2011年6月10日金曜日

李娜(Na Li)のウインブルドン2011予想

全豪オープンで準優勝、全仏オープンで優勝の李娜(Na Li)は、おそらく、全英オープン(ウインブルドン)で、最も注目されている女子選手の一人でしょう。来週(6月13日~)は、全英オープンの前哨戦であるエイゴン国際(Eastbourne)が英国で開催されますが、クレーからグラスへとあわただしく切り替わるこの時期に、各選手が、李娜がどのように仕上げてくるのかが楽しみです。

さて、私は、初めて見る李娜のプレーが全仏オープンの決勝戦だったのですが、アジア人がグランドスラム決勝で戦うことの緊張感で、プレー内容をあまり覚えていないのです(笑)。にも関わらず、李娜のウインブルドンを予想してみようという、大胆な挑戦です(笑)。

李娜とは、いったいどんな選手なのだろうか、どんなパーソナリティーなのだろうか…。そう思って調べているうちに、この選手が、とても面白い選手だということが分かってきました。李娜のウインブルドンを考える時、参考になりそうです。

私は、李娜の全仏オープン決勝で、彼女が背負っているものの大きさを感じ、”ナ・リ(Na Li)の全仏オープン2011”というタイトルでブログに書きました。しかし、李娜自身は、中国が国家的にスポーツ選手を育成する、いわゆるナショナルチームを離れ、プライベートチームを作って戦う道を選びました。インタビューでも「私は、国を背負ってプレーしているのではないわ」と言っています。

一方で、"Can you tell the Chinese don't teach me how to play tennis?"という面白いことを、試合中に審判に対して言ったりもしています。「中国人にはテニスがわからないとでもいうの?」とでも言いたそうで、むしろ自分が中国人選手であることは意識していることが分かります。

これまでの李娜のインタビューをいろいろ調べてみましたが、「面白くて楽しいインタビュー」という表現がぴったりです。「昨晩は隣に寝ている夫(コーチとしてツアーに同行している)のいびきがうるさくて1時間ごとに起こされたから、調子は良くなかったわ!」とか、「お母さんに、自分の試合を見に来てよと言っても、私には私の生活があるからと、絶対に見に来てくれないのよ!」とか、自分や自分の家族のことをネタに、観客を楽しませてくれます。それ以外にも、インタビューで、懸命に面白いことを言おうとしているシーンを、何度も見ました。

李娜は、全豪オープンで準優勝し、全仏オープンで優勝しているトップ選手です。もっと、堂々としても誰も文句は言わないはずです。母国語ではない英語で、自分や自分の家族、身の回りの人を題材にしてジョークを言い、観客を笑わせる必要がない立場です。

李娜の英語は、下手ではないのですが、子どものころからアメリカに渡っている外国人ほどは流暢でははありません。ある程度の年齢になってから、世界を渡り歩くうちにだんだん身についた英語なのでしょう。(だから、時々、文法を間違えていたりもしています。)でも、李娜はそんなことに、気にもしません。自分から、いろいろなジョークを交えて、積極的に話します。

全仏オープン決勝直後のインタビューでも、「試合中、リラックスしているように見えましたが?」という質問に、「いいえ、実は、とても緊張していたの。でも、相手に悟られたくなかったので、ちょっとごまかしていたのよ(I was cheating)」と笑いながらコメントしています。あえて言う必要のない最後の一言に、やはり何か面白いことを言って楽しませたいという李娜の気持ちが見え隠れします。

引っ込み思案な日本人、自己主張の強い中国人、どちらのタイプともかなり違います。多くの人が「アジア人」から想像するイメージとは、李娜はかけ離れています。

ふと、国際会議のバンケット(パーティー)で、日本人と中国人は他国からの参加者に積極的に話しかけず、仲間内で集まってしまうことを思い出しました。李娜だったら、周りを気にせず、どんどん、いろんな人に話しかけていくでしょう。

プロテニス選手でありながら一度大学に戻り勉強をするなど、自分の道は自分で選び、自分のライフプランで歩み続けるのが、李娜です。組織や他人に依存せず、自分で考え、行動し、表現できる選手なのです。


全仏オープン決勝の放送で神尾米さんも言っていましたが、試合後の李娜は、試合中とは全く異なる、愛らしい表情をします。試合中は、眉間にしわを寄せて、とても厳しい表情なのです。試合が終わるとクールダウンし、試合結果を引きずらないタイプだということが分かります。

これらをすべて考えると、私には、李娜という選手の本質が見えてくるような気がします。

李娜は、オフコートではもちろん、オンコートでも、テニス選手としての自分を外から冷静に、客観的に見る”もう一人の自分”を持っているのだと思います。中国という、世界のテニスシーンではマイナーな国の出身である自分自身を楽しみ、観客がそれをどう見るかを理解しているもう一人の自分がいます。

おそらく、試合に負けた時でさえ、がっかりし、落ち込んでいる自分の姿を外から冷静に見るもうひとりの自分を失ってはないのでしょう。勝った時には、その喜びを観客と一緒に分かち合おうとジョークを飛ばす自分がいるのです。「日本人にはテニスが分からないとでもいうの?」なんて、試合中に審判に言う(しかも、英語で!)日本人選手がいるでしょうか?もう一人の李娜は、試合中ですら、自分が中国人選手であることを楽しんでいるように見えます。

ここまで、自分を客観的に見ることができる選手を、私は、初めて知りました。

テニスはスポーツですから、そんな自分を客観的に見るもうひとりの自分がいても、試合に勝てるとは限りません。メンタルをコントロールできることと、プレーをコントロールできることは、必ずしも同じではありません。だから、私は、李娜がウインブルドンで上位に来るか、優勝できるかまでは分かりません。

でも、李娜を応援したいと思います。李娜がアジア人だからではありません。李娜のインタビューが面白いからでもありません。

李娜を応援することで、李娜と一緒にウインブルドンを楽しむことができるからです。オンコートでも、オフコートでも、試合を楽しみ、勝敗を楽しむもう一人の李娜がいて、きっともう一人の李娜は、勝っても負けても観る者を楽しませてくれると思います。そんな李娜と一緒に、私もウインブルドンを楽しみたいと思います。


2011年6月5日日曜日

歩数の少ないフットワークについて

Na Liのテニスは、今のテニスから見ると少し古いタイプの、フラットドライブを中心としたテニスです。クラシックなスタイルが、決勝戦の相手のスキアボーネが、ループスピンとスライスを多用し、戦略を中心としたテニスをするために、その違いが際立っています。

しかし、Na Liの決勝進出は、ラケットが軽量化して厚いグリップでボールを高い打点でひっ叩くことが主流となりつつある現代テニスでも、ボールを下から上にこすりながら、厚い当たりでボールをしっかり打つクラシックスタイルが十分に通用することを示してくれています。

それは、決勝だけではなく、勝ち上がりにおいて、アザレンカ、シャラポワ(シャラポワは優勝候補だった)などを破っていることからも、わかることです。この二人は、まさに、新しいタイプのテニスプレーヤーだと言ってよいでしょう。

Na Liのプレーは、決勝戦においても、安定しています。この安定感は、腰を落としたストローク、そして腰を落とすためにしっかりとしたフットワークがあってこそです。Na Liは、素晴らしい安定したフットワークを見せてくれています。。

まさに、テニスは足ニスです。

Na Liと比べると、スキアボーネは、足がよく動いていました。と書くと、「あれ?」と思わるかもしれません。フットワークがよかったのは、Na Liではなの、と。

この二人のフットワークを比較すると、よいフットワークというのは、足がよく動くということではないことが分かります。一言でいうと、「歩数が少ないフットワークの方がよいフットワークだ」ということです。

歩数が多く、微調整をする、いわゆる「細かいフットワーク」というのは、実は、必ずしもよいフットワークではありません。なぜなら、上体は、細かいフットワークが終わるまで待たされるからです。足が細かい調整をしている間、上体は、スイング(テイクバック)をスタートできないばかりか、スタートの準備すらできないことがあるのです。

歩数の少ないフットワークは、ボールをヒットした後に、元のポジション(レディーポジション)に戻るときにも必要です。自分の打ったボールにもよりますが、基本的には元の位置近くに戻ると思いますので、その場合は、打点まで行った足跡を、そのまま踏みながら戻るようなイメージになります。

ボールの位置まで行くときにはこの大きな歩幅のステップを守れていても、戻る場合にはつい忘れがちです。たとえば、相手のボールが浅い場合には、前に移動して打ちますが、戻るときに、つい、細かいステップで戻ってしまったりしていないでしょうか?戻りながら歩幅をそろえ、戻った時には次のボールへのスプリットステップができるようになるのは、しかも無意識できるようになるには、トレーニングが必要です。

なお、歩数の少ないフットワークは、当然ですが歩幅が大きくなります。大きな歩幅で、しかし、その歩数で微調整までせねばならないのです。外から見たら大雑把に見えるそのフットワークは、実は技術的には高度です。そして、メシールは、まさに、この、歩数の少ないテニスプレーヤーの代表と言ってもよいでしょう。このことは、また、別項で書こうと思います。

メシールのテニス(30) メシールのフォアハンド(腰よりも高い球 その3)

メシールのフォアハンド、腰よりも高いボールを、再度、ビデオで分析してみました。分析対象は、1987年の全米オープン、マッツ・ヴィランデルとの試合です。全米オープンは、おそらく4つのグランドスラムの中でも、一番、カメラワークに凝っていて、プレーヤー目線の映像を多用します。上からではなく真後ろから選手のプレー(フォーム)を見ることができるので、参考になります。(カメラマンは、さぞ、大変だと思います。ご苦労様です。)

一つ、面白いことに気が付きました。

メシールは、腰よりも高いボールでは、低いボールと違って、テイクバックでラケットを立てます。低い球と同様のテイクバックでスタートし、そのまま、ラケットが立つところまで上げていきます。(ただし、高い球の場合は、右肘をあまり後ろに引かず、体の真横あたりでテイクバックを取ることもあるようです。)

ラケットが立っても、ラケット面の法線は、面を伏せる側(とはいえ、ほぼ横を向きますが)になります。他のフォアハンドストロークと同様、オープンスタンスで、右足を踏み出してボールをヒットします。ここまでは、ラケットを立てることを除くと、腰よりも低い球を打つ場合に書いたとおりです。

低い球と違うのは、テイクバックのトップにおいて、ラケット面(の中心)が相手のボールの飛球線よりも上に来ることです。つまり、テイクバックで、ラケットはボールよりも上に来るのです。

次に、立ったラケットは面が上を向かないように気を付けながら横に寝ていきます。ラケットが、体の後ろ(横)で、小さなループを描くのです。同時に、フォワードスイングが始まります。フォワードスイングはほぼ水平方向です。そのまま、スイングはインパクトを迎えます。

この打ち方は、メシールが、高い打点ではスピン系よりもフラット系のボールを打つことを意味しています。スピン系を打つ場合は、ラケット面はボールよりも下にセットせねばならないからです。たとえば、フェデラーは、イースタン系のフォアハンドグリップですが、高い打点のフォアハンドでは、ボールよりも下にテイクバックをします。そこから、ラケットを斜め上方向に振り出すことで、ボールにドライブをかけるのです。メシールの場合は、小さくループしたラケット面をそのまま前方(スイングでいうと横)に運ぶように打っています。きれいなフラットのボールが押し出されていきます。(まれに、一度上げたラケットを下げてから腕全体でボールに順回転をかけることがあります。)

このフォアハンドの打ち方は、ボールにスピンをかけにくく、ボールがバックアウト(またはネット)してしまいそうな感じがするので、アマチュア(中級)の自分でもできるだろうかと心配になり、オンコートで試してみました。試した相手はヘビースピンではなく、比較的フラット系のボールを打つ相手です。フラット系のボールが大きくバウンドするときに、この打ち方を試みたのです。

その結果ですが、ボールを打つ感触がとても面白かったのです。一旦、ラケット面をボールよりも上に持ってくることで、ボールを打つ際に、ボールを包み込むような感じがします。そして、ネットよりも高いところで打つボールをラケットを押し出すことで、ネットの上にボールを押し出すようなイメージになります。したがって、ネットやバックアウトの心配は、想像していたほどは感じませんでした。

この打ち方には、しかし、右足のプレースメントが非常に微妙です。低い球と違い、ラケットを横に振りますので、ラケット面の微妙なずれによって、ネットしたりバックアウトしたりしてしまいます。高い精度でのラケットワークが必要になるため、最後に踏み込む右足の場所を間違えた途端に、結果が見えてしまいます。相手の打つ高い球の回転(スピン)、高さ、スピードに合わせ、確実な場所に右足を置かねばなりません。右足で踏み込むタイミングも重要です。

試合の中で、どれほど早く相手のボールに合わせて右足のタイミングをつかむことができるかが、腰よりも高い球を打つ場合のメシールのテニスでは重要なのです。

2011全仏オープン男子シングルス決勝 フェデラー対ナダル テレビ観戦(その2)

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2011全仏オープン男子シングルス決勝 フェデラー対ナダル テレビ観戦と分析

全仏オープン2011男子決勝のフェデラー対ナダルですが、セットカウント3-1で、ナダルが6度目の優勝を果たしました。試合前もナダルが圧倒的に有利と予想されていましたので、予想通りの結果ということになるでしょうか。

しかし、フェデラーに全くチャンスがなかったとは思えないのです。フェデラーは、第1セットで、試合前には不利だと言われていたにもかかわらず下馬評を覆したジョコビッチ戦と同様、素晴らしい立ち上がりを見せました。しかし、第1セットの後半でその流れが、ぷつんと切れます。

私には、それが、ナダルの調子がよくなったのではなく、フェデラーの戦略ミスに思えてなりません。リードしていたフェデラーが、なぜ戦略をかえたのか、私にはどうしても理解できないのです。

以下では、WOWOWで試合を見ながらリアルタイムに書いた3本の記事を、読みやすいように一つにまとめてみました。そして、最後に、試合後の分析をまとめて、追加しました。いつか、誰かがこの疑問を解決してくれるかもしれないと期待して…。


2011年6月5日 23:04JST 第1セット5-3フェデラー

今日も、リアルタイムで書いています。今日はブログを書くつもりはなかったのですが、つい書きたくなってしまいました。

フェデラーは、準決勝のジョコビッチ戦同様に、バックハンドでつなぎのスライスを使わない戦略を取っています。そして、第1セット、これが功を奏して、5-3でリードしています。

しかし、5-3の2ポイント目で、これまで自分の左側に飛んできたボールをバックハンドで打っていたフェデラーが、突然、大きく回り込んでのフォアハンドを打ったのです。これはまずいと思いました。

フェデラーがナダルに勝つのであれば、大きく回り込んでのフォアハンドを捨てなくてはなりません。回り込んだフォアでポイントが取れればよいですが、取れないのであれば、自分のフォアサイドを大きく開けるということは、2本先に、ナダルの強烈なフォアハンドをバックハンド側に打ち込まれることを覚悟せねばならないからです。

案の定、フェデラーは自分のサーブを落とし、5-4になりました。もし、フェデラーがこの点を修正できないようだと、フェデラーはずるずると、負けていってしまうでしょう。

2011年6月5日 23:13JST 第1セット5-5

フェデラーは、5-5のデュースからこのゲームを落としました。やはり、フェデラーの歯車が、少しずつ狂い始めているように見えます。想像ですが、試合前のゲームプランでは、できるだけフォアハンドに回り込まずバック側のボールをバックハンドで打つ(しかも、スライスではなくドライブで)という計画を立てていたと思います。この戦略が、ジョコビッチ戦では功を奏しました。

しかし、さすがのフェデラーも、つい、打ちやすい方に回ってしまったのかもしれません。おそらく、第1セットは、もうナダルのものでしょう。第2セット以降、フェデラーは、狂い始めた歯車を戻せるでしょうか。その狂いは、まだ大きくありません。今なら、修正はできるはずです。

5-6の15-15から、フェデラーが、小さく回り込んでのフォアハンドで、今度はウイナーを取りました。しかし、それでも、私には、この回り込みが敗退への序章に見えるのです。


2011年6月6日 00:18JST 第1セット5-6(Duece)フェデラー

決勝戦ですが、5-3でのフェデラーの回り込んだフォアハンドの結果、フェデラーのプレーはがたがたと崩れていきました。予想通り、第2セットの6-5(ナダルリード)まで、一気に来てしまいました。

フェデラーがセンターに立って、フォア側をフォアで、バック側をバックで打つ限り、展開が早くなり、ナダルもその展開についていかざるを得ません。ナダルは、その結果、試合の序盤でベースライン近くにポジションを取らざるを得ませんでした。

それが、フェデラーがバック側のボールを大きく回り込むために、オープンコートができ、ナダルはそこに打つ余裕が出てきました。その結果、ナダルのポジションは、ベースラインから少し下がってきました。試合序盤でエースが取れていたフェデラー得意のフォアの逆クロスも、何度もナダルに拾われます。このパターンでフェデラーがポイントをなかなか取れなくなってしまいました。

今、第2セットの6-5でデュースになったところで、雨で中断に入りました。これが、おそらく、フェデラーの最後のチャンスでしょう。フェデラーが、試合再開した時に、試合開始と同じ気持ちで、同じ戦略に戻すことができるなら、もしかしたら、フェデラーにわずかなチャンスがあるかもしれません。

試合パターンが変わらない限り、この試合は、平凡な、または盛り上がりに欠ける決勝戦になってしまうと思います。


2011年6月7日 (試合後の分析)

心配した通り、フェデラーは第3セットを取ったものの、第4セットは1ゲームしか取れず、敗退しました。試合後に考えても、やはり、第1セットの5-3フェデラーのゲームが、勝敗の分かれ目だったように思います。どうしてなのか…それが知りたく、ビデオを見て、第1セットを私なりに分析してみました。

第1セットで、フェデラーは、5-3でリードするまで、大きく回り込んでのフォアハンドをほとんど打っていません。ビデオで調べてみたところ、フェデラーが左側のサイドラインよりも外から回り込んでフォアハンドを打った回数は、たった1回です(第5ゲーム(フェデラーの3-1)の0-15)。それ以外のバック側に来たボールは、体のそばに来たボールを除いては、すべてバックハンドで打ち返していました。

しかし、第1セット、フェデラーにとってのマッチゲームである第9ゲーム(フェデラー5-3)において、フェデラーは、なぜか、突然、大きく回り込んでのフォアハンドストロークを打ち始めます。フェデラーが、この1ゲームの間で左側サイドラインよりも外まで回り込んでフォアハンドを打った回数は、次の通りです。

1ポイント目(0-0) 0回
2ポイント目(15-0) 1回
3ポイント目(15-15) 1回
4ポイント目(30-15) 1回
5ポイント目(30-30) 0回
6ポイント目(30-40) 1回

それまで、8ゲームで1度しか打っていないショットを、このゲームだけで4回も打ったのです。そして、4回のうち3回、ポイントを落としているのです。(大きく回り込んで打ったフォアハンドショットでポイントを落としているわけではありませんが。)つまり、この戦略はうまく機能しなかったということです。

この後、第1セットでは、フェデラーは、コート外に大きく回り込んでのフォアハンドを一本も打ちませんでした。しかし、3ゲームを連続で失い、第1セットを落としてしまいます。第9ゲームを境にして、試合のペースが一気にナダルに傾いたのです。

第2セット以降は数字は調べていませんが、フェデラーは、その後も、何度も大きく回り込んでのフォアハンドを打ち続けました。しかし、そのショットは、ほとんど有効には働きませんでした。

私は、フェデラーの敗因は、この戦略ミスだと分析しました。

この試合の、唯一のターニングポイントである、第1セット5-3からの第9ゲーム。ここで、なぜ、フェデラーは、戦略を変えてしまったのでしょうか。しかも、それまで有効に働いていた戦略を変えてまで。

果たして、この分析が正しいのかどうか、私にもわかりません。偶然に、第9ゲームでは大きく回り込みやすいボールが多かっただけなのかもしれません。

しかし、試合を見ていて、この第9ゲームでのフェデラーの大きな回り込み方に違和感を感じたのは事実です。サイドラインを越えて回り込むと、コートががら空きになります。第9ゲームで、フェデラーのコートから主(あるじ)がいなくなる瞬間を4度も見せられたのですから、そのぐらい、違和感がある第9ゲームでした。

フェデラーは、この一戦の経験から、ウインブルドン2011でどのように仕上げてくるでしょうか。私は、まだまだフェデラーのテニスが見たい。Winning Uglyという欄で書いたように、フェデラーの武器であるテニスの美しさで、戦い続けてもらいたいのです。

2011年6月4日土曜日

李娜(Na Li)の全仏オープン2011決勝

今、全仏オープン2011女子決勝の試合を見ています。実は、この文章は、リアルタイムで、つまりWOWOWで試合を見ながら書いています。

WOWOWには、試合前に、急いで加入しました。李娜(Na Li)という、中国人(アジア人)が初めてグランドスラムで優勝するかもしれない決勝戦を見たかったからです。インドなど、伝統的にテニスの強い国がアジアにはありますが、グランドスラムでの優勝は、今までありませんでした。

Na Liが、グランドスラム決勝という場で、どんな戦いを見せてくれるのか。実は、Na Liの試合を見るのは初めてなのです。

第1セットでは、Na Liのクラシカルなテニススタイルが、スキアボーネの眩惑的で多彩なテニスを凌駕しました。Na Liは、惑わされず、しっかりと、正攻法で戦っています。そして、第1セットは、サービスブレークをされる心配がほとんどないまま、セットを取りました。

第2セットも4-2とリードしたNa Liは、しかし、ここから、プレッシャーと戦い始めます。Na Liは、第2セット4-2から、スキアボーネのサービスでブレークチャンスをモノにできず、自分のミスでこのゲームを落とします。そして、その後もフォアハンドのミスを重ね、スキアボーネにじりじりと追いつかれていきます。

解説の神尾米さんが、これがグランドスラム優勝のプレッシャーだと説明しています。もちろん、グランドスラム初優勝のプレッシャーは計り知れないものでしょう。しかし、私の目には、それだけではないように映ります。もっと大きなものがNa Liを苦しめている。Na Liはネットの向こうのスキアボーネではなく、もっと別の、何か大きなものと戦っているように、私には見えたのです。

この試合は、アジア人がグランドスラム決勝で戦い、初のグランドスラマーになるかが話題の焦点でした。でも、果たして、それだけなのでしょうか。

この決勝戦の意味は、もっと大きいように思います。アジア人が、欧米が100年以上も中心であったたテニスというスポーツの、しかもその中心となるグラウンドスラム大会の決勝で、観客を含めた歴史と伝統という重みと戦い、その重圧を乗り越えることができるかどうかを試される一戦なのです。

第2セット後半に入り、スキアボーネがNa Liに追いつき始めてからは、大半の観客がスキアボーネの応援です。第2セット後半に入り、スキアポーネがポイントを取るたびに、大歓声が起こります。

パリっ子は、その歴史的背景から伝統的に判官びいきで、優勝経験のないNa Liへの応援が、前年度の優勝者であるスキアボーネをこえていると、試合前にレポートされていました。それが、手のひらを返したように、スタジアム全体でヨーロッパ人であるスキアボーネを後押ししている。残酷なヨーロッパの歴史が、観客すべてとスキアボーネを飲み込んで、Na Liに襲い掛かります。

第2セット後半に入り、ミスを繰り返すNa Liの苦悩の表情は、思い通りのプレーができないことに対する怒りだけなのでしょうか?長い歴史を通じて、アジア人がヨーロッパ勢と孤独に戦ういらだち。

多くのプロスポーツは、別の側面から見ると、貧しい人たちが一獲千金を夢見て、這い上がる、のし上がる手段の一つです。ボクシングや野球で黒人選手が多いのは、偶然ではありません。裕福になりたいという野心が力になるメジャースポーツの中で、しかし、テニスは少し違います。かつてより貴族のものであったテニスというスポーツ。その伝統は、脈々と世界のテニスシーンの背景に流れています。全仏オープンの観客は、貧しさから這い上がるサクセスストーリーを求めて、ローランギャロスに集まるわけではない。特権階級のブルジョアな悦楽の香りが、ローランギャロスには漂っています。ボクシングの世界チャンピオン戦のリングとは異なる空気が、グランドスラムのセンターコートを支配しています。

テニスは、もういいや、負けてもいいやと思ったら、こんなに楽なスポーツはありません。偶然に勝つということがないスポーツです。負けようと思って、たまたま勝ってしまったということがないスポーツです。Na Liが、観客という形で具現化された欧州の歴史の重みの中で、精神的に追い込まれ、瞬間的にそんな表情を見せるのが心配です。

Na Liには、優勝してほしい。でもそれは、自分がアジア人だから、アジア人に初めてグランドスラムで優勝してほしいということではないのです。

成長期に入ったアジアは、悲しい歴史を少しずつ乗り越え、企業の力や団体の力で、世界の中で成功した事例を持ちはじめてきました。しかし、テニスは、団体で戦う競技ではない。どれほど、中国が組織的に選手を育成したとしても、団体競技ではないのです。

テニスは、どんなに精神的に追い詰められても、コートの上でただ一人、数時間戦い抜く者が勝利を勝ち取る競技です。その間、コーチとも、友人とも、家族とも苦しみを分かち合えない、孤独で過酷なスポーツです。

今、Na Liは、スキアボーネではなく、欧米の伝統と、それに押しつぶされそうになる自分自身と戦っている。Na Liが、ヨーロッパのスタジアムというアウェーだけではなく、テニス競技そのものとその背景にあるヨーロッパの歴史に対するアウェーを感じているとしても、それは少しも大げさなことではないのです。

個人競技であるテニスにおいて、あらゆる伝統の重さを跳ね返し、欧米の文化の中心で異文化人であるアジア人が光を放つ瞬間が、今、目の前に来ようとしている。しかも、パリという、ヨーロッパの文化と歴史の象徴の街で。

私は、その瞬間を見たい。Na Liには勝ってほしい。

この気持ちを持つことができるのは、私がアジア人だからです。その歴史を肌で知っているからです。Na Liの感じる重圧を理解し、分かち合いながら応援をすることの意味が、そこにはある。そんな時間を持つことを、私は幸せに感じます。

今、コート上は、第2セット5-5です。Na Liは、明らかにグランドストロークで、ラケットを大きく振りきることができなくなっています。フラット系のグランドストロークでは、ラケットを振りきれなくなることは、何よりも怖いことです。ボールを制御することができなくなるからです。

どんな形でも良い。第1セットのような、ストロークでクロス、逆クロスにエースを取るようなきれいな形でなくてもよい。格好良くない勝ち方であっても、Na Liに勝ってほしい。背中にのしかかる巨大な伝統の重さを乗り越えることが、Na Liが、応援するすべてのアジア人が、なによりも望んでいることなのです。

第2セットの4-2からずっと腕が縮こまってしまってバックアウトとネットを繰り返していたNa Liが、5-6の0-15から、やや長いストローク戦で、グランドストロークのエースでポイントを取りました。何ゲームかぶりに、腕がしっかり伸びたフォアハンドストロークでした。そして、この瞬間に、Na Liの表情が、少し穏やかになったように見えました。もしかしたら、彼女自身がテニスという欧米の伝統の重圧から抜け出し、アジア人としてではなく一人の選手として、戦い始めた瞬間だったのかもしれません。

Na Liは、5-6から自分のサーブをキープしました。彼女の表情は、自分自身を含めたあらゆるものに対して怒りを感じながら、しかし、あらゆる怒りを受け入れた、不安のない表情になりました。Na Liが、テニスという伝統の中に飲み込まれ、テニス史上の一人のプレーヤーとしてプレーし始めています。今、Na Liは、アジア人ではありません。長い全仏オープンの歴史の中で、一番最後に並ぶ優勝に最も近いプレーヤーです。

今から第2セットのタイブレークです。Na Liの表情は、背負う多くのものから開放され、今はとても穏やかです。大丈夫です。Na Liは、このタイブレークを取ることができます。優勝できると思います。

メシールのテニス(29) サーブ(その3)

一つのプレー要素(例えば、サービス)において、いろいろな技術が語られる時、それらが矛盾していたり、整合していないと、どうしたらよいのか、混乱します。しかし、様々に解説される要素技術がすべて整合していると、スムーズに受け入れやすく、また、実践しやすい(身に着けやすい)ものです。

メシールのスピン系のサーブは、その典型でしょう。スピンサーブの要素技術が、すべて、そのまま具現化されています。

スピンサーブの技術は、一般に、次の様に解説されます。①スイングの際に右肘を前に出さない、②スイングの際にラケットグリップエンドを前に突き出さない、③右肘を曲げる、④スイングの方向とボールを打ち出す方向は異なる(例えば、30°程度)、などです。

メシールのテニス(22)において、メシールのサーブを、背中から見た図で図解しました。今回は、上から図解をしてみます。上の①~④が、すべて、そこで実現しています

ここで、ポイントは、ボールの方向とスイング方向がずれているということです。スピンボールでは、ボール方向とスイング方向がずれるということを言われていますが、ラケットを(せか課から見た図に示すように)傾けることと、スイングが右前方方向であることは、コンシステント(整合)しています。また、右ひじを曲げることも、肘やラケットのグリップエンド方向がスイングに対して垂直になることも一致します。

これらは、すべて一致しており、頭の上でラケットを寝かせてボールを打つ(手首とインパクト位置がずれている)ことは、むしろ、スピン系ボールを打つためには、望ましいことなのです。

図にあるように、ラケットと手の間に角度をつける癖がないプレーや(つまり私)にとって、手とインパクトポイントが上下になっていないことには、違和感があります。力が入りにくいからです。ついつい、力が入りやすい腕とラケットをまっすぐにしてボールをインパクトしたくなります。
しかし、図にあるように、ラケットスイングする方向がラケットの中心軸線と垂直にになり、ボールを押し出す方向とは異なる方向にするのであれば、比較的簡単に修正ができます。

もう一つ、大切がことがあります。表現が難しいのですが、「右ひじの曲げ方」です。これはフォアハンドストロークにも共通するのですが、”右ひじを曲げる角度を、レディーポジションからテイクバックにおいて、あまりかえない(できるだけ一定にする)”ということが、安定したサーブを打つ際に重要です。実は、この原則を、メシールは守っていません。正確には、テイクバックでは、最後にトロフィー
ポーズを作る直前までは、あまり肘を曲げていない状態を維持しています。私は、メシールのテニス(22) サーブ(その2)でいうところの②のタイプ(メシールは①のタイプ)なので、その違いかもしれません。

2011全仏オープン男子シングルス準決勝 フェデラー対ジョコビッチ テレビ観戦

メシールのテニスにしか興味がない私は、最近のテニスはあまり見ないのですが、たまたま、フェデラー対ジョコビッチの試合を見ました。2011年になって、ジョコビッチはまだ一度も負けておらず、開幕以来の連勝が41になっていました。勝てば、ジョン・マッケンローの持つ最多記録の42に並び、さらに初めての1位になるという、快進撃だったのです。

ジョコビッチは、クレー大会の決勝で2連続でナダルに勝利し、世界で最も調子が良いプレーヤーといってよいでしょう。一方で、フェデラーは、春のクレーコートシーズンの大会で決勝にすら進むことができていませんでした。この試合に限って言えば、挑戦者はフェデラーの方だったと言ってよいでしょう。

試合結果は、フェデラーが3-1で勝利。挑戦者フェデラーの戦い方はすばらしかったです。

テニスに限らず、相手のある競技は、自分のプレースタイルに徹するのか、相手に合わせて自分のプレースタイルを変えていくのか、2つの戦略があります。この試合のフェデラーは、明らかに、後者の戦略を選択しました。王者として君臨していたフェデラーですが、普段のプレースタイルではジョコビッチには勝てないと判断したのでしょう。

相手によって戦い方を変えることができるのがフェデラーの強さと言ってよいと思います。これが、ボールプレースメントを重視する(薄いグリップ系の)選手の有利な点です。

この試合で、フェデラーがとった戦略は、”つなぎのボールできるだけ打たない”です。ジョコビッチの厳しいストロークに対して、フェデラーは”ボールをつなぐ”ことをあきらめました。たとえミスをしてでも、ほとんどのショットをベースラインいっぱいに深く打つ戦略です。

ジョコビッチは、普段であれば、自分が放つ厳しいボールに対して相手が打ったつなぎの球を厳しく打ちこんでポイントを取るのを一つのパターンとしています。いえ、近年のテニスは、多くのプレーヤーがこのパターンでポイントを取っており、より厳しいボールを打つ方が勝つという単純さがあります。(その単純さが、最近のテニスが私には面白くない理由の一つです。)

しかし、この試合のフェデラーは違いました。フェデラーに対しては、打っても打っても厳しいボールが返球されるので、思ったようにポイントを取りいけません。むしろ、自分が厳しいボールを打ったので、次のボールでポイントを取りに行くのですが、想定していない厳しい球が返ってきて、イメージの中ではポイントを取りに行くものですから、ベースラインアウトしてしまう、ということを繰り返していました。数えていませんが、ジョコビッチのベースラインストロークでのバックアウトは、相当数あったと思います。

あと50cm下がって打てばよいのに、ジョコビッチは、最後まで、そのことに気が付きませんでした。(または、わかっていても、無意識に打ちに行ってしまったのかもしれません。)普段から、自分の打つボールが厳しい時には、次に甘い球が来る、という癖が体しみこんでしまっており、つい前に踏み出して打ってしまっていたのでしょう。

最終セット(第4セット)の終盤に、ジョコビッチがベースラインより少し下がって打ち出したときには、もしかしたら、ジョコビッチが逆転するかもと思いました。おそらく、フルセットにもつれ込んだら、ジョコビッチは勝っていたと思います。しかし、第4セットのタイブレークの1本目のポイントでフェデラーがドロップショットを決めたときに、さすがフェデラーはすごいと思いました。これで、ジョコビッチは、また、ベースラインから下がりにくくなるからです。

フェデラーは、ジョコビッチと同様に、この試合では、大量のバックアウトをグランドストロークでしました。しかし、アウトしてしまったジョコビッチと違い、ある程度のバックアウトを覚悟で戦略的に厳しいボールを打ち込み続けたェデラーのバックアウトは、意味が違うものでした。

もし、フェデラーの厳しいボールがバックアウトする確率があと5%増えていたら、この試合の結果は逆だったでしょう。4セットの試合の間、フェデラーはすべてのショットで厳しい配球をすることに、全神経をそぎ続けていました。そこに、勝機を見出し、その戦略を徹底したフェデラーに、プロのプレーを見たような気がしました。

一方のジョコビッチは、今回の敗戦を分析することで、ますます強くなるに違いありません。

決勝では、ナダルは、サウスポーの利点を活かし、いつも通りに執拗にフェデラーのバックハンドに強烈なフォアハンドを叩き込んでくるでしょう。それは、おそらく、ジョコビッチのバックハンドよりも強烈なはずです。

フェデラーが、それをどう受けるのか。ジョコビッチ戦と同様に、リスクを承知でドライブで打ち返すのか、それとも、バックハンドスライスでナダルのバック側に配給するのか(しかし、ナダルは、回り込んでのフォアハンドで応戦するでしょう)、またはそれ以外の作戦があるのか。

フェデラーの決勝戦も、楽しみです。

2011年6月2日木曜日

メシールのテニス(28) チャンスボール・遅い球の打ち方

メシールのテニス(26)で、メシールのフォアハンドでは、チャンスボールは必ずしも打ちやすいボールではないと書きました。

チャンスボールというのは、打ちやすいのでチャンスなのではなく、きちんとボールをヒットすると、ポイントをとれる確率が高いからチャンスと呼ばれているのでしょう。

チャンスボールが難しい一つの理由は、メシールのテニス(26)で書いたとおり、スイングの軌道とボールの軌道が異なるからです。ラケット面の微妙な角度でボールのコントロールが変わる薄いグリップのメシールのテニスでは、スイング軌道とボール軌道が一致している場合が、最も打ちやすいボールです。ボールのスピードは、重要ではないことが多いのです。

さて、では、この遅いボール、チャンスボールをどう打てばよいでしょうか。

答えは簡単です。「大きなテイクバックと大きなスイング」です。

なぜ、大きなテイクバックが有効なのでしょうか?

チャンスボールでは、強くないボールを、確実な方向に強く打たねばなりません。確実な方向に打つということは、面がぶれないということです。強く打つということは、小さいスイングではだめです。

この2つを両立するためには、大きな、ゆっくりとしたスイングがベストです。実際に、オンコートでボールを打つとわかりますが、ボールがアウトすることもなく、きちんとボールを打ちたい場所に打ちたい力で、打つことができます。

背筋力が使いやすいということも、ゆっくりと大きなスイングでは有利です。

もともと、メシールのフォアハンドでは、テイクバックでラケット面が上を向かない(伏せる)こと、テイクバックトップで、ラケット面が体の線(6時方向)よりも外に出る(5時の側)ことなどの、制約があります。
テイクバックに制約が多いので、大きくテイクバックをしても、大きくなりすぎる心配がありません。しっかりと、大きなテイクバックと大きなスイングでチャンスボールを決めてください。

なお、メシールのような薄い(イースタンまたはコンチネンタル)グリップでは、フォアハンドでチャンスボールを打つ際には、右脇が開きがちです。特に、大きなゆっくりとしたフォームの場合にそうなります。

そうならないためには、右脇を締めなくてはなりませんが、やりすぎると、今度は窮屈なフォームになってしまいます。

その場合には、脇が締まっていて、しかも窮屈ではない打ち方が求められます。これについては、メシールのテニス(34) 脇が開かないフォアハンドストロークを参考にしてみてください。

2011年6月1日水曜日

メシールのテニス(27) ラケット面はいつからいつまでボールに垂直になるか?

スピンボールを打つ瞬間でさえ、ラケット面はボール垂直に当たります。正確には、ボールの飛び出す方向と垂直に当たります。イメージの中では、スピンの回転量が大きいほど、ラケット面がボールの飛び出す方向(以下、ボール進行方向と書きます)に対して伏せていると思っていますが、それは、インパクトの前後の話です。インパクトの瞬間は、ラケット面は垂直です。

これは、スピンボールの話です。



メシールのようなフラット(フラットドライブ系)の場合は、堂々と(笑)、ラケット面をボール進行方向に押し出すことができます。フラット系なのですから、このことは、誰も疑わないでしょう。

今回のポイントは、では、メシールのストローク(とくに、フォアハンドストローク)は、どこからラケット面がボール進行方向に対して垂直になっているか、です。

どうも、この点において、フラット系のグランドストロークの誤ったイメージがあるように思います。

フラット系が厚い当たりでボールを押し出すのは、あくまで、インパクトの直前から(インパクトを挟んで)直後まで、ラケット面がボール進行方向に垂直になっているからです。その幅は、実は、驚くほど短いはずです。

しかし、”フラット系は当たりが厚い”という言葉のイメージに引きずられて、フラット系でのボールの打ち方において、スイング全体でラケット面がボール進行方向に垂直になると、勘違いしがちです。これは、明らかに誤りです。

メシールのようなフラット(フラットドライブ)でも、ラケット面は、フォワードスイング(の上記のインパクトを挟んだ短い時間を除いて)では、面は伏せられています。地面方向を向いています。ただし、スイングそのものがボール進行方向を向いているだけです。

スイング軌道がボール進行方向を向いているということと、ラケット面がボール進行方向を向いているということは、異なるのです。

スピン系のストロークでは、ラケット面はもちろん、ラケット軌道もボール進行方向と異なります。したがって、スイングの中で、インパクトポイントは点になります。フラットドライブ系は、その点では有利です。スイング軌道とボール進行方向が一致するため、インパクトポイントが線になるからです。

しかし、ラケット面からみると、実は、フラット(フラットドライブ)でも、インパクトポイントは点なのです。図を見れ分かりますが、ラケット面がボール進行方向に垂直になるのは点だからです。(それでも、スピン系よりは、幾分は有利でしょうが。)

このことを間違えてイメージすると、逆に、図の誤ったイメージを作ってしまいます。それは、実は、フラットドライブ系のストロークを不安定にしている、一番の要因なのです。コナーズのフォアハンドは、この誤りイメージによるものだと思っています。その結果、コナーズのフォアハンドが不安定だったことは、ご承知の通りです。

私事で恐縮ですが、私は、この誤ったイメージにずいぶん長い間、引きずられてしまいました。テイクバックで、ラケット面をスイング方向に(無意識に)垂直にしていたのです。この癖を修正するには、かなりの時間がかかりました。(というよりも、そのことを理解することに、長い時間がかかりました。)今でも、その癖に苦しめられています。

大切なことは、テイクバックにおいて、以下にインパクトで面を垂直にできるように面を伏せることができるかということです。低い球は、有利です。フォワードスイングの軌道のまま、テイクバックをすればよいからです。難しいのは、腰よりも高い球なのです。

インパクトでラケット面をボール進行方向に垂直にするのが難しければ、頭の中では、ラケット面を少し伏せたイメージでもよいと思います。(実際には、垂直に当たるはずです。)図の黄色線(=ボール進行方向)は、ボールが飛んできた方向でもあります。したがって、面を伏せて、ボールの飛んで来た方向と同じ軌道でスイングをする(ボールを打ち返す)。メシールのフラットドライブは、なんとシンプルなのでしょう!そのイメージだとネットしてしまいそうなのであれば、その分、ボールを押し出せばよいのです。ラケット面を伏せているのですから、図の誤ったイメージになることはありません。ボールを押し出しすぎて、ベースラインをアウトしてしまうこともないのです。

2011年5月31日火曜日

メシールのテニス(26) メシールのフォアハンド(腰よりも高い球 その2)

手打ちはいけない、と教わります。が、その反対もいけません。手打ちをしないようにするがあまりに、体に手がぴったりとくっついてしまうと、それはそれで、窮屈な打ち方になります。

腰よりも低い球は、かなり長い間、腕を体に同期させて打つことができます(し、それが正しい打ち方です)。実際、ボールをヒットする直前まで、つまり、フォワードスイングの直前まで、腕は体に同期しています。したがって、フォアハンドの腰よりも低い球は、比較的安定して打つことができます。

問題は…腰よりも高い球です。もともと、薄いグリップのためにわきが開きやすく、その分不安定な腰よりも高いフォアハンド。最も難しいストロークといってもよいと思います。

腰よりも高いフォアハンドストロークのポイントの一つは、フォワードスイングの後半で、”手打ち”するイメージを持つことだと思います。前半(インパクト少し前まで)は、低い球同様に、体と腕は同期します。ただし、インパクト直前に、腰よりも低い球と比較すると、ほんの少し早く、体の同期が解除されます。これは、下にも書きますが、腰より低い球はボールを押し出すのに対して、高い球はボールをこするからです。その分だけ、早めに手打ちイメージになるのです。

そのほかに気を付ける点を、列挙しておきます。

テイクバックでは、ラケットは寝かさずに(緩やかに)立てること。そのためには、腕とラケットに、120°程度の角度ができるはずです。腰よりも低い球と同じイメージで、ラケットと腕がまっすぐに近い関係になると、テイクバックにおいてボールよりもラケット面がボールの飛球線よりも下になります。その結果、フォワードスイングにおいてラケット面(の法線)が水平よりも上を向いてしまい、その結果、ボールは上に飛び出します。打点が高いので、ボールが上に飛び出すと、バックアウトしてしまいます。フォワードスイングでも、この120°の角度は、維持したままでボールをヒットします。

テイクバックではラケット面が上を向いては、絶対にいけません。イメージとしては、ラケット面を伏せるイメージで大丈夫です。(グリップが薄いと、ラケット面を伏せたイメージでも、実際には、ラケット面はほとんど伏せていない(ほぼ90度になっている)ためです。)さらに、そのイメージのまま、フォワードスイングを行います。打点が高いので、ラケット面を伏せたイメージでも、ボールがネットする心配はありません。

テイクバックは、右足を引くタイミングで行います。右足とラケット(テイクバック)が連動します。高い球のフォアハンドは、不安定になりやすいため、右足をしっかり・どっしりと固める必要があります。また、その際の、右足とボールの位置関係は、細心の配慮が必要です。この位置関係が少しでもずれると、フォワードスイングにおいて微調整はほとんどできないために、ボールコントロールは不安定になります。

スイング軌道とボール軌道が一致すること。ということは、スイング軌道は、かなり水平になります。下から上ではありません。下から上に打つと、ラケット面が上を向いてしまうはずです。(そうして、ボールは、かなり上向きに打ち出されます。)もともと、高いところで打つということは、相手のボールに威力がある場合です。(威力がない場合には、ボールを腰よりも低い位置で打てるはずですので。)

低い球はボールを押し出すため、リストの形をインパクト前後で、維持できます。高い球は、ボールを多少こするため、インパクト時において、リストワークが発生します。このリストワークのタイミングがずれると、ボールはコントロールできなくなります。ボールが腰よりも高い場合は、このインパクトにおけるリストワークが、最も神経を使う部分となります。

インパクトの位置は、不安定な高い球の場合には重要(したがって、右足の位置が重要)です。場合によっては、右足を踏み出しながら打っても構いません。(実際、メシールは、頻繁に、右足を踏み出しながら、腰よりも高い打点のフォアハンドストロークを行います。)右足を出すことで、テイクバックでラケットが体の後ろに来すぎるのを防ぐことができます。左肩も入りすぎません。(左肩を入れるべしと、よく、テニスのレッスン書にありますが、入りすぎることもあるのです。)

腰よりも低い球と同様、打点が遅れないように気を付けてください。他のすべてのフォアハンドストロークと同様に、高い球のフォアハンドでも、”打点は前の方”です。

テイクバック、インパクト、フォローするのどのタイミングにおいても、右肘が伸びきらないように注意します。常に右ひじを曲げておくイメージでよいと思います。

バウンドした相手の球が高いと、どうしても、こちら側は気持ちが”受け”になってしまいます。ボールが上から襲ってくるような感じです。その結果、右肩が下がってしまうことがあります。メシールのフォアハンドでは、テイクバックで右足に体重がかかるので、なおさら右肩が下がりがちです。しかし、両肩は、絶対に水平になっていなくてはなりません。メシールのグランドストロークで、どちらかの肩が下がることはありません。気持ちの上でも”受け”にならず、ボールに向かっていかなくては、つい、右肩が下がってしまうと思います。恐れずに、ボールに向かっていくことです。右足の位置が正しければ、必ず、ボールは安定してヒットできるはずです。

フォロースルーでラケット面は下を向きますが、スイングそのものは、下に下がってはいけません。基本的には、左耳の横あたりまで上がってくるはずです。腰より低い球の場合は、ボールをしっかり押し出すイメージですが、腰より高い球の場合は、ある程度、ボールをこするイメージがあってかまいません。

なお、上で、腰よりも高い位置で打つボールは、威力がある場合だけだと書きましたが、実際には、相手のボールが弱く、コートの真ん中で高い打点で打つことがあります。いわゆる、チャンスボールです。チャンスボールは、実は、必ずしもチャンスボールではなく、なぜなら、打点が一点しかないからです。ある一点で、上下に動くボールをヒットせねばなりません。(ボールが上がっているタイミング、トップで静止しているタイミング、落ちてくるタイミングなど、いろいろでしょう。)この場合も、腰よりも高い打点の場合は、上に書いたように、緩やかにラケットヘッドを立てて、ちょうど、インパクトポイントがラケットヘッドの高さになるようにテイクバックし、そのまま横に振ることになります。腰よりも高い位置で打つ以上、ラケットが下がるということはあり得ません。その場合は、スイングが下から上になってしまい、またはラケット面が上を向いてしまい、コートの後ろではなく中央あたりから打っているために、ボールはバックラインを超えてしまうと思います。

2011年5月29日日曜日

メシールのテニス(25) テニスは足ニス

すでに何度か書いていますが、メシールのテニスが美しい理由の一つは、フットワークが美しいからです。フットワークが美しいということは、どういうことでしょうか?

以下に書くことは、おそらく、すべての(プロではなくアマチュアの)テニスプレーヤーで共通することだと思います。(前書きにも書いていますが、他のプロプレーヤーに興味がないので、きちんと調べたわけではないのですが。)

ただ、メシールは、それを徹底しているので美しいのだと思い、これまでの繰り返しになりますが、整理して書いておこうと思います。

グランドストロークでは、フォアハンドは左肩を、バックハンドは右肩を前に出します。では、そのタイミングは、どこでスタートするのでしょうか?

答えは、フットワークと連動して、最初の第一歩目です。

すでに書いている通り、グランドストロークでは、フォアハンドの場合、ボールが近い場合には右足引きますし、遠い場合には左足をボール側(右側)に踏み込みます。これらが、最初の一歩目になります。そして、これらは、左肩で考えると、必ず、左肩を前に出す動きになっているはずです。

バックハンドは、まったく、その逆になり、右肩が前に出る動きになります。

つまり、スイングは、ステップの第一歩目からスタートしているのです。

そして、その後、ボールが飛んでくるのに合わせて、徐々に大きくテイクバックをして、ボールをヒットします。相手のボールのタイミングに応じて、ゆっくりとテイクバックすることもありますし、素早くテイクバックをすることもあります。

つまり、スイング全体は、相手のボールの速さなどによって異なるので、実は、相手(のボール)によって変わります。しかし、スイングの始動は最初の第一歩となるので、スイング開始のタイミングはメシールの側で決めることができるのです。

テニスは足ニスという言葉を、私はこれまで、細かく、素早く足を動かすことがテニスでは重要だということだと思っていました。しかし、実は、違うのではないかと思い始めています。

テニスは足ニスというのは、こういうことではないでしょうか?「スイングのタイミングは、実は足の動きで決まっている。上体(腕)は、自分の意志とタイミングでスイングしているつもりかもしれないが、実は、足が決めたタイミングに従って動いているだけなのである。ストロークを支配しているのは、足である。」

スプリットステップをする、ボールが来る、ボールのところに足を運ぶ、テイクバックをする、ボールをヒットする・・・のがテニスではないのです。

スプリットステップをする、ボールが来る、第1歩目を踏み出す。ここですでに、スイングは始まっていたのです。ボールのところに足を運ぶのは、実は、スイングの前ではなく、スイングの途中で行われていたということです。

テニスは足ニスです。足の動きがすべてをコントロールしています。

2011年5月26日木曜日

メシールのテニス(24) 背筋で打つ

何度か書いていますが、メシールのグランドストロークやサーブ(おそらく、ボレーなども)のポイントの一つが、”背筋の力で打つ”ということです。そのことは、ボールをヒットする際に、上体が立っていることから分かります。

さて、では、どうすれば、背筋で打つことができるのでしょうか?

今日、とあるブログ(紹介したかったのですがアドレスがわからなくなりました…)を読んでいて、ヒントがありました。

つまり、背筋以外の力を抜くということです。背筋以外の力を抜くと、当然ですが、背筋に力が入るので、自然に、背筋でボールを打つようになります。

具体的には、グリップの力を抜く、肩の力を抜く、腕の力を抜く。

下半身の力を抜くことはできませんが、これらの上半身の力を抜くことで、自然に背筋でボールを打つことができるようになります。(下半身は、しっかりと上半身を支えるのが仕事になります。)

ただし、これらは、インパクト前までの話です。インパクトの時は、例えばグリップはしっかりと握らねばなりません。

2011年5月24日火曜日

メシールのテニス(23) メシールのフォアハンド(腰よりも高い球 その1)

これまでに、メシールの試合前のフォアハンドストローク練習を分析しました。練習では、多くの場合は、小さなテイクバックで、スピンのかかっていない、比較的パワーがない球を、腰よりも低い位置で打つのですが、これについては、おおよそ、分析できたと思っています。

しかし、実際の試合ではスピンの効いた強い球を腰よりも高い位置で打つことが多いので、上記の打ち方だけでは対応できません。試合のDVDを分析して、”生きた球”をどのようにさばくのかについて、分析が必要です。

まだ、完全に分析はできていませんが、気が付いた点をまとめてみます。

①テイクバック:ラケットの引き方については、”練習”と同じです。ヘッドを落とし、ラケット面を体の方に向けて、肘から引きます。ここは、”練習”と変えてはいけません。

②テイクバックトップ:相手のボールに勢いがあるときには、それに応じた大きなテイクバックが必要になります。この際、テイクバックは、①の延長になります。つまり、真後ろにそのまま引きます。ラケットは地面と水平まで上に上がってきます。ラケットヘッドは真後ろ向き(実際には、手とラケットがまっすぐにならないので4時から5時の方向)で、ラケット面は地面の方向を向きます。基本的にはオープンスタンスで、肩を結ぶ線がネット方向よりも内側には来ない(背中をネット側に向けない)ので、体の構造上、ラケットヘッドが6時よりも深く(7時や8時)には入りません。肩と腕の線ですら、6時の線上に来ます。

③フォワードスイング:フォワードスイングは、”練習フォーム”とは異なります。ラケットは、縦振りではなく、横振りになります。つまり、この場合は、テイクバックとフォワードスイングは軌道が異なることになります。気を付けることは、フォワードスイングでは、ラケット面が上を向かないということです。”練習ボール”は、ボールに威力がないためにボールが上から下に落ちてくるか、または打点が低いために、フォワードスイングは下から上になり、インパクトにおいてラケット面がやや上を向きます。しかし、相手のボールに威力がある場合は、ラケット面の軌道は下から上ではなく、むしろ地面と平行に近くなります。そのために、スイングの軌道もほぼ地面と平行になり、ラケット面は地面に垂直になります。この”ほぼ”が実際にはどの程度傾くかは、相手のボールの勢いなどによって変わります。

スピンをあまりかけないメシールのフォアハンドでは、ラケット面の微妙な違いがボールコントロールに大きく影響します。ラケット面が少しぶれただけで、ボールはバックアウトしたり、ネットしたりします。ラケット面の微妙な制御については、メシールは、ラケットの重さをうまく利用しているようです。重いラケットを使うことによって、ラケット面をぶれにくくしています。なお、ラケット面がぶれないためには、フォワードスイングにおいて、右肘がまっすぐ伸びないようにすること、右脇が開きすぎないようにすることの2点にも注意しなくてはなりません。

④フォロースルー:上の③におけるラケット面の軌道と角度の微調整は、むしろ、フォロースルーでコントロールする方が簡単です。メシールのフォアハンドストロークでは、ラケットヘッドが頭のあたりに来ることが多いようです。もちろん、フォロースルーでは、ラケット面は下(地面方向)を向いています。

以上、”練習ストローク”と比較して異なるのは、テイクバックトップでラケットを水平まで上げること(ラケット面は下向きで、ラケットヘッドは4時~5時)、フォワードスイングが縦振りではなく横振りになること(その結果として、フォロースルーでラケットヘッドが左耳あたりに来る)という点になります。右肘と右脇にも注意を払います。

2011年5月23日月曜日

メシールのテニス(22) サーブ(その2)

テニスのサーブには、①トロフィーポーズで完全に静止するタイプと、②最初から最後まで一度も止まらず(または一瞬だけ止まる)に全体の動きでボールを打つタイプがあります。

最近で言えば、ジョコビッチが②です。フェデラーやナダルも、ほぼ②のようです(一瞬だけ止まる)。どうやら、最近の男子選手のほとんどが②のタイプのようです。古くは、ヴィランデルやコナーズが②でした。レンドルやベッカーも②に近いようです(一瞬止まる)。

ただし、昔の選手には①のタイプも多かったように思います。メシールは①のタイプですし、例えば、マッケンローも①のタイプです。

②はトロフィーポーズで一瞬止まる場合を含むので、①と②には明確な差があるわけではないのですが、明らかに違うのは、左手(右利きの場合)がトスアップを始動するタイミングです。①のタイプは、右腕が動いてテイクバックを開始してから、ゆっくりとトスアップが始まります。一方、②のタイプは、右腕と左腕が同時に始動を始めます。

プロに両方のタイプがあるということは、どちらが良いとか悪いとかいうことはなさそうです。

私自身は、実は、②のタイプです。ただし、②のタイプはアマチュアには難しい側面があります。一連の流れの中でボールを打たねばならないので、タイミングが少しでもずれると安定してサーブが打てないのです。

もしかしたら、アマチュアには、①のタイプが望ましいのかもしれません。今回は、①のタイプであるメシールのサーブをDVDで見て学んだことを、いくつか拾い上げてみようと思います。

まず、レディーポジションですが、ストロークと同じ、「女の子のモジモジポーズ」です。ここで大切なのは、ラケットヘッドを下に下げるということです。特に、上記の①では、ラケットヘッドを上げないことが大切です。(なお、②の場合は、構えた時にラケットを腰のあたりでセットする傾向があるため、モジモジポーズはとりにくいのですが、それでも、レディーポジションでラケットをあまり上でセットをしない方がよいです。)また、レディーポジションで、右肘は緩く曲げておきます(まっすぐにのばさない)。右肘がまっすぐに伸びていると、そのまま肘が伸びた状態でテイクバックスイングに入ってしまい、スイングが大きくなってしまいます。その結果、サービスが不安定になるのです。

次に、始動のタイミングです。サーブの始動は、腰よりも上にラケットをセットし、ラケットヘッドを上に向けて、手からスタートしたくなりがちです。つまり、ひょいっとラケットヘッドを上にあげる動作を、サーブのスタートのタイミングにしてしまいがちです。かつてのグラフがこういう始動でした。しかし、これは、メシールのテニスとしてはよくありません。ラケットヘッドが上を向いていて、しかもラケットヘッドを動かすことで始動すると、インパクトまでのラケットの道のりが長くなってしまうからです。その結果、サーブが不安定になるのです。サーブの始動は、背筋で行うのがよいと思います。その結果、上体がしっかりと立ち、背中が曲がることがなくなります。

本稿の最初に書いたとおり、①のタイプでは、右手が始動してからしばらくして、左手のトスアップが始まります。(②のタイプでは、両手の始動はほぼ同時になるようです。)どのタイミングでトスアップを始めるかは、プレーヤーの打ちやすいタイミングということになります。メシールの場合は、ラケットを持つ手がちょうど体の右側(右腰のあたり)に来た時に、トスアップの始動に入ります。このトスアップの始動が右手の動きに対して早すぎると、右手(ラケットを持つ手)は、遅れて出てきますので、無理なフォームになってしまいます。(実は、私がそうです。)トスアップを開始した時に、ラケットが体の右側にまで来ているかどうかを確認すればよいと思います。

次に、テイクバックですが、テイクバックの目標は、よい(正しい)トロフィーポーズを作ることです。よいトロフィーポーズとは、右肘の角度を深く(60°~45°ぐらい)に曲げこまれ、ラケットヘッドを真上(または少しだけ前に倒してもよい)に立てた状態を作るということです。そして、左手は、まっすぐに上に向きます。この形での”ため”を作るのが、テイクバックの目標です。”ため”をしっかりつくるためには、ラケットヘッドが寝てはいけません。

テイクバックでは、いくつか注意する点があります。

テイクバックで、何よりも大切なことは、右手と左手の同期です。つまり、両手は同時に上がることです。昔から言う「バンザイポーズ」は、①でも②で変わらない原則です。右手と左手が体の両側で独立にバンザイするタイプ(①に多い)と、両手が体の前で一体でバンザイするタイプ(②に多い)がありますが、同期する原則は同じです。たとえば右手だけがトスアップで上がって、左手がまだ下がっているといる状態があるとすれば、それは修正せねばなりません。かつての松岡修造選手は、この原則に従わないサーブでしたが、特殊な打ち方だと考えるべきだと思います。

テイクバック始動からトップまでの間で、最も重要なことの一つが、腕の使い方です。腕は、(フォアハンドと同じように)肘から引きます。そして、その際、肩から肘まではあまり動かさず、レディーポジションで緩く曲げた肘を、だんだんと深く曲げていき、最終的に右肘の角度を深く(60°~45°ぐらい)に曲げこんだ状態を作るのです。その結果、ラケットヘッドは一度も下を向くことがなく、ロボットダンスのように肘だけが曲がるにしたがってラケットヘッドも上を向いていくのです。極端に言うと、テイクバックの間で動くのは、右肘だけということになります。この間、腰や肩は、大きくは回りません。特に肩はラケットごと大きく回したくなりますが、これはメシールのサーブでは誤りです。ラケットヘッドがぐるっと大回りをしてトップに来ないように、直線的にトップに移動するように気を付けます。

テイクバックで脇が開かないことも重要です。脇が開くとラケットが体から離れ、その結果、スイングに余分な力が必要になります。

テイクバックの終着点が、トロフィーポーズです。①のタイプでは、トロフィーポーズは、テイクバックトップになります。

トロフィーポーズで重要なことは、ラケット面が開かないことです。トロフィーポーズでセットされるラケット面は、意識としてはネット側を向くぐらいでも構いません。(実際には、ラケット面が3時の方向になります。3時よりも大きな角度(4時、5時)を向いてはいけません。)ボールにスピン系の回転をかけようとすると、ついつい、このタイミングでラケット面が開いてしまいがちです。しかし、それは、逆効果なのです。一度開いてしまったラケット面は、そのあと、制御ができなくなります。

トロフィーポーズでの右手のグリップの位置について、高さ方向と前後方向に2点についてコメントします。

まず、テイクバックトップ(トロフィーポーズ)における右手グリップの高さですが、あまり高くない方がよいです。グリップ位置が高くなると、ラケットヘッドが真上から体の後ろに向いてしまうからです。フォルトしないように、スピンがかかりやすいようにと、つい、グリップの位置を高くして、ラケットを高くセットしたくなりますが、これは逆効果になる場合があります。右手グリップは少なくとも、右の耳よりも下に来ることを意識してください。(これは、上記のテイクバックで、肘から引いて肘の角度を深くしていくことで、テイクバックでのラケット軌道を小さくすることで、達成できると思います。)ただし、グリップ位置が逆に低すぎると、その後のフォワードスイングに負担がかかりますので、あまり低くなりすぎないように注意が必要です。

また、テイクバックトップでの右手グリップの前後位置にも注意が必要です。グリップの位置が、体の後ろになってはいけません。グリップは、体の線(両方の肩を結ぶ線)よりも前に出ねばなりません。イメージでいうと、自分の視野の中にグリップが入っているぐらい、という感じです。これは、言い換えると、肩を張りすぎてはいけないということです。砲丸投げのように肩をそらせてバネを作るのは、テニスのサーブでは誤りです。テイクバックにおいて力が入るのは、(ストロークと同じで)背筋です。右肩ではありません。

トロフィーポーズの左手、つまりラケットヘッドが上を向いているタイミングでの左手も重要です。このタイミングにおいて、左手がまっすぐに、そして真上に伸びていなければなりません。このタイミングで、左手が斜めに上がっていたり、横に伸びていてはいけません。左手が前方向には伸びるが上に伸びない場合には、まずはトスアップで左手を前方向に伸ばしておき、トロフィーポーズのタイミングでラケットヘッドを上に向けてセットすると同じタイミングで、左手を真上に伸ばすという方法があります。ラケットと左手が並行になるので、タイミングがとりやすいはずです。

トロフィーポーズについて、②に関して気を付けることがあります。(②ですので、メシールのテニスには関係ありません。)これは、トロフィーポーズでのラケットセットが遅れないようにするということです。①では、トロフィーポーズにおいて左腕が伸びて、さらに右腕が折りたたまれ、ラケットヘッドが上を向くという形が作られます。トロフィーポーズに至るまでのスピードが早いプレーや、遅いプレーヤがいるでしょうが、早いか遅いかは特に問題にはならないと思います。

しかし、②の場合は、事情が違います。②はトロフィーポーズそのものがありません。(サーブ全体が連続動作になるため。)ただし、②の場合でも、トロフィーポーズという不連続な形がないだけであって、ラケットヘッドが後ろで回る途中にラケットヘッドが上を向く瞬間があるのは同じです。(これを、連続動作トロフィーポーズと仮に呼んでおきます。)

②において、連続トロフィーポーズのタイミングは、プレーヤーが意識せねばなりません。②の場合は、左手はトロフィーポーズになっているにもかかわらず、右手はまだ、セットされていないということがあり得るわけです。そうなると、遅れた右腕には、遅れを取り戻すために無理な力が入り、その結果としてサーブ全体が不安定になります。本来は、フォワードスイングが大きくなければならないのに、連続トロフィーポーズを含めたテイクバックが、無駄に大きくなってしまうのです。

これを避けるためには、②の場合でも早めに連続トロフィーポーズをとるか、トロフィーポーズを意識することが有効です。そうすることで、結果的には①になってしまうかもしれませんが…。

どうして、②で左手が伸びたタイミングでまだ右手がトップまで来ないかというと、無意識に、”ため”を作って、強い球を打ちたいからです。特に練習のように自由に打てる時は、最初は早いタイミングでのトップを作っていても、だんだんと、強い球を打ちたいという欲が出てきます。そうすると、少し、タイミングを遅らせて”ため”を作りたくなってしまうのです。その結果、サーブ自身が不安定になります。したがって、強いサーブよりも安定したサーブを意識して、早いタイミングでのセットを意識せねばなりません。

”ため”を作るのであれば、トロフィーポーズまでのタイミングを遅らせるのではなく、トロフィーポーズ(テイクバックトップ)を早めに作り、その状態を”ため”としなくてはなりません。つまり、①のタイプに近づくということです。②のタイプは、明確なトロフィーポーズがないため、それを勘違いしてしまいがちなのです。

トロフィーポーズ(テイクバック)の後に、フォワードスイングが来ます。つまり、体はボールをヒットしに行くのですが、この際、やはり、スピンをかけたいために、つい、ラケット面が開いてしまう(上を向く)ことがあります。これは、体と腕が別々に動くために起こります。ラケットヘッドが上を向いて、テイクバックが完了したら、その後は腕を動かさずに体の動きだけでフォワードスイングに入ります。それでも、(当然ですが)腕は動きます。しかし、ラケット面は上を向かず、安定したサーブを打つことができます。

次に、インパクトです。

ボールをヒットする位置ですが、およそ、頭の真上あたりになります。これが右側にずれると、スピン系のサーブが打てず、スライス系になります。が、弊害はそれだけではありません。ボールをヒットする直前に、ラケット面が開いてしまうのです。言い換えると、右手の手の甲が90°よりも下を向いてしまいます。そして、そのままボールをこすり上げてしまうと、ボールは不安定になります。(気持ちはスピン系なのに、ラケット面がスライス系になるため。)

言葉で説明しにくいので図に示しますが、インパクトにおいて、インパクトポイント(つまり、ボールやラケット面の中心)がある位置と、手首の位置は、上限関係ではありません。インパクトポイントは頭の前上にありますが、手首は右肩の上にあります。つまり、ラケットは、地面に垂直ではなく、左側に傾きます。右手の親指は、インパクトにおいて、手の上側ではなく手の左側に来るはずです。ラケットが右耳のすぐそばを通ると、図の左側になりがちです。ある程度、右手を体から離してスイングしたほうが打ちやすいはずです。

また、頭の真上でボール打つと意識すると、ことさらに背中を(弓のように)そらせなくてはならないと考えてしまう傾向があります。かつての、エドバーグ(エドベリ)のサーブを思い出します。イメージとしては、図に示すように、腕とラケットがまっすぐになり、インパクトは頭の前うに来るイメージです。しかし、この場合は、腕とラケットがまっすぐになるため、親指が上の方に来てしまい、ラケット面が開いてしまいます。

右肩が左肩に対して十分に高いところにあれば、図に示すように、ラケットを傾ける(右手の親指をまっすぐ上に向ける)ことで無理な体勢を取らずにボールを頭の上でヒットできるはずです。

ちょっとした思い付き ~メシール・ザ・マジシャン

今回は、映像を見てのメシールのテニスの分析ではありません。普段は、オンコートや日常で、「これはどうなっているのだろうか」「もしかしたら、こういうことではないか」と思いついたら、必ずDVDで確認してから書いています。たいていの場合は、何かしら、答えが、DVDの中にあります。この繰り返しの中で、メシールのテニスを分析してきました。それが、このブログの基本でした。

しかし、今回は、思いつきで書いています。というのは、今回の内容は、映像で確認するのが難しいからです。ただ、なんとなく、とてもよいアイデアのような気がして(笑)、書いています。

メシールのストロークは、多くの選手に、そして観客に、「コースが読めない」「どちらに打つか全くわからない」と言われてきました。そして、これが、メシールの最大の武器の一つでした。メシールには、いくつかニックネームがありましたが、ビッグキャットとは別に、マジシャンと言われることがありました。「そのまんま」な感じはしますが、やはり、相手の予想を裏切るボール運びが出来たからこそついたニックネームでしょう。

しかし、その技術を、どうすれば打つコースを隠すことができるのかを、誰も解説してくれません。なぜ、解説できないのでしょうか?

実は、私は、さしてテニスの技術力があるわけではないので、相手のコースを読むということがどういうことかすらも、よくわかりません。メシールのコースが読みづらいのが事実だとして、では、他の選手の打つコースであれば、なぜ読めるのでしょうか。相手の打つコースが読む方法が理解できれば、メシールの打つコースが読めないということも理解できるかもしれません。

いくつか、想像することはできます。一つは、自分の打った球のコースや勢いから、打ち返せるであろうという予測がある程度できるということです。試合が進んで、相手の技術力や癖が見えてくると、ある程度、打つ方向が予想できるようになるでしょう。特に、自分の打った球が厳しい時には、相手の返球のコースは、限定される傾向にあると思います。

もう一つは、相手のスイングからコースを読むということです。よく、プロの選手は、相手のフォームでコースが読めると言います。本当に、そんなことができるのでしょうか?私は、相手のフォームからコースを読むなどということは自分ではできないと思っているのですが、実は、無意識にそれをしている可能性も否定できません。

メシールが、コースを隠して打つことができるとすると、いくつか、想像できることがあります。①相手が打つと読む方向と逆の方向に打つ、②全く同じフォームからクロス・逆クロスに打つことができるので相手がコースを読めない、③相手が打った球が厳しい時に想像されるコースと逆に打つことができる。

①も、②も、そして③も、いかにもありそうです。そして、おそらく、メシールは、①も、②も、③もできたのではないでしょうか。(いつか、本人に聞いてみたいものです。)

しかし、そんなことができるのだろうか、、、という以前に、そんなことに、意味があるのでしょうか?

なぜなら、私は、上に書いたように、少なくとも意識しては相手のコースを読んでいません。(読む技術がありません。)が、相手の返球が、それほど厳しくないのであれば、正直なところ、どちらのコースに飛んできても困りません。先にわかっていたらより良いですが、相手のボールが厳しくないのであれば、コースが読めるということは必須ということではありません。

逆に言うと、コースを隠して打っても、打つ球が厳しくないのであれば、コースを隠して打つことは無駄な努力ということになります。

そうすると、上の①~③以前の問題として、どういう時にコースを隠して打つことが有効であるかということを、まずは理解する必要があるわけです。その分析は、DVDでもできると思いますので、メシールの相手が裏を書かれているシーンを中心に、調べてみようと思います。

さて、前書きが長くなりましたが、今回は、②について考えてみたいと思います。同じフォームからコースを打ち分けるという技術についてです。もし、本当に、ボールをヒットする瞬間まで打つコースを決めないでもよいとすれば、間違いなく、相手はボールをヒットするコースを読むことができません。(打つ本人さえ、わからないのですから。)

どうすればこんなことができるのだろうかと考えているときに、ふと、思いついたことがあります。以下は、すべて、フォアハンドストロークの話です。

フォアハンドで、もし、打つ瞬間にコースを変えるのであれば、まず、逆クロスに打つ振りをしておいて、直前に順クロスに打つのがよいように思います。少なくとも、その逆は難しいでしょう。順クロスと決めた時点で体が開くため、そこから逆クロスは打てないからです。

と、最初は思っていました。

しかし、もしかしたら、だからこそ、メシールは相手の裏をかけるのではないだろうかと、思ったのです。つまり、メシールは、フォアハンドストロークにおいて、まず順クロスに打つ準備をしておいて、そこから逆クロスにボールを打っているのではないか、と。

どうしたら、そんな”器用な”ことができるのでしょうか?インパクト直前のラケットの動きを考えてみましょう。

順クロスに打つためには、フォワードスイングにおいてラケットのフレームをネット方向に動かすイメージが有効です。言い換えると、その際に、ラケット面(ボールを打つ側)は自分の体の方を向いています。そのままボールをヒットすると、ラケット面はネットよりも少しだけ左側(11時の方向)を向くために、ボールは順クロスに飛んでいきます。このフォワードスイングにおいて、ラケット面(の法線)はどんな動きをするでしょうか。

おそらく、法線はまず体(例えば9時方向)に向き、インパクトに向けて、10時、11時と動いていくと思います。11時で打つとフォアハンドの順クロス方向に、12時(まっすぐネット)に向けば、相手のいる場所にボールを打つことになります。

そうです。つまり、10時、11時、12時と向いたラケットを、そのまま1時方向に向ければ、逆クロスにボールを打つことができるのです。もし、12時、11時、10時と時計と逆回りに動いているラケット面を急に1時方向に向けるというのであれば難しいと思います。しかし、10時、11時、12時と動いている面を1時に持っていくのは、不自然ではなく、また、不安定でもありません。

これは、一般的な厚いグリップのスピン系フォアハンドでは、絶対にできないうち方です。スピンボールを打つ際には、ラケットの法線は必ず時計と反対周りをします。したがって、一度、順クロスと決めたストロークを逆クロスに切り替えることはできないのです。(打点を後ろにずらしてラケット面がまだ1時方向を向いているときにインパクトすれば、逆クロスに打つことは可能ですが、それは、フォームで相手には予想されてしまうでしょう。)

メシールのテニスでは、テイクバックでラケット面が体の方向(例えば9時の方向)を向いている点が重要なのです。一般的なワイパー系のスイングでは、手首を後ろに折り、ラケットのグリップ側のトップをネット方向に向けることで、ラケット面を伏せます。その際、ラケット面の法線方向は、基本的には地面方向になりますが、水平成分を取り出すと、それは外向き(例えば2時方向)になっているはずです。この点が、薄いグリップのメシールと、他の(現代テニスの一般的な)ストロークと、全く異なる点なのです。

かなり大胆な予想(仮説)ですので、この内容については、検証が必要です。そして、②についてであれば、ビデオで確認ができるかもしれません。分析結果については、また、いつか報告をしようと思います。

2011年5月22日日曜日

メシールのテニス(21) サーブ(その1)

オンコートでアマチュアプレーヤーのサーブを見ていると、多くのプレーヤーのサーブのフォームの中には多くの無駄な動きが入っていることに気が付きます。アマチュアっぽいフォーム、と言えばよいでしょうか。私自身のサーブのフォームもそうです。ビデオで自分のサーブを見ると、いかにもアマチュアのサーブです。サーブのフォームがどんなに特徴的なプロテニスプレーヤーであっても、アマチュアプレーヤーよりは動作がシンプルなのです。

その理由はよくわかりませんが、次のような理由になると思います。アマチュアであっても、サーブは2本連続デフォルトまたはネットするとポイントを失います。どんなフォームでもよいので、まずはサーブを入れることが重要になります。

そうすると、フォームのどこかに無駄な、または過った動きがある場合には、それを修正するための、別の動きが入ります。その結果、いわゆるつぎはぎだらけの、とにかくフォルトしないためのフォームが完成するというわけです。屋上屋を重ねるという言葉を思い出します。

グランドストロークの場合には、多少の無駄な動きやフォームの誤りがあっても、なんとか相手のコートにボールは入るものです。したがって、屋上にさらに屋根を作る必要がサーブよりも小さいのだと思います。サーブは、グランドストロークと比較して一瞬にして終わりますので、ちょっとした(微妙な)誤差が、大きな結果の違いになって現れます。ゴルフでいうと、ドライバーショットでしょうか。

つぎはぎだらけのフォームから脱却して、メシールのようなきれいなサーブを打つためには、なによりも正しいフォームを身につけなくてはなりません。正しいフォームで打つことで、誤った動きを修正するために別の誤った動きを重ねる必要がなくなり、全体としてきれいなサーブを打つことができます。きれいなフォームは、安定したサーブにつながります。

実際の試合(とくにシングルス)では、リターンミス、ダブルフォルトを含めて、サーブで決まるポイントが非常に多いので、サーブは重要です。サーブの調子が悪いと、ゲーム全体のリズムも悪くなるからです。

メシールのサーブは、迫力はありませんが、きれいな(美しい、とは少し違い意味になりますが)フォームです。どの試合でも、70%以上のファーストサーブ率を誇っており、ウインブルドンではサーブアンドボレーをするだけの威力のあるサーブです。プロフェッショナルな技術という点は別として、アマチュアの参考として学ぶところが少なくないメシールのサーブを、次回以降で分析してみようと思います。

2011年5月20日金曜日

メシールのテニス(20) 移動してボールを打つためのフットワーク(その2)

メシールのフォアハンドのフットワークについて、メシールのテニス(17)で、”まず左足、そして右足を踏み出しながらボールをヒットする”と書きました。フォアハンドがオープンスタンスのメシールの、独特の打ち方です(当時は)。さて、今度は、戻り方です。どうやって、元のポジションに戻るでしょうか。

メシールのフォアハンドのグランドストロークはボールをオープンスタンスでヒットしますので、振り終わった後に足はちょうど開いた形になっています。

そこから、まず、右足(外の足)を左方向に踏み出します。ここは、フォアハンドの踏み出しと同じパターンです。外の足が先に動きます。

次に、左足が動きます。ここで、また、体が正面を向き、足を開いた形になります。

ここから、メシールは、一つ、サイドステップを入れます。つまり、右足を左足のそばまで寄せて、そのあと、左足を左側にステップします。そして、このサイドステップが、次のボールへのスプリット・ステップになるのです。

この戻り方は、もしかしたら、テニスの基本なのかもしれません。つまり、°のプレーヤーも同じステップなのかもしれません。が、前書きにも書いたとおり、私はメシールのテニスにしか興味がなく、ほかの選手のことが分からないのです。(したがって、テニスの基本とメシール独特の要素がごっちゃになっています。)

ここから先は、一般的な端ではなく、私個人の話なのですが恐縮ですが、私のフォアハンドでは、ボールを打つまでのステップは、幸いにも、メシールのテニス(17)の通りでした。どうやら、無意識に、正しいフットワークをしていたようです。(オンコートで、頭で考えながらステップを踏むなんてことは、できませんので。)また、戻る方のステップも、上の通りでした。この点でも、幸いなことに、メシールのフットワークを踏襲していました。

ただし、ラリーが続くと、残念ながら、このステップがだんだん乱れてきます。最初の左足が右足になったり、最後のサイドステップの後に、再度、スプリットステップをしたり・・・。

どうすれば、徹底したフットワークが身につくのかわかりませんが、まずは、無意識に正しいステップが踏めるような日常でのトレーニングが必要なようです。

2011年5月15日日曜日

メシールのテニス(19) バックハンド(左足と背筋によるフォワードスイング)

メシールのテニスにおいて、バックハンドは、フォアハンドのほどは際立った特徴がないように思えます。それは、テニスにおいて、フォアハンドの自由度(=選手ごとのバラエティー)がバックハンドよりも大きいからだと思います。

しかし、さすがというか、そのバックハンドも、メシールの独特の技術が見え隠れします。

メシールのバックハンドの特徴は、踏み出す右足が0時方向近辺にあることです。つまり、”背中をネットに向けない打ち方”です。このことは、メシールのテニス(15)メシールのバックハンド(打点を前に!)でも書きました。もちろん、左方向に大きく振られた場合には、両足をクロスに(つまり、右足を左足に対して大きく左側に)踏み出してネットに背中を見せた打ち方をすることもあります。ただし、ここで議論するのは、自分のいる場所にボールが来る場合、つまり、フットワークを伴わない基本形です。

メシールのテニス(15)では、これを念頭に、バックハンドストロークを分析しました。しかし、踏み出しが0時方向近辺であるメシールのバックハンドでは、どうしてもボールがスライスして左側に流れて行ってしまいがちです。そうならないように打つと、今度は、ボールに力が伝わりにくい。

これを避けるために、どうすればよいでしょうか。

そのためには、テイクバックトップでラケットヘッドが下がり、しかも、左膝と同じ方向を向くことです。ここで、テイクバックトップというのは、本当のテイクバックトップではありません。メシールのバックハンドでは、テイクバックトップで、ひょいっとラケットヘッドを上げることがあります。メシールのテニス(15)の④でも書きました。その後、ラケットは、”真の”テイクバックトップにセットされます。ここでは、その”真の”トップの場所です。

メシールのテニス(15)の④では、この際、ラケットヘッドを下げると書きました。もちろんこれは正しいです。ただし、加えて注意することがあります。

それは、ラケット面が左ひざと同じ方向を向くということです。これは、重要な意味を持っています。すなわち、その後、ラケット面の押し出しは、左ひざの押し出しと同期するということです。この押し出しは、ラケット面がボールをヒットするまでは続きます。結局、インパクトまでは左足の踏み出しが仕事をするわけです。

この打ち方をするためには、テイクバックトップでは、ラケット面は左膝が踏み出す方向に面が向いていなくてはなりません。そうしないと、ひざの動きとラケット面が同期しません。左膝と一緒に、ヘッドが下を向いた状態のラケット面を押し出していくのです。この特に気を付けたいのは、ラケット面が絶対に上を向いてはいけないということです。右足を深く踏み込まないで、体の線(右肩と左肩を結ぶ線)に沿って体と一緒にラケットを引くと、どうしてもラケット面がやや上に向いた、スライス的なラケット面でのテイクバックをしたくなります。仮にその場合でも、テイクバックトップ(ラケット面が左ひざの前)ではラケット面は地面に垂直でなくてはなりません。ここで面が開いていると、安定したバックハンドストロークは打てないのです。

では、インパクト後はどうなるか。これ以上は左足は同期できません。インパクト後は、ボールを腕で押し出さなくてはなりません。つまり、ここから先は、背中(背筋)の仕事です。

この背筋が重要です。なぜなら、この点が、一般的なバックハンドとは異なるからです。

一般的なバックハンドでは、この時点では右足が大きく左側に踏み出されています。ボールを打つ力は、背中がネット方向に向いている状態を元に戻す力、つまり、体のねじりというか、腰の回転の力でボールを打つわけです。メシールは、前半を左ひざ、後半を背筋が担当します。

これを実現するためには、(まだ、オンコートでは試していませんが)おそらく、バックハンドで腰の回転を一切使わないという気持ちになることかもしれません。回転で打つのは楽ですので、つい、そちらに逃げがちです。それを我慢することで、他の推進力が必要になるわけです。

背筋でボールを運ぶ際には、ラケット面は、必ず、ラケットを縦振りせねばなりません。ラケット面がスイング進行方向に向かってすいちょにくなり、縦方向に、下から上に打つのです。ここで、ラケット面とスイング進行方向が90°になっていないと、ボールをカットしてしまうことになり、ボールのコントロールは難しくなります。また、スイングの力がボールに伝わりにくくなります。”厚い当たり”ができなくなるわけです。

ラケットヘッドを落とすのはフォアハンドでも同じですが、右手の力を抜くと自然とヘッドが落ちるフォアハンドと比べると、両手でラケットを持っているバックハンドは、つい、ラケットヘッドが上がりがちです。慣れるまでは、意識をしないと、ラケットヘッドがなかなか下がらないかもしれません。体の自由度の小さいバックハンドでは、インパクトのタイミングなどに融通が利かないため、両腕の力を抜くのは、なかなか勇気がいるからです。

ラケットヘッドを意識的に下げる方法として、バックハンドにボールが来たら、ほんの少し、前傾姿勢を取る方法があります。(ほんの少し、気持ちだけです。)ほんの少し前傾するだけでも、ラケットヘッドは、意識としては、かなり下げることができます。ただし、実際に大きく前掲するのは、”状態を立てて打つ”というメシールのテニスに反します。この方法は、あくまで気持ち程度だけということになります。

メシールのプレーを見ていると、バックハンドでは上体を少し前掲してボールを打つことがあります。特に、後ろ(背中の側からネット方向に)からメシールのバックハンドを見ると、インパクトの瞬間に背中の線がきれいに傾くのでわかりやすいです。これは、上体が前傾していることと同時に、背中の線がまっすぐに伸びていることを示しています。上体は、前傾はしても、軸を曲げてはいけません。(それでは、背筋力を使うことができません。)背中の軸をしっかりと伸ばすのは、メシールのストローク(フォアハンド・バックハンド)の基本です。

打点が腰よりも高い時は背中は傾きません。打点が高いので、傾けることができません。前傾があるのは、インパクトが腰より低い(たとえば膝の高さ)場合です。ビデオを見れば、ラケットがきれいに下から上に振りあがるのがわかると思います。さらに低い球では、メシールはしっかりとひざを曲げて、腰を落としてボールを打ちます。相手のボールが深い場合(ショートバウンドまたはライジングでボールをヒットする場合)は、逆に、しっかりとひざを落として上体を立てて打ちます。

フォアハンドでは、このような状態を少し倒す様子は見られません。実は、一つだけ、必ず少し前掲するフォアハンドがあります。球出しの場合です。オンコートで確かめるとわかりますが、上体をしっかり起こして球出しをするのは、案外、コントロールがしにくいものです。これは、体の中心線(軸)とラケットの軌道(下から上)がほぼ平行になるからだと思います。体をほんの少し倒すと、ラケットを下から上に振りやすい。これは、バックハンドで上体をやや倒すと下から上へのスイングが容易になるのと同じ理由です。

(補足) メシールの試合を見ていると、左側に振られている場合、つまり、バックハンドを打つのがコートのかなり左端の場合には、”通常の”右足を大きく踏み込んで、ネットに背中を見せるうち方でバックハンドストロークを打っています。この場合に、腰の回転をどのぐらい使っているのか、逆に言うと左膝の送りと背筋をどのぐらい使っているのか、もう少し、詳しく調べてみようと思います。

メシールのテニス(18) 移動してボールを打つためのスプリットステップ

以前、別項において、「メシールはグランドストロークでスプリットステップをしない」と書きました。すみません、これは間違いです(笑)。基本的には、メシールは、グランドストロークにおいて、基本的にはスプリットステップをしています。(シュテフィー・グラフのような飛び上がるスプリットステップではないですが。)そのうち、ブログのほうを修正しておきます。

といっても、では必ずスプリットステップをするかというと、確かに、ほとんど(まったく)しないこともあります。いわゆる、べたっと足を付けて始動する場合が、確かにあるのです。

メシールのテニス(17)で書きましたが、ボールが体から遠い場合には、その方向とは逆の足から踏み出し始めると書きました。(正確には、「テニスからテニスへ」にそうありました。)つまり、スプリットステップ後に、反対側の足から踏み出すはずです。

しかし、反対側の足から踏み出すというのは、コートで試してみると、案外、苦しいものです。たとえば、相手のボールがフォア側に来た場合には、小さく右足をそちらに動かしてから左足を踏み出したくなります。その方が、体は楽です。

その視点で、メシールのスプリットステップを注意深く見ていると、時々、ずる(?)をしているように見えます。いや、ずるというよりも、高等なテクニックというべきかもしれません。

つまり、スプリットステップのタイミングを少し遅らせて、着地するときに、ボールの方向に小さく踏み出しているのです。この技術を、どのような場合に使っているのか、まだ確認はしてないのですが、確かに、この方法を使うと、一歩を使わずに最初にボール側に体重をかけることができますので、フォアハンドでいうと左足の第一歩がかなり大きく踏み出すことができます。どうして、スプリットステップ中にボールの方向が読めるのか、本当に不思議です。もう少し、分析を続けてみます。

社会人からテニスを始めて草トーナメントで優勝した方法というブログにも、「テニスで大事なフットワーク スプリットステップ」でスプリットステップで着地するときには、次のステップの準備をする(右方向なら、左足で地面をける準備をする)とあります。意外に、それほど特殊ではない技術なのかもしれません。今度、オンコートでも試してみます。また、上記の「テニスからテニスへ」でも、ケン・ローズウオール(往年のオーストラリアの名選手)が、打球方向の予測に長けていたことが書かれてあります。案外、メシールのこのスプリットステップに関係があるのかもしれません。

2011年5月14日土曜日

メシールのテニス(17) 移動してボールを打つためのフットワーク(その1)

前書きあるように、このブログでは、プレーヤーが右利きということを前提としています。(メシールが右利きですので、このブログでは、常に右利きを前提として書いています。)ご了解ください。

さて、最近、私は、メシールのテニス(16)で紹介した「テニスからテニスへ」というブログをじっくり読ませていただいています。この著者のテニス技術解説は素晴らしく、メシールのビデオを何100回となく見ることで初めて理解できた技術の多くがあっさり(?)と書いてあり、もっと早くこのサイトを知っていれば…と思うこともしばしばです。テニスは足ニスと書きましたが、このブログにも同じタイトルの項目があります。

その中に、特に大切だという項目の一つが、フットワークの基本です。その内容はごく簡単で、「右方向に移動するときは左足をボール側に踏み出す動作からスタートする(逆に、左方向に移動するときは右足から)」というものです。こんなこと、おそらく、テニス上級者(中級者も?)にとっては当たり前だったのかもしれませんが、私は、そんなことすら知りませんでした…。

そして、メシールのテニスでも、この基本はしっかり守られています。フォアハンド側のボールは左足から、バックハンド側は右足から踏み出しています。

しかし、このことは、以前、メシールのテニス(11)テイクバック始動で書いた「フォアハンドは右足を引くところから始動する」ということと、全く反対です。

どちらが正しのでしょうか?

