2011年2月27日日曜日

トレンド~メシールのテニスは古いのか?

1987年の全米オープンでメシール対ヴィランデル戦(準々決勝)のゲスト解説者は、(今は亡き)アーサー・アッシュ氏でした。アッシュ氏は、(まだ、それほど、有名ではなかった)メシールについて、インタビュアーに「この選手をどう思いますか」と質問されたときに、こんな風に答えています。「彼のプレーを見ていると、どこのテニスクラブにもいるカジュアルプレーヤーのようだ。」カジュアルプレーヤーのようだという批評を、私は、ほかのメシールのビデオでも聞いたことがあります。メシール自身も、昔のインタビューで、「自分のプレースタイルは、(レベルの高い)クラブプレーヤーだった父親の影響を受けています」と答えていたことがあります。

テニス365の技術特集・フォアハンド編を見てみると、メシールのテニスが、現代テニスとはかなり違うことが変わります。現代テニスとは、全く正反対である技術も、多々あるようです。例えば、「ラケットは下から上ではなく体の回転を使った横方向のスイングが望ましい」とか、「テイクバックではラケットを立てる」などは、メシールのテニスとは正反対です。

テニスの道具(特にラケット)の進化により、この20年で、テニスの技術は明らかに変わりました。おそらく、プロの世界、特に男子のトッププロの世界では、メシールのテニスは、もはやトレンドにはならないのかもしれません。しかし、それでも、メシールのテニスの美しさは、私は消えることはないように思います。今のテニスが、「力強さ」を優先するあまり、かつての「美しさ」を失ってしまった今、私は、メシールの美しいテニスを、アマチュアの世界の中で残したいと思っています。

メシールのテニスは、力強さ(パワー)よりも、正確さを優先するテニスです。特に、フォアハンドは、厚いグリップで高速にラケットを振ることでボールを強く打つ現代のテニスと比べると、制約の多いフォームです。そのため、(別項でも述べますが)実際にテニスコートでメシールのテニスを実現すると、パワーがないために「打ち負ける」「球が浅くなる」などということが多くなりがちです。

しかし、考えてみると、パワーのあるラケットが増えている現代、昔のパワーレスなウッドラケットや薄いラケットと比べると、現代のラケットは、メシールのフォームではパワーが出ないという弊害に陥りにくい環境にあるはずです。(そう考えると、パワーのでないウッドラケットを最後まで手放さなかったメシールは、不思議な選手です。)

もうひとつ、メシールのテニスに必要なのは、ラケットの重さなのですが、これについては、現代のラケットが軽くなっているとはいえ、軽いラケットを重くするのは難しくないのです。(リードテープをつければよいのですから。)こちらは、現代テニスであっても問題にはなりません。

技術的には古くなったメシールのテニスを、アマチュアが実現する環境は、かつてよりも整ってきているのかもしれません。

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