いついたことがあります。以下は、すべて、フォアハンドストロークの話です。

フォアハンドで、もし、打つ瞬間にコースを変えるのであれば、まず、逆クロスに打つ振りをしておいて、直前に順クロスに打つのがよいように思います。少なくとも、その逆は難しいでしょう。順クロスと決めた時点で体が開くため、そこから逆クロスは打てないからです。

と、最初は思っていました。

しかし、もしかしたら、だからこそ、メシールは相手の裏をかけるのではないだろうかと、思ったのです。つまり、メシールは、フォアハンドストロークにおいて、まず順クロスに打つ準備をしておいて、そこから逆クロスにボールを打っているのではないか、と。

どうしたら、そんな”器用な”ことができるのでしょうか?インパクト直前のラケットの動きを考えてみましょう。

順クロスに打つためには、フォワードスイングにおいてラケットのフレームをネット方向に動かすイメージが有効です。言い換えると、その際に、ラケット面(ボールを打つ側)は自分の体の方を向いています。そのままボールをヒットすると、ラケット面はネットよりも少しだけ左側(11時の方向)を向くために、ボールは順クロスに飛んでいきます。このフォワードスイングにおいて、ラケット面(の法線)はどんな動きをするでしょうか。

おそらく、法線はまず体(例えば9時方向)に向き、インパクトに向けて、10時、11時と動いていくと思います。11時で打つとフォアハンドの順クロス方向に、12時(まっすぐネット)に向けば、相手のいる場所にボールを打つことになります。

そうです。つまり、10時、11時、12時と向いたラケットを、そのまま1時方向に向ければ、逆クロスにボールを打つことができるのです。もし、12時、11時、10時と時計と逆回りに動いているラケット面を急に1時方向に向けるというのであれば難しいと思います。しかし、10時、11時、12時と動いている面を1時に持っていくのは、不自然ではなく、また、不安定でもありません。

これは、一般的な厚いグリップのスピン系フォアハンドでは、絶対にできないうち方です。スピンボールを打つ際には、ラケットの法線は必ず時計と反対周りをします。したがって、一度、順クロスと決めたストロークを逆クロスに切り替えることはできないのです。(打点を後ろにずらしてラケット面がまだ1時方向を向いているときにインパクトすれば、逆クロスに打つことは可能ですが、それは、フォームで相手には予想されてしまうでしょう。)

メシールのテニスでは、テイクバックでラケット面が体の方向(例えば9時の方向)を向いている点が重要なのです。一般的なワイパー系のスイングでは、手首を後ろに折り、ラケットのグリップ側のトップをネット方向に向けることで、ラケット面を伏せます。その際、ラケット面の法線方向は、基本的には地面方向になりますが、水平成分を取り出すと、それは外向き(例えば2時方向)になっているはずです。この点が、薄いグリップのメシールと、他の(現代テニスの一般的な)ストロークと、全く異なる点なのです。

かなり大胆な予想(仮説)ですので、この内容については、検証が必要です。そして、②についてであれば、ビデオで確認ができるかもしれません。分析結果については、また、いつか報告をしようと思います。

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