実は、メシールのテニスでは、どちらも正しいのです。説明しましょう。

上の原則(フォア側のボールは左足を右側に踏み出すことから始動)は、正しいです。ただし、それは、ボールが十分に遠くに来た場合には、です。

実は、フォアハンド一つとっても、ボールをヒットする場所は、何通りもあります。
①今いる位置、②今いる位置からネット方向(0時方向)に前方、③今いる位置から右斜め前方、④今いる位置から右横方向(3時方向)、⑤今いる位置から右斜め後方、⑥今いる位置から真後ろ方向(6時)と6通りあります。(もちろん、それらの中間もありますが。)さらに、今いる位置からの距離が近い場合、遠い場合などを含めると、実は、かなりのパターンがあることが分かります。
そんな風に考えると、テニスは、止まったボールを打つゴルフと比べると、ずいぶんと複雑なスポーツなのですね…。

さて、実は、これまでの私のメシールのテニスの分析は、すべて、上の①の場合のみ、つまり、もっとも簡単なボールを打つ場合のみを考えてきました。(したがって、参考にしたメシールのビデオは、ほとんどが試合前の練習ビデオです。ゲームの中では、①の場所にボールが来ることは、あまりありませんので。)

念のために書いておきますが、①については、ボールが体から近い・遠いということはありません。なぜなら、①(と、②と⑥)は、体に向かってボールが飛んでくるからです。したがって、①で体から遠い時というのは、②になります。④には体に近い・遠いという場合がありますが、①にはないのです。(なお、⑥はスピンがかかったボールや深いボールなどで、下がって打たなくてはならない場合ですので、①とは異なります。)

先に書いておかなければならなかったのですが、実は、このブログは、他人にお見せするというよりも、自分のメモ代わりに書き始めました。こんなに記事を書くとは、実は、最初思っていませんでした。したがって、たとえば、上のように、①の場合だけを考えて書いていますというような、詳細な説明をせずに記述していることが多くあります。今は、ほとんど読者のいないブログですので、そのあたりの粗雑さはまあいいかなと勝手に思っていますが、将来、きちんと整理して書き直したいと思っています。(実は、それよりも、このブログを英語化する方に興味があるのですが(笑)。)

さて、本題に戻りましょう。

上記の①~⑥について、メシールのフットワークはどうなっているでしょうか。今度は、1987年Japan Openのメシール対福井の試合から、それらのフットワークを拾っていこうと思います。

まず、①については、すでに書いたとおり、最初に右足を引きます。試合においては、①でボールを打つことができる時というのは、最も余裕を持って打つことができる場合ですので、メシールは、必ずなにか”しかけて”います。特に、福井のそれほど高速ではない(おそらく、トッププロと比較するとかなり低速な)サーブの場合、リターンストロークは、かなりの比率で①と言ってもよいと思います。

さて、次によくあるのが、④です。つまり、”真横に移動してボールをヒットする場合”です。この場合は、「テニスからテニスへ」にあるように、左足からスタートします。①の場合とは、全く逆です。

「テニスからテニスへ」では、左足からスタートして、左→右→左の最後の左足の踏み出しが、フォアハンドの踏み出しになるとあります。ここだけが、メシールのテニスでは異なります。というのは、メシールのテニス(16) メシールのフォアハンド(基本はオープンスタンス)で書いたように、メシールのフォアハンドの基本はオープンスタンスだからです。したがって、メシールのテニスでは、左足からスタートして、左→右でボールをヒットします。つまり、たった2歩目でボールを打ってしまうのです。

これを、アマチュア(しかも中級クラス!)が真似するのは、かなり難しそうに思います。第一、たった2歩では、コートの右端近くに来たボールが打てないのではないでしょうか。

ということで、早速、試しに、オンコートで試してみました(笑)。

まず、驚いたのですが、しっかり腰を落とし、ひざを曲げて足を踏み出すと、左→右で踏み出して、最後にオープンスタンスでラケットを伸ばすと、案外、コートを広くカバリングできるのです。私は、身長が170㎝弱であまり背が高くない(足はさらに長くない(笑))方ですが、それでも、シングルスラインに対して、ラケットヘッドは50㎝程度のところまでは届いていました。おそらく、私のレベルで、このぐらいぎりぎりを狙ってボールを打たれることがほとんどないでしょうから、事実上、問題はなさそうです。

なお、腰を落とし、膝を曲げるというのは、しっかりと歩幅を取るためには必要です。フォアハンドストロークではあまり膝を曲げて、腰を落としている印象のないメシールですが、確かに、遠い球が来た場合には、しっかり腰を落としています。この”2歩打ち”で安定したストロークをするためには、最後の右足の踏ん張りや、上体の安定感が必要です。しっかりと膝を曲げて、腰を落とさなくてはならないのです。

試しにバックハンドも試してみました。バックハンドは両手打ちですから、最後に右足を踏み込まなくてはボールをヒットできません。つまり。右→左→右の3歩目で打つことになります。この場合は、もちろん、コートの端まで十分にラケットは届きます。(ただし、メシールのバックハンドでは、最後の右足は、あまり深く踏み込みたくないので、やはり、左足の踏み込みでできるだけサイドまで動いておきたいところです。)

さて、ステップを確認したので、今度は、ボール出しをしてフォアハンド(バックハンドも)も打ってみました。コーナーぎりぎりというほどではないですが、①のようにその場で打つことはできない場所への球出しです。腰(と膝)に気を付けて、上体が揺れないように(ぶれないように)気を付けて・・・。するとどうでしょうか。今まで、もっと細かく足を動かしていた時よりも、ずっと安定にボールが打てるのです。10本ほど打ってみたのですが、偶然もありますが、1本もミスショットをしませんでした。

これは、正直なところ、意外でした。たった2歩しか動けないのに、細かく足を動かすよりも安定したショットが打てたのです。これは、いくつか、理由があると思います。一番の理由は、時間的余裕ができたことです。バタバタと細かいステップでボールの距離とタイミングを計るよりも、たった2歩しか動かさないのですから、時間的な余裕ができます。ただし、歩数が少ない分、ボールと体の微調整が難しくなります。世界のトッププロは、練習と才能によってこの問題を回避しているのかもしれませんが、私のようなレベルでもそれが可能なのかどうか。これは、もう少し、オンコートで試してみようと思います。おそらく、”時間的余裕と微調整のむずかしさ”と”微調整ができるが時間的余裕がなくなること”とのせめぎあいになるのだと思います。

さて、しかし、この2歩打ちも、球出しのボールが勢いのない場合には、少し様子が変わりました。ボールは遅いので時間的余裕はあるのですが、相手のボールの勢いを使ってボールを打つことができないために、自分で足を踏み出して打たなくてはボールに力を与えることができないのです。この場合は、時間的余裕もあることを活かして、もう一歩、最後に左足を(しかし、オープンスタンスで)踏み出してもよいかもしれません。

今回は、球出しのボールで試したのですが、この2歩打ちが、球出しではなく、実戦でも可能なのかどうか?正直なところ、よくわかりません。メシールのフォアハンドストロークは、体を無理に使うことなく打ちますので、それ自身は、アマチュアでもコピーが可能だと思います。しかし、2歩打ちのように下半身をしっかりと打たねばならない場合に、ボールと体の距離感の微調整が難しいこの打ち方が有効なのかどうか、これは、オンコートで試してみるしかありません。

さて、話を戻します。①と④以外の場合に、メシールの打ち方はどうなっているのでしょう。実は、①と④以外については、まだビデオの分析ができていません(笑)。また、時間があるときにチェックしてみます。

最後に。上の「テニスからテニスへ」には、テニスが上級かどうかは、止まって打つボールを威嚇に強く打てるかではなく、ボールのところまで移動してから打つ、ということがどれだけできるかだとあります。多くのプレーヤーが(止まって)ボールをどれだけ強く打てるかを気にして、フットワークを考えないと。私もそう思います。

とはいえ、止まって打てる段階で、正しいストロークを身に着けないでフットワークが身についても、それはそれで、結局のところ、「試合には勝てるが、あるところから先に上達しない」プレーヤーになります。そのことを知っているからこそ、私は、まずは、「止まって打つ」時のストロークの形にこだわってきました。実は、このブログは、私自身の技術進歩と並行して進んでいます。100点ではないかもしれませんが、メシールのフォアハンドについて、私は、やっと、止まって打つ形(つまり、スイングの基本形)は、おおよそ理解できたと思います。

しかし、メシールのテニスの美しさは、スイングだけではありません。フットワーク、戦略、それらが相まっての美しさです。したがって、私のメシールテニス追求の旅は、まだまだ、続きます。

2011年5月10日火曜日

メシールのテニス(16) メシールのフォアハンド(基本はオープンスタンス)

メシールのフォアハンドのちょっとしたメモです。今まで、はっきりとオープンスタンスということに触れていなかったような気がするので、このことについて書いておきます。

メシールのフォアハンドは、右足を引くことから始動するということは何度も書いていますが、そのあとの左足の踏み込みは、原則はオープンスタンスです。右足を引いた後に(両手でラケットを持つために)左肩が深く入ってくると、体が自然に横を向くため、つい、左足がまっすぐ前に(右足とネットを結ぶ線上に)出てしまいがちです。が、それは、正しくありません。あくまで、左足は、斜め前方(ネット方向に向けて45°程度)に踏み出さねばなりません。オープンスタンスが、メシールのフォアハンドの基本です。

オープンスタンスの時代はなぜやってきたかというWebサイトに、かつての日本の名選手である九鬼潤さんとメシールのプレースタイルがそっくりで、当時は珍しいオープンスタンス(のフォアハンド)だったとありました。(このブログの著者はレッスンプロのようですが、ほかの記事も面白く読ませてもらいました。)

私自身も、自分のストロークをビデオに撮ってよく見るのですが、確かにフォアハンドをオープンスタンスで打っていない時はスイングが窮屈で、”美しくない”のです。(オープンスタンスのときは美しい!という程ではないですが(笑)。)特に、左肩が入って打っているときほどオープンスタンスになりにくいので、、左足を45°(以上)で、つまり時計の9時から10時半の方向に意識的に踏み出すように気を付けた方がよいかもしれません。

上のWebサイトには、Sébastien René Grosjean(セバスチャン・グロスジャン)がオープンスタンスで(フォアハンドを)打つ選手だとありました。Youtubeで、この選手のプレーを見ました。確かに、「まっとうなオープンスタンス」の選手です。グリップがメシールのように薄くないので、ループ型のストロークで、メシールほどには私の”美しい”という琴線(?)には触れませんが、しかし、ストロークのときのスタイルは美しいと感じました。自分でも理由はよくわかりませんが、オープンスタンスのフォアハンドというのは”美しいもの”なのかもしれません。このことについても、また、考えてみます。

ところで、このYoutubeの映像を見ていて面白かったのですが、グロスジャンのバックハンドは、メシールと同じように、右足(踏込足)がクローズドになりません。ほぼ0°方向(ネット方向)に踏み出しています。(したがって、私は、この選手が結構気に入りました(笑)。)

フォアハンドがオープンスタンスの選手は、バックハンドもクローズドになりにくいのでしょうか。オープンスタンス(バックハンドの場合は、クローズドにならないスタンスは)、テニスから身体を自由に開放してくれるのでしょうか。美しいテニスの演出には必要な要素なのでしょうか。

確かに、私レベルのプレーの映像であっても、クローズドスタンスのストロークは「頑張ってるけれども自由に解き放たれてない」、美しさを感じないのです。

2011年5月8日日曜日

Winning Ugly (かっこ悪くても勝つ!)

ご存知かもしれませんが、Winning Uglyとは、メシールと同時代を戦ったアメリカ人選手の一人であるブラッド・ギルバードの著書のタイトルです。さすがに直訳では日本では売れないので、日本語版では「読めばテニスが強くなる」という、当たり障りのない(?)タイトルになっています。

ニューヨークのテニス仲間さん(Tennisunakama in New Yorkさん)が、このWinning Uglyということについて、面白い文章を書いておられます。タイトルは、そのままWinning Uglyです。美しいテニスと、勝つためのテニス。フェデラーがトップから陥落することで、美しいテニスの呪縛から放たれて、勝つためのテニスに向かうことができるか、という内容です。とても面白い視点です。

フェデラーもメシールも、当然ですが、勝つことよりも美しいテニスを優先して選択したとは思えません。勝つために選んだ道が、美しいテニスだったのです。一方、Winning Uglyの例として挙げられているナダルは、実は必ずしも美しくないとも言えません。恵まれた体にモノを言わせて強引にヒットするストロークは確かに美しくはないのですが、その一方で、見事なまでにそれを実現するあのバランス感覚は、ある意味では、究極のバランスであるとも言えるでしょう。(それでも、美しいかと問われると、悩みますが。)

私は、ずっと、美しいテニスこそが強いテニスであると信じてきました。いえ、今でも信じています。なぜなら、美しいテニスには無駄がなく、身体能力を100%近く引き出すことができるのは美しいテニスだからです。

1位から陥落した(今や3位になりました)フェデラーの進む道は、Winning Uglyではないと思います。フェデラーは、美しいテニスによって、身体能力を100%引き出さねばなりません。今までが、90%だとしたら、99%を引き出すのです。ナダルのプレースタイルは、絶対に、身体能力を100%は引き出せません。そして、おそらく、現在以上に能力を発揮することは難しいでしょう。(本当に体を壊してしまうからです。)フェデラーは、ナダルよりもはるかに劣る身体能力のポテンシャルを、パーセントを上げることで越えなくてはならないのです。200のポテンシャルを50%発揮するナダルと、100のポテンシャルを100%発揮するフェデラー。この縮図の中で、フェデラーが再帰することができるのか。再帰できた時、それは、おそらく、究極の美しいテニスがそこにあるに違いありません。

2011年5月6日金曜日

メシールのテニス(15) メシールのバックハンド(打点を前に!)

メシールのテニス(14)で書いたように、薄いグリップのメシールのフォアハンドストロークの打点ですが、厚いグリップの他のプレーヤーと同じように、打点は前に置きます。メシールのストロークの懐が深い(打点が後ろになる)ことは、ここでは、一旦、忘れてください。(メシールの場合でも、他のプレーヤーの場合でも、打点が後ろになるのは特別な場合だけなのです。)そして、打点が前であるという原則は、フォアハンドだけではなくバックハンドでも同じです。実は、メシールのバックハンドの打点は、他の両手打ちバックハンドプレーヤーよりも前なのです。

なぜ、メシールのダブルハンドバックハンドの打点は前なのでしょうか。そこに、メシールのバックハンドの”謎”を解くカギがありそうです。今回は、メシールのバックハンドを分析してみたいと思います。

私は、メシールのバックハンドストロークをビデオ(スローモーション)で分析し、次のステップから構成されていることを確認しました。①レディーポジションでへその前でラケットをセット、②左足を引きながら手を動かさないテイクバック始動、③テイクバックでラケットヘッドを下げる、④②に続いての右足の踏み込み、⑤フォワードスイング(左足と右足の使い方)の、全部で5ステップです。

では、以下に、①から⑤までを、順を追って説明していきましょう。

①については、フォアハンドと同じです。レディーポジションでは、へその前でラケットを構えます。女の子のもじもじポーズでよいと思います。(レディーポジションでは、ボールがフォア側に来るかバック側に来るかわからないのですから、①のスタイルがフォアハンドと同じになるのは当然です。)

②テイクバック始動時のポイントは、原則的にはフォアハンドと同じです。へその前でラケットを持っている両手を動かさずに、体と一緒にテイクバックを開始します。この際に重要なのは、へその前からグリップ(手)を動かしてはいけないということです。体の回転の分だけ、手(腕)が後ろに回っていきますが、その手は、常にへその前です。
ここで大切なのは、足の動きです。メシールのバックハンドでは足の動きが重要である(すべてを支配する)という点は、フォアハンドと全く同じです。(テニスは足ニス!です。)最初の一歩目を、右足から動かしてはいけません。(体の向きを作るために、右足が小さく動くのは構いませんが、右足を大きく踏み出してはいけないということです。)右足を前に出すことで体を横に向けてしまうと、次に左足を引いた時に右肩が前に出すぎてしまいます。この場合、背中がネットの方向を向いてしまうのです。肩手打ちのバックハンドでは、このように背中をネットに向け、右肩を軸にして体を回転して打つ方法もあります。たとえば、クリス・エバートがそうです。しかし、メシールのバックハンドでは、右肩を回転軸にして打ちません。(バックハンドでは、回転力を主推進力としては使いません。)したがって、メシールのバックハンドでは、背中はネット方向には向かないのです。背中は、テイクバックトップであっても、ほぼ270°(つまり、ベースラインに沿った方向)にしか向きません。相手側から見たら、バックハンドにおいては、メシールの背中はほぼ見えないことになります。
このように、右肩を入れすぎない、背中を270°以上回転させないためには、一歩目は、右足ではなく、左足を引くことからスタートせねばなりません。左足は、ネット方向に対して90°以上動かしてはいけません。つまり、動かした左足は、ネットと右足を結ぶ線よりも後ろ(180°以上後ろ)に移動することはないのです。ボールとの距離に依存しますが、左足は、ネット方向から見て180°以内(135°~180°ぐらいになると思います)に移動することになります。感覚的に言うと、体を開いたまま左足を引くというイメージになると思います。この点は、後述の”右肩を入れない”という目的のためには重要です。
左足を引く動作の間は、上記に示すように、ラケットを持つ手は動かしてはなりません。言い換えると、左足を引く動作、それに応じて自然に上半身が横を向いていく動作、へその前に固定したて・腕・ラケットが一体となって回転していく動作の3つの動作は、左足を引いている間、連動して行われることになります。この際、右足を動かさずに左足を引いているので、体は開いています。右肩と左肩を結ぶ線は、ネットに対して135°になっているはずです。ラケットのヘッドは(手を動かしていませんので)、やはり135°になっています。
この、②においてもう一つ、注意する点があります。それは、引いた左足のつま先です。左足のつま先は、完全に横を向いてはいけません。つま先がネット方向を向くことも難しいと思いますが、ネットに向かって45°~90°の間が望ましいと思います。

③上記の②において重要なことがあります。それは、フォアハンドと同様に、②の動作の間、ラケットヘッドが下を向くということです。ラケット面が下を向くことで、後半の、ラケットを下から上に振り上げる動作や、ボールに向かって面を作る動作がしやすくなります。

④さて、②において左足を引き終えると、次は右足です。左足を引いた時点で体がオープンになっています(ネットに対して135°)が、左足に続いて右足を前に出すことで、体はほぼ、ネットに対して垂直になります。両肩を結ぶ線がネットの方向を向きます。
このタイミングで、初めて腕が体と連動せずに、自由にテイクバックをします。その結果として、ラケットヘッドはネット反対方向(180°)を向くことになります。これは、ラケットに勢いをつけるための動作です。メシールは、スイングに勢いをつけるために、テイクバックトップにおいて、ラケットヘッドを引いたまま、上にひょいと拍子を付けることがあります。これは、勢いをつけるということと、もう一つ、タイミングを取るためという意味があるようです。なお、ラケットヘッドが上を向いても、ラケット面は絶対に上を向いてはいけません。面は地面にほぼ垂直です。
また、この際、ラケットを後方に引きすぎることで、右ひじが伸びてしまわないように気を付けてください。ラケットはできるだけへその前に置き、右ひじと左ひじの角度が極端に違わないように注意します。

