2011年4月3日日曜日

メシールのテニス(10) インサイドアウト(スイング~フォロースルー)

メシールのテニス(フォアハンド)について、スイングのフォロースルーについて考えてみましょう。

薄いグリップのフォアハンドは、(厚いグリップと比較すると)打点が後ろになると言います。
私は、厚いグリップのフォアハンドについては何も知らないので比較はできないのですが、私の印象では、それは間違いではないかと思っています。

正しく表現すると、次のようになるのではないでしょうか。

グリップの厚さに関係なく、フォアハンドでは、打点は前で打たなければなりません。
ただし、厚いグリップが「打点が後ろでは打つことができない」のに対して、薄いグリップは「打点が後ろになっても打つことはできる」というのが、グリップの厚さによって異なる点です。

したがって、メシールのような薄いフォアハンドグリップでは、打点を後ろにすることはできますが、それが必須ではないということです。実際、メシールのプレーを見ていると、フォアハンドで追い込まれた時には打点を後ろにして、守りのプレーをすることがあります。(そして、これが、薄いフォアハンドの利点であり、フォアハンドに深いボールで攻められても、かわしながら逃げ切ることができるのです。)しかし、それは特別な場合であって、通常のストロークでは、やはり、打点は前において打っています。(ただし、打点を後ろにして”しのぐ”フォアハンドは、つまり、相手のボールに勢いがある場合です。この場合は、面を作ってボールを押し出すだけでよいので、打点を後ろにすることができるのです。逆に”普通の強さ”のボールでは、打点を後ろにずらしてはいけません。)

さて、薄いグリップで、(既出の通り)下から上へのストロークによって打点を前に置くためには何をすればよいか。実は、これが案外難しいのです。

というのは、薄いグリップのフォアハンドでは打点を後ろにすることができ、また、後ろの打点でもインパクトで力を入れることができます。(人間の体の構造上、もしかしたら、薄いフォアハンドでは、打点が後ろの方が力が入りやすいかもしれません。)

そこを、あえて、打点を前にすることは、意外に、「自然に任せる」フォームでは、実現が難しいのです。「意識的に打点を前にする」ことが必要になります。

では、何をどう意識すればよいのか。

それは、「スイングをインサイドアウトにする」ことです。言い換えると、「わきを締めて(絞って)打つ」と言ってもよいと思います。インサイドアウトで、わきを締めてフォワードスイングを行うことで、薄いグリップであっても、打点は自然に前になります。

ここまでは、比較的簡単です。問題になるのは、どうやって、わきを絞りながらインサイドアウトでスイングをする駆動力を得るか、ということです。この駆動力が案外難しい。

実は、この駆動力が何であるのか、私はあまりよくわかっていません。いくつか、考えてみました。
①右足の力を使う。特に、右足の親指側をしっかりとしぼって打つ。
②右の腰で打つ。右の腰にラケットを乗せる感じで、腰をしっかりと回して打つ。

これらは、おそらく両方共が正解なのですが、しかし、コート上で①や②で駆動力を作ることは、私には難しくてできませんでした。副駆動力にはなるのですが、主駆動力にはならなかったのです。

では、どうするか。私は、主駆動力としては、
③左腕を使う
のが一番有効であると思います。メシールのフォアハンドを見ると、明らかに、どの場合にも、テイクバックにおいて左手をできるだけ長くラケットに添えて、その左手がフォワードスイングで弓のように使われています。フォワードスイングでのこの左手の役割こそが、まさに、③の駆動力なのです。

コートで試してみるとわかるのですが、③を使うと、右わきを絞りながらのインサイドアウトのフォワードスイングが、かなり楽に、スムーズに行うことができます。これにより、薄いグリップであっても、打点を前に置くことができるのです。メシールのあの、独特の左手の使い方は、おそらく、打点を前に置くためには、必須なのではないかと思います。

ラケットがウッドの時代は、イースタングリップやコンチネンタルグリップのフォアハンドが主流でした。古い映像を見ていると、当時のフォアハンドの打点は、ほとんどの場合、後ろ(右足の前あたり)になっています。同じ薄いグリップでも、メシールのフォアハンドは、全く異なります。左手を駆動力としてラケットをインサイドアウトに降り出すことで、薄いグリップであっても、打点を前に置くことができるのです。

古いウッド時代の映像(フォアハンド)を見てみてください。ほら、左手は、振り子のようには使われはいないでしょう…。

さらにもう一つ。④肩を回す、ということがあります。特にフォアハンドですが、バックハンドも同じです。別項で述べたとおり、ボールが飛んでくる際に、ボールに合わせてラケットを引き、ボールがバウンドするタイミングで、前の肩をしっかりと突き出します。バウンドする瞬間からがフォワードスイングを開始するのですが、フォワードスイングの推進力として、肩全体を(ゆっくりと)十分に回します。肩の回転でボールを打つといってもよいでしょう。メシールの場合、この肩回転がゆっくりと、しかも大きいので、スイングそのものがゆっくりとしているように見えます。

この、④の肩を回すということは、相手がネットに出てきており、こちらがボールを打ってから返球までの時間がない場合でも、非常に重要です。つまり、相手の返球が早くても、遅くても、必ず、前肩を入れて、肩回転を行うことが重要です。時間がないからと、肩を入れずに、腕やラケット面だけでボールを打つ癖がつくと、メシールのテニス(フォアハンド)は完成しないのです。メシールは、どんなに相手のボール返球が早い場合でも、前の肩を入れるという鉄則を守っています。

1 件のコメント: