2013年6月10日月曜日

Mecir's Tennis (167) 「遊び」のないハンドルは危険:膝の使い方は二通り

車を運転する人であれば分かる通り、自動車のハンドルには「遊び」があります。この「遊び」は運転にとってとても大切な機能です。もし、ハンドルに「遊び」がなければ、運転はとても危険なものになるでしょう。ハンドルを切った瞬間に、車はそちらの方向にすぐに動き出すでしょう。

この遊びは、ある意味では機械らしくない機能のように思えます。入力に対して正確な出力をするのが機械の特質だとすれば、遊びの部分は「機械らしくない」あいまいさがあるからです。

人間が機械を操る時には、この機械らしくない部分が人間と機械を結びつける役割を果たすのです。

テニスについて考えてみると、人間はあいまいです。完全なスイングで、完全なフォームでボールを打つことはできません。したがって、その都度微妙に異なるスイングを吸収して、よい結果(つまり、一定の範囲内の結果を)生み出すためには、人間には遊びが必要なのです。遊びが、人間のあいまいさの部分を吸収してくれるのです。

グランドストロークにおける遊びは、どこにあるでしょうか。それは膝です。膝を柔らかく使うという事は、言い換えれば、そのあいまいさを吸収してくれる機能を活用しているという事になります。

遊びは遊びでしかないので、遊びの機能は主機能ではありません。主機能のあいまいさを受け入れる機能でしかありません。

膝も同じです。膝を使うというのは、遊びの機能としては正しくありません。膝は、遊び、つまり余裕として使うものなのです。

一方で、膝にはもう一つの機能があります。それは、フォワードスイングを開始する機能です。何度も書いている通り、そして世の中でよく言われている通り、スイングは膝(足)から始まります。膝をしっかりと折り込んで、体の回転をスタートします。

この事は、サーブなどでも同じです。サーブでは、駆動力としての膝の使い方がメインとなります。サーブの場合は、自分でボールをトスアップするので、グランドストロークほどあいまいさがないためです。それでも、膝の遊び(クッション)が、トスアップの微妙なずれを吸収してくれることは間違いありません。

つまり、膝には、エンジンの機能と遊びの機能の、異なる二つの機能が求められるのです。これが、話をややこしくします。もちろん、それら二つは厳密に区別する必要はなく、両者を同時に使えばよいだけのことです。しかし、膝には仕事が二つある(特に遊びの機能を忘れやすい)ことは覚えておく必要があります。

練習ではうまく打てるのに、試合になると思うようにボールが打てないことがよくあります。これは、おそらく、スイングには問題がないのです。(練習ではうまく打てているから。)ゲームでは、ミスができない緊張感などから、完全を目指すあまり、微妙なずれに対応できないことがあります。つまり、遊びが足りないのです。膝を遊びに使うことで、うまくいくことがあります。

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