2011年6月5日日曜日

2011全仏オープン男子シングルス決勝 フェデラー対ナダル テレビ観戦と分析

全仏オープン2011男子決勝のフェデラー対ナダルですが、セットカウント3-1で、ナダルが6度目の優勝を果たしました。試合前もナダルが圧倒的に有利と予想されていましたので、予想通りの結果ということになるでしょうか。

しかし、フェデラーに全くチャンスがなかったとは思えないのです。フェデラーは、第1セットで、試合前には不利だと言われていたにもかかわらず下馬評を覆したジョコビッチ戦と同様、素晴らしい立ち上がりを見せました。しかし、第1セットの後半でその流れが、ぷつんと切れます。

私には、それが、ナダルの調子がよくなったのではなく、フェデラーの戦略ミスに思えてなりません。リードしていたフェデラーが、なぜ戦略をかえたのか、私にはどうしても理解できないのです。

以下では、WOWOWで試合を見ながらリアルタイムに書いた3本の記事を、読みやすいように一つにまとめてみました。そして、最後に、試合後の分析をまとめて、追加しました。いつか、誰かがこの疑問を解決してくれるかもしれないと期待して…。


2011年6月5日 23:04JST 第1セット5-3フェデラー

今日も、リアルタイムで書いています。今日はブログを書くつもりはなかったのですが、つい書きたくなってしまいました。

フェデラーは、準決勝のジョコビッチ戦同様に、バックハンドでつなぎのスライスを使わない戦略を取っています。そして、第1セット、これが功を奏して、5-3でリードしています。

しかし、5-3の2ポイント目で、これまで自分の左側に飛んできたボールをバックハンドで打っていたフェデラーが、突然、大きく回り込んでのフォアハンドを打ったのです。これはまずいと思いました。

フェデラーがナダルに勝つのであれば、大きく回り込んでのフォアハンドを捨てなくてはなりません。回り込んだフォアでポイントが取れればよいですが、取れないのであれば、自分のフォアサイドを大きく開けるということは、2本先に、ナダルの強烈なフォアハンドをバックハンド側に打ち込まれることを覚悟せねばならないからです。

案の定、フェデラーは自分のサーブを落とし、5-4になりました。もし、フェデラーがこの点を修正できないようだと、フェデラーはずるずると、負けていってしまうでしょう。

2011年6月5日 23:13JST 第1セット5-5

フェデラーは、5-5のデュースからこのゲームを落としました。やはり、フェデラーの歯車が、少しずつ狂い始めているように見えます。想像ですが、試合前のゲームプランでは、できるだけフォアハンドに回り込まずバック側のボールをバックハンドで打つ(しかも、スライスではなくドライブで)という計画を立てていたと思います。この戦略が、ジョコビッチ戦では功を奏しました。

しかし、さすがのフェデラーも、つい、打ちやすい方に回ってしまったのかもしれません。おそらく、第1セットは、もうナダルのものでしょう。第2セット以降、フェデラーは、狂い始めた歯車を戻せるでしょうか。その狂いは、まだ大きくありません。今なら、修正はできるはずです。

5-6の15-15から、フェデラーが、小さく回り込んでのフォアハンドで、今度はウイナーを取りました。しかし、それでも、私には、この回り込みが敗退への序章に見えるのです。


2011年6月6日 00:18JST 第1セット5-6(Duece)フェデラー

決勝戦ですが、5-3でのフェデラーの回り込んだフォアハンドの結果、フェデラーのプレーはがたがたと崩れていきました。予想通り、第2セットの6-5(ナダルリード)まで、一気に来てしまいました。

フェデラーがセンターに立って、フォア側をフォアで、バック側をバックで打つ限り、展開が早くなり、ナダルもその展開についていかざるを得ません。ナダルは、その結果、試合の序盤でベースライン近くにポジションを取らざるを得ませんでした。