⑤ですが、④の右足の踏み込みが、そのまま、フォワードスイングと連動します。すでに、右足は踏み込んでいますので、あとは、体重移動でボールを前に運びます。実際に打ってみると、このうち方では十分な前方への推進力を得ることができないように感じると思います。上に書いたように、体の回転を十分に使うことでテイクバックトップでラケットヘッドが270°の方向を向くような両手打ちバックハンド(女子の選手はほとんどがこのうち方だと思います)の場合は、ねじった体を元に戻す回転力がそのまま推進力になります。しかし、メシールの両手打ちバックハンドの場合は、この回転力を利用できません。
メシールの両手打ちバックハンドで推進力として利用できる力は、次の通りです。
まず一つ目は、左足の膝の運びです。上記に示すように、左足のつま先は横(90°)ではなく、45°方向を向いているはずです。したがって、左ひざを前方に織り込んでいくことで、前方への推進力を得ることができます。
二つ目の推進力は、ラケットワークです。フォアハンドと同様に、ラケットを下から上に振る(縦振り)をすることで、ラケットの推進力を得ることができます。(横振りの場合は、この推進力を得ることができません。)この際、④に示したテイクバックトップでのラケットの位置が後ろになりすぎないこと(右ひじと左ひじの角度が違いすぎないこと)が重要になります。ラケット位置が後ろになりすぎていると、それを戻すだけの力が必要になります。メシールのバックハンドでは、後ろに位置したラケットを戻すだけの推進力源がないのです。(体の回転を使わないので。)したがって、ラケットは、意識的に前方(ネット側)においておく必要があります。
また、フォワードスイングにおいて、ラケット面を下からネット側に”縦に振る”ということも有効です。これは、フォアハンドにおいては記述しませんでしたが、実は、フォアハンドでも有効なラケットフェースワークになります。高い打点の場合には使えないラケットフェースワークですが、腰の高さのボールに対しては、安定した強い球を打つことできます。
フォワードスイングの推進力で無視できないのが、フォアハンドと同じ、背筋力です。メシールのテニスで、体の中で最も力を使うのが背筋です。背筋を使うということと、上体が立つということは、基本的には同じことを示しています。メジャーリーグのイチローなども同じ理由で、上体が立っています。
最後に、フォワードスイングで重要なのは、右足のつま先です。右足のつま先は、できるだけネット側を向きます。右足のつま先が横方向(90°方向)を向く両手打ちバックハンドは多くあります。(例えば、クリス・エバートがそうです。彼女のバックハンドは、見事なまでに右足のつま先が、90°方向を向いています。)メシールの場合、0°とまではいきませんが、右足のつま先はかなりの確率で、45°程度を向いています。これは、体の回転を使わずに前後方向(+上下方向)の力でフォワードスイングを行うために、左ひざ、背筋、ラケットワークの力を効率的にボールに伝えるには必要なことなのです。
かつて、渡辺康二さんが、テレビ解説(確かWCTファイナルのマッケンロー戦かシュツッツガルドのレンドル戦)で言っていました。「メシールのバックハンドの右足は、クロス方向にスライスを打つかのような右足だ。それが、いきなり両手打ちでスコーンとストレートに来るので、打たれる方は全く予測ができないんですよね。」
体の自然に任せて(何も意識せずに)両手打ちバックハンドでボールを打つと、(少なくとも私は)クリスエバートのように、ネット方向に背中が向き、右足のつま先はネットと水平(90°)になり、テイクバックトップではラケットヘッドは180°以上深くなります。どうして、メシールのバックハンドは、右足、左足のつま先が90°よりも浅くなり、また、ラケットヘッドが180°よりも深くならないのか、不思議でした。しかし、分析してみて、答えは簡単であることがわかりました。
上の特徴は、すべて、ストローク時に、右足が左足よりも前に出る(ネット方向から見たときに、右足が左足よりも右側に位置している)ことが理由です。実際、シングルハンドのバックハンドでは、右足が左足よりも前に出なくては、ボールをヒットすることはできません。しかし、メシールのバックハンドでは、まず左足が、そして右足が動きます。この順番で足を動かすと、右足が左足よりも前に出ることはほぼありません。その結果、ラケットヘッドも180°よりも後ろを向くことはありません。この足の動き・順序が、メシールのバックハンドの”秘密”だったのです。そして、面白いことに、外の足を先に引くという点は、フォアハンドの”秘密”と全く同じです。

今回のテーマは、なぜ、メシールのバックハンドストロークは、打点が前になるのかということでした。そして、その問いに対する答えはこういうことになります。「メシールのバックハンドは、体の回転を使わずにボールを打つタイプだ。しかし、このうち方は、ボールに力を乗せる(推進力を得る)のが難しい。そこで、メシールは、打点を前にすることで、左ひざの使い方(ニーワーク)、背筋、ラケットワークなどで効率的にボールに推進力を与えるため、自然と、打点が前になっていくのです。」

このブログは、昔懐かしい、ミロスラフ・メシール(メチージュ)について語るための、個人的なブログです。と言っても、私は、週末プレーヤであり、プロでも、専門家でもありません。また、実は、他のテニスプレーヤーについては全く興味がなく、メシールのテニスだけしか語ることができません。もし、ご興味があれば、時々、楽しんでいただければ幸いです。

メシールのテニス(14) 懐が深いということ

メシールのストロークは、しばしば、「懐(ふところ)が深い」と評されます。懐が深いというのは、どういうことでしょうか?今回は、メシールの懐の深さを分析してみようと思います。

一般的に言うと、懐が深いということは、打点が後ろであるといってよいでしょう。一瞬、差し込まれたように見える場合でもボールを打ち返すことができる。しかも、差し込まれて苦し紛れに打ち返すのではなく、きちんとボールをコントロールするということです。場合によっては、振り遅れたと思った相手が想像しない方向に打ち返すということもあります。

しかし、ここで、注意する点があります。以前にも書きましたが、懐が深い(メシールの)ストロークは、常に打点が後ろであるということではないということです。このことを間違えると、メシールのテニスを誤って理解することになります。

懐が深いストロークというのは、常に打点が後ろであるということとは異なります。常に打点が後ろにおいているプロテニスプレーヤーは、存在しません。打点が後ろになってもボールに勢いを与えることができるのは、相手のボールに勢いがあるときだけです。自分の体重移動を使わずに、相手のボールの勢いを使って小さいスイングと正確なラケット面でボールを打ち返す場合のみなのです。

相手のボールが普通の(または勢いのない)ボールであれば、基本は、打点を前にして、しっかりと前足に体重移動することでボールを打つのが、ストロークの基本です。これは、あらゆるタイプのプレーヤーに共通したことです。

では、懐が深いプレーができるプレーヤーとは、どういうプレーヤでしょうか?

この答えは、簡単です。ストロークがループ状ではなく、直線状のタイプのプレーヤーです。ループ状のプレーヤー(たとえば、メシールと同世代でいうと、アガシやヴィランデル)の場合、ボールのヒッティングポイントが点になります。ボールの飛球線とループの交差点のみが打点になります。一方、直線的なストロークの場合には、ボールとスイングの飛球線を重ねることで、打点を広くとることができます。したがって、差し込まれた場合でも、ボールを打ち返すチャンスが増えるので、「懐が深い」ことになるのです。

もう一つ、フォアハンドに関していうと、グリップが薄いことが、懐が深いことの必要条件になります。厚いグリップは、体の前のほうでしか打点があり得ませんが、薄いグリップは打点を後ろにすることができます。(くどいようですが、打点が後ろになるのは、特別な場合だけです。)最近のテニスでは、ほとんどの選手のフォアハンドグリップが厚いので、懐の深いフォアハンドストロークを見ることは、ほとんどなくなりました。

繰り返しますが、懐が深いストロークが打てるからと言って、打点を前に(体重を乗せて)打つことができる時に、あえて、打点を後ろにすることはありません。それは、力強いボールを打つという意味では、不利になります。メシールは、フォアハンドでも、バックハンドでも、まれに、スイングを瞬間的に遅らせることで、意図的に打点を後ろにして、逆クロスにボールを運ぶ打ち方をしていました。これは、格下の相手に対しては特に有効な技術でした。アマチュアにはなかなか難しい高等技術ですが、私も、いつかは挑戦してみたいと思っています。

さて、話を戻しましょう。というよりも、すでに、結論は出ています。懐が深いメシールのプレーをコピーする際に、決して、打点を遅らせてはいけないということです。打点を遅らせるのは、仕方がない場合、または意図的にそれを行う場合であって、基本は(普段は)、打点は前です。他のプレーヤーと同じです。

このことは、フォアハンド、バックハンド、どちらも同じです。実は、特に気を付けるべきは、バックハンドの場合です。メシールのテニスでは、フォアハンドはもちろん、バックハンドでも打点を後ろにおいてはいけません。正確に調べたわけではありませんが、メシールの両手バックハンドは、他の両手バックハンドと比較した場合でも、打点は前なのではないかと思います。(少なくとも、他のプレーヤーよりも後ろということはないはずです。)このことは、また、別の機会に書こうと思います。

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メシールのテニス(13) メシールのバックハンド(アウトライン)

メシールのバックハンドは、現役時代、フォアハンドよりも評価が高かったのですが、実は、私は、メシールは、バックハンドよりもフォアハンドのほうが独特だと思いっています。バックハンドの評価が高かったのは、高い打点からのダウン・ザ・ラインのエースが時々出たので、それが目立っていたからかもしれません。(テニスでは、特に日本では、何かトップスピン神話のようなものがあって、メシールのようなフラットドライブ系のフォアハンドは、あまり目立たなかったのでしょうか?)

メシールのバックハンドは、フォアハンドほどは”謎めいて”いないように思います。それでも、やはり、美しいバックハンドです。

メシールは、他の多くの選手と比べると、フォアハンドでは「腕の自由度」が低いのが特徴です。メシールのフォアハンドで、右腕が(体から独立して)動き始めるのは、テイクバックのかなり後半になってからです。これが、メシールのフォアハンドの特徴を際立たせています。多くの選手が、スピン系のボールを打つためにループ状にラケットを引きます。したがって、テイクバックのかなり早い段階から、ラケットがループに入る(そのために、体と手が別々に動き始める)のですが、メシールは体と手の動きがかなり後になるまで離れないのです。

一方、バックハンドは、その逆に見えます。多くの選手が、バックハンドのテイクバックでラケットが体に巻き付くように引くのに対して、メシールのテイクバックは体に巻きつきません。その結果、テイクバックのトップにおいて、メシールのラケットヘッドはほぼネットと反対方向に向きます。(多くの選手は、ラケットヘッドが、さらに背中側を向きます。)

次回以降では、この、テイクバックトップでのラケットヘッドの向きを中心に、メシールのバックハンドについて考えてみたいと思います。

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2011年4月26日火曜日

メシールのテニス(12) なぜメシールのテニスは美しいのか~フットワークについて

メシールのテニス(11)で、フォアハンドの「最初の第一歩」について書きました。つまり、フォアハンドでは、最初の一歩目は、右足を引く(右利きの場合)ことだと。実は、このことが、メシールのテニスはなぜ美しいのかということと、深く関係しています。今回は、そのことを書きましょう。

メシールのテニスを表するときに、美しいという人はあまりいない(美しいと思うのは私だけ?)ように思いますが、「予測がよい」「コートカバーが広い」ということを、よく言われます。一方で、「あまり動いているように見えない」ともよく言われます。かつて、渡辺康二氏がメシールのテニスを表して、「全く動いていない風情ですね(なのに、動きが素早い)」という表現をしたことがあります。

たとえば、Youtubeにある、1987年の全米オープンのメシール対ヴィランデルの試合を見てみてください。グランドストロークにおいて、ヴィランデルは、基本に忠実です。つまり、相手がボールをヒットするごとにスプリットステップをしています。一方のメシールは、ストローク時のスプリットステップですらいい加減で、どうも初心者のお手本にはなりそうにありません。なんとなく、相手がボールを打つ瞬間も、両足がべたっと地面から離れないという「風情」です。

私自身、長い間、これが不思議でした。基本に忠実なヴィランデルよりも、忠実ではない(いい加減に見える)メシールのプレーが、なぜ、美しいと感じるのだろか。美しいというのは主観的(直観的)な表現ですが、そこには理由があるはずなのです。理由のない直観はあり得ないはずです。

かつて、メシールは、記者会見で、「あなたの手の使い方は独特ですね」と言われて、「テニスで大切なのは手の使い方ではなく、足の使い方なのです」と言ったことがあります。「テニスは足ニス」という言葉があるように、これは、確かにテニスの基本を表しているのだと思いますが、私は、なんとなく、メシールがそれを言うのは変だと思っていました。そのメシールは、グランドストロークのスプリットステップという基本すら、無視しているではないですか。基本に沿っていないメシールが、なぜ、「テニスは足ニス」と言ったのでしょうか。

では、なぜ、基本に忠実ではない(ように見える)「べたっとした」フットワークにもかかわらず、メシールは予測(anticipation)がよいだとか、コートカバリングが広いと言われるのでしょうか。

メシールとヴィランデルの二人のプレーをビデオでスローモーションでみて、二人のフットワークを比較したときに、驚くことに気が付きます。それは、グランドストロークでの最初の一歩目の違いです。

ヴィランデルのフォアハンドでは、(スプリットステップの後の)最初の一歩目は、多くの場合は左足から始動します。まずは、体をボールに近づけていくという発想です。一方、メシールは、スプリットステップすらせずに、相手がボールを打った瞬間に、まず右足を引きます。もちろん、単に右足を引くのではなく、ラケットを持った両手と両肩は、それに合わせて(上から見て時計方向に)回転します。つまり、最初の一歩目で、すでに、テイクバックがスタートしているのです!

この違いは、特に体から(右方向に)離れたボールが来た際に顕著です。ヴィランデルは(そして、おそらく、多くの選手は)、最初の一歩を左足から動かします。左足を、ボールの方向に踏み出して、そのまま体をボールに近づけていきます。メシールは、ボールの場所にかかわらず、まず、右足を引きます。つまり、メシールのフォアハンドでは、体の移動とテイクバックは一つの動作の中で行われるのです。体を移動してから改めてテイクバックを開始するヴィランデルとは、本質的にコートカバーリングは異なるわけです。最後の一歩(右足)からテイクバックをスタートさせるメシールタイプの方がコートカバーリングが広くなることは、言うまでもありません。

私は、メシールのプレーを考えると、(ボレーはともかくとしても)グランドストロークでのスプリットステップには意味がないと思っています。スプリットステップとは、つまり、「ジャンプすること」です。少なくとも、メシールのテニスにおいては。スプリットステップは不要です。相手がボールを打つ瞬間に相手のボールに対しての準備が始まるグランドストロークにおいて、コンマ何秒とはいえ、なぜ、ジャンプという無駄な時間を使うのでしょうか。メシールは、基本に不誠実なのではありません。無駄な時間を使わないのです。スプリットステップの代わりに、メシールは、最初の第一歩(右足を引くこと)に神経を集中させているように見えます。スプリットステップをしないことは、メシールのグランドストロークが、初動から最後まで体の上下動が少なく、「べたっとしている」ように見せている理由でもあります。そして、「べったとしている」にもかかわらず、稀代のコートカバリングの良さにもつながっているのです。なぜなら、最初の一瞬(=足を引くこと)から、メシールのテイクバックは始まっているからです。

たとえば、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルを比較した時、私は、フェデラーのテニスのほうが「美しい」と感じます。(メシールのテニスのほうが、フェデラーよりも、さらに美しいと感じますが。)どうしてでしょうか。両者のプレーを、スローモーションでよく見てみてください。フェデラーは、メシールと同じ、フォアハンドにボールが飛んできたときに、最初に右足を引きます。(フェデラーの場合、かなり徹底しています。最初の一歩を左足から動かすこともありますが、このときですら、左足を動かすのは右足を”引く”ための体制を整える準備として動かしているので。)一方、ナダルは(左利きなので、右利きに反転させて表現しますが)最初に左足を動かします。この差が、そのあとのグランドストロークのすべてを支配しているのです。おそらくですが、これは、どちらが基本に忠実という比較ではないのでと思います。最初の一歩目が、両者のテニスの美しさにつながっているのだと思います。

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2011年4月24日日曜日

メシールのテニス(11) テイクバック始動

メシールのテイクバック・フォロースルーが、”横振り”ではなく、下から上に切り上げるような”縦振り”であることは、前に書きました。この”縦振り”を、どうやって実現するのか。「メシールのテニス(4) フォアハンド(球出し)」で、私は、球出しなら打てるけれども、コートではまだ難しいと書きました。これに対する”正解”が今回のテーマです。正解のポイントは、テイクバック始動にあります。今回は、テイクバックの始動に焦点を当てて考えてみます。”すべてはテイクバックの始動で決まってしまう”という話です。

まず、縦振りのスイングで必須な事はなにか。それは、テイクバックで、ラケットヘッドを下に(地面に)向けるということです。これは、必須です。
これをしないと、スイングは、必ず横振りになります。横振りになると、テイクバックでラケット面は開いてしまいます。テイクバックでラケットが開くと、打点が後ろになります。「メシールのテニス(10)」で書いたとおり、薄いグリップのフォアハンドであっても、打点は前でなくてはなりません。逆に、ラケットヘッドを下に向ければ、テイクバックで面は開きません。面が開かないと、打点が前になるのです。

さて、では、どうすればラケットヘッドを下向きにしながらテイクバックできるか。これが、案外難しいのです。

腰の回転(テイクバック)に合わせてラケットを引くと、スイングは”横振り”になり、ラケット面は自動的に開いてしまいます。ラケットヘッドを落とすのも(体の構造上)難しくなります。

では、腰の回転を使わずに(手だけで)テイクバックをするとどうでしょうか。この場合、確かにラケット面は開きませんし、ラケットヘッドも下を向きます。しかし、この場合は腰の回転が使えません。テイクバックで、体が前を向いたままになってしまいます。また、腰の回転が使えないために、ひじを引くのみでのテイクバックとなります。その結果、ひじを後ろに引く分しかテイクバックが取れず、大きな(小さくない)テイクバックをとることができなくなります。

正解は、この、前者と後者の間にあります。腰の回転でもなく、正面を向いたままでもなく、テイクバックを取るのです。どうすればよいでしょうか。

まず、正面を向いたまま、ラケットを両手で持って(女の子のもじもじポーズで)右足を真後ろに(ネットと反対側に)少し引いてみましょう。右足のつま先は、ネットを向いたままです。この時には、ラケットを両手で持っていますので、自然に左肩が前(ネット側)を向くはずです。また、その際に、ラケットヘッドを地面に向けておけば、ラケット面を開かずに、自然にテイクバックができます。(ラケットヘッドを下に向けることは、きちんと意識してください。)ラケット面は、開くことはありません。なぜなら、左手でラケットを持っているからです。このために、右手はラケット面を開くことができないのです。

このテイクバックは、いろいろな「副作用(よいほうの)」があります。

まず、テイクバックで、意識せずに左肩が前に出ます。左手は、自然と、体の前(左前方)に出てきます。(体のそばで折りたたんだりすることはありません。)また、左肩が前に出るために、背筋が伸びます。背中が丸まりません。すべて、「よい副作用」です。メシールのフォアハンド(テイクバック)で、右足のつま先がいつも前(ネット側)を向いている理由も、これでわかります。

これが、メシールのフォアハンドテイクバックの”正解”なのです。なんと簡単なことでしょうか。”もじもじ”ポーズのまま、ラケットを左手で持った状態で、右足を真後ろに引く。これだけです。

実際のプレーでは、右足を引くのではなく、左足を前に出す、両足を動かさない(が、左手をラケットから離さないことで面が開かないようにする)など、オプションはいろいろだと思います。が、基本形は右足を(軽く)引くということになります。繰り返しになりますが、テイクバックの始動では、体を回すのではないということが重要な点です。左足を引くことによるラケットヘッドの下向と左肩の回転、これだけです。「体は横を向くのに、腰の回転を使っていない」という点が大切なポイントなのです。体の回転によるテイクバック始動との違いを、しっかりと意識してください。

なお、実際のテニスコートでは、テイクバック始動は以下のようになるでしょう。
ネットの向こうからボールが飛んできます。(フットワークでボールの飛行線に合わせて体を移動させてあと)まず、右足を引くのです。この際に、背筋はしっかりと伸びる(上体は立つ)はずですし、右肩も前に突き出されるはずです。この際の体の距離とボールの距離が適切になるように、トレーニングすればよいのです。体がテイクバックを覚えたら、頭はボールとの距離を取るだけでよくなります。
ただし、飛んでくるバールの打点が高い場合、低い場合などについては、原則は同じですが、さらに工夫が必要になります。特に高い球への対応はテイクバックのトップに工夫が必要です。これについては、別項で解説します。

このブログは、昔懐かしい、ミロスラフ・メシール(メチージュ)について語るための、個人的なブログです。と言っても、私は、週末プレーヤであり、プロでも、専門家でもありません。また、実は、他のテニスプレーヤーについては全く興味がなく、メシールのテニスだけしか語ることができません。もし、ご興味があれば、時々、楽しんでいただければ幸いです。

2011年4月3日日曜日

メシールのテニス(10) インサイドアウト(スイング~フォロースルー)

メシールのテニス(フォアハンド)について、スイングのフォロースルーについて考えてみましょう。

薄いグリップのフォアハンドは、(厚いグリップと比較すると)打点が後ろになると言います。
私は、厚いグリップのフォアハンドについては何も知らないので比較はできないのですが、私の印象では、それは間違いではないかと思っています。

正しく表現すると、次のようになるのではないでしょうか。

グリップの厚さに関係なく、フォアハンドでは、打点は前で打たなければなりません。
ただし、厚いグリップが「打点が後ろでは打つことができない」のに対して、薄いグリップは「打点が後ろになっても打つことはできる」というのが、グリップの厚さによって異なる点です。

したがって、メシールのような薄いフォアハンドグリップでは、打点を後ろにすることはできますが、それが必須ではないということです。実際、メシールのプレーを見ていると、フォアハンドで追い込まれた時には打点を後ろにして、守りのプレーをすることがあります。(そして、これが、薄いフォアハンドの利点であり、フォアハンドに深いボールで攻められても、かわしながら逃げ切ることができるのです。)しかし、それは特別な場合であって、通常のストロークでは、やはり、打点は前において打っています。(ただし、打点を後ろにして”しのぐ”フォアハンドは、つまり、相手のボールに勢いがある場合です。この場合は、面を作ってボールを押し出すだけでよいので、打点を後ろにすることができるのです。逆に”普通の強さ”のボールでは、打点を後ろにずらしてはいけません。)

さて、薄いグリップで、(既出の通り)下から上へのストロークによって打点を前に置くためには何をすればよいか。実は、これが案外難しいのです。

というのは、薄いグリップのフォアハンドでは打点を後ろにすることができ、また、後ろの打点でもインパクトで力を入れることができます。(人間の体の構造上、もしかしたら、薄いフォアハンドでは、打点が後ろの方が力が入りやすいかもしれません。)

そこを、あえて、打点を前にすることは、意外に、「自然に任せる」フォームでは、実現が難しいのです。「意識的に打点を前にする」ことが必要になります。

では、何をどう意識すればよいのか。

それは、「スイングをインサイドアウトにする」ことです。言い換えると、「わきを締めて(絞って)打つ」と言ってもよいと思います。インサイドアウトで、わきを締めてフォワードスイングを行うことで、薄いグリップであっても、打点は自然に前になります。

ここまでは、比較的簡単です。問題になるのは、どうやって、わきを絞りながらインサイドアウトでスイングをする駆動力を得るか、ということです。この駆動力が案外難しい。

実は、この駆動力が何であるのか、私はあまりよくわかっていません。いくつか、考えてみました。
①右足の力を使う。特に、右足の親指側をしっかりとしぼって打つ。
②右の腰で打つ。右の腰にラケットを乗せる感じで、腰をしっかりと回して打つ。

これらは、おそらく両方共が正解なのですが、しかし、コート上で①や②で駆動力を作ることは、私には難しくてできませんでした。副駆動力にはなるのですが、主駆動力にはならなかったのです。

