2014年9月4日木曜日

Mecir’s Tennis (247) タメを作る・ボールを落とす

錦織のグランドストロークを見ていると、往年の米国選手であるアンドレ・アガシを思い出します。アガシは、いろいろな意味で、テニスのスタンダードをひっくり返したプレーヤーでした。それは、テニスのプレースタイルだけではなく、テニスウェアやライフスタイルなどを含めて。

錦織とアガシに共通するのは、その打点の高さでしょう。二人ともそれほどの長身ではなかったこともあり、打点が高いという印象があります。高いところでボールを打つということは、逆に言うとボールを落とさないと言うことです。

高い打点とかボールを落とさないというのは、では、どういうことでしょうか。

相手から飛んでくるボールを1歩後ろで打つと、一般的には打点の高さが少し低くなります。さらに下がると、さらに低くなります。前で打つか、後ろで打つかで、打点の高さはほんの少し変わります。


この高さの違いが、別のところでは本質的な意味を持つように思います。そのことを考えてみようと思います。

私なりに考えてみたのですが、ボールを落として打つというのは、「タメを作ってボールを打つ」と言うことではないかと考えています。別の表現をすると「引きつけてボールを打つ」と言うことです。立ち位置が後ろになれば、打点は低くなりますが、ボールを打つタメが作りやすくなります。

ボールが飛んできたときに、ボールに向かっていきそのままタメなしにボールをヒットするのがアガシや錦織の打ち方です。タメなしで打つというのは、0からいきなりボールを打ちに行くようなイメージですので、高度な技術です。動きの素早さ、パワー、正確さと体のバランスなど、すべてがそろわなくてはうまく打てません。錦織はベースラインの中で高い打点でボールを打つことが多いですが、それはボールを落とさないで(タメなしで)打つ場合です。

一般に安定したストロークを打つには、タメが必要です。メシールの場合で言うと、ボールがバウンドするまでに腰を回転させ、テイクバックを終了します。これがタメになります。バウンドしたところでフォワードスイングが開始するのですが、そこからインパクトまでに十分な時間が必要です。言い換えると、この時間が短いとタメが作りにくくなります。

後ろに下がりすぎると、タメを作る時間の余裕はできますが、今度は打点が低くなってしまい、ボールを持ち上げるために、また回転をかけるために,余計な力が必要になります。高い打点よりもボールに角度をつけくい(ネットする可能性が高くなるため)というのもマイナス要素です。相手に時間的余裕を与えてしまうのもよくありません。

つまり、立つ位置が前過ぎるとタメが作りにくく、後ろ過ぎるとパワーや時間のロスが大きくなります。つまり、タメが作れる範囲でできるだけ前で打つ、と言うのが理想と言うことになります。

この、バウンド位置と打つ位置の関係(距離)は自分で作るものです。勝手に「なってしまう」ものではありません。

この距離がボールごとにばらばらになると、ストロークは安定しません。ボールによって、タメのタイミングが異なるからです。一定のタイミング、一定のタメでボールを打つには、常にこの距離を意識しておき、一定のタメでボールを打つことが肝心です。

メシールのテニスでは、ストロークでのラケットスイングは下から上になります。すなわち、打点が高すぎると、ラケットを下から上に振ることができません。したがって、そのためには、ボールがバウンドする場所から一定の距離をとる必要があります。高い打点がモダンテニスのセオリーかもしれませんが、メシールテニスではそれはタメが作れない分だけ危険なのです。

ゲームでグランドストロークが不安定になってきたら、タメを作るためのボールのバウンド位置と立ち位置の関係を確認して、ボールが落ちてくるところでインパクトできているかをチェックしてみるのも有効です。

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