2011年7月20日水曜日

書評:「二つのファイナルマッチ 伊達公子・神尾米最後の一年」(下) なでしこJAPANから学ぶこと

昨日(正確には一昨日)、女子のサッカーワールドカップで、日本が優勝しました。サッカーについては、日本は、おそらく(男子はもちろん女子も)欧米から遅れている競技だったと思いますので、これは、本当に快挙と言ってよいでしょう。

私は、今回の試合(アメリカとの決勝戦)内容についてはダイジェストで見ただけなので詳しくは分かりませんが、かなりの僅差での勝利だったようです。したがって、今後、日本女子チームがトップに君臨するというような強さというよりも、どちらかというと、この大会で、神がかり的な強さで優勝したような印象を受けました。(もちろん、それが、優勝の価値を少しも下げるものではないのですが。)

ふと、テレビや新聞を見ても、とても大きな扱いで、少し前のオリンピックで、女子ソフトボールが優勝した時のことを思い出しました。あの時も、メディアはかなりの扱いだったように記憶しています。

さて、ここからが本題です。

女子ソフトボールも、女子サッカーも、長い歴史とは言えない中で世界の頂点を極めたのに、なぜ、(女子)テニスはそうならないのか。

「二つのファイナルマッチ 伊達公子・神尾米最後の一年」の中で、著者は、かなりのページを割いて、フェデレーションカップの運営についての不満を書いています。当時のフェデレーションカップは、伊達・沢松というかなりの布陣を有しながら、しかし、勝利することを最優先した運営ができていなかったというのです。

私は、事の真偽を知る立場にいませんので正しく判断することはできないのですが、しかし、日本の女子(おそらく男子も)テニスが世界に通用することを目指した運営体制になっていないだろうなということは、容易に想像がつきます。そう感じる理由は簡単で、実際に日本は、男子はもちろん、女子も、ナショナルチームが世界の頂点を極めることができていないからです。(男子はデビスカップチーム、女子はフェデレーションカップチームです。)頂点を極めるどころか、ワールドグループに入ることすら、ほとんどできていない現状です。

世界のスポーツにおいて、ナショナルチームの強化体制の成果が出やすいのは、女子です。これは、ほとんどの競技において、女子の方が男子よりも競技人口数が少ない(選手層が薄い)からです。もちろん、そのことが、女子競技の方が男子競技よりも劣るということを意味しているわけではありません。ただ、協会が本腰でナショナルチームの強化策を打てば、少なくとも、女子については、世界での戦いにおいてもその効果は出やすいはずなのです。しかし、ソフトボールやサッカーと比較しても浅いとは思えない歴史のあるテニスでは、その強化策は、残念ながら機能しているようには見えません。

この書籍の指摘だけではありません。フェデレーションカップではないですが、今年のデビスカップについて、山口奈緒美さんが「デ杯で日本勝利も、手放しで喜べない現状」という記事を書いています。これは、ナショナルチーム強化の話ではないですが、この文章からも、会場選択がベストの解になっていない(日本チームが勝つことが最優先になっているようには見えない)という日本のテニス界の現状が、透けて見えるような気がします。

この現状をどのようにすれば改善できるのか。

これについても、私がそれを述べる立場にはありません。ただ、無責任にコメントをするならば、一つだけ、とても大切なことを一つだけ、指摘したいと思います。

それは、現役を終えた選手が、現場を離れて、経営側・運営側に参加することです。男女のテニス協会だけではなく、スポンサー、企画、代理店、経営…など、あらゆる方面に、現役経験者が入り込んでいくことです。特に、世界を知っているプレーヤーの仕事は重要です。

プレーヤーは、現場が好きです。引退しても、現場が好きです。コーチになったり、テレビや雑誌の解説者になったりの方が、きっと、楽しいはずです。

しかし、それでは、ナショナルチームの強化は難しいのです。現場をよく知っている者が、現場をあきらめてでもコミッションする側に入り込み、プランニングする側に入り込む。代理店や資金運営を含めた経営側に入り込む。これらは、スポーツ選手にとっては楽しい仕事ではないでしょう。しかし、それを行わない限り、日本のテニスのナショナルチームが世界のひのき舞台に出ていくことは難しいと思います。

野球やサッカーと比べて、テニスの場合は経営規模が小さいから・・・というのは、言い訳にはなりません。女子ソフトボールも、女子サッカーも、ビジネスとして成立するだけのパイがあったわけではないのですから…。

このことについては、きっとまた、どこかで、さらに詳しく書く機会があると思います。

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