では、どうするか。私は、主駆動力としては、
③左腕を使う
のが一番有効であると思います。メシールのフォアハンドを見ると、明らかに、どの場合にも、テイクバックにおいて左手をできるだけ長くラケットに添えて、その左手がフォワードスイングで弓のように使われています。フォワードスイングでのこの左手の役割こそが、まさに、③の駆動力なのです。

コートで試してみるとわかるのですが、③を使うと、右わきを絞りながらのインサイドアウトのフォワードスイングが、かなり楽に、スムーズに行うことができます。これにより、薄いグリップであっても、打点を前に置くことができるのです。メシールのあの、独特の左手の使い方は、おそらく、打点を前に置くためには、必須なのではないかと思います。

ラケットがウッドの時代は、イースタングリップやコンチネンタルグリップのフォアハンドが主流でした。古い映像を見ていると、当時のフォアハンドの打点は、ほとんどの場合、後ろ(右足の前あたり)になっています。同じ薄いグリップでも、メシールのフォアハンドは、全く異なります。左手を駆動力としてラケットをインサイドアウトに降り出すことで、薄いグリップであっても、打点を前に置くことができるのです。

古いウッド時代の映像(フォアハンド)を見てみてください。ほら、左手は、振り子のようには使われはいないでしょう…。

さらにもう一つ。④肩を回す、ということがあります。特にフォアハンドですが、バックハンドも同じです。別項で述べたとおり、ボールが飛んでくる際に、ボールに合わせてラケットを引き、ボールがバウンドするタイミングで、前の肩をしっかりと突き出します。バウンドする瞬間からがフォワードスイングを開始するのですが、フォワードスイングの推進力として、肩全体を(ゆっくりと)十分に回します。肩の回転でボールを打つといってもよいでしょう。メシールの場合、この肩回転がゆっくりと、しかも大きいので、スイングそのものがゆっくりとしているように見えます。

この、④の肩を回すということは、相手がネットに出てきており、こちらがボールを打ってから返球までの時間がない場合でも、非常に重要です。つまり、相手の返球が早くても、遅くても、必ず、前肩を入れて、肩回転を行うことが重要です。時間がないからと、肩を入れずに、腕やラケット面だけでボールを打つ癖がつくと、メシールのテニス(フォアハンド)は完成しないのです。メシールは、どんなに相手のボール返球が早い場合でも、前の肩を入れるという鉄則を守っています。

2011年3月1日火曜日

メシールのテニス(9) ボールを打つと言うこと

今回は、基本的なこと、あまりに基本的すぎてあきれるほどに基本的なことを書きます。こんな基本的なことを、自分が忘れていたとは信じられないほどですが、案外、同じような失敗をしている人がいるかもしれないと思い、恥を覚悟して書きたいと思います。

これはもはや、メシールのテニスどころか、テニスの基本です。ただ、(言い訳になりますが)メシールのテニスが、あまりに美しく、流れるようなストロークなので、ふと、この基本を忘れてしまっていたのだと思います。

さて、基本的なこととは何か?それは、「ボールを打つ(たたく)」と言うことです。

メシールのテニスは、よく、「相手の(ボールの)力を利用してボールを打つ」と言うように表現されます。私も、なんとなく、そういうイメージを持っていました。

しかし、「相手の力を利用してボールを打つ」などというのは、あり得ない話なのです。幻想です。理由は簡単です。ボールを打つときに、飛んで来たボールに合わせて打ち返すと言うことは、「ボールを自分のものにする」ことができないためです。ボールを自分のものにせずに、思った場所にボールを打つことができるわけがありません。また、特に相手のボールが弱い時には、強いボールを打つこともできないでしょう。

昔のテニス…と言ってもメシール自身がずいぶんと昔のプレーヤーになってしまいましたが(笑)、ウッドの時代の映像を見ると、まれに、そのように「相手のボールに合わせて打つ」シーンを見ることがあります。現代のアマチュアのテニスなども、中級ぐらいのレベルでは、そのようなプレーをよく見ます。(これは、ラケットの反発力=パワーが上がったために、相手のボールに対して”面を作る”ことでボールを打ち返すのが容易になったためでしょう。)

しかし、メシールのプレーを見ていると、実際には、メシールは、「ボールをしっかり打っている」のです。確かに、その「しっかり」度は、厚いグリップでボールを強くたたくプレーヤーほどではありません。しかし、相手のボールに合わせてボールを打ち返すとか、相手のボールの力を利用して打つというようなプレースタイルでは、決してないのです。

では、他のプレーヤーとメシールのプレーは、本質的に、どこが違うのか?

十分に理解できていないと思いますが、おそらく、「なにも違わない」のだと思います。ボールを強く打つという点では、実は、メシールはテニスの基本通り。他のプレーヤーとなんら変わらないのです。

なのに、なぜ、メシールのプレーは、相手の力を利用してボールを打つように見えてしまうのか?

それは、メシールのスタイルが、一見、「無理をしない、自然なフォーム」のように見えるからではないでしょうか?自然なフォームと言うのは、いいかえると、力が入らず、柔かいフォームと言ってもよいと思います。(確かに、メシールのストロークは、腕の力を利用しないスイングです。しかし、別項でも述べるとおり、実際には、下半身や背筋に非常に強い力がかかっています。背筋の力は外から見えにくいので、見る人は「力の抜けたフォーム」だと思ってしまうようです。)

しかし、「腕や肩に力の入らない(背筋の力を使う)フォーム」ということと、「ボールを強く打つ」と言うことは、実は両立するのです。正確に言うと、両立するのがメシールのプレースタイルなのです。繰り返しになりますが、メシールは、決して、「相手のボールの力を利用して」ストロークをしているわけではないのです。この点を間違えて解釈すると、メシールのプレーを理解することはできません。

これは、メシールのストロークが、「ボールを運んでいるように見える」と言うこととも関係します。メシールのような薄いグリップのフォアハンドストロークは、ボールをこすり上げる力と、ボールを押し出す力の比率が、他のプレーヤーと比べると後者にシフトするのは事実でしょう。しかし、その事実と、ボールを(強く)打つかどうかは、別の話です。ボールをしっかりと強く打ちながら、しかし、(スピン系のプレーヤよりは)ボールを押し出すというのが、メシールのストロークなのです。

メシールのフォームは、「制約の多い」フォームです。これは、薄いグリップで、(どんなボールに対しても)高い精度で面を作るためには必須です。この制約の多いフォームが、メシールのテニスを美しくしているのは事実だと思います。制約が多いのは、上述の通り、メシールのグリップの薄さからくる要請であって、これは避けることができません。制約が多いために、一見、メシールがボールを運ぶように打つかのように見えるのは、誤解なのです。いいかえると、メシールは、制約の多いなかでしっかりとボールを打つプレーをしているのです。


メシールのプレーを、もう一度、よく見てみてください。「飛んでくるボールを自分のものにする」「制約の範囲内でボールをしっかりと打つ」の2点が、はっきりと見えてくると思います。

もしかしたら、フォームに制約が多いために、その制約の中であればどんな形でもボールを強く打てる、と言うことが、メシールのテニスの特長なのかもしれません。テニスは、エラーをした方が負けるスポーツです。いかにエラーをせずに、しかし強いボールを打つかと言うことが、テニスの命題です。多くのプレーヤーは、スピンボールにその活路を見出してきました。スピンボールは、確かに、強く、しかし安全なボールと言えるかもしれません。

しかし、メシールが選んだ道は、フォームの制約により安全性を確保したうえで、制約の中でできるだけ強くボールをたたくと言うことだったのかもしれません。フォームを制約されているため、スピンプレーヤーほどは自由に、強くボールを打てないでしょう。しかし、安全性が確保されている中で、できる限り強くボールを打つということは、ボールのコントロール性が高いと言う利点と相まって、メシールのテニスを、他のプレーヤとは違う次元に持ちあげているように思えるのです。

このことは、いつか、もう一度、考えてみようと思います。

2011年2月28日月曜日

メシールのテニス(8) フォアハンド4(球出し)

メシールのDVDを見ていると、試合前の練習でメシールが球を出す映像がいくつかあります。球出しは、試合中のストロークとは違いますが、案外とフォアハンドストロークの本質を反映していると思うので、解析をしておきます。

メシールの球出しで、意外なのは、ボールを下から上にこすり上げていると言うことです。イメージとしては、フラットでボールを出すように思うのですが、実は違います。スイングも下から上、ボールもそれに合わせてこすり上げています。これは、オンコートで試してみると、意外にも、正しい打ち方なのです。

一つは、上記のとおり、ラケットスイングの起動が横ではなく縦(下から上)になると言うことです。これは、(球出しはともかくも)ストロークにおいては案外難しいのです。フォアハンドで下から上のスイングをしようとすると、フォアハンド3で述べたような「背筋に力を入れて、上体を立てた打ち方」が必要になります。つまり、メシールは、球出しの時からこの打ち方を実践しているわけです。私自身は、球出しでは、かなりメシールに近い打ち方ができるようになりました。(球出しフォームの重要性に気がついて打ち方を意識しだしたのはごく最近なのですが)が、コート上のストロークでは、まだ、メシールのフォアハンドの打ち方を習得できていません。どうやら、それが習得できない理由は、この「背中と上体」にあるようです。球出しと同じイメージでストロークが打てるように、練習が必要なようです。

もうひとつは、手首の角度です。フォアハンド2で述べたとおり、メシールのテイクバックでの右手首の角度は120度ぐらいです。(すくなくとも90度よりは浅い角度です。)球出しでも、この角度が維持されています。いいかえると、球出しの時から、手首の角度を意識しておくことができると言うことです。

さらに、球出しから学ぶべきことは、右肘を伸ばしきらないと言うことです。ストロークでは、タマに威力をつけるために、どうしても、フォワードスイング(インパクト後)に右肘が伸びて行きます。メシールも、試合の時は、ある程度ひじは伸び気味ですが、完全に伸びてしまうことは(ほとんど)ありません。おそらくですが、それだけ、背筋でボールを打っているのでしょう。一般のプレーヤーでも、球出しの時は右肘を伸ばしきらないでも打てますが、実際にストロークをするとどうしても伸びてしまう傾向にあります。できるだけ、ストローク時にも、球出しと同じイメージでボールを打ちたいところです。

最後に・・・繰り返しになりますが、練習や試合のフォアハンドストロークで、球出しと同じ打ち方ができるようになるということを目標にしたいと思っています。いいかえると、普段、球出しを、実際のストロークを意識して行うようにすると言うことでもあります。

2011年2月27日日曜日

ブラチスラバ訪問

1991年のソビエト連邦の崩壊に続いて、多くの国が独立しました。チェコスロバキアも、チェコとスロバキアの2つの国に分かれたのです。1993年のことでした。

80年代後半、チェコスロバキアは、スゥエーデンやアメリカと並んで、テニス界を席巻しました。多くの名選手が、この国から生まれました。レンドルとナブラチロアの二人は有名ですので誰でも知っていると思いますが、スコバやマンドリコバ、ノボトナ等の女子選手、男子選手にもノバチェクやスミッドなどがいました。メシールも、時代の中できらめいたチェコスロバキアテニスを支えた一人だったのです。

これらの選手の多くは、チェコ出身なのですが、メシールはその中では珍しく、スロバキアの出身です。(両親のどちらかがチェコ出身で、もう一人がスロバキア出身だったと思います。)1994年から今まで、メシールは、ずっとスロバキアのデビスカップの監督です。

スロバキアの首都は、あまり知られていませんが、ブラチスラバという街です。ウィーンやブタペストと同じく、ドナウ川に面した街です。おそらく、今、メシールは、このブラチスラバに住んでいると思います。だから、ブラチスラバは、私にとっては、一度、訪れてみたかった、あこがれの街なのです。

そのブラチスラバですが、ウィーンから50kmしか離れていない国境付近の街です。(つまり、ウィーンも、国境付近の街です。)ウィーンに行く機会があったので、思い切って、ブラチスラバまで足を延ばしてみました。と言っても、たった3時間、街の中をうろうろ歩いただけのあわただしい訪問でしたが。それでも、私にとっては、夢のような、エキサイティングな3時間でした。

冬の午後5時半ごろ(陽はすっかり落ちていました)から3時間ぐらいしか滞在することができなかったので、もちろん、テニス等を見る時間はありません。それどころか、何の予備知識もなく、地図も持たず、ただ、この街がスロバキアの首都であり、メシールの住む町であるという知識だけで、ウィーンからの電車に飛び乗ったのです。ブラチスラバ駅について、まずは両替屋に飛び込んだくらいです。実際には、スロバキアの通貨は今はユーロで(ちなみにオーストリアもユーロ)、両替の必要がなかったのですが、そんなことも知りませんでした。

ブラチスラバの中央駅は、これが一国の首都の中央駅かと言うぐらい小さく、なんとなく、越後湯沢の駅を思い出しました。(どうして越後湯沢を思い出したのか、自分ではよくわかりませんが。)

駅を降りて、3時間以内にここに戻らなくてはならないと焦る気持ちと、街の地図が全く分からなかったので、券売機で1ユーロのチケットを購入し(確か、1時間ぐらい有効なチケットだったと思います)、目の前に来た201という路面電車に飛び乗りました。今から考えても、無茶なことをしたものです。ただ、今回は、必ずしも観光地や名所旧跡を見たかったのではなく、メシールが暮らす街を見たかったので、市民と同じ電車に乗り、市民と同じお店に入ってみたかったのです。

ブラチスラバの街は、他の旧共産圏の街と同じように、質素で、暗く、人の笑い顔の少ない街でした。電車の中でも、街の中でも、人の話声すらほとんど聞こえず、楚々としている風情。街灯は暗く、街中がこの国がまだ豊かであるとは言えないことを如実に表していました。街には、日本人はもちろんのこと、アジア人すらほとんど見かけず、私は、明らかに目立っていたと思います。特に、201などと言う、全く名所とは関係ない方向のトラムに乗っているアジア人と言うのは、周りの人は、きっと「なんだろうか?」と思ったのではないかと思います。でも、それを表情にも出さない。そこが、いかにも、旧共産圏の国です。

時間が気になってきたのと、人気のない町はずれに行ってしまい心細くなってきたので、トラムを2,3度乗り換えて、街の中心の方に行こうとしていたときに、車内で、若い男性が近付いてきて、英語で話しかけてくれました。こういう親切さ、人懐っこさも、旧共産圏っぽい感じです。私が「街の中心、ダウンタウンに行きたいんだけど」と伝えたら、次の電停で降りて、5番(11番だったかも)に乗り換えて、ここで降りたらよいですよと教えてくれました。

そこで初めて、私はブラチスラバ城やミカエル塔のある旧市街地に行ったのです。そこで、街をぶらぶら歩き、写真を撮ったり(何枚か、このサイトに添付しました)、夕食を食べたりしました。

その後、中央駅に向かうトラムに乗り込み、午後8時47分発のウィーンに戻る電車にぎりぎり間に合ったのでした。また、いつか、来るだろう…今度は、ぜひ、メシールに会いたいな…と思いながら。

ブラチスラバの旧市街地で見かけた面白いモニュメント
ブラチスラバのパブ?で食べたスープ:味は今一つ
ブラチスラバ旧市街地

トレンド~メシールのテニスは古いのか?

1987年の全米オープンでメシール対ヴィランデル戦(準々決勝)のゲスト解説者は、(今は亡き)アーサー・アッシュ氏でした。アッシュ氏は、(まだ、それほど、有名ではなかった)メシールについて、インタビュアーに「この選手をどう思いますか」と質問されたときに、こんな風に答えています。「彼のプレーを見ていると、どこのテニスクラブにもいるカジュアルプレーヤーのようだ。」カジュアルプレーヤーのようだという批評を、私は、ほかのメシールのビデオでも聞いたことがあります。メシール自身も、昔のインタビューで、「自分のプレースタイルは、(レベルの高い)クラブプレーヤーだった父親の影響を受けています」と答えていたことがあります。

テニス365の技術特集・フォアハンド編を見てみると、メシールのテニスが、現代テニスとはかなり違うことが変わります。現代テニスとは、全く正反対である技術も、多々あるようです。例えば、「ラケットは下から上ではなく体の回転を使った横方向のスイングが望ましい」とか、「テイクバックではラケットを立てる」などは、メシールのテニスとは正反対です。

テニスの道具(特にラケット)の進化により、この20年で、テニスの技術は明らかに変わりました。おそらく、プロの世界、特に男子のトッププロの世界では、メシールのテニスは、もはやトレンドにはならないのかもしれません。しかし、それでも、メシールのテニスの美しさは、私は消えることはないように思います。今のテニスが、「力強さ」を優先するあまり、かつての「美しさ」を失ってしまった今、私は、メシールの美しいテニスを、アマチュアの世界の中で残したいと思っています。

メシールのテニスは、力強さ(パワー)よりも、正確さを優先するテニスです。特に、フォアハンドは、厚いグリップで高速にラケットを振ることでボールを強く打つ現代のテニスと比べると、制約の多いフォームです。そのため、(別項でも述べますが)実際にテニスコートでメシールのテニスを実現すると、パワーがないために「打ち負ける」「球が浅くなる」などということが多くなりがちです。

しかし、考えてみると、パワーのあるラケットが増えている現代、昔のパワーレスなウッドラケットや薄いラケットと比べると、現代のラケットは、メシールのフォームではパワーが出ないという弊害に陥りにくい環境にあるはずです。(そう考えると、パワーのでないウッドラケットを最後まで手放さなかったメシールは、不思議な選手です。)

もうひとつ、メシールのテニスに必要なのは、ラケットの重さなのですが、これについては、現代のラケットが軽くなっているとはいえ、軽いラケットを重くするのは難しくないのです。(リードテープをつければよいのですから。)こちらは、現代テニスであっても問題にはなりません。

技術的には古くなったメシールのテニスを、アマチュアが実現する環境は、かつてよりも整ってきているのかもしれません。

メシールのテニス(7) フォアハンド3 ~左手の重要性

メシールのテニス、フォアハンドの第3回です。

さて、メシールのフォアハンドですが、一言で言うと、「ラケット面の角度が繊細な打ち方」と言ってよいでしょう。軽いラケットを厚いグリップで強くボールを打つ現代テニスのフォアハンドと比べると、メシールのフォアハンドは、重いラケットを使い、ラケット面をきちんと作って、思うところにボールを(フラット系で)運ぶイメージがあります。ラケット面が少しでもぶれると、ボールは浅くなったり、アウトしたりしてしまいます。

フォアハンドで面をできるだけ正確に(高い精度で)作るために、気をつけること。そのひとつが、意外にも、テイクバック始動での左手の使い方です。テイクバック始動において、左手をラケットに添えること。これは、メシールのテニスでは「絶対に必要な」重要なポイントです。確かに、メシールのどのビデオを見ても、どんな場合においてもこの原則は必ず守られています。

今回は、この、左手の使い方をベースとしたメシールのフォアハンドを分析してみたいと思います。

現役のプレーヤーで、テイクバックでの左手の使い方が目につくのは、例えばロディックでしょう。ロディックも、フォアハンドのテイクバックの始動では左手をしっかりとラケットに添えてます。しかし、メシールとロディックのテイクバック(始動)は、全く違います。ロディックとの違いを意識しながら、メシールのテイクバック始動での左手の使い方を考えて行きましょう。

【インパクト時のラケット面の安定性】
まず、テイクバックで左手をラケットに添える目的の一つ目は、面の安定性です。上記のとおり、インパクトでの面を安定させるためには、インパクトまでの力をできるだけ腕に頼りたくはないところです。テイクバックからフォワードスイング、インパクトまでで、腕の力を使えば使うほど、それだけ、インパクトでの面のずれが生じやすくなるからです。繰り返しになりますが、メシールのフォアハンド(薄いグリップ)で、インパクト時にできるだけ正確な面を作るためには、テイクバック始動において、右腕(の力)を使いたくないのです。そのためには、テイクバック始動を、それ以外の力を使う、つまり、左手を添えて、左手にテイクバックの始動をさせます。(もちろん、左腕以外にも、腰の回転なども使っていますが。)

さて、テイクバック始動を左手で行う際のイメージは、面を伏せるようにラケットを引くと言うことです。面を地面側に伏せるのではなく、面を体側に伏せるのです。さらに正確に言うと、面を右足太もも側に伏せると言ってもよいでしょう。薄いグリップのテイクバックでは、どうしても、面が開き気味です。左手でテイクバックすることで、これを補正することができます。

もうひとつ、左手でラケットを引くことで、ラケットヘッドを下げることができます。これも、左手を使うことの利点の一つです。右手でラケットを引く(ラケットの始動をする)と、右腕が一番楽な角度でラケットを引きたくなりますが、それは、(人間の体の構造上?)ラケットヘッドが下を向く角度ではなさそうなのです。したがって、左手で(右手にとって負担となる)ラケットヘッドを落とした角度でのテイクバック始動をさせるのが有効であると言うことになります。

ラケットヘッドを下げることと同じぐらい大切なことは、テイクバックでラケットが体のそばを通ることです。(この2つは、必ず連動します。)これについても、左手でテイクバックを操作することで、徹底することができます。

そして、これが、左手でラケットを引くことの最も重要な理由ですが、左手で「ラケットの面を作る」ことができます。上の、ラケットを体の(右足の)そばを通すと言うことと近いのですが、同時に、ラケット面を作ります。このラケット面は、そのまま、フォワードスイングからインパクトまでをイメージしたラケット面です。つまり、テイクバック始動で、その面がそのまま(同じ方向を維持されるのではなく)ぶれずに維持されるイメージです。表現が難しいのですが、逆を考えれば、分かりやすいと思います。フォワードスイングにおいてインパクト面のイメージがなければ、ラケット面は不安定になります。(そして、薄いグリップであるメシールのテニスでは、ラケット面がぶれることは、致命的です。)では、フォワードスイングでラケット面のイメージを作るにはどうすればよいか。それは、テイクバックからラケット面のイメージを作っておくことです。つまり、テイクバックの最初であるテイクバック始動からラケット面のイメージを作ることが、インパクトでの安定したラケット面につながるのです。

この、最初のほんの一瞬が、その後のスイング全体を決めてしまいます。テイクバック始動を左手が操作できるかどうか。(そして、その時に、後述する、上体が立っているかどうか。)したがって、日常生活の中で、この癖をつけてしまう(こまめに最初の瞬間の癖を体に覚えさせる)のが有効な練習方法かもしれません。

