メシールのフォアハンド、腰よりも高いボールを、再度、ビデオで分析してみました。分析対象は、1987年の全米オープン、マッツ・ヴィランデルとの試合です。全米オープンは、おそらく4つのグランドスラムの中でも、一番、カメラワークに凝っていて、プレーヤー目線の映像を多用します。上からではなく真後ろから選手のプレー(フォーム)を見ることができるので、参考になります。(カメラマンは、さぞ、大変だと思います。ご苦労様です。)
一つ、面白いことに気が付きました。
メシールは、腰よりも高いボールでは、低いボールと違って、テイクバックでラケットを立てます。低い球と同様のテイクバックでスタートし、そのまま、ラケットが立つところまで上げていきます。(ただし、高い球の場合は、右肘をあまり後ろに引かず、体の真横あたりでテイクバックを取ることもあるようです。)
ラケットが立っても、ラケット面の法線は、面を伏せる側(とはいえ、ほぼ横を向きますが)になります。他のフォアハンドストロークと同様、オープンスタンスで、右足を踏み出してボールをヒットします。ここまでは、ラケットを立てることを除くと、腰よりも低い球を打つ場合に書いたとおりです。
低い球と違うのは、テイクバックのトップにおいて、ラケット面(の中心)が相手のボールの飛球線よりも上に来ることです。つまり、テイクバックで、ラケットはボールよりも上に来るのです。
次に、立ったラケットは面が上を向かないように気を付けながら横に寝ていきます。ラケットが、体の後ろ(横)で、小さなループを描くのです。同時に、フォワードスイングが始まります。フォワードスイングはほぼ水平方向です。そのまま、スイングはインパクトを迎えます。
この打ち方は、メシールが、高い打点ではスピン系よりもフラット系のボールを打つことを意味しています。スピン系を打つ場合は、ラケット面はボールよりも下にセットせねばならないからです。たとえば、フェデラーは、イースタン系のフォアハンドグリップですが、高い打点のフォアハンドでは、ボールよりも下にテイクバックをします。そこから、ラケットを斜め上方向に振り出すことで、ボールにドライブをかけるのです。メシールの場合は、小さくループしたラケット面をそのまま前方(スイングでいうと横)に運ぶように打っています。きれいなフラットのボールが押し出されていきます。(まれに、一度上げたラケットを下げてから腕全体でボールに順回転をかけることがあります。)
このフォアハンドの打ち方は、ボールにスピンをかけにくく、ボールがバックアウト(またはネット)してしまいそうな感じがするので、アマチュア(中級)の自分でもできるだろうかと心配になり、オンコートで試してみました。試した相手はヘビースピンではなく、比較的フラット系のボールを打つ相手です。フラット系のボールが大きくバウンドするときに、この打ち方を試みたのです。
その結果ですが、ボールを打つ感触がとても面白かったのです。一旦、ラケット面をボールよりも上に持ってくることで、ボールを打つ際に、ボールを包み込むような感じがします。そして、ネットよりも高いところで打つボールをラケットを押し出すことで、ネットの上にボールを押し出すようなイメージになります。したがって、ネットやバックアウトの心配は、想像していたほどは感じませんでした。
この打ち方には、しかし、右足のプレースメントが非常に微妙です。低い球と違い、ラケットを横に振りますので、ラケット面の微妙なずれによって、ネットしたりバックアウトしたりしてしまいます。高い精度でのラケットワークが必要になるため、最後に踏み込む右足の場所を間違えた途端に、結果が見えてしまいます。相手の打つ高い球の回転(スピン)、高さ、スピードに合わせ、確実な場所に右足を置かねばなりません。右足で踏み込むタイミングも重要です。
試合の中で、どれほど早く相手のボールに合わせて右足のタイミングをつかむことができるかが、腰よりも高い球を打つ場合のメシールのテニスでは重要なのです。
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