2013年2月4日月曜日

全豪オープン2013女子決勝 Na Li (李娜)VSアザレンカ

個人的な事情で全豪オープン2013女子決勝のテレビ放送を見ることができなかったのですが、今日、WOWOWで決勝のダイジェストを観ました。ダイジェストですからすべてのプレーを見たわけではありませんが、第1セットから第3セットまで李娜のプレーが首尾一貫していたのが印象的でした。

自分のペースでテニスをする。自分のテニスでゲームを支配しようとする。それが李娜のテニスであり、李娜のテニスの魅力です。

2011年全仏オープン決勝戦のあの迷いながらのプレーとは全く違う、堂々としたプレーでした。全仏オープンの時とは違い、アジア人とか中国人とかそういうことは全く関係ない、一人のトッププレーヤーとして、李娜は李娜のテニスをやりぬきました。

私は、今回は優勝できなかったですが、李娜が2年前よりも明らかに成長したと感じました。2011年の全仏オープン優勝から1年半ほど、特にグランドスラム大会ではベスト4にすら残ることができなかった李娜ですが、今はその間の苦しみから脱して新たなステージに立ったことを、今回の大会では示してくれたように思えます。

最近の私は、今の女子テニスを面白く感じることができません。どうしてなんだろうかと、この決勝戦を見ながら考えていました。

女子テニスという言葉からするとちょっと違和感を感じますが、今の女子テニスのトップランカーを表すの一番ぴったりなのが、パワーテニスという表現です。特にトップ3であるシャラポワ、アザレンカ、ウイリアムスに共通しているのがパワーテニスだと言ってもよいでしょう。

パワーテニスとはなんでしょうか。私は、次のようなイメージを持っています。

プレーヤーは、飛んできたボールに対して、どのようなボールを打つかを選択します。強さ、高さ、コース、回転、リスクなど、相手やスコア、自分の調子、そして自分のプレースタイルから打つボールを決定します。選択は一瞬で行われるため、じっくり考える時間はありません。

そこでパワープレーヤーは、こう考えます。「現在の自分の体勢で最も強いボールを打つことを最優先しよう。」もちろん、とは言え相手の打ちやすい場所に打ち返したのでは不利になりますから、相手の打ちづらい場所を狙うことも考えます。

しかし、選択において、コースを狙う事よりも強いボールを打つことが優先します。それがパワーテニスであり、パワープレーヤーです。

パワープレーヤーの力のあるボールは、コースが少々甘くても、いきなり反撃されることはありません。反撃されないぐらいパワフルなボールを打てるからパワープレーヤーなのです。

パワープレーヤー同士の打ちあいは、「激しく見ごたえがある打ち合い」などとアナウンサーは言いますが、そうでしょうか。私には、どこか綱引き競技を見ているような気持になることがあります。パワーで押し切った方が勝ち。そこには、戦略がありません。

李娜のボールもパワフルですが、トップ3ほどのパワーはありません。あえて言うなら、パワーとプレースメントが50対50のバランスでしょうか。トップ3がおおよそ80対20程度だとすると、李娜のテニスはパワーテニスとは言えません。バランスがよいプレースタイルだと思います。

李娜は、決勝戦で自分のプレーを最初から最後まで貫きました。マッチポイントを取られた最後のボールですら、李娜は攻撃しようとしました。(そのボールは、ベースラインを大きくアウトしたのですが。)

チャンスを見て、相手の逆を突くショットを打つ、または相手を攻撃するショットを打つ。これが李娜の戦略です。相手が2歩以上ステップしなければ打てない場所を、李娜は常に狙っているように見えます。

李娜は、試合後のスピーチで、「もう私は若くはないけれど、来年も決勝戦でお会いしましょう」と観客に向かって微笑みながら話しました。私は、李娜のフットワークは、まだまだ世界の一線級で十分に通用すると思います。昔のアジア人(中国人)のイメージでは想像ができない恵まれたスポーツウーマンの体は、現在の女子のトッププレーヤーの中でもトップクラスです。あのブレない下半身と思い切りのよい攻める姿勢があれば、必ず李娜はやってくれると思います。

今の女子プロテニスプレーヤーで、パワーだけに頼ることなく、あそこまで自分から攻撃してポイントを取りに行くプレーヤーが他にいるでしょうか。

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