【ロディックのフォアハンドとの比較】
次に、ロディックとの比較で、メシールのフォアハンドでは最もしてはいけないことを書きます。ロディックは、テイクバックで左手を添えることで、①上体を前に倒します(ほんの少し背すじが丸くなります)、②左肩を前に出し、左足をややクローズド気味に踏み込みます、③ラケットを胸の高さで横に引きます。これら3つは、本能的にはそのようにすることでスイングが安定するのですが、メシールのフォアハンドでは、どれも「してはいけないこと」です。それについて、分析してみましょう。

まず①ですが、メシールのフォアハンドテイクバックでは、上体を倒してはいけません。上体は、地面に垂直を維持すると言うメシールの基本を、ここでも守らなくてはいけません。上体を立てることでボールとの距離感を感じる場合には、どうすればよいか。まず一つは、距離を感じる分、ひざを使います。つまり、ひざを曲げます。これは、当たり前の基本ではありますが、特にメシールのような上体を立てるフォームでは重要です。忘れてはならないのは、上体を立てるのは、フォワードスイングやインパクトだけではなく、テイクバック、いやレディーポジションからそうだと言うことです。レディーポジションでは(ボールを打つわけではないので)上体を立てるのは比較的簡単ですが、体の動作がともなう場合(体がはじめて動き出すのがテイクバック始動です)にも、上体は立っていなくてはなりません。

テイクバック(だけではなく、スイングのどのタイミングでも)において、上体を立たせるために重要な事が一つあります。それは、「背筋に力を入れる」ということです。上体を立たせると言うことは、背筋に力を入れると言うことと、同じだと思って構いません。テニスの基本(球技の基本)として、腕に力を入れてはいけないのは当然です。周知のとおりです。しかし、背筋には、どれだけ力を入れても構いません。(といっても、背筋に力を入れ続けることはできませんが。)そして、背筋に力を入れることで、反動的に腕の力を抜くことが期待できます。両方に力が入れば、上半身ががちがちになりますからね。

さらに、②については、ここが重要ですが、ロディックのように体がクローズになってはいけません。この点が、ロディックの左手とメシールの左手が、まったく異なる点です。ロディックのテイクバック始動では、左肩が前に出て、それに伴って左足も前に出ます。体全体が、ネット方向に対してクローズになります。メシールのテイクバックでは、左足を前に出してはいけません。完全なオープンスタンスで打ちます。(これも誤解のある表現ですが、これについては、最後に書きます。)この際、①のように上体が立っていれば、体がクローズになることはありません。(体の構造上、あり得ません。)テイクバックにおいて、上体を立て、オープンスタンスで体に近いところからラケットを引くイメージは、かなり、違和感があると思います。左手でラケットを引いているので、左肩はネットの方を向く(まっすぐネットに向く程は深く肩は入らないですが)ので、体が開いているわけではありません。しかし、メシールのフォアハンドでは、その程度の体のひねりで十分なのです。打つ感覚から言うと、足も、左肩も、かなりオープンに感じるので不安になりますが、問題ありません。むしろ、ここで、左肩を入れ、さらに左足を踏み込むと、①や②のようなロディックのフォームになってしまうのです。

③については、上に書いたとおり、テイクバックではラケットは体のそばを通らねばなりません。逆に言うと、③のようなイメージになっていたら、それは、スイングの修正をしなくてはならないと言うチェックポイントだと考えればよいと思います。

【まとめ】
背筋に力を入れ、それにより上体を起こし、足をオープンにしたまま、左手でラケットヘッドを下げつつ、面のイメージを作りながら、体のそば(右足のそば)でラケットを引いていくイメージ。これが、正しい、メシールのフォアハンドテイクバックです。このイメージでは、おそらく、ラケットを引く「量」がはかなり小さく感じると思います。つまり、かなり小さなテイクバックに感じると思います。そして、それでよいのです。小さなテイクバックを恐れてはなりません。左手でテイクバックをすることで、フォワードスイングは体を使うことができます。(右腕も、インパクトの少し前から使えます。)したがって、左手テイクバックを守りさえすれば、ボールを打つパワーは十分にあるはずです。

【補足】
以上の解析の対象は、相手のボールにそれなりの威力がある場合です。相手のボールが初級、初中級レベルの緩い球の場合は、ある程度自分から打ち込まざるを得ません。そういう場合には、多少の足の踏み込みは必要になると思います。が、原則的には、同じ打ち方で問題ないはずです。これについては、別の機会に、オンコートで確認してみます。

2011年2月20日日曜日

メシールのテニス(6) フォアハンド2

メシールのテニス(4)のフォアハンドの補足です。

メシールのテニス(4)で、フォアハンドのポイントいくつか挙げました。これを復習しつつ、(4)を実践するために気をつける点をいくつか、まとめてみようと思います。

話が突然変わりますが、エドバーグの弱点はフォアハンドと言われていました。「右脇が空く」のです。薄いグリップのフォアハンドでは、特に肩ぐらい(またはそれよりも高い)ボールに対しては、右脇が空かざるを得ません。なのに、なぜ、エドバーグ(だけ)が「右脇が空く」のでしょうか。なぜ、メシールは、右脇が空くと言われなかったのでしょうか?

おそらく、右脇が空くのは、フォワードスイングではなく、テイクバックのタイミングだったのではないでしょうか?メシールのフォアハンドのテイクバックでは、確かに、右脇は空きません。テイクバックで、右脇は締まり、右腕は体の近くを通っています。たとえ、肩(よりも高い)高さでボールをヒットする場合でも、テイクバックでは右脇は空きません。(フォワードスイングではもちろん空きます。)

さて、(ボールの高さに関係なく)テイクバックで右脇を締めるには、どうすればよいでしょうか?ここで、問題は、私だけの癖かもしれないのですが、右脇を締めてテイクバックをすると、体と腕がテイクバックからフォワードスイングにかけて、ずっと、一体になってしまうのです。いいかえると、腕の自由度が0になってしまうのです。右脇は締まってくれるのですけどね。腕の自由度が0になると、特に高いボールに対しては、全く打てなくなってしまいます。究極の「手打ちの逆状態」です。

どうも、薄いグリップのフォアハンドでは、このバランスが難しい。テイクバックで右脇が空くとスイングが不安定になり、テイクバックで右脇が締まりすぎると、フォワードスイングでも右脇が締まった状態のまま腕の自由度が0になってしまう。私自身のことになりますが、特に、昔は後者で苦しんだのですが、最近は前者で苦しんでいます。

さて、このどちらにもならない「適切な」スイングにするためのイメージが必要です。どんなイメージがよいのでしょうか?まだ、正しいかどうかわからない項目もあるのですが、現在の私なりのイメージを、いくつか紹介しておきます。これが、私なりの「メシールのフォアハンド」のイメージです。

(1)テイクバックでのラケットの始動については、私は「刀を抜く感じ」をイメージすることにしています。刀を抜くイメージの場合は、右脇がひらかないことと、体の回転でラケットを始動できるなど、イメージによるよい効果が多いからです。テイクバックでラケットヘッドが下を向きやすいことも利点です。左手をラケットに添えるイメージも、プラスイメージの一つです。

(2)テイクバックで(1)のイメージがとれていれば、フォワードスイングはなにも意識しなくてもよいのかもしれません。低い球であればそのまま脇が締まってスイングするでしょうし、高い球であれば(前述の通り)ある程度、右脇が空いても大きな問題はないでしょう。(逆に、そうしないとボールを打つことができません。)ただし、今、右脇が空きにくくなるイメージを一つ、考えています。それは、体重を右足の内側に乗せると言うことです。右足の内側に体重を乗せることで、自然と体が開かなくなり、同時に右脇も空きにくくなるようです。これは、特に、フォアハンド側に走ってからボールを打つ場合に、重要になります。この場合、体が流れやすく、また、ボールとの距離が取りにくいこともあって右脇も空きやすいからです。したがって、ボールをヒットするときには、右足の内側に体重が乗り、右足を絞り込むイメージが有効であるようです。

(3)ラケットワークのイメージとは直接は結び付かないかもしれませんが、ボールとの距離感も大切です。私は、フォアハンドのボールとの距離感を、右足(の先)でとるようにしています。実際に右足の前でボールを打つわけではないのですが。イメージとしては、自分に向かって飛んでくるボールを右足のつま先で”受け止めます”。ボールが体から離れてしまうと、フォワードスイングで右脇が空いてしまうからです。右脇を締めて打つためには、ボールの飛球線上に右足があるぐらいのイメージがよいようです。(ただし、このイメージについては、さらに研究中です。)

(4)さらに、フォワードスイングでは、もうひとつ、(これも検討中なのですが)ラケットを面からではなくフレームから振るイメージを作ろうとしています。親指側のフレームです。本来は、ラケットスイングの方向とラケット面の法線が並行になるのが当然ですが、イメージとしてはラケットスイング方向にラケットフレームが来るわけです。ラケット面法線は、ラケットスイング方向と垂直になります。実際にはそんなことは無理(そのままだと、ラケット面ではなく、ラケットフレームでボールを打つことになる)なのですが、このイメージを持つと、グリップを持つ手首の角度を120度ぐらいに保ちやすいのです。(120度については、メシールのテニス(4)に書きました。)この点は、もう少し研究してみます。

(5)上の(2)で、フォワードスイングは自由にと書きましたが、一つだけ、注意することがあります。それは、右肘を上に上げないと言うことです。高い球の場合は、ある程度脇が空くのは仕方がないですが、空き過ぎるのはもちろんよくありません。その場合、右肘を下向きに維持するのがよさそうです。右肘を上げないと言うことは、自然と右脇が空かなくなります。また、その際、肩に力を入れない(いかり肩にならない)ように気をつけます。いかり肩になると、腕の自由度が上がり過ぎて、右脇が空きやすくなります。右肘は、「下の方で」下向きを維持するように気をつけます。このために重要なイメージは、「ボールを右腰で打つ」というイメージです。右腰、右ひじが、一体となって打つことで、右肩が上がってしまうのを避けることができます。

(6)これらを守ると、ラケットスイングの起動は、ほぼ、「下から上」のイメージになります。(1)の刀を抜くイメージに対して、(6)は「ボールを下から上に切り上げる」というイメージです。縦に切り上げるイメージですから、体の回転はあまり意識しなくてもかまいません。体の回転をかけると、横に切るイメージになってしまいますので、回転を意識しない方が望ましいのです。むしろ、下から上への切り上げをイメージしたほうがよいようです。

(7)上の(5)に示した右肘を落とす方法の一つとして、「ラケットを持たない腕である左肘を落とす」と言うことがあります。人間の体は、無意識に左右を対象とするようにできているらしく、左肘を落とすと、右肘も自動的に落ちる傾向があるようです。左肘を落とすということは、いいかえると、左の手首を上げると言うことでもあります。左手を折りたたむと言ってもよいでしょうか。これは、メシールのフォアハンドでも見られる特徴です。左手を折りたたむことで左肘は下がり、これによって右肘を反動的に下げる効果があるのではないかと思っています。

2011年1月26日水曜日

メシールのテニス(5) テイクバックのタイミング

これも、かなり基本的なことですが、しかしメシールのテニスでは重要なことです。
それは、テイクバックからフォワードスイング、インパクトまでのタイミングです。フォアハンドでも、バックハンドでも、同じことが言えます。

メシールは、相手のボールがネットを超える前後からテイクバックを始めます。テイクバックの速度は非常に簡単です。ネットを超えたボールが自分の方に飛んでくるのとまったく同じスピードでテイクバックをするのです。まるで、ラケットとボールが糸で結ばれていて、ラケットがボールを引っ張っているようなイメージです。映像を見ていると、ネットを超えたボールとラケットが同じ速度で前に(ラケットは後ろに)進んでいきます。

その後、どこかでその関係が崩れるのですが、そのタイミングもシンプルです。ボールがバウンドするタイミングです。ボールがバウンドしたところから、メシールのスイングはテイクバックからフォワードスイングに切り替わります。今度は、バウンドしたボールとラケットスイングがちょうどぶつかる感じで両者が進んでいきます。インパクトのところで、ボールとラケットが出会います。

メシールの場合は、上の全体のタイミングがかなり徹底しています。多少、体勢が崩された場合でも、原則的には上のタイミングでテイクバックとフォワードスイング、インパクトが実現しています。他の選手のことは知らないのですが、ちらっと見ている限り、もう少し遅れてしまう(ボールがネットをかなり越えてからテイクバックに入る)ケースが多いように思います。メシールは、まず、そういうことはありません。ボールがネットを超えるあたりから、ラケットがボールを引っ張るようにテイクバックをしています。

「なぜ、メシールのテニスは美しいのか」が、このブログのテーマなのですが、どうも、この点は、見逃せない点のように思います。このシンプルで、しかし徹底したラケットとボールの位置関係が、メシールのテニス(ストローク)を美しく見せているような気がします。

私は、この点が徹底していないために、なかなか中級から抜け出せないのかもしれません。体が疲れていても、どんな体勢でも、相手のボールが速くても遅くても、このタイミングを徹底すれば、もう少しストロークが上達するかもしれません。

私だけかもしれませんが、久しぶりにテニスコートに立った場合に、時々、コートに立った最初の時間帯の方が調子がよいことがあります。だんだん体が温まってくるのに、逆に調子が下がってきて、ボールがうまくコントロールできないことがあるのです。以前から、おかしいなと思っていたのですが、もしかしたら、このタイミングが原因かもしれません。最初は一生懸命なので、上のタイミングでボールを打っているのですが、慣れてくると体が「ずぼら」になってしまいタイミングを忘れてテイクバックが遅くなってしまうのだと思います。(体が温まってくると、多少ずぼらにテイクバックしても、ボールをヒットできてしまうから。)

この点についても、コート上で、今度、確認してみようと思います。

メシールのテニス(4) フォアハンド1

メシールのビデオ(フォアハンドストローク)を見ていて、自分のフォアハンドと何が違うのか眼を皿のようにして比較していたら…重要なポイントを二つ発見しました。両方とも基本的なことなのに、今まで不覚にも気がつかなかったことです。

1)一つは、テイクバックからフォワードスイングでのラケットヘッドの向きです。厚いグリップの場合は、ラケットヘッドがテイクバックで後ろ(バックネット側…相手と反対側)を向くと思います。これは、厚いフォアハンドグリップでは、テイクバックでの手首のコックが必須だからです。一方、メシールのような薄いグリップの場合は、テイクバックではラケットヘッドは後ろを向きません。イメージとしては、むしろ、ラケットヘッドがレディーポジションからテイクバックトップまでの間、ずっと前(ネット側・相手側)を向いているようなイメージです。(実際は、そんなことは不可能ですが…。)別のイメージで表すと、腕と二の腕がテイクバックにおいてVの字を作っていて、そのV字がインパクトぐらいまで維持されていると言えるでしょう。(V字が崩れない限り、ラケットヘッドは前方を向いていることになります。)V字のイメージを作るには、レンドルのフォアハンドを思い出すとよいと思います。レンドルはフォアハンドのテイクバックでひじから引くのでこのV字のイメージが明確です。ただし、レンドルの場合はひじを引くに従ってV字の形は少しずつ変わります。メシールは、体の回転でテイクバックをするので、テイクバックの間、初期のV字形が維持されます。その点が、レンドルと異なる点です。
繰り返しになりますが、大切なことは、テイクバック中はそのV字形が崩れないということです。そのために、ラケットヘッドはずっと前(相手の方)を向いているイメージを維持できると言うことです。その形でテイクバックのトップまで持って行きますので、トップでもラケットヘッドは後ろ(バックネット側)を向きません。メシールのビデオを見ていると、テイクバックのトップで、メシールのラケットヘッドは後ろ45度(つまり相手方向に向かって135度)程度になっているようです。もちろん、ラケットヘッドの向きは打つボールによって多少は変わりますが、180度(=真後ろ)でも90度(=真横…ベースラインと並行)でもなく、その間になっているようです。その後、フォワードスイングの流れの中ではヘッドは多少後ろを向きますが、次の2)にあるように手首がおり曲がらないのでラケットヘッドが真後ろを向くと言うイメージはフォワードスイング中にもなく、どちらかと言うとヘッドが下を向いているイメージになるようです。(イメージなので表現が難しいですね。)
自分のビデオを見ていると、テイクバックで、はっきりとラケットヘッドが後ろ(バックネット側)を向いていました。それは、テニスのフォームとしては、一般的には違和感はないのですが、しかしそれは、「メシールのテニス」ではなかったのです。ラケットヘッドが後ろを向いてしまうと、下の2)の打ち方はできなくなります。これは、メシールのテニスという点では致命傷になります。

2)もうひとつは、ひじから先の使い方でした。メシールは、ひじから腕、ラケットの先までを全体で一本の腕のようにしてボールを打ちます。リストを全く使わないわけではないのですが、ひじの蝶つがいは十分に曲げることでその力を利用しますが、手首の蝶つがいはあまり曲がりません。いいかえると、腕と二の腕の角度はいくらでも曲がります(たとえば90度ぐらい)が、腕とラケットの角度は120度よりも小さくはならない感じです。また、腕の動く方向(手のひらの方向)については、腕とラケットは同じ面内に維持されている(もちろん、インパクト直前には、手首はある程度はコックされますが)イメージです。
これは、いいかえると、ヒッティングポイントにおいて、肩とボールにはある程度の距離をとることが必要となると言うことでもあります。ひじの角度が120度と浅い角度であるため、肩から手首までには距離が生じるためです。(例えば、90度の場合は、もう少し距離が近くなるでしょう。)したがって、比較的低い球についてはスイングが下から上の縦振りになります。一方、腰よりも高い球についてはある程度、横振りになります。腕とラケットの角度が深く(120度以下に)ならないので、テイクバックである程度ラケットヘッドが上を向いても、スイング中にラケット面が上を向くことがありません。
今まで、メシールのスイングでどうしてテイクバックでラケットヘッドが立ってもフラットでボールが打てるのか不思議だったのですが、2)がその理由ではないかと思います。この点は、もう少し調べてみようと思います。
なお、このように腕とラケットの角度を維持するスイングでは、スイング中(フォワードスイング中)には、腕よりも二の腕に力が入るようです。腕(や手)に力が入ると言うことは、多くの場合、腕とラケット(つまり手首)に角度がつくことを意味しています。多くのプレーヤー(アマチュアだけではなく、プロもそうではないでしょうか?)は、したがって、腕に力が入り、かつ、手首が120度よりも直角側に曲がっていると思います。(おそらく、現代テニスではグリップの薄いフェデラーでさえも、手首は意外に曲がっていると思います。)
メシールの場合は、腕よりも二の腕に力が入っているようです。そうしないと、スイングの中で腕とラケットの浅い(例えば120度の)角度が維持できないはずです。腕からラケットを一本の棒のように使うのであれば、それを操作する二の腕に力が入るのは当然です。この違いも、メシールのストロークが他のプレーヤーとは一線を引いて見える理由かもしれません。こちらも、今度、テニスコートで実際に試してみようと思います。

(1)と(2)を通じて重要なことは、背中の筋を伸ばすことです。これは、他の項目でも書くことになるのですが、メシールのフォアハンド・バックハンドでは、「背中が立つ」のが特徴です。(1)のラケットヘッドの向きに関しても、(2)の腕の角度についても、これを活かすためには、背中の軸が重要です。また、左手の使い方も重要です。これらについても、別項で述べることになると思います。

2011年1月9日日曜日

中級から上級への道

今回は、メシールと関係ない、一般的なことを書いてみます。

中級者と上級者の違いについて、です。いいかえると、中級者が上級者になるための道について、と言ってもよいと思います。

この20年間、ラケットの恐るべき進化によって、アマチュアテニスはガラッと変わってしまいました。
20年前には、ラケットの機能を表現するのに「パワー」というような言葉はなかったのですが、いわゆる厚ラケの登場により、アマチュアテニスもかなり変わってしまったと思います。

一言で言うと、「きれいなテニス」ではなくても、いくらでもよいプレーができるようになったのです。
よほどよいボールを打って前に詰めても、相手はラケットのパワーをうまく使って、簡単にロブで逃げることができます。昔であれば、深い球を打ってネットに出れば、相手はミスをしてくれるはず…だったのに、です。そのため、「テニスのゲームを楽しむ」という点では、逆に、ずいぶんと技術的な敷居が下がった印象があります。誰でも、いざとなったらロブで逃げる!ことができるのですから。

いいかえると、これによって、ずいぶんと「中級」と言うレベル(実際には、その意味は不明瞭なのですが)が広がったように思います。ラケットのパワーをうまく使えれば、フォームや技術に関係なく、誰もが一定レベルのプレーを約束されるようになりました。

しかし、これが、私には、中級者が上級者に上がる一つの「超えるべき壁」を示しているようにも思います。皮肉なことにも。

超えるべき壁とは、一言で言うと、「ラケットを振り切れるかどうか」です。

テニススクールで見ていると、中級コースでは、7割から8割の生徒がここで上達が止まってしまっているように見えます。つまり、パワーのあるラケットを使っている場合には、ラケットを振り切らなくてもボールが返せる(しかも、時にはとてもよいボールが返せる)ために、振り切るのではなく、ボールにラケットを「あわせる」スイングをしているように思います。
そのために、ラケットスイングにおいて、ラケット面が下を向かない(上を向いている)場合をかなり見かけます。

当然ですが、ラケットを振り切らないと、ボールは思ったところには飛びません。
また、これが大切なのですが、実は、スイングの中に、うまい力加減をつけることができません。

ラケットスイング(特にフォアハンド)では、テイクバックからフォワードスイングにおいては、グリップに力を入れてはいけません。
グリップは緩く(ゆるゆると言うわけではないにしても)握っておき、インパクトにおいてしっかりと力を入れることになります。

しかし、ラケットをボールにあわせるスイングでは、インパクト前から
グリップに力が入ります。または、フォワードスイングで力が入り、
そのままの力でインパクトに入ることになります。
(そして、その分、フォロースルーが小さくなります。)

テイクバックからフォワードスイングにおいて力を20%程度にしておき、
インパクトで80~100%にするような、大きな、強弱(この場合は、弱強
ですね)のあるスイングができるかどうか。
これが、パワーのあるラケットにおいても、上級者になるためには
避けては通れない道だと思います。