それが、フェデラーがバック側のボールを大きく回り込むために、オープンコートができ、ナダルはそこに打つ余裕が出てきました。その結果、ナダルのポジションは、ベースラインから少し下がってきました。試合序盤でエースが取れていたフェデラー得意のフォアの逆クロスも、何度もナダルに拾われます。このパターンでフェデラーがポイントをなかなか取れなくなってしまいました。

今、第2セットの6-5でデュースになったところで、雨で中断に入りました。これが、おそらく、フェデラーの最後のチャンスでしょう。フェデラーが、試合再開した時に、試合開始と同じ気持ちで、同じ戦略に戻すことができるなら、もしかしたら、フェデラーにわずかなチャンスがあるかもしれません。

試合パターンが変わらない限り、この試合は、平凡な、または盛り上がりに欠ける決勝戦になってしまうと思います。


2011年6月7日 (試合後の分析)

心配した通り、フェデラーは第3セットを取ったものの、第4セットは1ゲームしか取れず、敗退しました。試合後に考えても、やはり、第1セットの5-3フェデラーのゲームが、勝敗の分かれ目だったように思います。どうしてなのか…それが知りたく、ビデオを見て、第1セットを私なりに分析してみました。

第1セットで、フェデラーは、5-3でリードするまで、大きく回り込んでのフォアハンドをほとんど打っていません。ビデオで調べてみたところ、フェデラーが左側のサイドラインよりも外から回り込んでフォアハンドを打った回数は、たった1回です(第5ゲーム(フェデラーの3-1)の0-15)。それ以外のバック側に来たボールは、体のそばに来たボールを除いては、すべてバックハンドで打ち返していました。

しかし、第1セット、フェデラーにとってのマッチゲームである第9ゲーム(フェデラー5-3)において、フェデラーは、なぜか、突然、大きく回り込んでのフォアハンドストロークを打ち始めます。フェデラーが、この1ゲームの間で左側サイドラインよりも外まで回り込んでフォアハンドを打った回数は、次の通りです。

1ポイント目(0-0) 0回
2ポイント目(15-0) 1回
3ポイント目(15-15) 1回
4ポイント目(30-15) 1回
5ポイント目(30-30) 0回
6ポイント目(30-40) 1回

それまで、8ゲームで1度しか打っていないショットを、このゲームだけで4回も打ったのです。そして、4回のうち3回、ポイントを落としているのです。(大きく回り込んで打ったフォアハンドショットでポイントを落としているわけではありませんが。)つまり、この戦略はうまく機能しなかったということです。

この後、第1セットでは、フェデラーは、コート外に大きく回り込んでのフォアハンドを一本も打ちませんでした。しかし、3ゲームを連続で失い、第1セットを落としてしまいます。第9ゲームを境にして、試合のペースが一気にナダルに傾いたのです。

第2セット以降は数字は調べていませんが、フェデラーは、その後も、何度も大きく回り込んでのフォアハンドを打ち続けました。しかし、そのショットは、ほとんど有効には働きませんでした。

私は、フェデラーの敗因は、この戦略ミスだと分析しました。

この試合の、唯一のターニングポイントである、第1セット5-3からの第9ゲーム。ここで、なぜ、フェデラーは、戦略を変えてしまったのでしょうか。しかも、それまで有効に働いていた戦略を変えてまで。

果たして、この分析が正しいのかどうか、私にもわかりません。偶然に、第9ゲームでは大きく回り込みやすいボールが多かっただけなのかもしれません。

しかし、試合を見ていて、この第9ゲームでのフェデラーの大きな回り込み方に違和感を感じたのは事実です。サイドラインを越えて回り込むと、コートががら空きになります。第9ゲームで、フェデラーのコートから主(あるじ)がいなくなる瞬間を4度も見せられたのですから、そのぐらい、違和感がある第9ゲームでした。

フェデラーは、この一戦の経験から、ウインブルドン2011でどのように仕上げてくるでしょうか。私は、まだまだフェデラーのテニスが見たい。Winning Uglyという欄で書いたように、フェデラーの武器であるテニスの美しさで、戦い続けてもらいたいのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